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大学の教員組織の在り方に関する検討委員会(第7回)議事録・配付資料

1 日時   平成16年8月24日(火曜日) 10時〜12時

2 場所   三田共用会議所D,E会議室(3階)

 議題
(1) 審議の中間的な整理(案)について
(2) その他

 配付資料
資料1   大学の教員組織の在り方に関する検討委員会(第6回)議事要旨
(※第6回議事録・配付資料へリンク)
資料2   審議の中間的な整理(案)
資料3−1   新しい大学等における教員組織の在り方について(たたき台案)
資料3−2   制度改正のイメージ図(たたき台案)(PDF:33KB)
資料4   特に御審議いただきたい事項
資料5   条文のイメージについて(たたき台案)

参考資料   大学の教員組織に関する関係条文等
(※第6回議事録・配付資料へリンク)

(机上資料
 教員組織の在り方に関する基礎資料
 高等教育関係基礎資料集
 大学審議会全28答申・報告集
 大学設置審査要覧
 教育指標の国際比較(平成15年版)

5 出席者
(委員) 黒田玲子委員
(臨時委員) 安西祐一郎(安西座長)、天野郁夫の各臨時委員
(専門委員) 伊藤文雄、川村正幸、福田康一郎、森脇道子、山本眞一、四ツ柳隆夫の各専門委員
(文部科学省) 結城文部科学審議官、石川高等教育局長、泉高等教育局審議官、村田科学技術・学術統括官、惣脇高等教育企画課長、小松大学振興課長、杉野専門教育課長 他

 議事
 事務局から資料についての説明等があり、その後審議の中間的な整理(案)についての討議を行った。

(○:委員、●:事務局)

委員  本日のたたき台案の資料について、3点ほど申し上げたい。
 1点目は、助手の職務の内容は非常に多岐に渡っているので、新助手と新職に分けることについては賛成なのだが、新助手は現行の助手制度からすれば格下げになり、教育研究支援職という新しい役割になるという点。教育研究支援職というのは従来の助手以外にも様々にあり、事務職員の中にも教育研究支援職的な職員や専門的な職員がいるのではないか。新助手が教育職ではないということになると、事務職の中のそういう専門的な職員と新助手との関係まで含めて考える必要があるのではないか。
 2点目は、新職の規模はどのくらいの規模になると考えたら良いのかという点。なぜこの規模が問題かというと、これまでの様々な統計データにも現れているが、若手研究者が大学の中で得られるポストの数が急減している。若手研究者養成をやろうと片方で言っていながら溜まり場が全然無い。そのため、新職がどのくらいの規模になるのかということが日本の大学の将来にとって非常に大きな意味をもってくるものになると思われる。単に現行の助手を2つにわけて名称を変えるということでは済まない問題があるのではないか。
 3点目は、現在の助手の大部分を占めている医学部の助手問題がたたき台のように2つに分けることで解決されるのかという点。現行の医学部の助手が、新職と新助手のどちらになるのかで随分と話は違いますし、医学部はまた別の考え方をする必要があるのかどうかよく分かりませんが。

委員  一番目の点だが、事務職であった教育研究支援職員も含めて新しい新助手を作るべきなのか。また、俸給表上の扱いはどうなるのか。

事務局  俸給表等については、このたたき台の案は、助手の方については、それぞれの職務の実態に応じて、2つに分けてはどうかというものなので、どちらに分類されようと基本的には今の助手のままかと思う。ただし、教員の給与については現行制度上大学の判断ということになるので、各大学の方で最終的に決めていただくことになるかと思う。

委員  現在の助手自体の中に多様なものがいることを前提にした、これまでの議論から、まさにこういう形になるだろうと思う。ここでいう新職をどれほど確保できるのかということは、各大学で考えなければならない問題ということになるだろう。他方現実に助手という身分になっている者が多数いるという中で、学校教育法上置かなければならないとするかどうかという面からみれば、一応置くという形にするのが本当だと思う。今度の新助手というのは場合によっては将来的にかなり削減されていく可能性は十分あるのだろうと思う。そういった展望からみた場合には、学校教育法上置かなければならない職とすると、また同じような問題が残されてしまうという可能性がある。
 それから、医学部の助手という問題をどう取り扱うのかということについては、逆にいうと、新助手がどういう身分上の位置づけになるのかという問題と非常に関ってくると思う。現在の助手のついて、教育職という形で位置づけるということはやめるべきではないかというのが医学部以外の多くの事務的な助手のことを考えると、むしろあるのではないか。そういうような考え方から見ると、新助手は事務職員と同じかということになり、やはりそこには割り切れない部分が出てくる。そのため、いわゆる教員でもない、事務職員でもない、第3のカテゴリーという形で助手を捉えなおす必要があるのではないか。

委員  私のイメージでは、従来の教授、助教授、講師、助手とこれは1つのラインで教育研究を行い、今度の新職はスタッフとして、例えば大型の研究の中である一定の期間プロジェクトに従事するという形かと考えるが。

委員  私の理解では新職は教育職であって、基本的に教授や、ここで言う准教授に並ぶ職であるというイメージを持っている。ですから研究プロジェクトに従事する任期付きの研究員というイメージとはちょっと違う。

事務局  大学の教員組織に関する関係条文等という参考資料の中に現行の職務の構造が書いてあるが、学校教育法第58条第2項で例示を上げながらその他の必要な職員を置くことができるとなっている。大学についてはその教育研究に対して様々な職務を各大学は想定することができるが、大学の有する公共性等の目的に照らすと、教員は大学における教育研究の1つの中心的な塊であって、それ以外に例えば任期付きの研究員みたいな者を教員とは別の概念で置くなどということは当然制度が想定していることであり、制度全体としては、そういうようなことも合わせて分野の違い等に応じた対応できる制度になればということを我々も考えている。

委員  新助手について第3のカテゴリーとするべきではないかという話があったが、教授、准教授、新職というのはこれは職階であるから、この職階の中でプロモートの可能性がある。事務職員の場合には事務職員としてのプロモーションの仕組みがある。新助手を支援職として作った場合には、新助手という新しい仕事のカテゴリーの中でのプロモーションなどはどうなるのかという問題は当然生ずる。新助手だけはそれがないというと、非常に不満を生ずる。だから、新助手を独自の専門職として認めて、その中で新しい職階制なり給与体系を入れない限り、学校教育法上の職として新助手を作ってみても問題の解決には必ずしもならない。
 それから、新職というのはテニュア・トラックに入っている人たちであり、それもとても大事な問題になってくる。

委員  大変現場の意見が入っていて、よくまとまって問題点がクリアになってきていると思う。
 さらに問題点を明らかにするためにいくつかのポイントを申し上げたい。
 1つは、大学における教育という言葉が資料4に書かれているが、ここでいう大学には大学院も含まれると理解すべきだと思うし、そのことをはっきり書いた方が良いと思う。学生に実験をさせたり、それよりもっと重要な次代を担う若手研究者の育成、或いは大学院教員の育成はおそらく大学院生の研究指導にかかっている。大きなテーマを与えてディスカッションをするということではなくて、日常的なケアのようなことが必要だということ。それを誰がやるのかということは今の資料からあまりクリアではない。大学院生を指導するとなるとある程度の学位を持っている人が必要であろう。しかし、日常的なケアをすることになりそうな新助手に修士以上の学位を求めるとなると新職との境が曖昧になる。その辺のやはり次世代の若手研究者と大学院教員を担うという役割をどこがやるのかといったことも考えてみる必要があるということが第1点。
 それからもう1つはキャリア・パス。どうしても昇進というものはある。ジョブディスクリプションと海外では必ず言うのだが、日本で言うと職能、職務内容と言われるようなものが今のままでははっきりしていない。それはテニュア・トラックと結びついていて、例えばアメリカだとプロフェッサー、それからアソシエイトプロフェッサーはテニュアであって、その下のテニュア・トラックに入っているアシスタントプロフェッサーというのはテニュアではない。切磋琢磨してテニュアのポジションを取るということになっている。日本の場合にどれがサーマルで、サーマルでないか。その辺のこともわからない。今のプロテスクリプションを見ていると、教授、助教授、新職は何か皆同じように見える。一体何が違うのかというところははっきりしておくべきではないか。日本は教授職が海外に比べて異常に多いという統計があった。実はこの傾向はますます多くなるだろうと思っている。特に国立大学の場合、法人化して自由な裁量になったので、実は給与の問題があって、今までは上げられなかった職階が、給与はそのままでも職の名前だけ上げることができるようになった。日本では昇進についてはっきりとした評価というものがどうしても働かないという風土があるので、今まで以上に教授というものが多くなって、准教授とか新職、新助手なんて本当に形骸的になってしまうような形になるような気がしないでもない。ある程度この職にはこういうことが求められるというようなことを掲げないと、なし崩し的になっていくのではないかと考える。
 そういうことでともかく若手研究者、大学教員の養成と、それぞれのジョブディスクリプションをはっきりしていかなくてはいけないことと、それから若い人がディスカレッジしないような職階というものを作っていかなくてはいけないのではないかというように考える。
 それからもう1つは研究プロジェクトの話がでていたが、競争的資金が増えてくるとポスドクというポジションが、特に理工系の実験系では非常に大きな割合を占めるかもしれない。
 それと新職と新助手との関係はどうなるのかということも考えなくてはいけない。ポスドクというのは次世代の若手研究者を担うということはあるかもしれないが、やはり短期間だと自分の研究がメインになるかもしれない。その辺のことをジョブディスクリプションにいれるのかどうかということも検討して頂きたい。

委員  新職、それから准教授、教授というのはジョブディスクリプション、一種の昇格ルートと個人的には考えていた。そういったことをある程度書き込んでいくということは考えられるかと思う。
 それから大学院生の教育については、例えば新職のポジションにあるものが正規の指導教員になれると自分自身では受け止めているが、むしろ、そのときに実際に日本の大学の文化の中で、本当に手取り足取り教えられるのかどうかということのほうが課題になってくる気がする。今プロフェッサーの下でいわゆる助手のポジションにある人が色々手取り足取りやっているが、アシスタントプロフェッサーポジションの人が正規の指導教員になったときにその人と大学院生との間に立つ人としてどういう人がありえるのかということがもう1つの課題のような気がする。
 それからポスドクと新職との関係は、新職というのは教育職であって、ポスドクというのは研究職であり、そこははっきり違うというように個人的には捉えている。
 またテニュア・トラックについて、きちんと条文に書き込むかどうかといったことはぜひ議論してほしい。日本の場合は、既に教授文化、教室制度というものがあり、そこが全部始めからテニュアになってしまうということをどのように考えていくのか。個人的には新職というのはやはりテニュアトラックポジションだというように理解はしている。
 それから新助手の方に閉塞感を持たさないようにすることについては、昇格の問題と併せてむしろもっとはっきり考えないといけないというように思う。

委員  現行のどの分野でも助手の種類を2種類に分けてという認識でよいか。そして新職で採用する人たちはどういうところから上がってくるのか。或いは新助手になる人たちはどういう人たちがくるのか。新助手から新職に上がっていくルートはあるのかもよく分からない。例えば修士をでた人は最初どこに採用すれば良いのか。新助手に採用してそこから上がっていくのか、それとも先々の教育研究を担う人材として新職に雇い入れていくのか。給料をあげないまま教育職を担当させるというかなり便利にも聞こえるが、そういう新職と新助手の間の関係をどういう方向で考えていくのか。

事務局  一概にこうということがなかなか言えないが、おそらく将来の教育研究者、教授、準教授、講師といった教育にあたっていく者は最初は新職で採用されるのが一般的なのではないか。新助手については、その中でのプロモーションとか、そうした第3カテゴリーとしての専門職の位置づけを考えてはどうかという方向についてもご議論頂きたいと考えている。

委員  もともとの議論というのは若手の優秀な人たちがいわば雑用に埋もれているということをどうにかしなければいけないということにあったように思う。それぞれの大学が新職や新助手という新しいポジションを使いながら活性化をどうしていくかという問題かと思う。

委員  今のような議論の流れであると、必ず置かなければならない職かどうかということについては、新職と新助手の両方を置くことができる職とした上で、学校の判断で自在に運営していくという考え方があるかという点が1点。
 それから私も基本的に、現在助手の職にある人が将来本人の力量に応じてプロモーションしていく道は当然あるべきだと思うが、そのときに1つの典型的なルートとして新職を経由していくということもあるだろう。そして、支援職に徹した体系がどうしても必要という分野ではやはり将来への展望を持たせるということが必要であろう。

委員  本日のたたき台の案の資料で、新助手だけ置かなければならないという案になっているのは、もし両方置くことができるというようにすると、それぞれの大学の中で人の輪を考えると、現在の助手全員を今の通りにするか、それとも新職にするかという事態に陥るのではないかということを考えたからだと思う。もちろん、ちゃんと原理原則で考え、両方を置くことができる職とするという考え方もあると思う。

委員  両者の資格をきちっと分けておけば問題はなくなるのではないか。

委員  助手問題について非常に深刻な問題があると思うのは、年齢構成と若手研究者という問題。日本は教授職の占める比率は年々増えていて、今や全体の4割。助教授職はそれよりも少なくて23.5%。講師もあまり変わらないが、助手職はどんどん減って28.5%。しかもこの助手職の大部分、かなり多くは医学部であるから、それ以外の学部では非常にトップヘビーの構造になっている。新しい血が必要だといいながら、新しい血が大学の中にいる場所はどんどん狭まっているというのがこの数字からも分かる。
 大学教員を巡る年齢構成の推移についてもデータがあり、30歳未満は3.5%しかいない。61年が6.1%であるから半分くらいに減っている。しかも40歳未満の大学教員ということで見ても約3割しかいない。日本の大学はもう驚くほど高齢化が進んでいて、若手の独創的な研究者を育てるべきだとこの十数年言ってきておきながら、実は彼らの溜まり場は大学の中でどんどんなくなってきているのが現実。これを放置すれば老朽化した、しかし高い給料をとる教授が大勢いる一方で、若い研究者は全く大学に入ってくることができなくなり、研究の振興なんてできるはずがない。そのため、このたび新職を設ける場合にはそれがどのくらい比率を占めるべきなのかという議論がどうしても必要だと考える。日本はこのままいったら、既にテニュア制を持っているアメリカのような競争的な状態なんて大学の中に絶対に生まれない。こういう状態であるから、教授に対しても任期制を導入すべきだという奇妙な議論がでてきてしまう。

委員  新職をつくることが必要だとする理由は、若い人たちに将来は大学教員になるのだというイメージをはっきりと与え、また実際に若いときから教育研究にきちんと専念できるというルートがあるのだということもはっきりと示すということではないか。
 教授が圧倒的に多くなってしまうというのは私立大学ではそういう状況が昔からある。テニュア・トラックという問題も要は今の教授が安泰で良いというそういうことはありうるので、そういうことのプロモーションの評価もきちんとやるべきであるという趣旨を入れていかないといけないと思う。

委員  現行の助手を新助手と新職という2つに分けるということに私は基本的に賛成。これが全面的な解決になるかどうかというところは分からないが、やはり助手が色々な仕事で夢がもてずに潰されてしまうという実態があるのではないかと思うので。私は制度を変えるだけで、日本の研究体制の活性化、或いは様々な問題を全部解決しようというように思い過ぎない方が良いのではないかと考える。制度もは根本的なところではとても大事だと思う。しかし、結局はそれぞれの学校が自由にどれだけ制度を活かしていけるかというところに今後大きな問題が出てくるのだろうと思っている。その制度活用のポイントとしては、教員にもやはり評価制度ということは必要であるという点かと。またそれぞれの学校では、制度改正を踏まえて当然に新しく職務規定を作り直すということになろうと思うので、その際の各学校の創意工夫を阻害しないように制度であまり縛りすぎないようにすることが必要。

委員  多様な助手の実態に合わせてその一部をはっきりとテニュア・トラックの中での独立した研究者と位置付けること自体は私も賛成。ただ現在たくさんいる助手を無理矢理2つに分けるという考え方はやはり非常に危険な感じがして、要するに助手の多様な実態に合わせたポストを作れば良いと思っているので、ほとんどの方が新職に移るということがあっても、もし実際に働いている助手の方の実態が新職の職務内容に合うのだったらやむを得ないかという気がする。
 人文社会系は助手というポストは今でも大変少ないし、益々減らされようとしているから、そういうところではおそらく助手の職種をあえて2つに分けることは、ちょっと現実離れしているという気もする。
 また、新助手だけを必置の職とすることについては、検討の余地があるのではないか。

事務局  両方共に必置にするか、片方を必置にするかという点について補足を1点。現行の学校教員法の規定が、教授を中心にして助教授や助手というものは教授を助けるという形になっているのは、一応教授は責任者としてある種の組織的な仕事をするものだという考えがなされているということ。一方、今回の制度改正後は、例えば、准教授は実態に合わせて独立するということになるであろうが、いわゆる「助け手」としてその準教授を助ける人が誰か必要だろうし、その色々な実態の「助け手」は、観念としては組織的に必要な存在として残る。このように考えれば、新職、或いは准教授というものは必ずしも必置では無くても良いが、そのような組織的に必要な助け手として観念する人を新助手として幅広く捉えてはどうかという考え方である。
 また、本日の議論にあったように、その実態の様々なことを考えれば必要な大学が必要に応じて「助け手」を置けばよいのであって、両方とも任意設置ということも考えられる。
 更にはこういう制度にしようとしたときに、現場を預かっていらっしゃる先生方の目から見たときに、理屈はこうであるが、例えば今の助手は制度改正後も基本的には変わらず、今までどおりだよと説明することがもし必要であれば、新助手の規定はできるだけ現行の助手のままとした方がよいという考え方もあるかもしれない。

委員  新助手の地位ついて、「助け手」ということで捉えた場合に、教授、准教授等の職務を助けるということであれば、どうしても1つの教室とか、1つの講座というものに助手がつくという形になりやすい。しかし、「助け手」にかかるコストを少なくし、有効利用を図りたいという面から考えたときには、全学的に使えるような位置付けにしておいた方が良いのではないか。そういう意味では、ここでは資料5の3ページのC案のように助手は教育研究の支援を行うという形にするということは非常に重要な意味を持ってくるのではないか。そうすることで、現在の助手というものを新職と助手に分けるときにも、新職という制度を有効に活用することなどが可能になってくると思う。

委員  私の感覚で今日出ている議論の中で、今日の案の中に入っていないのは、やはり新助手のプロモーションとかを含めた在り方という点かと思う。

委員  どの職階から独立できるのか。それは新職であるのか、という点について考えなくてはならないのではないか。
 また、若手研究者が全て独立してしまうということがいいことなのか、ということも考えなくてはならない。これから伸びようとする若手研究者を助手として独立させるとその助手は伸びない。やはり色々な教授、或いは助教授と一緒にディスカッションすることが必要な時期であるし、実績がないためにテナントが余り取れないときに教授や助教授からテナントも分けてもらって、そのあいまに大学院生の指導も少しやりながら、非常に成果をあげて昇進していくのに、早めに独立したり、或いは取り残されて1人でいる人が伸びずに、いつまでも助手のままという状況が実は今起きている。そういう観点もあるのだということを現場で色々行っているものの意見として申し上げたい。ただ目指していることは同じで、若い人が独立に研究して、そういう環境を作っていくということが目的なのは同じだということを理解して頂きたいが、そういうことが現場ではあるということ。

委員  教員組織の在り方に関する基礎資料の26ページの表において、1番上から教授、助教授、講師、助手となっているが、分野別に言うと人文社会系は助手の数は全体の3%もなく、ここでは助手問題というのは事実上存在しなくなっている。一方、理学や工学は20%程度あり、ここには問題が残っていると思うが、最大の問題は保健の部分で半数が助手。それから附属病院は7割近くが助手。もう1つ見逃してならないのは大学院というカテゴリーであって、ここは大学院重点化や大学院大学創設の関係で国立大学がかなりの割合を占めると考えられるのだが、ここでは助手が3割ほどいる。したがって、助手問題というのは簡単に言えば保健、附属病院、大学院大学の問題と考えた方がよいのではないか。そして、大学院大学の場合には他の大学とは助手の位置付けが全然違うのではないかと思う。一般論として議論をしてもあまり意味がないと思うので、まずは理工系と医学部の先生方から意見を聞きたい。

委員  医学部の場合には教員の定員の総数も確実に多い。その理由の1つとしては、附属病院で診療を行なうための組織が必要でその面から教員が多く必要だし、助手もたくさん必要になる。医学部の助手の実態は平均すると年齢層が高いし、少なくとも博士の学位を持っているものがほとんどである。そして、専門医としての職務を行い、学生の教育研究や研修の直接指導にあたっている。医局のヘッドを助手のトップがやっているが、これは非常に効率的な組織であるし、しかも交代がすごく激しい。最終的には教授のコントロール下にあり、そういうヒエラルキーができているが、それはグループとして診療をしなくてはいけないことが多いからであって、そのことに引きずられる形で今のような体制になっている。それが講座制の弊害と呼ばれるものを生んでいるが、機能上は人事の交代も含めて非常に上手くいっている。人事の回転は速い。こういったことを考えると他の学部とはかなり異なる。したがって、医学部の助手の職務の内容と照らし合わせると医学部の助手を全て新職にするのは適切ではないと思う。現在の医学部の助手が全て独立して業務を行うとなると、これは医療チームを組む場合や総合的に指導をしなくてはいけない場合などに弊害が生じ、後悔するのではないか。やはり1つの組織としてのある程度固まった組織構造になるような仕組みがどうしても必要になるのではないか。

委員  本日の資料の中で資料5の1ページの新職というものをどのように位置付けるのかという点について、新職の議論については独立の研究者としての側面がかなり強調されてきたところがあったと思うが、最終的にこの職務規定を考えたときには、私はB案のような線でよいのかという点に非常にためらいを感じている。

委員  私の理解では、この原案は新職や准教授をつくり今の学校教育法の「何々を助ける」というのを抜くということを基本に考えてある。その上で、資料4のご審議いただきたい事項の2ページ目の「5講座制・学科目制に代わる教員組織について」という議論に載っているが、やはり教員組織の編成にあたっては必要に応じて共同の体制をきちんととってもらいたいということをどこかにしっかりと書き込んで、それを評価の対象にもする。そのように色々なことで独立して教育研究ができる職をつくることによる弊害に歯止めをかけたいという案になっている。新職ができた場合には、医学部の助手にも適用されると良いのではないかと思うが、一方で独立だということを盾にとられて皆がばらばらになってしまうと、今の日本の医学部の病院は崩壊するかもしれないということはあるかと思う。そこで、ぎりぎりバランスがとれるような案になっているのではないか。
 今まではやはり「助ける」という法令上の規定があったから、助けることしかやってはいけないという理由にされ、色々な弊害があった。しかし「助ける」という規定をとってしまうと、全くばらばらになって、教授のいうことを何も聞かないというのでは、大学の教育研究上困ったことになるし、本人にとっても教授に置き去りにされたら能力が伸びずに終わるという懸念もある。どういう案をとっても100%これが良いということはなかなかないが。

委員  講座制・学科目制に代わる教員組織というところだが、ここで今回、適切なる教員組織の編成がされているかどうかが第三者評価の対象になるという点を明確にするかどうかが、大学の質を担保するという点に大きくつながってくると捉えている。
 また、大体、大学の教員を志望する人というのは人とつながりを円滑にすることが苦手な人が多いように思う。しかし、大学における教育も研究も両方とも、チームで小型のプロジェクト、それからワーキンググループ、グループワークで行なうということが、ここ5,6年急増している。教養教育の問題やカリキュラムなど、あらゆるものが全学的な取組を行なわないといけなくなっている。そういった組織での取組と個人との関係のバランスがこういうところにあらわせれば良いと思っている。

委員  教員組織の問題については、実はほとんど議論したことがないように思う。戦後このような大学制度になったときに、従来講座制・学科目制に代わる組織をどうするかということで大きな議論があって結局結論がでないままずっときて、1991年に例の大学設置基準の大綱化の答申がでたときにも問題になったが、そこでも十分な議論がし尽くされないで昔の規定が大学設置基準にそのまま残っている。ところが実態は組織構造が曖昧になって、また、筑波大学のような講座制と関係のないものもできて現在に至っている。それは単に教員組織だけの問題ではなく、学生定員の問題であるとか、或いは予算の配分の仕組みであるとか、人事の仕組みであるとか全部に関係している問題であるから、これは相当慎重に議論した方が良いのではないかと思う。このままいくと日本の基本的な大学構造の組織がだんだん外から見えなくなってきて、どんどん好き勝手に何をやっても良いよというように状態になってしまうのではないかと。そうなると評価自体ができなくなるという問題がでてくることもありえる。基準なので、基本的にはこういうものだということを決めておいた方が良いと思う。

委員  教員組織というのは要するに大学が組織として、教育研究を行なうために必要なものなので、そもそも大学がどういう教育研究をやるべきかということがない状態で、教員組織のことだけを幾ら議論しても意味がないかと思う。大学というところは中小企業の経営者の集まりであるという人もいるが、まさにそうではないかと思う。中小企業経営者のような教員が状況に応じて離合集散して活動を行っている。そのような状況の中、教員組織がどうあるべきを考える際の基本になるのは、良い教育を行なうためにはどのすべきかという点だが、一律に示すことは難しく、各大学の様々な創意工夫というものをあらわした組織であるべきで、従ってそういう意味でこれは慎重に議論する必要があると思う。

委員  個人的に色々な経験したが、やはり、個の独立の上にお互いが関係をもって組織体制をアダプティブに組んでいくことが、これからの日本では良いのではないかと考えている。

委員  専門職大学院における教員組織がどうなっていくかということも考える必要があるのではないか。
 また、新職や准教授という職が国際的に通用することが必要だと思うので、これらの英文名称をはっきりと定めた方が良いのではないか。
 それから、今教授をとる際になかなか若い人をとりにくくなっていることや、これからのプロモーションということを考えると、講座制だけがすべてではないと考えていくべきだと思う。

 次回の日程
 次回は、9月中旬〜下旬に開催する方向で日程調整を行うこととなった。

(高等教育局大学振興課)

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