情報通信・社会技術研究評価作業部会

プログラム名 評価時期 課題名 代表者 所属機関 課題概要 総合評価 今後の進め方 評価結果概要
産学官共同研究の効果的な推進 事後 4次元デジタル宇宙映像配給システムの構築 観山 正見 自然科学研究機構 国立天文台 国立天文台のすばる望遠鏡など最先端の観測装置や世界中の観測所・人工衛星等が生み出す膨大な観測データと、スーパーコンピュータや専用コンピュータなどによる大規模シミュレーションの結果を用いて、宇宙の構造とそこで起きている現象を誰でも直感的に理解できるような可視化技術を開発する。 B 該当なし 制作したコンテンツは最先端の観測や研究成果に基づく優れた内容であり、国際的知名度の高いSIGGRAPHやカンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭などで受賞するなど、高く評価できる。完成したドームシアターの維持管理など、種々の制約があろうが、コンテンツ制作体制を見直し、立体映像の画質、表現、内容などについて、さらに改良を進めた上で、成果の普及を図られたい。また、これらの成果の社会での認知はそれほど高いとは言えず、情報発信の努力が望まれる。
若手任期付研究員支援 事後 聴覚的信号分析技術に関する基礎研究 鵜木 祐史 北陸先端科学技術大学院大学 本研究は、聴覚心理物理実験を通じて、聴覚の優れた周波数選択性(音信号を分解する能力)の機能を解明するとともに、この結果に基づいて、聴覚が行っている非線形な信号分析と機能的に等価な分析技術の確立を目指した。 B 該当なし 重要な基礎研究にじっくりと取り組み、多くの実験を系統的に行い有意義な成果を得ている。研究遂行過程で判明した事実により、当初計画にあった逆方向マスキングの実験が変更されたが、順方向性実験の充実などにより、適切な対応がなされている。本成果は補聴器の設計や、了解度の高い音声情報の提示に関して、有効な研究となり得ると期待される。
重要課題解決型研究 事後 危機管理対応情報共有技術による減災対策 後藤 洋三 独立行政法人防災科学技術研究所 災害時においては、必要とされる減災情報(災害情報プラス防災情報)を政府、自治体、地域住民、消防、警察、自衛隊ならびにライフライン事業者などが迅速かつ的確に入手、伝達、共有でき、また利活用できることが、減災並びに復旧、復興に極めて有効であるのは周知の事実である。この課題を解決するため、国の諸機関から都道府県、市町村、ライフライン事業者、さらには地域住民までが利用できる減災情報共有プラットフォームを開発する。 B 該当なし 当初予定していた独自の情報共有システム開発を、早期にオープンソース利用による防災関連機関との情報システムの連携構築に切り替え、運用技術を研究の中心に据えたことは、実用システムの構築という意味では良い判断であった。しかしながら、構築したシステムの堅牢性と減災効果の定量的評価がなされていないので、今後の、自治体への更なる普及活動において、その点を明確にされたい。
重要課題解決型研究 事後 障害者の安全で快適な生活の支援技術の開発 山内 繁 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 本研究課題は、技術的支援が不可能であると考えられてきた障害に関して、「活動し、参加する力」を当事者が自ら主体となって発展させるため、自己選択と自己決定、自立的な行動のための力の強化に資する支援技術を開発するものである。 B 該当なし 障害者の自立を支援する技術の開発を目指して、参画機関の技術を集積し、実用的なシステム開発を行ったことなど、着実な研究であり評価できる。また、府省を超えたプロジェクトであり、要素技術に関する新規性はあまり見られないものの、研究に参画するそれぞれの機関が蓄積してきた技術を障害当事者とともに集積し、実用的なシステムを開発したことは評価できる。今後は社会に必要とされる情報認知の支援、認知・知的障害精神障害の支援技術全体を俯瞰し、取り組む技術戦略を明確にして欲しい。
重要課題解決型研究 事後 状況・意図理解によるリスクの発見と回避 稲垣 敏之 筑波大学 本研究プロジェクトで目指した予防安全型技術とは、1環境を実時間でセンシングし、運転員には見えないリスク(危険要因)の可視化を図る視覚支援技術、2機械が運転員の意図・行動や交通環境を理解するための技術、3運転員の発話音声から運転員の疲労度を推定する技術、4運転員の行動や状態が不適切であると判定された場合にそれを運転員に提示する技術、5運転員の心的状態の不適切さ(過信、警戒心欠如、心的高負担など)を検出する技術と状況に応じて人と機械の役割分担を動的に変更する技術である。さらに、6高齢者向け支援技術の開発も目指した。 B 該当なし 所期に計画した個々の要素技術の開発はすべて達成したと認められが、国家的目標である「交通事故死者半減」に対する検証が十分ではない。開発された要素技術を駆使し、運転者の状況・意図を理解することが、交通事故、交通事故死を減少させる技術として実用性があるか、その確認には至っていない。その点について政策課題と研究計画の不整合の指摘もあったが、3年前の時点で有効と思われる要素技術を開発しようという計画は妥当であり、所期の計画と同等の取組が行われていると評価された。
重要課題解決型研究 事後 セキュリティ情報の分析と共有システムの開発 徳田 英幸 慶應義塾大学 誰もが安心して情報通信システムを利用できるような、世界最先端のICT国家の実現をめざし、セキュリティ事故やサイバー攻撃に対する早期警戒システム構築のための技術開発、ならびにプライバシーに関する検討を行う。また、関係機関の有機的な連携により、国・民間が一丸となって一貫したセキュリティレベルを確保できるような体制の構築に資する。 B 該当なし 多くの研究機関が結集した膨大な研究計画であったが、各研究テーマとも概ね所期の目標を達成している。また、情報セキュリティに係わる国内の研究を統括した意義は大きい。しかしながら、各研究テーマ、関係機関の連携による成果が十分ではなく、なお改善の余地があったと考えられる。本課題は今後も継続した研究開発が必要な分野であり、社会還元の視点で事故や攻撃に対する早期警戒システムのテストベッドの運用も含め、今後の発展に努められたい。
重要課題解決型研究 事後 デジタルシネマの標準技術に関する研究 安田 浩 東京大学 デジタル映像の優位性は、フィルム映像(映画)に比較して制作、加工、編集、上映、そして、機器調達などが手軽にかつ低廉に実現できることにあり、近い将来コンテンツ配給(配信)方法も含め大幅にデジタル化が進むと期待されている。本研究は、デジタル映像(シネマ)の制作から上映までのデジタル技術の一貫した規格を提案し、その共通仕様化を目指した。 B 該当なし 今後の標準化活動の基盤を確立したという点は評価されるが、それらが統合されて相乗効果的に標準技術が発展したとの印象は薄い。成果が真価を発揮するには時間が必要ではあるものの、制作から流通、上映表示まで一連の共通仕様メタデータによる一貫した運用実験や評価などを通して、各段階への効果だけでなく、全体への総合的な効果を明らかにすることを含め、何が誰に対してどのようなメリットとなるのかを、国内外に宣伝しアピールしていくことを今後の取組みとして期待したい。

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