社会基盤系人材養成評価作業部会

プログラム名 評価時期 課題名 代表者 実施機関 課題概要 総合評価 今後の進め方 評価結果概要
新興分野人材養成 中間 科学技術インタープリター養成プログラム 黒田 玲子 東京大学 近年の科学技術の進展はめざましく、専門化と細分化が著しい。一方で、生命科学や情報科学、医療など、日常生活との結びつきもかつてないほど強まっている。この、「近くて遠い」という矛盾する現状を改善しないと、日本社会が発展と存続のための技術的基盤を失うだけでなく、個人の生活基盤がブラックボックス化することとなり、社会全体が不安定になりかねない。本プログラムは、この事態を改善するため、科学技術と社会とのギャップを埋めて相互交流を促進する科学技術インタープリターを養成することを目指すものである。 B B 科学技術と社会の相互交流を図る科学技術インタープリターを養成する非常に重要な課題である。当該領域は未だに教授法や教材が確立されていない状況にあるが、その中で模索しながら取組が行われ、人材養成の手法に様々な試行錯誤が見受けられるが、全体として良くマネージメントされている。これまでの進捗状況は概ね順調であり、また人材養成の手法や有効性も所期の計画を満たした妥当なものであることから、所期の計画と同等の取組みが行われていると判断される。なお、期間終了後の継続的な人材養成に関する計画の検討の中で、高いレベルの基礎的能力を有している受講生からより一般的なレベルの受講生まで、幅広く適用可能なカリキュラムや教材の策定が望まれる。
新興分野人材養成 中間 科学技術コミュニケーター養成ユニット 杉山 滋郎 北海道大学 本課題は、各種のアウトリーチ活動を通して、科学技術の研究内容や意義について一般市民や小中高生などに分かりやすく伝え、また社会的側面などについても適切に伝えることのできる人材、あるいは研究者と一般市民との間に立って両者の相互理解を促進する活動を企画・運営できる能力を身につけた人材を養成することを目指すものである。 B B PBL(Problem Based Learning)などの独自の教育方法に力点が置かれ、また外部評価を採り入れた認定方法などにも工夫が見られる。サイエンスカフェやラジオ番組制作など、実施にあたっては大きな努力が認められ、地域性という本課題の特徴をしっかりと押さえた内容ともなっている。養成目標人数の達成に向けてはさらなる努力が必要であるが、人材養成の手法や有効性については所期の計画を満たした妥当なものであると判断される。多くの試行錯誤の努力を通じて、総合的には所期の計画と同等の取組みが行われていると評価できる。
新興分野人材養成 中間 科学技術ジャーナリスト養成プログラム 佐藤 正志 早稲田大学 本課題は、大学院政治学研究科に設置された正規の修士課程の人材養成ユニットにおいて、人文・社会科学と科学技術とを接合し、かつ理論と実践とを接合して有為の人材を養成しようとするものであり、修了者に修士号の学位を授与することを目標としている。専任の教員として、理工学分野、医療分野、マス・コミュニケーションなどの社会学分野など、各分野の研究者に加えて、ジャーナリスト、科学技術コミュニケータとして活躍する実務者などから広範囲の人材を新たに集め、科学や技術の専門知識はもちろんのこと、それに関連する哲学・歴史・社会論を踏まえた科学技術とその背景を幅広く学習し、その問題点を論じられるような総体的な視点を有する人材を育成できる環境を目指すものである。 A A 早稲田大学が有するジャーナリスト養成に係わる基盤を強みとしてこれを融合させながら取組が行われている。養成の考え方がよく整理されており、今後の発展性が見込まれる。マスコミ企業の中でOJT的に習得していたスキルを大学の中でトレーニングすることは、現代の高度に科学技術化した社会において非常に大きな意味があり、人材養成の有効性は高く評価される。また、平成20年度から、本人材養成ユニットが設置されている政治学研究科の中に「ジャーナリズム・コース」が新設される予定であることから、人材養成の継続性、発展性は高いレベルで期待することができる。以上のことから、総合的に判断して、所期の計画以上の取組が行われていると評価される。
新興分野人材養成 中間 高度環境政策・技術マネジメント人材養成ユニット 石田 秀輝 東北大学 本人材養成ユニットでは、地球温暖化、資源・エネルギー危機、人口問題などのグローバルな環境問題や、廃棄物リサイクル管理など環境リスク管理と汚染防御に関する正確な知識に加え、「環境政策」、「環境技術」、「環境経営戦略」などの高度な環境マネジメント技術を習得させる。これらの知識と実践を企業の技術開発の将来展開、経営戦略、及び地域振興としての自治体の環境政策に活かせる人材(企業・行政のビジネスシステムを創出できる人材)を養成し、修士(環境科学)の学位を授与する。さらに、その中から特に優れた問題設定力、鋭い洞察力、豊かなソリューション立案力、コミュニケーション力、実践力を有する者に対して環境プログラムオフィサー(PO)認証を授与することを目指す。 A B 環境問題の多様性、分野横断性を考慮すると非常に有用なプログラムと評価できる。難しい内容を多分野の講師により分担講義し所期の目標を着実に達成するとともに、養成プログラムの継続的改良に意欲的に取り組んでいる姿勢も評価できる。今後は学内における本養成プログラムの定着に向け、既存の大学院教育との連携強化、相互交流を一層進めて欲しい。
新興分野人材養成 中間 産業安全保健エキスパート養成コース 酒井 一博 財団法人労働科学研究所 本課題では、安全管理・衛生管理の経験者を対象に体系的な再教育を行うことにより、これまでに培ってきた経験知と知識との融合を図り、個々の専門能力(コンピテンシー)とマネジメント水準の向上を目指し、更にまた、コンプライアンス概念の深い理解を促し、それを基礎に経営トップに進言できる能力の向上を狙いの一つとしている。そしてこうした人材の養成により、企業の不祥事や重大事故発生のリスク低減、過重労働やメンタルヘルスなどへの対策が実現され、社会への信頼性向上を目指すものである。 B A 研修内容及び養成修了者数などから計画通り順調に進捗しているものと判断できる。また受講生やその上司などへの種々のアンケート調査や、その議論の結果をフィードバックし、内容を逐次見直している点など、高く評価できる。また、養成手法についても、各界トップクラスの講師陣が入って大いに議論がなされ、現状考えられる最善策を取っていると判断される。今後は、養成修了者が実際に経営トップに進言し、行動できるようになるための方策の工夫が望まれる。リスクマネジメントに関する、安全・健康・環境の三位一体の試みはユニークかつ十分必要性ある取組であり、更なる発展継続が望まれる。
新興分野人材養成 事後 エンジニアリング知的財産(IP)講座 圓川 隆夫 東京工業大学 本講座は、東京工業大学の大学院生及び社会人を対象とし、技術に特化した知的財産マネジメントのプロフェッショナルを養成することを目的とし、修士(工学または学術)の学位を持った修了生を輩出することを目標とし、さらに5年後には技術経営(MOT)の専門大学院の開設などを目指すことを目標とした。 B 該当なし 技術について大きなサポートの得られる大学の特性と資源を活用して行われた、知財マネジメントの即戦力となる専門家を養成する取組である。人材養成のためのカリキュラムも充実し、「我が国の経済競争力強化・知財立国を担う技術に特化した知的財産権マネジメントの修士レベルの即戦力専門家の育成」という当該課題の目標を達成するためには効果的な取組であったと評価できる。また、目標養成人数も達成されており、本プログラムを大学院の一専攻へと発展させたこともあわせて評価できる。しかしながら、技術者に知財教育を施しただけのような印象もあり、工夫がやや不足していたと思われる。
新興分野人材養成 事後 知識創造マネジメント専門職育成ユニット 渡部 俊也 東京大学 本課題は、現下のわが国での急務である「ダブルメジャー」型の人材の育成を、下記の3レベルで同時並行的に遂行することを目指したものである。1科学技術系の大学院在学者に対し、社会において研究成果を活用するために必要不可欠な知識経験を身に着けさせ、産学連携スペシャリスト等として活躍し得る人材を育成すること。2科学技術系の大学院修士課程修了以上のレベルに達した者に対し、知的財産関連分野における基礎的な知識を伝達するとともに、実務的なトレーニングをも行い、知的財産権を取り扱う実務家として世界的な水準に到達した人材を育成すること。3関連分野における世界的レベルの専門職であると同時に高水準の研究能力を備えた者を選抜し、次世代を担う教育者・指導者として、後進の指導に当たり得る人材を育成すること。 B 該当なし ビジネスの成立を目指して知的財産を総合的に捉えた人材養成の試みが行われ、当該分野における先駆的取組として評価できる。また、新しい取組と従来型の取組とのバランスも良く、種々の手法を修正しつつ施行されたことが評価される。また、総合的に判断すると目標養成人数にも達しており、目標達成度という点でも評価される。ただし、養成された人材が具体的にどのようなコンピテンスを習得したのかなど、成果がやや見えにくい面があり、広い波及に向けた整理が望まれる。

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