<大学院評価の目的と方向> |
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学習者をはじめとする社会的な信頼を保持し、国際的な通用性、信頼性のある高等教育の質を確保するための新たな高等教育システムを確立していくことが重要な課題となっており、このような観点から、これまで自己点検・評価や認証評価など、大学等の質の保証に関する各般の制度が導入されてきた。
今後は、事前評価(設置認可制度)と事後評価(認証評価制度など)の双方の適切な役割分担と協調の確保等を通じて、全体として大学の質を保証する大きな枠組みを確立していくことが重要である。とりわけ、事後評価については、大学関係者等の協力を得ながら社会に早期に定着させ、実効性ある評価へと発展・充実させていくことが急務となっている。
また、今後、事後評価の制度については、
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自己点検・評価 |
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認証評価 |
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評価団体の適正さを担保する仕組み |
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の三つの仕組みにより、大学院の特性に応じた適切な評価が多様な観点から行われる体制を整えていくことが必要である。大学院評価は、大学院の教育研究水準、組織運営の一層の向上・改善に資することを目的とするものであり、各大学院におけるこれまでの教育研究活動が的確に評価され、これにより、各大学院の教育研究活動がより一層効果的・効率的な形で発展していけるようなものとする必要があり、もとより、評価自体が自己目的化することがあってはならない。
これらを踏まえ、将来的には、認証評価について、大学全体を組織体として評価する「機関別評価」に加え、大学院教育の専門性に沿った「専門分野別評価」を導入していくことが適当である。その際、大学院の専門分野別評価は、各大学院が自主的・自律的に設定した課程の目的に即して体系的な教育内容・方法が構築、実践されているかどうかを評価・改善していく考え方が基本となる。また、専門分野別評価の発展を図るに当たっては、様々な自発的展開が期待されるが、現状に照らして、まず、主として大学評価の取組の基本である自己点検・評価において、専攻単位を基本とする専門分野別評価の促進とその定着を図りながら、専門分野別の第三者評価への基盤の確立等を図っていくことが適当である。さらに、専門分野別事後評価システムの運用に当たっては、例えば、博士課程(後期)については、設置認可申請の際に行われるような教員個人の教育・研究指導能力についての評価を行うことも有効であると考えられる。
現在、例えば、日本技術者教育認定機構(JABEE)が工学系の学士課程を中心とした技術者教育を国際的通用性も考慮しつつ評価・認定する活動を行っているところであるが、今後は、大学関係者や学協会等により、大学院の教育の課程を対象とした専門分野別第三者評価を行う機関が形成されていくことを強く期待する。また、特色ある大学院教育を展開する場合など、統一的な第三者評価になじまない場合も考えられる。そのような場合には、当該大学院の特色、国際水準の担保の両立を実現する観点から、当該大学院が独自に各国の大学院の教員を含めた外部評価委員会を設置することなども考えられる。さらに、既に制度的に導入されている専門職大学院を対象とした認証評価機関の展開状況や独立行政法人大学評価・学位授与機構における蓄積等も踏まえつつ、国としても専門分野別第三者評価の形成・導入に関する支援方策を講じていくことが必要である。
なお、大学院における研究活動における評価の質の向上の観点からは、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成17年3月29日内閣総理大臣決定)の趣旨を適切に反映した評価を行うことが適当である。
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<実効性ある大学院評価の展開に向けた関係機関の取組の推進> |
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国、大学及び評価機関は、実効性ある大学院評価の展開に向けて、従来の取組に加えて、今後、主に以下のことに取り組むことが求められる。
【国の取組】 |
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大学院教育の質を確保していくため、以下の条件整備を実施していくこと |
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大学院の専門分野別自己点検・評価の促進 |
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大学関係者や学協会等により大学院の専門分野別第三者評価を行う機関の形成・導入に関する支援 |
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専門分野別評価を行う評価団体の適正さを担保する仕組みの検討 |
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教員組織の在り方について、欧米の大学の状況等も踏まえ、例えば教員の学位保有状況などを含め、事前及び事後を通じた評価の視点やルールの明確化を検討 |
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国公私立大学等を対象とした競争的に配分される資金制度について、それぞれの資金制度の目指す目的に応じ、その審査・評価に当たって大学院の専門分野別自己点検・評価などの結果を活用していくこと |
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大学関係者をはじめ広く国民を対象として、大学の質の保証に関する趣旨、重要性について、より積極的に説明責任を果たしていくこと |
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【大学院の取組】 |
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自己点検・評価や第三者評価を自らの教育研究活動の改善のサイクルの中に明確に位置付け、また、評価を行う責任体制を明確にするとともに、必要な事務体制を確立していくこと |
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評価に必要と考えられる情報(例えば、定員充足率、教育・研究指導の状況、学位授与率、学生の経済的支援の状況、就職先等)を、各大学院の自己点検・評価の項目等を踏まえ、活用しやすい形でシステム化していくこと |
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【評価機関の取組】 |
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評価項目の不断の見直しを行うとともに、学位の国際的な通用性、信頼性を確保する観点に立って評価を行うこと |
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必要に応じて評価結果に対する大学の改善状況をフォローアップしていくこと |
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社会に対して評価結果を分かりやすくかつ積極的に公表していくこと |
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<大学院の専門分野別自己点検・評価の促進> |
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各大学院の課程の目的が明確に示されるよう、今後、大学院設置基準に関係規定を新たに置くことが適当である。これを踏まえ、各大学院において教育の課程を編成する基本となる組織である専攻単位で課程の目的に即した教育研究活動の状況を点検・評価する専門分野別自己点検・評価を促進していくことが適当である。その際,点検・評価の項目については,現在行われている機関別自己点検・評価において各大学が設定している項目などを踏まえつつ,専門分野の別,新設・既設の別,通学制・通信制の別等の実情に応じ,各大学院の判断により適切な項目が設定されることが基本である。点検・評価結果については,各大学院が積極的に社会に公表し,社会の評価を受けることなどを通して,各課程の教育内容・方法の継続的な見直しや改善を図り,自らの教育研究水準の一層の向上に努めていくことが必要である。さらに,これらの効果をより一層確かなものとするために,当該点検・評価結果について,各大学院の判断により,外部検証を行っていくことが望まれる。
大学院の専門分野別自己点検・評価は,大学全体の教育研究活動の状況とも密接な関連を持つことから,基本的には大学全体を組織体として点検・評価する機関別自己点検・評価の前段階として実施し,効率的でより充実した点検・評価とすることが望まれる。 |
<大学院教育の質に関する積極的かつ有用な情報の提供の促進> |
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大学院の教育の質に関しては,大学院への進学希望者,大学院修了者の雇用や共同研究を実施する企業などの大学院教育の直接の受益者等から情報提供が求められており,自己点検・評価結果等を活用し,国際的にも分かりやすくかつ積極的に公表していくことが重要である。このため,各大学院(専攻等)の専門分野別自己点検・評価などの結果に関する情報,設置認可の際の課題,人材養成の目標(課程の目的),教育内容・方法,教員組織,学位の種類,学生の修了後の進路,学生への経済的支援の内容などの多様な項目のうち,それぞれ利用者の視点も踏まえつつ,専攻分野別に集約・整理し,大学院教育の質に関する情報として,公表していく取組が望まれる。
なお,自己点検・評価の具体的項目については,各大学が上記の考え方を踏まえ,策定するものであるが,例えば,以下のような視点が考えられる。
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