答申素案

はじめに

• 　平成17年6月、第3期中央教育審議会は、文部科学大臣から「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」の諮問を受けた。諮問では、当面、特に審議すべき事項として、国民一人一人の学習活動を促進するための方策についてと、地域住民等の力を結集した地域づくり、家庭や地域社会における子どもの育ちの環境の改善のための方策についての二つの事項を中心に、制度の在り方を含め、具体的に検討を行うよう求められた。
• 　諮問を受けて以来、生涯学習分科会において、これらの事項について具体的な方策について検討を進め、平成19年1月にはそれまでの審議内容をまとめた中間報告を提出し、文部科学大臣に議論の報告を行った。
• 　この間、平成18年12月には時代の変化に対応すべく、約60年ぶりに改正された教育基本法（以下、「改正教育基本法」という。）に、「生涯学習の理念（第3条）」が新しく規定されたことをはじめ、「教育の目標（第2条）」、「家庭教育（第10条）」、「社会教育（第12条）」、「学校、家庭及び地域住民等の連携協力（第13条）」等、学校教育のみならず、生涯学習・社会教育関係の規定の充実も図られた。
• 　これらを踏まえ、平成19年3月からの第4期中央教育審議会生涯学習分科会では、引き続き、国民一人一人の学習活動を促進するための方策や地域住民等の力を結集した地域づくり、家庭や地域社会における子どもの育ちの環境の改善のための方策について検討を行い、そのほか、改正教育基本法で政府が策定すると規定されている教育振興基本計画に盛り込むべき事項等についても議論が行われた。また、分科会において、教育基本法改正等を受けた生涯学習・社会教育関連法制の見直しについての検討が必要である旨の意見が出されたことを受け、本分科会の下に制度問題小委員会を設置し、集中的な審議も行われた。
• 　今回の答申は、審議で示された数多くの意見を基に、現在の我が国の状況について整理し、その上で、目指すべき施策の方向性や施策を推進する際に必要な視点等を明確にし、国民の学習活動の促進や地域社会の教育力向上等のための生涯学習の振興方策について提言をまとめたものである。本答申を受けて、生涯学習の振興を図る行政（以下、「生涯学習振興行政」という。）・社会教育行政がさらなる発展を遂げ、「生涯学習の理念」の実現に向けた取組が一層推進されるよう期待している。
• 　なお、平成17年6月に同時に文部科学大臣より諮問を受けた「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」は、スポーツ・青少年分科会で審議を行い、19年1月に答申（「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」）が提出され、重視すべき視点と具体的方策について提言がなされたところである。国民の生涯にわたる学習活動の振興を図る上で、成長段階に応じた施策の展開が必要であり、青少年に対する施策については、スポーツ・青少年分科会における専門的な検討を踏まえつつ、生涯学習振興行政を推進する必要がある。
• 　本答申では、まず、生涯学習の振興に対して高まる必要性や重要性等、社会からの要請について触れた後、今後国民が必要とする力やそのための生涯学習について述べる（1．及び2．）。それらを受けて今後、生涯学習振興行政・社会教育行政が目指すべき方向性とその具体的な方策について提言し（3．及び4．）、それらを推進するに当たって留意すべき点について述べる（5．）。また、特に行政担当者等を対象に、これらの施策を推進するに当たっての基本的考え方として、これまでの生涯学習の振興方策等について、その経緯を踏まえた上で現状・課題の整理をし、生涯学習の理念等について今一度整理を行った（6．）。これらを受け、特に制度的な面を中心とした行政の在り方について、その考え方や今回見直すべきと考える事項について最後にまとめている（7．）。