プログラム名 |
評価時期 |
課題名 |
代表者 |
所属機関 |
課題概要 |
総合評価 |
今後の進め方 |
評価結果概要 |
産学官共同研究の効果的な推進 |
事後 |
環境ホルモン標準物質合成と国際標準化研究 |
片瀬 隆雄 |
日本大学 |
本研究は代表的環境ホルモンであるノニルフェノールについて、異性体別簡便迅速分析装置の開発および分析手法の国際標準化を目的としたものであり、ノニルフェノールの10種類前後の異性体標準物質を合成し、個々の異性体の毒性評価を実施する。また異性体別簡便迅速分析装置として、包括的二次元ガスクロマトグラフについて技術開発を行い、性能確認・製品化を行う。さらに合成した標準物質と本装置を用い、JIS化、国際標準化活動を行い、成果をISO水質委員会で発表し、国際標準化グループを設立することを目指した。 |
D |
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本研究は、各機関が明確な役割の下で連携して行う「産学官共同研究」として推進され、それぞれが実施する研究の成果がお互いに有用な形で活かされ、より高度な研究成果をあげる事が期待された。しかしながら、各機関の連携不足により、標準化のための取組を進めるグループに必要十分な量の合成されたノニルフェノール異性体試料が提供されないなどの問題が生じ、結果として、最終的な目的であったノニルフェノール異性体の合成と標準化、異性体別簡便迅速分析装置及びそれらを用いた分析手法の国際標準化については、所期の目標に達していない。以上のことから、総じて所期の計画以下の取組であると判断された。 |
若手任期付研究員支援 |
事後 |
衛星を用いた広域人間活動の大気影響評価 |
河本 和明 |
人間文化研究機構 |
本研究は、大気排出物質、エアロゾルの雲・降水への影響とその長期的な変動を明らかにすることを目的としたものであり、対象地域として、様式の異なる人間活動を受容してきた東アジア、アマゾン、ヨーロッパの3地域を選び、衛星データの解析によって、エアロゾル量と雲特性や降雨量との関係やその変動を長期間に渡って明らかにすることを目指した。 |
B |
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本研究は、特に地球温暖化に及ぼすエアロゾルの間接的な影響を明確にするために、基礎データの集積、解析を人間活動の異なる3地域に対して行うことを計画したものであるが、内容も堅実であり今後の研究の基礎を築くものである。「人間活動」の指標の一つとしたSO2(二酸化硫黄)排出量と雨量との関係を明確に示した成果は高く評価でき、本研究は所期の計画と同等の取組が行われていると評価される。 |
若手任期付研究員支援 |
事後 |
気象モデルによるエアロゾルの気候影響研究 |
竹村 俊彦 |
九州大学 |
本研究は、エアロゾルの気候システムに対する影響評価を行うことを目的としたものであり、地球規模のエアロゾル分布をシミュレートするSPRINTARS(全球3次元エアロゾルモデル)を改良するとともに、エアロゾルによる定量的な気候影響評価、エアロゾルによる間接効果を評価するための雲微物理過程の導入、及びSPRINTARSによる200年程度の長期シミュレーションを目指した。 |
A |
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エアロゾルによる直接・間接効果の放射強制力や地球温暖化への影響を全球規模で定量的に示し、地球温暖化の予測精度を向上した点で高く評価できる。また、他の研究に広く利用、参考されており、特にIPCC第4次評価報告書でも取り上げられるなど、科学的・技術的にも高い評価を受けている。本研究は優れた結果が得られ、その成果は今後の研究に大いに寄与するものと考えられ、所期の計画以上の取組が行われていると評価される。 |
若手任期付研究員支援 |
事後 |
天敵ダニの行動変異の解明と利用法の開発 |
前田 太郎 |
独立行政法人農業生物資源研究所 |
本研究は、日本土着天敵カブリダニの行動特性の種内変異を解析し、異なる行動特性を持つ複数の系統を用いた、効率的で安定したハダニ個体群密度抑制技術の基礎を確立することを目的としたものである。ハダニ加害植物の生産する揮発性化学物質に対する天敵カブリダニ類の行動特性などの遺伝的変異を解析し、異なる行動特性を持つ系統を確立するとともに、行動特性の異なる系統の品質管理をDNAマーカーを用いて行い、行動特性の違いがハダニ類の個体群密度抑制におよぼす影響を解明することを目指した。 |
B |
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本研究では、前半の3年間はカブリダニの系統別飼育に多大の時間を要したため研究全体に遅れが生じたが、中間評価の指摘に基づきisogenic系統の充実に切り替えたことにより、達成度が高まったものと考えられる。いくつかの新知見、特に4つの化学成分の混合がケナガカブリダニの誘因に必要であることなどを提示した点や、土着天敵カブリダニを農場現場で利用し、遺伝子汚染などの環境への影響を低減しようとする計画は評価できる。本研究は、当初の目的を変更した面もあるが、最終的には意義のある研究を実施できたものと判断でき、所期の計画と同等の取組が行われていると評価される。 |
若手任期付研究員支援 |
事後 |
日本海環境予測システムの構築 |
広瀬 直毅 |
九州大学 |
本研究は、高精度日本海環境モデルに対して、リモートセンシング及び対馬海峡の海洋観測データを客観的に同化する手法を開発し、予報値及び再解析値を配信するサーバーシステムを構築することを目指したものである。対馬海峡のモニタリング、各種データ同化手法の開発、及び予報値配信システムの構築を本研究の3本柱とした。 |
A |
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社会に貢献する研究としてエチゼンクラゲの大発生など、社会的に関心のある予測問題に臨機応変に取り組んだことは高く評価でき、開発したシミュレーションモデルは、基本的には他の海域のモデルともなり得るもので、科学的・技術的波及効果が期待される。各種生態系モデルの同化の困難性は当初から予測可能であったのではないかと思われ、「若手」としては計画がやや過大であった可能性はあるが、2004年の急潮被害や2005年のエチゼンクラゲ大発生などにより、新たに生じた海洋問題に的確に対応している。本研究は、日本海の環境予測システムとしては、優れた成果が得られており、所期の計画以上の取組が行われていると評価される。 |
重要課題解決型研究 |
中間 |
有明海生物生息環境の俯瞰型再生と実証試験 |
楠田 哲也 |
九州大学 |
本研究は有明海の再生という目的達成のために必要な環境改善像を示し、それを達成するのに必要な技術的・制度的方策を俯瞰的に設計を行う。個別の開発へと進む方式を採用し、最終的に得られた知識を構造化し容易に応用できるようにすることを目的とする。 |
B |
A |
有明海の再生は政策的にも非常に重要なテーマであり、海域の多くの研究課題、研究組織を総合的にとりまとめ、困難な課題に意欲的に取組んでおり、所期の研究計画が順調に進展しているものと判断される。今後はさらにこれらの連携組織が協力し、相互の研究、調査結果を補完し合いながら閉鎖性水域の再生技術、施策の体系化をすすめてほしい。特にモニタリングデータの集積による生物生息モデルの精緻化を進め、再生技術開発と実証実験の結果の有効性の検証を行い、計画終了時に提示される有明海の再生施策の信頼度向上が望まれる。 |
重要課題解決型研究 |
事後 |
廃棄物処分場の有害物質の安全・安心保障 |
小野 芳朗 |
岡山大学 |
廃棄物の最終処分場は地域住民にとって迷惑施設ではあるが、これが設置できなくなると廃棄物処分そのものが停止する可能性もあり、住民にとっては安心が保障されず、社会にとっては有害廃棄物の生活空間からの除去という安全が保障されない。本研究はこの問題を解決するため、廃棄物処分場の有害物質の挙動を明らかにし、地下水への影響解析及び安全性確保のための処分法、モニタリング技術など、廃棄物処分場問題についての総合的な対策技術を提示することを目的としたものである。 |
B |
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廃棄物処分場内での環境管理、対策技術や処分場設置場所の安全性評価手法など、社会的に重要である一方で、解析やモデル化が難しい課題に幅広く総合的に取り組み、多くの研究成果をあげている。各研究課題の成果は十分評価でき、研究全体像の構築も巧みである。ただし、原著論文(査読付き論文)の数が少なく、学術的貢献の面から継続的な努力が望まれる。また処分場反応モデル完成度の継続的向上など、本研究成果を体系的に整理して普遍的、共通的知見を取りまとめ、本研究による成果の行政への活用を推進し、社会貢献に継続的に取り組む事が期待される。 |