海洋機構は、平成16年度に旧海洋科学技術センターから独立行政法人化して発足し、その際、海洋研究所が運用を行っていた2隻の海洋研究船(「淡青丸」及び「白鳳丸」)が移管された。
その後、海洋機構においては、以下のように海洋研究船の運用・運航を行ってきている。
旧海洋科学技術センターより運用を行っている「なつしま」、「かいよう」、「かいれい」、「よこすか」及び「みらい」の5隻については、海洋機構が中期目標に基づき行うプロジェクト研究を行う一方、我が国の海洋科学技術の水準の向上を図るとともに学術の発展に資するため、各海洋研究船に供用期間を設けている。研究課題の公募及び課題選定は海洋機構(深海調査研究推進委員会等)が行い、採択された研究課題を基に運航計画案を作成し、最終決定している。
海洋研究所から移管された「淡青丸」及び「白鳳丸」については、移管前と同様、全国共同利用方式による海洋研究船(学術研究船)として、全運航期間を共同利用に供している。海洋研究所に設置された研究船共同利用運営委員会が研究課題の公募及び課題選定を行うとともに、採択された研究課題を基に運航計画案を作成している。その後、海洋機構において、本運航計画案を最終決定している。
上記の運用体制は、各海洋研究船の建造の経緯や研究船の施設・設備の特徴、また、それまでの利用体制等を踏まえて構築されてきたものであり、国として行う必要のある研究課題と、個々の大学関係者の発想と提案に基づく研究課題のそれぞれに対応しつつ運用するという点から、これまで着実に機能してきた。
今後は、海洋機構が運用を行う全ての海洋研究船を総合的に活用することにより、より効果的かつ効率的に研究目的の達成を図ることが期待される。また、研究課題の申請先を一元化し、評価プロセスを精査することにより、研究課題評価の透明性を向上させることが望まれる。
我が国の海洋科学技術の水準の向上を図る観点からは、従来は困難であった複数研究船による集中観測、長期・継続的定点観測、大西洋や南大洋など遠隔地における長期運用など新しい運用方式に挑戦していく必要がある。このためには、その運用体制について常に検討し、改善を図ることが必要であり、「淡青丸」及び「白鳳丸」が海洋研究所から海洋機構へ移管され、現行の運用体制となってから3年が経過した現時点で、現在の運用体制を検討するとともに、必要に応じて更に効率的な運用体制へ改善することが必要であると考えられる。
現在7隻の海洋研究船は、表3に示すとおり、多くの大学及び研究機関の研究者の利用に供されている。運用体制の検討に当たっては、海洋研究船の利用者の多くは大学関係者であることも踏まえて、検討を行う必要がある。
今後の海洋研究船の運用に当たっては、国が中期目標により指示したミッションを行う一方、全国の研究者への共同利用として供すべく海洋研究船を運用するという現行の運用体制を基本とする。その際、研究課題の公募、課題選定等の体制を「研究船運営委員会」(仮称、事務局:海洋研究所)へ一元化することにより、一層の運用の効率化を図ることとする。具体的な運用体制のイメージは以下のとおりである。
海洋研究船の運用を行っている海洋機構と、全国共同利用の附置研究所として学術研究船に関する事務作業を行ってきた海洋研究所においては、上記()から(
)の事項を参考としつつ、今後の海洋研究船の運用体制について検討を行い、運用体制に反映させることが望まれる。また、海洋研究船を利用することによって得られた観測データについても、研究者の利便性を担保しつつ、海洋に関する情報の収集、整理、保管及び一般への提供の観点から、データの所在管理等を適切に行うことが必要である。加えて、各海洋研究船を利用するに当たって研究者が受けるサービスの内容についても統一を図ることが必要である。
今後、整備する海洋研究船については上記()から(
)の運航体制によって運用するものとし、海洋機構は、当該船舶の有する施設・設備などの特性に配慮しつつ供用利用割合を決定する。加えて、特に遠洋での観測や国際共同研究を実施する海洋研究船については、3年程度の中期的な運航計画を策定することが必要である。