医療研究評価作業部会

プログラム名 評価時期 課題名 代表者 所属機関 課題概要 総合評価 今後の進め方 評価結果概要
産学官共同研究の効果的な推進 事後 MR画像対応手術支援マイクロ波機器の開発 谷 徹 滋賀医科大学 本研究では核磁気共鳴画像装置(MR)環境下で使えるマイクロ波凝固切断装置(MWCX)の開発に基づき、体のあらゆる部位、開腹、開胸、体腔内の狭い場所にも適用できるマイクロ波手術支援機器の開発を目的とした。最終的にはMWCXに位置センサーを搭載し、リアルタイム三次元MR画像で生体を透視して、臓器内の血管等を確認しながら手術可能なシステムの完成を目指した。 B 該当なし 外科手術を支援する次世代システム開発に向けて、地域連携型の研究体制を推進し、MR画像対応マイクロ波手術支援装置として基本的な技術を確立したことは高く評価できる。しかしながら、開発したMWCXについて、その臨床試用による評価を行い得なかったことは残念である。また、マイクロ波メスの基礎データの取得が十分でなかった点や高い周波数への移行検討が望まれる点など、なお改善の余地があったものと考えられる。将来性の有るテーマであり、成果も上がっていることから、今後も地道な研究を続けられることを期待する。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 抗体選択の自動化システムの開発 柳川 弘志 慶應義塾大学 本課題研究ではIVV法を基盤技術とし、多種の高親和性抗体をin vitroでかつ短時間で作製するための抗体選択の自動化システムの開発を目指した。慶應義塾大学はIVV法による抗体選択の基盤技術の開発、池田理化社は抗体選択と精製ロボットの設計・組み立て技術の開発研究、ゾイジーン社は抗体選択に適した小麦胚芽無細胞抽出液の開発研究をそれぞれ担当した。 C 該当なし 当初の抗体選択自動化システムの開発目標に対して、ユーザーニーズと製作コストといった企業側の戦略変更によりシステム構成を見直し、24連2台のロボットシステムを作製完成させたことから、所期の目標を達成したものと捉えられる。しかしながら、開発した抗体選択自動化システムについて、戦略変更また技術的改善・改良などの成果がニーズとの関係において明瞭ではない。また、共同研究機関の一つであるゾイジーン社の分担成果・内容が本プロジェクトのための最適な成果また結果であるかについて判別できず、実施体制において適切であったか疑問が残る。これらの点より、所期の計画以下の取組と判断される。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 制御性T細胞による免疫制御と治療への応用 珠玖 洋 三重大学 本課題研究は、宿主免疫調節および各種疾患病態形成において、大きな役割を果たしていることが明らかになりつつある制御性T細胞について、その機能操作による治療薬開発に向けた基盤技術確立を目指したものである。 B 該当なし 産学連携における良好な関係により、制御性T細胞の機構解明に向けた基礎的・学術的検討において本研究は所定の成果を上げており、今後の展開においてもその成果が期待できるものと捉えられた。主旨とする制御性T細胞による免疫制御と治療への応用に関して、その目標達成度及び研究成果にやや難が感じられたが、上記成果はこれを補って余りあるものと評価できる。しかしながら、目標の困難さはあるものの、「治療法および創薬への応用展開とトランスレーショナルリサーチを行う」との目標設定の実現に向けて更なる検討と工夫が求められる。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 潜在遺伝子発現システムのデザインと活用 越智 幸三 独立行政法人食品総合研究所 近年、微生物産物をスクリーニングソースとした新規有用物質の探索は困難の度を増している中、本課題研究は遺伝子活性化技術を開発して、微生物利用に新たな道を拓こうとするものである。すなわち、食品総合研究所が有する潜在遺伝子活性化技術とアステラス製薬社の有する大量培養技術と多様なスクリーニング技術を活用・マッチングさせることにより、新規有用微生物産物を発見・生産することを目標とした。 B 該当なし 所期の目標はほぼ達成されたものと判断される。研究成果として学術的にも価値のある複数の新たな知見が得られ、それらの原著論文は有力雑誌に多数掲載されるなど、高く評価できるものである。しかし、官側の基礎研究の成果は十分評価されるものであるが、特許出願が少ないことなど産側の成果には一部不足している点も認められる。これらのことから所期の計画と同等の取組が行われていると評価できる。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 組織再生用バイオスキャフォールドの開発 藤里 俊哉 国立循環器病センター研究所 本課題研究では、再生医療の実現化を目指し、異種生体由来組織から細胞を除去したバイオスキャフォールドの開発を行うものである。すなわち、国立循環器病センターで開発した超高圧処理とマイクロ波照射を用いた脱細胞化技術を基盤に、育種管理されたミニブタの組織を用いた異種脱細胞化組織の組織再生用スキャフォールドとしての応用を目指した。迅速な実用化・製品化のために、臨床応用・応用研究および基礎研究の3つのフェーズごとの研究展開を図った。 C 該当なし 本研究は組織再生用バイオスキャフォールドを応用した大動脈弁・血管の臨床応用を目指したが、大動脈移植において予期せぬ石灰化現象発現により、その解決に時間を要し、期間中に目標とした臨床応用には至っていない。しかしながら、大動脈移植において石灰化を抑制する方法を見出すなど、いくつもの新たな発見を行い、特許を多数出願していることは評価できる。倫理委員会等にて臨床研究を目指した研究計画に承認を得たことから、早期に臨床応用を開始して、実用化に向けた努力を期待する。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 未利用微細藻からの有用科学素材の探索と開発 津田 正史 北海道大学 本研究では、ヤンマー株式会社の大量培養技術を活用して、海洋産渦鞭毛藻や珪藻等の未利用海洋微細藻から産生する有用化学素材の探索と有効利用法の開発を目的とした。 B 該当なし 海洋微細藻からの有用化学物質の探索について当初難航していたが、新規探索法を新たに開発、これを利用することにより、ユニークな化学構造を持つ新規抗腫瘍性物質を多数発見でき、共同研究企業において、関係機関の助力により大型培養装置の開発が達成された。これによって大量培養・新規物質に関する研究が進展した。産学連携における良好な関係が上記研究成果に繋がったものと推察され、評価できるものである。一方、当初の目標である抗がん剤リードの薬効評価および他の微細藻由来の化学成分の有効利用法の開発については未完成である。これらのことから所期の計画と同等の取組が行われていると評価できる。
産学官共同研究の効果的な推進 事後 メタボリック症候群に対する新規治療法の開発 中尾 一和 京都大学 本課題研究は生活習慣の欧米化に伴って我が国でも急速に増加してきたメタボリック症候群の成因に対して包括的なアプローチを行い、日本発信型の新規の治療薬の開発、治療法の創成を目指すものである。代謝疾患関連分野で世界有数の実績を有する製薬企業とタイアップすることにより、ゲノム解析、病態モデル動物の解析と開発、候補低分子化合物のスクリーニング、個体レベルの評価系の確立などの成果を迅速かつ有機的に統合し、効率的に臨床応用へと展開することを目指した。 B 該当なし 社会的に問題となっているメタボリック症候群に対して治療戦略の構築を目指し、新しいアプローチと方向性を示した意義は大きい。研究面でも、インスリン抵抗性、脂肪肝に対するレプチン投与の効果の検証、中枢神経系を介したレプチン抵抗性、そして膜型脂肪受容体GRP40の関与、などについて包括的な研究成果が得られた。しかし、製薬企業との連携を通じた新規創薬への絞り込みが示されていない点、また共同研究の成果の部分が明確に示されていない点などに改善の余地が見られた。これらにより、所期の計画と同等の取組が行われたと評価できる。
重要課題解決型研究 中間 生体成分粘膜アジュバンドによる戦略的予防 木戸 博 徳島大学 本研究は副作用の無い生体成分粘膜アジュバントの発見を基盤に、この問題点を克服した初めての経鼻接種粘膜ワクチンの開発を目的としている。研究期間3年度目までの具体的な目標として、上市されている天然由来のウシ肺サーファクタント製剤をアジュバントとして用い、その開発研究を終了し、4年度目以後に予定する臨床試験実施に備えるとともに、平行してヒト肺サーファクタント類似の人工合成粘膜アジュバントの開発を目指している。(アジュバント:免疫増強剤の一種でワクチンの効果を高める物質) C C サブテーマ1、及びサブテーマ2の取組では、ヒト肺サーファクタントをもとに人工合成粘膜アジュバントの作成に成功しており、その効果を確認している。このことは、残り2年間の課題実施期間内において臨床段階移行の可能性を示しており、また、世界初の経鼻接種粘膜ワクチンの開発につながる可能性もあることから、当該研究は引き続き実施すべきであると考えられる。一方、本課題の当初計画では、サブテーマ3において、すでに上市されている天然由来のウシ肺サーファクタント製剤をアジュバントとして用い、その臨床に向けた基礎研究を行い、4年目以降に臨床試験を実施することとしていた。しかしながら、課題実施後の研究運営委員会において、臨床試験実施に関して慎重な意見が示されたこともあり、臨床に向けた研究を中止せざるを得なかった。当該研究が臨床試験に至る可能性は未だに低く、現時点で本取組を終了すべきであると考えられる。

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