【資料3】英語の資格・検定試験の活用促進に関する行動指針(案)

平成27年3月17日
英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験に関する連絡協議会決定

1.基本方針

 グローバル化が急速に進展する中で、英語を日常的に使用する機会は限られているが、英語によるコミュニケーション能力は、仕事や日常生活など、生涯にわたる様々な場面で必要とされる機会が格段に増えることが想定され、今まで以上にその能力の向上が課題となっている。
 このような英語力向上のため、生徒学生が生涯にわたり主体的に英語学習に取り組む態度を育成するとともに、英語力については、入学者選抜や入学から卒業に至るまで、「聞く」「話す」「読む」「書く」の技能(以下、「4技能」という。)の初等中等教育から高等教育を通じた総合的な評価が行われることが重要である。
 また、海外の主要大学では、4技能を評価する資格・検定試験による一定レベルの英語力の保証が求められることなども踏まえ、生徒学生に進路・留学・その後のキャリアなど将来の英語使用の具体的なイメージを持たせるよう留意しつつ、4技能の総合的な育成及び評価が行われることが急務である。
 英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験に関する連絡協議会(以下、「連絡協議会」という。)は、生徒学生の4技能の総合的な育成及び評価の観点から、英語力の評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用の在り方、有効性及び留意すべき点について協議会として具体的な指針を申し合わせ、各学校及び各団体における英語4技能の資格・検定試験活用を奨励する。

2.資格・検定試験の活用促進において重視すべき事項(例)

 各中学校・中等教育学校・高等学校・高等専門学校・短期大学・大学(以下、「各学校」という)及び資格・検定試験の関係団体は、以下のような事項を踏まえつつ、英語力評価及び入学者選抜における英語4技能の資格・検定試験の活用促進を図ることとする。

(1) 資格・検定試験の有効性を踏まえた活用

[学校関係者]

○ 各学校は、生徒の英語力を把握し、きめ細かな指導の改善・充実や生徒の学習意欲の向上につなげるため、効果的に4技能の資格・検定試験を活用する。あわせて、実践的な英語の使用場面を増やすような活動の充実に努める。

○ 各学校は、資格・検定試験活用の有効性を踏まえつつ、生徒学生の英語力を向上させるため、4技能をバランスよく測ることができる効果的な資格・検定試験を活用する。

(資格・検定試験の有効性に関する観点(例))

  • 英語の4技能の総合的な測定を行うこと
  • 生徒学生の英語学習の目的、英語力、継続的な英語学習に適合した資格・検定試験を活用することなど試験の一貫性を確保すること
  • 生徒学生が主体的に学習する態度・姿勢を身に付ける観点から、英語学習への動機付けにつなげる一つの手段として活用すること
  • 授業で活用した資格・検定試験の結果が学校に提供され教員の指導改善の参考となること
  • 教員及び教員志望者の英語力向上の指針として活用すること   等

○ 各学校における英語の資格・検定試験の活用においては、学習指導要領を踏まえた英語教育との親和性を踏まえつつ、コミュニケーション能力の育成に必要な4技能をバランスよく伸ばすことができるようにする。
学校での授業等における活用については、生徒学生の4技能の英語力、学習状況や指導状況などを把握し、それらの関係性などの分析結果を、教員の指導改善や生徒の英語力の向上に生かすよう努める。
そのため、学校が日常的に行う評価や定期試験等に加え、英語によるコミュニケーション能力の向上を図る一つの客観的な指標として効果的に活用する。

○ 大学、短期大学、高等学校及び高等専門学校においては、それぞれの教育理念・内容等に応じた入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)等を踏まえた入学者選抜や入学から卒業に至るまでの生徒学生の英語力向上のために、4技能を測定する資格・検定試験の活用を図る。

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 英語の資格・検定試験関係団体は、資格・検定試験の活用促進及び客観的な質保証を図る観点から、4技能を測定する試験としての有効性や課題への対応に配慮した情報発信等を積極的に行うことに努める。

○ 英語の資格・検定試験関係団体は、上述した4技能の資格・検定試験を活用する各学校の取組を、積極的に支援するように努めるとともに先進的な取組などの情報発信を積極的に行うことが期待される。

(2) 英語力評価における資格・検定試験の妥当性等について

[学校関係者]

○ 各学校は、英語の資格・検定試験の活用に際して、それらの妥当性、信頼性等に留意して具体的な活用方法等を明らかにする。また、資格・検定試験を活用して得られる情報の費用対効果を考慮する。

  • 妥当性:資格・検定試験が各学校において把握したい能力を適切に測定しているか。また、その測定値が各学校において適切に活用されているか。
  • 信頼性:各資格・検定において、各回の試験結果が一貫するよう明確な評価規準・方法などが提示されるなど、精確性が担保されているか。
  • 波及効果:資格・検定試験を活用することによって生徒学生に対してどのような効果や課題をもたらすものであるか。
  • 実用性:資格・検定試験の費用なども含め、どのくらい実用性があるか。
  • 真正性:資格・検定試験が、生徒学生の実践的な英語使用場面をどれだけ反映しているか。 等

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 資格・検定試験関係団体においては、各学校が各資格・検定試験の妥当性・信頼性等を検討するに当たり必要な情報(各資格・検定試験の目的、出題意図、難易度、目標言語使用領域、出題意図、問題の作成過程、実施方法、試験結果の評価規準、採点手続、結果の利用法、レベルや学校段階など対象ごとで測定しようとする能力の明確化、基準手段、検証状況、世界的な参照基準との関係性等)を明示することに努める。また、各資格・検定試験が測定しようとする能力については、例えば、大学で求める英語力として、英語で論理的、批判的に思考し、表現する力であることなどをより明確にするよう努める。
また、資格・検定試験の結果を学校にフィードバック(例:スコア返却の際の助言など)する際にも当該試験結果が適切に解釈されるよう十分に配慮し、教育的効果が上がるように努める。
 あわせて、それぞれの妥当性等を実証する調査方法、分析結果等の情報提供に努める。

○ 資格・検定試験団体においては、各資格・検定試験の尺度得点の検証状況や結果の公開に努めるとともに、世界的な参照基準との関係付けなどを変更する場合は、生徒学生、学校等への影響などを鑑み、その内容、理由、背景資料などを毎年年度末を目途に本協議会に提供するとともに、迅速かつ適切に各学校への情報提供に努める。

(3) 多様な生徒学生の能力への適合性

[学校関係者]

○ 各学校において英語の資格・検定試験を活用する際は、多様な生徒学生の英語力及び学習の目的を十分踏まえた英語力の目標を設定し、調査による把握・分析を行い、きめ細かな指導改善・充実を図るとともに、生徒学生の学習意欲の向上につなげる。

○ 中学校・高等学校については、第2期教育振興基本計画に設定されている英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上、高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合50%)だけでなく、生徒の特性・進路等に応じて、高等学校卒業段階で、例えば英検2級から準1級、TOEFL iBT60点前後以上等の目標を設定し、生徒の多様な英語力や学習状況の把握・分析・改善を行う。

○ 授業活用の際、資格・検定試験の結果は生徒学生に求められる英語力及び教育活動の一側面に関するものであることに留意し、効果的な改善を図る取組を行うこととする。

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 資格・検定試験関係団体においては、多様な生徒学生の英語学習のニーズや英語力を踏まえ、目的・難易度・作問の妥当性や客観性といった点を含め、各資格・検定試験によって測られる能力の範囲を可能な限り明確にするとともに、受験環境、実施場所、実施時期、受験費用、公平性の担保等に関する情報提供等を積極的に行うよう努める。

(4)入学者選抜における妥当な活用方法等

[学校関係者]

○ 各学校において資格・検定試験の成果を活用する際は、具体的な活用方法(例えば、入学者選抜において、当該資格・検定試験の結果を用いる場合の出願要件、みなし満点や点数加算などの得点の換算の方法等)を明確にする。

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 各学校が資格・検定試験を活用するに当たり、生徒学生の英語力について、適切な評価が行われるよう、当該試験の結果の確認方法、試験間の比較に関する情報等の提供を積極的に行うよう努める。また、生徒学生の英語力の現状及び学習の目的を踏まえた資格・検定試験の開発、活用の在り方、世界的な参照基準などの関係性に関する更なる検証が期待される。

(5) 生徒学生が受験しやすい環境への配慮

[学校関係者]

○ 学校等は、多様な資格・検定試験を精査し、その学校において習得されることが期待されている英語能力を測定するのに適切なものを選択する。

○ 学校等は、資格・検定試験関係団体が公表する情報に基づき、生徒学生に対し、資格・検定試験の目的、基準集団、難易度、目標言語使用領域、出題意図、受験料、受験場所等についての正確な情報を提供する。

○ 学校等のニーズや生徒学生の受験機会などの状況等を踏まえつつ、公平性・公正性を保った上で、受験しやすいよう学校施設等を提供して実施することが期待される。

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 資格・検定試験関係団体は、各学校、学校関係団体等が試験を行うに当たり、その目的を踏まえながら受験のしやすさ(経済的状況に配慮した受験料、地域バランスに配慮した実施体制、受験回数等)に可能な限り配慮する。特に、生徒学生を対象とした資格・検定試験においては、受験料の減額・補助・助成など支援制度等についても考慮することが望まれる。

○ 生徒学生を対象とした資格・検定試験においては、学校等のニーズや生徒学生の受験機会などの状況等を踏まえつつ、公平性・公正性を保った上で、受験しやすいよう会場として学校や民間教育施設等を活用して実施することが期待される。

(6) 適正・公正な試験実施体制(試験監督、情報管理等)

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 資格・検定試験関係団体は適正かつ公正で透明性の高い試験を実施するため、試験実施体制、受験手続(本人確認、不正行為の防止策を含む)等について、分かりやすく公開することが求められる。また、これらについて学校等関係者の間で共通理解を図ることに努める。

○ 公正性の観点から、試験部門と教育部門の両方を有する資格・検定試験関係団体は、部門間の情報管理を行うことが求められる。

(7) 国際的な通用性

[学校関係者]

○ 生徒学生の進路・留学・その後のキャリア等のニーズに応じて、資格・検定試験関係団体が公表する情報に基づき、適切な資格・検定試験を活用する。

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 資格・検定試験関係団体は、留学の際に当該資格・検定試験を活用できる海外の学校等における活用状況、外国における受験者数など、試験の国際的な通用性に関する情報提供を積極的に行う。また、日本で開発・実施されている試験については、海外でも活用されるように海外の学校や関係団体へ働きかけを行うことに努める。

(国際的な通用性に関する情報(例))

  • 留学に活用できる大学
  • 海外での利用状況・利用者数・主な利用地域
  • 海外の資格・検定試験関係団体との連携状況

(8) その他

○ 各学校関係団体は、団体等に参加する学校、生徒学生への周知を図るとともに、学校等に周知を図る際、この「行動指針」を添付し、その趣旨の理解を図ることに努める。
英語の各資格・検定試験団体は、各団体及び関係者等に周知を図り、その趣旨の理解を図ることに努める。

○ 英語4技能の試験を行う資格・検定試験団体及び学校・学校関係団体は、協議等を通じて受験料の引下げと試験地域の拡大に努める。

○ 本協議会において、英語4技能の資格・検定試験の活用に関する情報提供、英語問題の調査・分析等の取組について、継続して協力することに努める。

【別添】今後、学校及び資格・試験団体において取組が期待される取組及び検討課題

[英語4技能資格・検定試験関係団体]

○ 英語の資格・検定試験団体は、受験者、及び試験を活用する学校、関係団体などに試験の目的や実施方法などが適切に理解されるよう試験の手引きや解説書などを作成、提供(資格・検定試験の目的、内容、基準集団、標準化の時期や方法などの背景、実施方法・手続、結果の利用法、実施者に求められる資格、経験やトレーニングなど)

○ 各学校への普及活動や情報管理等に関する倫理規定の策定

[学校と英語4技能資格・検定試験関係団体との連携]

○ 英語の資格・検定試験を効果的に活用した授業活動、入学者選抜における先進的な取組の実施・情報発信

○ 各資格・検定試験で4技能をバランスよく測定する良問の検証・結果の提供

○ 受験者から了承の上で、学校が入学者選抜における確認のために各資格・検定試験団体から試験結果を得られる仕組みの検討

○ 不正防止のための情報共有及び防止策の検討

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

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(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)