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千葉工業大学ではキャリア科目については,必修としているのか。
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選択科目である。
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クラス間で授業内容が異ならないようにするために,どのような工夫をしているのか。例えば,授業担当者のFD等,質を一定に保つために苦労していることはないか。
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教職員一丸となってこのプログラムを開発したが,実際に担当できる教員が学内にいないということが,悩みであった。このような内容の授業は,担当者によって大きく内容が異なる可能性がある。我々としては,多くの社会経験を有する方に授業をお願いしたいと考えていた。現在は,受講生を100名ずつにクラス分けをし,さらに,クラスを30名程度のグループに分けて,グループごとに課題を与えるような形で授業を実施している。授業担当者には,経営コンサルタント,心理士,キャリアカウンセラーの資格を持つ者を採用している。
現在の学生は,精神面で大きな問題を抱えている者が多く,また,自分で工夫せず,すぐにあきらめてしまう者が多い。そうならないためにも,学生に対して,解決のための方法論を提示していくことが大切であると考えている。担当教員は,就職委員会等で作成したシラバスに基づき授業を行い,内容にばらつきが出ないよう工夫している。学生が進路を選択する際には,実際に働く姿を見せることで自分に合う職業を見つけ出して欲しいと考えている。この授業は学生のモチベーションの向上を目的としている部分があるが,授業アンケートでも学生は高い評価をしており,授業の効果は高いと考えられる。
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労働組合の責任者の立場から,現在,学校現場と実労働界との連携について,問題意識を持っている。労働界・産業界での経験を踏まえた「労働観」を学校現場に導入することを検討しており,大学に寄附講座を設けた例もある。労働観を学校現場に恒常的に導入できればと考えている。
昨今の経済情勢により,ものづくり,特に地方の中小企業におけるものづくりの力が弱くなっている。学校と社会が連携しなければさらにその力が弱くなってしまう。地方を活性化させる観点からも,実体験を学校現場に取り入れる取組を行っていくべきではないか。さらに,経済面での二極分化が進行している。奨学金制度の拡充も必要ではないか。
ニートの問題については高等教育の問題だけではないのではないか。勤労に対する動機付けを幼少の頃から行う必要があり,初等中等教育段階からの検討が必要と考える。
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企業との連携を深め,テーマを決めて大学のカリキュラムの中にインターンシップを位置づけるべきではないか。愛知県では,国公私立大学の学長懇話会のもとでインターンシップ制度を運用し,実績をあげている。しかし,インターンシップは労働観を感じ,自己を確立させる場としては十分であるが,企業とのマッチングを含め,十分な体制になっていない点に問題がある。
現代社会では,親の背中を見て働くことの意味を考えるという状況になっていない。働く場に触れるという教育を初等中等教育段階から体系的に実施すべきではないか。
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学生支援の範囲の設定について,各大学で違いがあることが意見発表で明らかになったと思う。学生支援の範囲自体が広がってきており,従来「厚生補導」と言われていた時代の考え方では対応できない状況になっている。その上で,3点伺いたい。
まず,学生支援について,どのような組織編制の中で対応していこうと考えているか。特に,日本の大学は部局の力が強いが,部局との関係をどのようにすべきと考えているのか。
次に,学生支援の専門家養成が急務になっている。特に,教員と職員の間を埋めるいわばグレーゾーンの立場に立つ人材が鍵を握っていると考える。この問題について,どのように考えるか。
最後に,カリキュラムの問題について,学生のニーズに合った教育,就職に対応した教育を行うとなれば,現在のカリキュラムを見直す必要が出てくる。その際,教員の協力が必要であり,教員の意識改革がなければ困難であると考えるが,どのようにして教員の意識改革を行ってきたのか。
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我々は教育と学生支援を統合して考えている。これまで,日本の大学は教育が中心にあったが,今後はこれまで不足していた学生支援を充実しなければならないと考えている。特に,学生支援は学生部の仕事ととらえる大学が多いが,我々は教育と学生支援は対等なものだという認識に立っている。しかし,現在の教育水準は堅持する必要があり,学生支援については,エクステンションセンターのような場で,学生の特別なニーズに応えられるように,専門家を配置して行うことを現在検討している。
我々の大学では,本部と部局の連携は比較的うまくいっていると思う。教員が,自らの教育研究のための時間を確保するためにも,専門家を配置することは必要ではないか。また,職員についても,異動があるために,サービスの質を一定に保つことができないとの問題がある。学生サービスのレベルを低下させないためにも,学生支援を専門に行う専門職制度を導入すべきではないかと考えている。
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我々の大学には教務部と学生部があるが,学生支援は両者が一体となって行うべきとの考えから,月に1〜2回程度打ち合わせを行い,情報を共有している。
カリキュラムに関しては,一般教養科目を発展的に解消し「オープン教育科目」を設定した際に,就職支援関連の科目を加えた。
学生支援を専門に担当する専門家の必要性は,我々の大学でも感じており,導入については現在検討段階にある。
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看護系の大学では,他の分野と異なり,比較的目的意識をはっきり持った学生が多い。それは,学生の間に実際に看護の現場に出て実習を行うことが影響しているのかもしれない。しかし,明確な目的意識を持っているにもかかわらず,卒業後1年以内に離職するものが約1割程度いる。これは教育そのものにも問題があるのではないかと反省している。千葉工業大学ではキャリア形成支援プログラムを導入することで,卒業生の動きに何か変化はあるのか。
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同窓会でこのプログラムの受講者にアンケートを実施したところ,「所与の条件の中で,最善の選択は何か」ということを常に考えるようになったとの意見が多かった。自ら選択し,意思決定ができるという点が社会に出てからも役に立っているようである。
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現在,大学卒業者の離職率が約3割だと言われているが,受講者の離職率について調査すれば,このプログラムの効果がわかるのではないか。
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各大学において様々な機能別の相談窓口を設けているが,学生にとっての本当のアメニティは,現在のように効率を重視したものではなく,キャンパス内の熱気や雑踏に包まれている混沌としたものなのではないか。
また,「支援」という立場が強く出ているため,大学が学生を「助けてあげる」という姿勢になっていると考える。しかし,今の学生はどちらといえば,「助けてください」と言われた方が生き生きしていると聞いたことがある。例えば,入学後,早期のうちに学生に対して大学の運営に参加してもらい,役割を与えることが逆に学生支援として有益ではないか。
一方で,大学が様々な学生支援方策を行ったとしても,企業が置かれた社会は厳しく,学生は大学が手厚い支援を行えば行うほど,大学と社会とのギャップに驚くのではないか。大学が企業の論理に近づいていくばかりではなく,企業を大学側の発想に引き寄せることも必要ではないか。
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千葉工業大学での「ベンチャー・モノづくり支援」について,企業の協力をむしろ排除しているとの説明があったが,学生自身が考え,入手した情報のみでどれほどのものができたのか興味深いとともに,それが「ごっこ」になっていないかとの懸念もある。
卒業後に受ける社会とのギャップの大きさが,離職やニートの問題につながっているのではないかとの意見があったが,2007年に迎える団塊世代の大量退職を見据え,優れた技能を持つ退職者の知恵を生かす方法を考えなければならないのではないか。また,OBや地域の組織を活用することで,心のケアやマナーの問題を含め,持っている経験を生かすことができるのではないか。企業もOBの活用については頭を悩ませており,大学と協力することでそういった問題が解決できるのではないか。
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「ベンチャー・モノづくり支援」には専門分野の教員を1名配置し,指導・助言しているので,「ごっこ」になることは防げているものと考えている。
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PFIの手法により,学生寮が建設できるようになったのは良いことである。一方で,PFIを用いた際に,学生の費用負担,特に留学生の費用負担をどうするのかという問題がある。
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国立大学等の授業料その他の費用に関する省令で定められている金額は一律に負担してもらうが,それを超えた付加的なサービスについては,学生に応分の負担を求めることになるだろう。また,留学生の費用負担の問題については,現在も検討中であり,結論はまだ出ていない。
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日本学生支援機構としても,本日発表があったような優れた事例を収集し,各大学に情報提供を行っていきたい。
本日の発表を聞いていて感じたのは,「学生支援」のとらえ方が大学によって様々であり,幅があることである。学生支援を教育研究と切り離す考え方と,両者が一体のものであるとする考え方もあるが,当部会での「学生支援」の範囲はどのように考えていくのか。
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その点も含めて御議論いただきたい。「検討課題例」においては,幅広い意味で学生支援をとらえている。
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広い範囲で様々な意見をいただいた上で,当部会としての学生支援の範囲を見定めていきたい。
学生支援を手厚くするほど,社会とのギャップとの大きさに驚くのではないかとの発言があったが,現在の日本のシステムが続く限り状況は変わらないのではないか。つまり,日本においては学生について現役志向が強い点が,欧米とは大きく異なる。欧米では学生の年齢構成が幅広く,人間的にも成熟してから入学してくる学生が多くいる。現役志向により,日本では学生が成熟しないまま,社会に出てしまっているのではないか。その点についても検討しなければ,本日のテーマである意欲ある学生を社会に送り出すことはできないのではないか。
また,PFI方式で学生寮を建設できるようになったことは良いことだと思う。奨学金の拡充も困難で,GDPに占める高等教育費の割合が減少し家計負担が増加している中で,安価な施設を提供できることはそれ自体が学生支援の一種である。欧米では,学生の休業期間に施設を民間に貸し出し,対価を受けているという事例もある。日本でも同様なことができるよう検討すべきではないか。
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