ライフサイエンス系人材養成評価作業部会

プログラム名 評価時期 課題名 代表者 実施機関 課題概要 総合評価 今後の進め方 評価結果概要
新興分野人材養成 中間 医歯工連携による人間環境医療工学の構築と人材育成 山下 仁大 東京医科歯科大学 本課題は、東京医科歯科大学の医歯学総合研究科及び生命情報科学教育部の修士課程学生と、希望に応じて他大学や企業からの派遣学生を対象に、ナノテクノロジー融合領域を基盤とした、近未来に必要な理想的医療環境を構築するための基盤技術を習得し、自力で発展的に実用展開できる人材を養成し、産業界、研究機関へ供給するものである。 B B ナノインターフェースを基盤として、ナノ生体材料、医療用デバイスを創出できる人材の養成について、生体材料工学研究所が中心となり、所期の計画に沿った取組が順調に行われている。多数の外人講師による特別講義の実施や成績優秀者の短期海外派遣(武者修行)など、評価できる点が多い。今後、大学本部と調整するとともに関連研究科とも連携することにより、期間終了後の具体的な展開や新たな人材養成継続組織の設置に向けた大学全体としての取組が課題である。
新興分野人材養成 中間 遺伝カウンセラー・コーディネーターユニット 小杉 眞司 京都大学 現状、日本では、医学研究、特に遺伝学研究に対する不信感や差別感が強く、研究への参加が進みにくい。また、遺伝的問題を抱える患者家族が適切に対処・行動できるように支援する人材も不足している。これらの問題の解決に資するため、遺伝医療と臨床研究を支え、成果を真に患者・家族に還元するための人的基盤として、総合的な支援職の専門家である遺伝カウンセラー・臨床研究コーディネータを養成する。 B B 本人材養成は、我が国の中では比較的人材の少ない領域におけるユニークな取組であり、所期の計画に沿って、教育組織やシステムが合同プログラムを含めよく整備されている。ただし、臨床研究コーディネータコースについては、今のところ治験コーディネータの育成コースとなっている感があり、臨床研究専門領域科目の充実度がやや不足していると言える。なお、遺伝カウンセラーは社会適用性の強い分野であり、今後の更なる発展が望まれるが、認定遺伝カウンセラー自体の活躍の場が未だ確定的なものではなく現在進行形であるため、一般社会への認知など一層の尽力も望まれる。
新興分野人材養成 中間 クリニカルバイオメディカル情報科学マスターコース 小林 広幸 東海大学 臨床医薬品及び機器の開発に関する学際分野、特に「バイオインフォマティクス・バイオスタティスティクス」は欧米に大きく遅れをとり、世界に互する研究教育拠点の形成は、国家戦略上急務である。本コースでは、生物統計学、遺伝子統計学、医療情報学を組織横断的に融合・連携し、次世代のバイオインフォマティクスを担う人材をOJTにて育成・輩出する実践型人材育成ユニットの創設・発展を目的とする。 B B 本課題は、バイオスタティスティクスをベースとし、臨床医学に特化した高度な内容のカリキュラムが実施されている点が評価できる。その中で、高いレベルの英語力を有する受講生を募集し、国際性を持った人材の養成を行っている点も評価できる。しかし、人材養成の趣旨(次世代のバイオインフォマティクスを担う人材)と目標(臨床研究を指揮しうる人材)とにやや不整合があると考えられる。「バイオインフォマティクス・バイオスタティスティクス」をどのように考えるのかを明らかにして、到達目標、対象者、目標に至るプロセスをより明確化することが望まれる。
新興分野人材養成 中間 生命情報科学技術者養成コース 浅井 潔 独立行政法人産業技術総合研究所 ゲノム配列や疾患情報など大量のバイオ情報を活用した革新的な製品開発の気運が高まっている。このような期待感の中で、バイオインフォマティクス技術を駆使して活躍できる人材へのニーズが高まっているが、現状では圧倒的な人材不足に陥っている。本課題では、我が国で初めて社会人再教育の観点からバイオインフォマティクス速習コースの構築を行い、また特に不足が叫ばれる創薬インフォマティクスの短期訓練をも提供するものである。 B B リーダー養成、バイオインフォマティクス速習、創薬インフォマティクスコースなど受講生の目的に合わせて選択可能なコースを設定し、各方面の要求に応えている本課題は、これまでに培われた産業技術総合研究所の実績に基づくものと考えられ、高く評価できる。当初の計画通りに進捗しており、本人材養成期間終了後の新たなコース新設や講義資料の公開も検討しており、評価できる。なお、速習コースについては、現行のカリキュラムで本当に有効な速習が可能なのか、また、この修了により企業で実践力を発揮できるのか、早期の検証が必要である。
新興分野人材養成 中間 ナノメディシン融合教育ユニット 松重 和美 京都大学 本課題は、ナノテクノロジーとライフサイエンスの異分野融合により初めて実現できるナノメディシンという高度先端医療に関するものであり、基礎・応用研究を開拓できる研究者・技術者を育成する大学院生及び社会人向けの人材養成プログラムであり、この新研究領域において基礎から応用までの問題解決能力を有する研究者・技術者へと育成しようとするものである。 A A 医工学融合分野の教育は、わが国の優れた工学、医学の基礎研究を医療に応用する上できわめて重要であるが、これに対し強いリーダーシップの下、大学全体として取り組み、豊富な教授陣により当初の計画が着実に進められ、所期の目標を十分に達成している。ナノメディシンという高度医療技術分野の人材育成について、ナノテクノロジー、ライフサイエンスの基礎学問の習得を行い、4つのコースを提供する方法は合理的であり、大学院生と社会人をそれぞれ対象とした養成目標と教育体系も明確である。また、期間終了後の人材養成継続のための仕組みも十分計画されており、高く評価できる。
新興分野人材養成 中間 バイオ医療オミックス情報学人材養成プログラム 田中 博 東京医科歯科大学 本課題は、オミックス情報を臨床医学に適応する「バイオ医療オミックス情報学」の推進に必要なオミックス情報の知識、医学・医療知識、また医療情報学、医学統計学などの周辺知識に習熟し、医療/保健の課題解決に取り組む人材を養成することを目的とする。 B B 当初の計画と同等の取組が行われている。オミックス科学と臨床医学の融合領域、システム生物学と疾患科学の融合領域において、実践的な課題に取り組める即戦力となる人材を短期間で養成しようとするものであり、社会的ニ−ズの高いプログラムとして教育組織がよく整備され、進捗状況も順調である。学会との連携などを含めてプログラム終了後のリカレント教育を継続して目指している点でも評価できる。しかしながら、多岐にわたる受講者に対して幅広い科目の講義が実施されており、受講者の専門性に合わせた内容の見直しや修了者に対するより客観的な評価なども必要と考えられる。
新興分野人材養成 中間 臨床医工学・情報科学技術者再教育ユニット 倉智 嘉久 大阪大学 大阪大学が平成16年11月に設置した「臨床医工学融合研究教育センター」には、生命科学・医学系、工学系、情報科学系の部局から兼任教員が参加し、「臨床医工学・情報科学分野」の研究と教育を部局横断的に推進している。本課題は、「臨床医工学融合研究教育センター」が中心となり、臨床医工学・情報科学融合研究領域の確立のための「新しい戦略的社会人再教育システム」を設置して人材養成を行うものである。 B B 我が国の医療分野における国際競争力を強化するためには、医学・生命科学に精通した工学・情報系技術者及び工学・情報科学に精通した医学系研究者の充実は不可欠であり、その中で社会人再教育は重要と考えられる。本課題は、社会人に一定レベルの知識を与えるという点では有用な教育システムを提供しているものとして評価されるが、バックグラウンドや要望が多様な受講生の個別ニーズに対する適切な対応について今後検討する必要がある。
新興分野人材養成 事後 クリニカルバイオインフォマティクス人材養成ユニット 永井 良三 東京大学 クリニカルバイオインフォマティクスは、内科学、バイオスタティスティクス、統計遺伝学、医療情報学の4つの学問分野を融合した形で構成される研究分野である。本ユニットは、各領域における専門家を結集し、医学、工学双方の若手研究者を短期間で教育し、それぞれが、単独でゲノム研究の臨床応用プロジェクトをデザイン、マネジメントできるレベルまで養成し、また、学位未取得者については、当該分野において学位を取得させることを目的とした。 A 該当なし 本課題はバイオインフォマティクス分野の人材養成ユニットの先駆けとなったものであり、その後の他機関の人材養成ユニットの構築に多大な影響を与えたことは高く評価される。5年間で総受講者6,000名以上、修了者3,000名以上という公開専門講座の実績は多大な努力の成果であり、バイオインフォマティクスの臨床現場への優れた波及効果が期待される。本課題の成果が社会人向けの専門職大学院School of Public Health(SPH)や臨床医療関連の寄付講座の設立につながり、引き続いてバイオインフォマティクスの教育が発展的に継続されている意義は大きい。
新興分野人材養成 事後 ゲノム情報科学研究教育機構 金久 實 京都大学 本課題は、これまで我が国のゲノム情報科学の研究拠点並びに研究支援拠点として活動を行ってきた京都大学化学研究所と東京大学医科学研究所が、新たな教育拠点としての連携体制を作るものとして開始された。これからのバイオインフォマティクス教育は生物学と情報科学の単なる融合だけでなく、広範な自然科学との融合の中から生命科学を原理的な学問として体系化し、同時に応用研究や産業化を実現できる人材の養成が求められていた。そこで、新しいカリキュラムに基づく大学院教育や、海外のバイオインフォマティクスプログラムとの国際協力を通じ、大学院生・ポスドク・受託研究員に対して先端的研究指導を行い、国際社会へ貢献できる人材を養成することを目的とした。 B 該当なし 本課題については、国内で最初のバイオインフォマティクス教育改革の仕組みを構築し、日本のバイオインフォマティクスを牽引してきた実績が高く評価される。中間評価の結果に基づいて一部変更がなされたものの、総合的には当初の目標は達成されたものと判断できる。また、本課題では、バイオインフォマティクス学会により策定された教育カリキュラムに基づいて人材養成を実施し、その実践を通じてカリキュラムの改訂をはかり、その成果を学会に還元している。これは、バイオインフォマティクスの系統だった教育と人材養成のモデルとなるものとして評価できる。

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