5.その他
- 火山に限って、観測研究を行う予算人材があまりに少なすぎる。大きな噴火が起これば、その後予算が増えるのかもしれないが、それでは人材の育成にはならない。1.に関連するが、実験的観測ができ、きちんと結果を発表できる指導者、若手を普段から応援する制度があればいいと思います。
- 「実施内容骨子」のうち,3−(1)−ウに関連して
私は文科省特定領域研究で火口近傍などでの噴火観測を行う新しい機器‘火山探査移動観測ステーションMOVE)’の開発を進めてきました.私のグループでは,噴火観測用のドップラーレーダーや投下型のGPS観測機器の開発も行われ,一応の完成をみたのですが,今後の運用に関して数多くの問題を抱えています.動かすための人員,訓練や予算に関する問題はもとより,保管場所にさえ頭を痛めています.気象庁などでも同様の問題があるようですが,このままでは火山噴火予知に関して新しい技術開発をおこなっても,結局は運用されることもなく忘れ去られてしまうのではないかと危惧しています.この点にかんして,実際に運用を可能にするための,なにか新しい仕組みを考えておく必要があると思います.時間がないので要点のみで失礼します.
- 過去の火山噴火で得られたデータの解析・解釈、及び一般の火山現象に関する解釈には、必ずしも確立されていないものが多い。新しいデータを追求することも必要であるが、上記を解決することは、火山学の本領であり、また噴火予知にも役立つであろう。日本火山学会はかって「仲良しクラブ」的であると言われたように、甲論が出ても、概して、乙駁が出ないようである。そのため、大事な現象に関する解釈が、実は未解決のままになっていることがある。
小生の浅学の故に、或は先入観の故に誤解があるかも知れないが、思い付くままに以下に列挙する:
- 有珠山の過去の火砕流の発生機構(ドーム崩壊と判っているものは除く)、
- 有珠2000年噴火の際のマグマの動き;どのくらいの深さから、如何に?
- 三原山1986年噴火の際のマグマの動き;伊豆大島南東部にマグマが貫入したか?
(全島避難の措置は学問的に正しかったか?)
- 三宅島2000年噴火の初頭に、西方海域で、真に海底噴火があったか?その後、マグマは何処へ移動したか?その機構は?
山頂火口の陥没の機構は?
- 手石海丘1989年噴火の際のマグマの動き;将来、他の地点で発生する可能性は?
伊豆半島の単成火山、及び一般の単成火山の研究を更に進めるべきであろう。
- 阿蘇カルデラ南西部のボーリングにより、地表下約1.5キロメートルにAso-4 火砕流が厚さ200メートル
堆積していることが発見されたが、これを如何に解釈するか?
- 姶良カルデラの活動源と桜島の活動源との関係は?
- 姶良カルデラ縁の大崎鼻は、何故顕著な地震群を伴わずに隆起したか?
この種の問題の解明は基礎研究につながり、また、噴火予知にも役立つものと思われる。これらの研究のために、人員、予算を投入することは決して無駄ではないであろう。