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資料3

中間評価結果

(2) 世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト
1 光・電子デバイス技術の開発
 達成目標について
 超高速・低チャープ量子ドットレーザ及び単一光子発生素子は、次世代のフォトニックネットワークを実現するためのキーデバイスであり、目標設定は妥当であるといえる。
 一方、将来の光通信ネットワークに求められる通信容量と通信速度を明らかにして、目標の達成によって、それにどう応えられるかを示すべきだとの意見もあった。

 目標達成に向けた研究開発等の進捗状況
 量子ドットの形成技術やQ値の高いフォトニック結晶の達成、通信波長帯における単一光子発生素子の実現など、世界トップレベルの成果が、計画を前倒しして実現されている。論文の質量、及びその評価としての受賞や、一般メディアで取り上げられること等によっても、国際的にも類似研究に対して十分な優位性を保っていることが判断できる。

 実施体制について
 民間企業のトップをメンバーとしてアドバイザリーボードを設置している点など、産業界と適切に連携した優れた体制を築いている。

 研究成果の普及への取り組みについて
 開発した量子ドット光増幅器が連携企業からサンプル出荷されるなど、産業界との連携により、成果の実用化が進められており、成果普及への取り組みは十分なされていると判断できる。また、中高生や一般社会人向けの講演会等の、社会への情報発信の取り組みには意義がある。

 人材育成について
 若手研究者および大学院生が研究に参加することで、人材育成が図られていることが認められる。

 今後の進め方について
 産業界と強固かつ適切に連携した実施体制を構築し、予定を前倒しして研究開発を進めてきており、世界トップレベルの優れた成果を実用化への道筋をつけつつ達成している。今後は、目標達成に向けた研究開発を加速し、よりインパクトのある成果を生み出すことを期待する。

2 高機能・超低消費電力メモリの開発
 達成目標について
 国内外の企業や経済産業省所管のプロジェクトにおいては、数十から数百メガビットのスピンメモリの製品化を目指して開発が進められているところであり、本研究課題は1ギガビットの壁を解決し、これらの次の世代のスピンメモリを目指すものであり、達成目標として適切であると判断できる。

 目標達成に向けた研究開発等の進捗状況
 目標達成に向けて確立すべき要素技術を明確に設定して研究開発を進めており、スピンメモリ高速・高密度化に不可欠な高出力素子の実現に向けて、ハーフメタルTMR素子の性能向上により世界最高の信号出力値を得たこと等、国際的にも優位性の十分ある成果を達成しており、着実に研究開発が行われているものと判断できる。

 実施体制について
 東北大学を中心として、アルバック(株)と(株)日立製作所が参加し、東北大学における集中研方式で実施しており、産学の連携は十分とはいえないが行われている。

 研究成果の普及への取り組みについて
 学術論文以外に、新聞等による報道も50件を超えており、社会への情報発信の取り組みはなされていると判断される。

 人材育成について
 博士課程大学院生および研究員として、現在23名が研究開発に参加しており、人材育成は適切に行われている。

 今後の進め方について
 今後も、当初計画の通り、研究開発を継続して推進するとともに、産業界との連携を強めながら1ギガビット級スピンメモリの実現に努力することを期待する。
 なお、要素技術としての成果を適切に実用化していくためのシナリオが不明確との意見もあり、この点については、より一層の産業界からの参画度を高める工夫が必要である。

3 超小型大容量ハードディスクの開発
 達成目標について
 製品となるハードディスクの記録密度向上の速さがプロジェクト開始当初と比べて鈍ってきていることから、確実な実証試験を目指すために、実証する記録密度を、1テラビット毎平方インチから500ギガビット毎平方インチに修正することは、実用化を目指す研究課題の趣旨に沿っており、納得できる。ただし、記録密度1テラビット毎平方インチに向けた要素技術の研究開発は継続し、知財権の確保などに努力することが重要である。
 一方で、連携している企業にリーダーシップを発揮することで、業界のトレンドに迎合せずに、記録密度1テラビット毎平方インチでの実証という当初目標の達成を目指して欲しいとの意見もあった。

 目標達成に向けた研究開発等の進捗状況
 世界最高の記録密度150ギガビット毎平方インチ級の磁気記録媒体の開発に成功し、試作に取り掛かっている等、研究開発は順調に進捗し、世界を先導するレベルに達していると判断できる。
 一方で、学術的成果の論文発表の点では、特に大きなものがまだ見えないので、今後に期待するとの意見もあった。

 実施体制について
 ハードディスクに関する日本を代表する企業(5社)と連携し、東北大学が集中研となった強力な推進体制が整備されている。連携にあたっては、知財権についての規定を整備し、円滑な共同研究を可能としている。

 研究成果の普及への取り組みについて
 連携企業を通じた研究成果の産業への貢献が明確であり、ハードディスクの高密度化には大きな需要があるので、本研究開発の成果には大きな経済的波及効果が期待できる。
 一方で、成果の製品化には期待をするものの、従来方式とのコスト比較に関する見通しが提供されると、経済効果について納得を得やすいとの意見があった。

 人材育成について
 人材育成は十分になされていると認められる。しかし、産業界においてはこの分野の人材は不足していることから、他の大学との連携強化等の方策により、人材育成の更なる努力を期待したいとの意見があった。

 今後の進め方について
 今後は、記録密度1テラビット毎平方インチを目指した要素技術開発の努力を継続しつつも、記録密度500ギガビット毎平方インチでの確実な実証に重点を置いて研究開発を進めることを期待する。

4 次世代モバイルインターネット端末の開発
 達成目標について
 ユビキタスネットワーク社会に向けて、アクセス技術としての無線端末技術はますます重要であり、その高速化、小型化を目指すことは妥当である。また、目標達成に向けた計画が、学会(IEEE)における標準化動向に沿ったものになっているのは適切である。
 一方で、達成目標が多様なので、LSIを開発し、それを小型化することまでは期間内には困難ではないか、との指摘もあった。

 目標達成に向けた研究開発等の進捗状況
 60ギガヘルツRFIC、5ギガヘルツIFIC、FFT回路LSIを開発し試作するなど、研究開発は、計画に沿って着実に進められていると認められる。
 一方で、目標達成に向けて、どのような成果があがり、どの程度進捗しているか、資料および報告からは具体性を持って示されなかった、との指摘もあった。

 実施体制について
 産業界と連携し、適切に役割分担して開発を進めており、また、大学内にLSI設計環境を整備し、海外企業をファウンドリとしてLSIを開発していることは、評価できる。
 一方で、参加企業との間で、知的財産権等の成果の所属が整理できているのかあきらかでない、との指摘もあった。

 研究成果の普及への取り組みについて
 プロジェクトの研究開発成果を活用して、学会(IEEE)における標準化作業(IEEE802.11n)に貢献し、標準化提案をしていることは評価できる。
 一方で、標準化活動のために学術的成果の発表が十分には行われていないが、特許出願および標準化活動がそれに見合うものとなっていない、また、第4世代移動通信(4G)開発への貢献が不明であるとの指摘もあった。

 人材育成について
 特に民間企業の若手開発者を含めた人材育成がなされていることは高く評価できる。

 今後の進め方について
 着実に研究開発が進められているようであるが、研究成果の社会および学術的な発表については、更なる努力が求められる。
 今後は、標準化に向けて達成すべき目標とその実現のためのアプローチを明確にしたうえで、三次元実装技術の実現による小型化を進めると共に、特許出願及び標準化活動の活発化に努力すべきである。

5 戦略的基盤ソフトウェアの開発
 達成目標について
 計算科学は極めて重要な分野であり、高度なシミュレーション技術は、製造業に必須なものである。実用的なシミュレーションソフトウェアを作り、流通させると言う目標は、大きな社会的効果が期待され、極めて重要である。

 目標達成に向けた研究開発等の進捗状況
 計画に沿っていくつかの有用なソフトウェアが開発されており、プロジェクトは順調に進捗していると評価できる。特に、バイオナノ関係のソフトウェアでは、世界最先端の成果が得られている。
 一方で、成果がそれぞれのソフトウェア毎にばらばらであって、プロジェクトを一体的に進めることの利点が見えない、論文発表による学術的貢献が不足している、との意見があった。

 実施体制について
 普及のための改良からサービス活動まで、事業化を展望した体制が産学の連携により構築されて、今後の類似プロジェクトにも非常に参考になる知見が多く得られており、高く評価できる。

 研究成果の普及への取り組みについて
 公開したソフトウェアのダウンロード件数(5千件以上)は十分であり、また、産業応用推進協議会が設立されるなど、産業界へ成果を移転する体制を強固に立ち上げつつあると判断できる。今後も、産業応用推進協議会との積極的な活動を望む。
 一方で、ソフトウェアの社会的な活用に向けては、産業界とのさらなる連携の努力が必要、との意見もあった。

 人材育成について
 人材育成の努力がなされていることは認められる。さらに、情報系の大学院生を研究開発に参加させ、ソフトウェア工学分野の優秀な人材育成にも寄与することを期待するとの意見があった。

 今後の進め方について
 成果であるソフトウェアの実証について、まだ一部の分野での一部の事例だけにとどまっており、今後、実証を進めて実用性を明らかにしていくことが求められる。その際、どこか一分野だけであっても、世界的に飛びぬけたインパクトのある成果を期待する。また、普及への取り組みとして、公開ソフトウェアについて、ダウンロードした利用者からのフィードバックを得るための努力、および、グローバルな普及に向けた努力が必要である。
 また、そのためにも、ソフトウェア工学等の他分野、他プロジェクトや産業界との連携を強化する必要があるとの意見があった。

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