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中央教育審議会大学分科会

2004年6月17日 議事録
中央教育審議会大学分科会 制度部会(第9回)次第


1 日時: 平成16年6月17日(木曜日)14時〜16時

2 場所: 経済産業省別館(10階)1028号会議室

 議事
(1) 評価機関の認証について
(2) 意見発表
1 短期大学関係【関根臨時委員】
2 高等専門学校関係【四ツ柳専門委員】
3 専修学校関係【中込専門委員】
(3) その他

 配付資料
資料1   制度部会(第8回)議事要旨(案)
資料2-1   認証評価制度の概要
資料2-2   評価機関の認証に係る審議の進め方等について(案)
資料2-3   認証評価機関の認証について(諮問)(PDF:15KB)
(参考)財団法人大学基準協会の行う評価の概要等について
資料2-4   認証基準と申請内容との対比表(財団法人大学基準協会)(案)
資料2-5   評価基準と大学設置基準等との対比表(財団法人大学基準協会)
資料3   短期高等教育の将来−準学士学位課程の設定を期して−【関根臨時委員】
資料4   高等専門学校の在り方−高専教育の現状と課題−【四ツ柳専門委員】(PDF:136KB)
資料5   専門学校の高度化の現状と今後の課題【中込専門委員】
資料6   大学分科会制度部会に関する論点例
資料7   大学分科会関係の今後の日程について

参考資料1   英国高等教育制度検討委員会(「デアリング委員会」)報告について
参考資料2   欧州における高等教育に関する動向について
参考資料3   「国境を越えて教育を提供する大学の質保証について」(審議のまとめ)(PDF:34KB)

机上資料)
 制度部会関係基礎資料集
 高等教育関係基礎資料集
 文部科学統計要覧(平成16年版)
 大学設置審査要覧
 教育指標の国際比較(平成16年版)
 大学審議会全28答申・報告書
 中央教育審議会答申「大学等における社会人受入れの推進方策について」
 中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」「大学院における高度専門職業人養成について」「法科大学院の設置基準等について」
 中央教育審議会答申「新たな留学生政策の展開について」
 中央教育審議会答申「薬学教育の改善・充実について」
 科学技術・学術審議会人材委員会第1次提言
 科学技術・学術審議会人材委員会第2次提言

5 出席者
(委員) 岸本忠三委員(部会長)
(臨時委員) 天野郁夫、黒田壽二、島田Y子、関根秀和の各臨時委員
(専門委員) 香川正弘、佐藤東洋士、高木不折、舘昭、中込三郎、福田益和、森脇道子、四ツ柳隆夫の各専門委員
(文部科学省) 遠藤高等教育局長、加茂川私学部長、清水高等教育局担当審議官、徳永高等教育局担当審議官、合田高等教育企画課長 他

 議事
(1)  評価機関の認証に係る審議の進め方及び申請内容の概略について事務局より説明があった後、申請機関である「大学基準協会」から更に詳細な説明があった。その後、質疑応答が行われた。

(○:委員、□:申請者)

【大学基準協会からの説明及び質疑応答】

 大学基準協会は大学の質的向上及び大学教育の国際的協力に貢献することを目的として昭和22年に設立され、昭和34年に財団法人化した。現在、307校が正会員、285校が賛助会員となっている。まず加盟判定審査を行い、正会員になった大学に対してピアレビューを実施するという形で平成8年から現在までに133件の総合評価を行った。勧告・助言・参考意見を付した上で結果を公表し、問題があった場合は、改善報告書を3年後までに提出させている。
 今までの実績を踏まえ、学校教育法や大学設置基準等に基づいて、大学基準協会の評価基準として15項目を設定した。大学設置基準等に規定されていないものとして、例えば、定員の未充足率等も評価項目に入れている。また、審査には大学関係者以外も参加する予定である。

 大学から提出される主なデータには「点検・評価報告書」、「大学基礎データ」、「点検・評価報告書における主要点検・評価項目記載状況」などがあり、他に補足資料を想定している。これまでの評価実績を基に把握した現在の大学の水準を定量的に評価するための「大学基礎データ」と理念・目的等を評価するための「点検・評価報告書」の二つをベースとして評価を行うことを考えている。
 実際の評価にあたっては基準協会で定めている「大学基準」、「学士課程基準」、「修士・博士課程基準」に則して評価を行う。複数の学部等を持つ大学に関しては、「全学分科会」で大学全体を、「専門分科会」で学部等を、個別に評価する。また、単科大学等に関しては「大学分科会」で評価することにしている。他に「大学財政評価分科会」を置くこととしている。各項目の達成度については、A、B、C、Dで評価し、判断の基準は予め公表することにしている。総合的には、「可」、「否」、「保留」で判定する。

委員  まず、大学基準協会の会員になるための評価を行い、その後会員に対して再度評価するということか。会員以外は評価しないということか。

申請者  加盟判定の結果、大学基準協会の基準に適合した大学に対して相互評価を行う。

委員  複数の認証評価機関ができた場合、大学は一つの認証評価機関から評価を受ければ良いので、会員が少なくなり収入が減少することもあり得るのではないか。

申請者  現段階で即答はできないが、例えばロースクールなど他の評価の準備も進めている。そういったことも含めて総合的に考えていきたい。

委員  現在、評価結果は公開しているか。

申請者  これまでは、基準協会としては公開していなかったが、大学に結果を伝え、大学自ら公表するよう勧めていた。平成16年度以降は公開する。

委員  現在の会員数は。

申請者  正会員が307校(国立41校、公立23校、私立243校)、賛助会員が285校(国立45校、公立36校、私立204校)である。賛助会員とは、大学基準協会の趣旨に賛同していただいている大学で、評価は受けていない。

委員  「否」や「保留」の評価結果が出ても、大学名を含めて公表する予定か。また、現在既に会員になっている大学は既に認証評価を受けたことになるのか。

申請者  評価結果の公表についてはその予定である。また、現在既に会員になっている大学については、会員ではあるが認証評価を受けたことにはならない。

(2)  関根臨時委員より「短期大学の現状と課題について」、四ツ柳専門委員より「高等専門学校の現状と課題について」、中込専門委員より「専門学校の現状と課題について」それぞれ資料に沿って説明があり、その後、質疑応答が行われた。

【関根臨時委員からの説明】

関根委員
 短期高等教育に限らず4年制大学を含めた高等教育全体について述べたい。現在の学校種による区分から、学位と結びついた教育課程による区分に移行すべきではないか。特に短期高等教育に関しては、現在は三つの学校種別に分かれているが、その区分は重要な中心部分において意味を見失いかけてきていると思う。
 今までは学校種別による棲み分けがなされ、その中で各機関が自立して存在していた。棲み分けが一定の意味を持ったのは、1就学目的、2学習時間、3学習成果、4職業教育等にある程度沿っていたからである。特に短期大学については、女性の高等教育の知的生産を担うものとして理解されてきた。しかし、このような棲み分けを成り立たせていた基礎的な条件は今日では厳しい要求・視点にさらされ、再検討せざるを得ない状況になっている。高等教育のユニバーサル化や職業教育の細分化等が進み、例えばデジタルコンテンツを教育するのは専門学校が適当なのか、大学が適当なのかという学校種別に基づく考え方がどの程度意味を持つのかが厳しく問われるようになってきている。
 棲み分けとは本来的には競争排除のシステムだが、ここ数年の中央教育審議会における審議は市場原理に基づく競争が前提となっている。そういった意味では、競争を排除した安定的な従来の棲み分けから離れ、相当ダイナミックな新しい棲み分けに移行すべきではないか。それには、Student-Learning-Outcome(SLO、学習成果)による棲み分けを構築すべきだと思う。SLOを構成する学習目的に応じた学位課程の設定が重要である。学習目的は、General Purpose、Academic Purpose、Professional Purpose、Specific Purposeなど多様な要素があるが、これらを学校種別の枠組みの中に位置づけるのではなく、学位を取得するための教育課程の編成の中に特色・成果という形で汲み上げていき、その成果が一定の学位と結びついているという方向に進むべきではないか。
 現在、短期大学は称号として準学士を与えることが認められている。しかし、既に準学士学位課程としての基本的な要件は整っているのではないか。そういう意味では、学位教育課程構想の先駆けとして、短期大学の教育課程を準学士の学位教育課程として位置づけることも考慮する必要があると思う。
 高等学校で学習する事柄は幅が比較的狭く、必ずしも生徒のアイデンティティを構築するに至らない。それを、幅広く、自分に自信がもてるところまで引き上げるのが大学教育であり、そのためのプロセスを学位課程と捉えることができるのではないか。
 学位教育課程を持つためには機関として自己再組織性が必要である。機関が教育課程を構成する諸要素を備えていて、あわせて再編成する力も持っていることが求められる。その自由な編成の中で良い意味での競争が行われるのではないか。そういう方向を目指すべきである。

【四ツ柳専門委員からの説明】

 高等専門学校は北は北海道から南は沖縄まで広い領域に分布し、多くの場合は県庁所在地を外して設置されている。高等教育過疎地に位置しているといってもいいと思う。高等教育を受ける機会を得にくい家庭に育った優秀な人材を広く全国で集め、教育する機能を果たしてきている。
 高度成長期には中級・中堅技術者の育成を主たる目的としており、昭和40年代の高度成長を支える非常に大きな力となった。戦後日本が設置した高等教育機関の中で最も成功した学校種の一つといわれている。高度成長期が終わり、日本がフォロアーからフロントランナーに変化した段階での高等専門学校の位置付けをどう考えるか随分議論されたが、既存の「実践力」に加えて「創造力」の育成が求められる、との認識が強くなった。ハイテク化や高度化が進む中で多様なエンジニアが要求されており、「創造力」といっても学術的な創造力だけではなく、いわばエジソンのような人材が求められているのである。そういった中で、高等専門学校の目指す技術者像を挙げれば、「社会と技術分野に対する複眼的視野と、複合領域のデザイン対応能力を持ち、最も自信のある専門工学領域の基礎的素養をもつ創造的エンジニア」である。
 15歳人口が減少する中で、高専の志願者は1990年以降なだらかに増加してきている。こういったことからも、高専が社会から受け入れられ、学生や保護者から見て非常に魅力的な学校種になりつつあるといえるのではないか。
 高専に入学する学生は中学校時代の成績が上位と中の上であることがほとんどである。非常にレベルの高い学生を預かっており、更に専攻科はその上位10%程度が進学するということで、高品質の学生の集まりといえる。JABEEの認定も多数の高専が受けている。
 高専の学生は15歳で入学して本科を修了する。更にその中の10%は専攻科に進み学士を目指す。この流れの大きな特色は、高等学校から大学初年にかけての時期に、一貫した早期創造性教育を実施できる点である。
 高専の本科では1〜2年次は混合学級を構成し、3〜5年次で専門に分かれて勉強する。その先にどんな進路でも選べるように、基盤を育成することを目指している。これに加えて専攻科が設置され、大学評価・学位授与機構による学士認定が可能となっている。
 最近の動きとしては地域社会との連携に更に力を入れていることもあげられる。高専機構法に「機構以外のものとの連携」という規定が入ったこともあり、今後様々な取組を進めていきたい。
 課題としては専攻科の学生に対する大学評価・学位授与機構による学位授与の方法がある。年度内に学位を授与されるためには、10月頃に論文を提出する必要がある。大学の卒論が1月頃を提出時期とされていることを考えても、改善を検討いただきたい。
 また、単位の基準についても大きな不都合がある。大学相当部分の単位が高専では30時間で1単位となっており、これを国際基準の45時間へ変更する検討を行うべきである。

【中込専門委員による説明】

 専門学校は職業教育機関であると同時に、高等学校卒業後の進路として高等教育の一翼を担っている。最近では大学や短期大学を卒業した後に専門学校に入学する学生が増えてきており、全入学者の約1割を越えている。社会で必要とされている人材像を捉えた教育カリキュラムを設定していることが理由ではないか。専門学校の教育の基本は難しい議論よりも、若者達に生きる力や働く喜びを与えることにある。
 まず、専門学校の現状を述べる。学校数は現在約3,000校で、入学者数は毎年増加しており、新規高卒者の約2割が専門学校に進学している。就職率は約77%で、特に就職した者のうち専門学校で学んだ分野に関連した業種に就職した率は90%を超えている。専門学校に入学する学生はかなり明確に自分の職業観をもったうえで進学を決めているといえる。
 次に、専門学校における高度化の現状について説明する。専門学校は2年制や1年制が基本といった認識があるが、今はむしろ4年制の学科が大変増えている。つまり2年間の専門課程の勉強だけでは不足で、より高度な職業教育が求められてきているというのが現状である。しかし、現在は4年間専門学校で学んでも、卒業者が大学院への入学資格を認められるには個別審査が必要となっている。もう少し道が開けたら良いのではないかと思う。
 専門学校は昭和51年に発足して、平成6年に専門士の称号の付与が可能となった。そのほかにも様々な法的整備がされ、専門学校の高度化もその中で図られてきた。この4月に成立した私立学校法の一部改正では、大学等と全く同様の財務情報等の情報公開義務化が規定された。
 最後に、専門学校の今後の課題について述べる。今述べたように、修業年限が4年で高度な職業教育を行う学校が増えてきたが、これは特に職業教育に特化した長期高等教育機関と言えるのではないか。4年制専門学校及びその卒業生に対して制度的な位置付けの明確化が必要だと思う。現状の制度では2年制専門学校を卒業しても、4年制専門学校を卒業しても同じ「専門士」の称号しか与えることができず、より高度な職業教育を受けた者に対する制度的な配慮は十分ではないのではないか。現在2年制専門学校卒業者には大学の編入学資格が付与されているが、同様に4年制専門学校卒業者は大学学部卒業相当と考えても良いのではないか。繰り返すが、今は個別審査によって大学院に進学できるようになっているが、4年制専門学校からそのまま大学院に行けるような位置付けが必要だと思う。

委員  高専は中堅技術者の育成から現在では創造的な人材の育成に方向転換したということだが、同じ教員が教育することでもあり、何が変わったのか。

委員  本科卒業生の約40%が専攻科や大学院への進学を希望している状況である。卒業生の大学院での評判は非常に良い。追跡調査をしたら、大学院修士課程修了時に上位3分の1以内に高専出身者がほぼ含まれていたという例もあった。早期の創造性教育が高く評価されたのだと思う。「高専を卒業した後大学院修士課程を修了した学生が1番信頼できるエンジニアだ」という企業からの評価も定まりつつある。高等学校から引き続いて教育を行う世界でも極めて珍しい事例であり、日本らしい創造的エンジニアの育成ができつつあるのではないか。
 現在高専は大学と様々な連携を進めており、高専の4〜5年次における教育は大学の水準と同等な方が望ましいという要請もある。同時に、高専の中で本科と専攻科を統括したJABEEの認定に対応するシステム設計も可能である。しかし繰り返しになるが、年度内に大学評価・学位授与機構から学士の学位をもらうには10月には卒業論文を提出しないと審査が間に合わないという事態が発生している。大学と比べると3ヶ月ほど早いために、論文の内容が少し迫力に欠けてしまう。実質的な教育の質の改善にもなるし、大学と高専の連携体系のシステム化のためにも、検討頂きたい。

委員  現在、高専の担う分野は工学のみに限定されているわけではない。今後の発展の見通しを伺いたい。
 大学評価・学位授与機構の制度は、本来、学習修了者が申請するものである。それにもかかわらず短大や高専から専攻科を修了した段階で学位が欲しいという要請があったために、少し早く学習成果を提出いただくようにしている。課題があることは理解するが、機構の制度上これ以上対応するのは困難な面もあるのではないか。
 大学評価・学位授与機構は専攻科について認定作業をしているが、同時に評価部門が高専の認証評価を行うことになっている。同じ機関が一つの学校種に対して二回評価をすることになっている。加えて工学部門に関してはJABEEの評価もあり、整理が必要なのではないか。

委員  現在、高専の分野が工学のみに限定されていないということに関しては、商船分野の専攻科が設置されておらず、これを今後どう扱っていくか、まず検討したいと考えている。それから経営など文系に近い学科も含まれているが、これについても専攻科の中で複合的に統括して評価可能な体系を構築したい。ソシアルサイエンスでもテクニカルサイエンスでも基盤の考え方は一つなので、統括の可能性はあるのではないか。
 大学評価・学位授与機構に関しては、防衛大学校など他の大学校と同等の対応をしていただきたい。それには何らかの実質的証明が必要なので、JABEEが一つの材料にならないだろうか。いずれは1月まで卒業研究を行った後、2月に提出しても審査が間に合うような体制ができればありがたい。

委員  現在4年制大学の工学部の卒業者が約10万人、修士課程の修了者が約3万人いる。一方、高専の卒業生は約1万人いるが、進学者が4割を超えており、高専を卒業して直ちに職業に就く者は5〜6,000人である。しかも更に進学率が上昇する方向に進むということになると、高専の本来の役割とは一体何なのかという問題が提起されるのではないか。つまり、専攻科もできて徐々に大学に近くなってきている。加えて学位の授与ももっと簡単にということになると、従来の4年制大学の下に3年間の高等学校があるということとどう違うのか。高専で7年間教育をすることの意味が問われるのではないか。年間約14万人の技術者が育成されているが、そのくらいの数になると一括して議論するのは難しい。その中で高専はどういった特色を出していくのか見えにくくなってきているのではないか。

委員  高専卒業者は多様な進路を選択できるが、必ず本科の教育は経験する。したがって本科で何を教育するかが高専の意義だと思う。高度成長期は専攻科もなく、本科で完成した教育を行い、専門領域の基礎的素養を身につけたエンジニアを育成していた。今は加えて早期の創造性教育のトレーニングをしっかり受けた技術者を育成することを目標としている。その後は、大学進学や専攻科進学など多様なコースを用意している。現在、技術科学大と協力してジョイント大学院のようなものを検討しており、今年の秋から一部動き始める。ただ、やはり1番の柱は本科であり、若い頭脳に対して早期創造性教育を施しファンデーションディグリーを持ったエンジニアを育成するのが高専の大事な役目と考える。

委員  早期創造性は非常に重要だが、逆に高校レベルまでの教養教育が手薄になってしまうのではないか。専門的知識の習得からはじめてしまうと、人間性の涵養が十分でない技術者が育成されてしまう可能性がある。
 また、高専に専攻科を設置したために豊橋と長岡の技術科学大学の存在意義が薄くなっている。両大学の今後を検討する必要がある。高専が非常に重要な技術者の育成機関であるのは間違いないが、あまりにも大学のほうに寄りすぎている印象を受ける。専攻科の先生の中には科研費を取って研究をするために、教育がおざなりになってしまう例もあるのではないか。

委員  専門職大学院などが増えてくると、学部は一般教育の比重が高くなってくる。一方、高専は高校の段階から専門教育を行うという、むしろ逆の方向に向かっている。以前は中堅技術者を育成するという要請があったが、現在は社会状況の変化に伴い専攻科を設置するなど大学により近くなってきており、高専の存在意義が問われる状況になっているのではないか。

委員  確かに本科修了時で相当高い専門的基盤を作ろうとするため、教養科目の教育時間が不足する。そのため専攻科の中に英語や社会学の科目を設定し、バランスを取る工夫をしている。

委員  短大について学校種別ではなく、学位を主とした教育課程に移行すべきという話があったが、それとは別にユニークさ、教養教育を伴った専門性・職業教育は今後も維持したいというふうに理解していいか。
 4年制の専門学校が増加し、大学院で勉強したいという人が卒業生の約20%いるという話だった。しかしカリキュラム等を見ても、専門に特化しており教養の面が非常に薄い印象を受ける。大学独自の判定によって個別に入学資格を与えることは可能だし、医療系などでは専門学校から大学院に入学する者も実際にいる。ただ単純に同じ4年間だから、という問題ではないと思う。むしろ専門学校は職業教育に特化しているところに特色があるのだから、同じ取扱いにすると特色が薄まってしまうのではないか。

委員  4年制の専門学校卒業生全てに大学院入学資格を与えて欲しいとは考えていない。例えば、医療系の場合は、法令で規定されているので、大学、短期大学とカリキュラムが類似している。そして同じ試験を受け、同じ国家資格を得ている。そこまでが一緒で、大学院入学になると違いがでてくる。ある程度オーソライズされている分野に関しては考慮いただけないだろうか。確かに時間が同じだからという問題ではないということは理解しているので、考慮に値するということであれば、これから議論して詰めていかなければいけないと思う。

委員  短大の特性については、おっしゃるとおりだと思う。今回敢えて短大の意義等について取りあげなかったのは、ここはグランドデザインを検討する場であり、総括的に高等教育はどうあるべきかという観点から考えを述べ合う必要があると考えたからである。短大が今の時代になってあたかも無用化したかのような議論が出てくるのは、性別による役割意識が変化する中で、女子の高等教育機関として一定の社会的な役割を果たしてきた短大がその変化に対応しきれなかった面があったからである。しかし、今はどんどん変化してきており、先ほど述べた学位教育課程に基づいた考え方からいっても、短大は既にそういった形を整えてきているといえるのではないか。

委員  社会人受入れと公開講座の現状について伺いたい。

委員  短大の社会人の受入れ割合は現状としては少ないが、今、急速に増えてきている。
 今は多くの人が教育を受け、新しい技術を身につけ自己再生産をしなければならない時代である。そこで、短大の仕事として忘れてはいけないのは、単に新しい職業技術を身につけさせるだけではなく、例えばリストラで職を失った人のセルフアイデンティティの再形成をどれだけサポートできるかなどといった点にも留意する必要があるということである。短大の教養教育はその一端を担うことになるのではないか。

委員  専門学校は多種多様の教育をしているので、各専門学校で社会人向け又は地域の活性化のために無料の公開講座を多数行っている。

委員  専門学校の教育に対して、短大は技能+αという話だった。しかし、学生の変化に伴い高等教育全体の中での短大の位置付けも大きく変わってきているのではないか。技術を効率的に再獲得したいという社会の要望を汲んだ機関の価値が高くなってくると思う。

委員  繰り返しになるが、短期大学は学位教育課程たる実質を既に備えているということが前提ではないか。
 学位教育課程と資格取得のための課程は整理した方がいいと思う。無理に結びつけたら資格教育の意義が失われてしまう。資格教育はもっと自由で、これからの色々な社会的な状況において多彩でなければいけないと思う。資格取得の課程と学位教育課程との違いは、教養教育である。教養教育とはアイデンティティの形成・再形成である。例えば高齢化社会においては介護教育が重要な問題だが、加えて段々加齢化していく中で自分自身のアイデンティティを再構築し、本当の意味で人生を生きることも大変重要である。

 次回の日程
 次回は、7月13日(火曜日)10時から12時30分に開催することとなった。

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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