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(3) これまでの取組みの評価
 以上のように、学級編制の弾力化や総額裁量制の導入と相俟って、第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画の実施により全国的に少人数教育の取組みが進んだ。この少人数教育については、少人数の学習集団をつくる方法(少人数指導)と少人数の学級編制とする方法(少人数学級)の二つの方法があり、どちらがより効果的なのかをめぐって議論がある。
 少人数指導の場合、ティーム・ティーチング、習熟度別授業など様々な学習指導方法をそれぞれの実情に応じて取り入れることができること、また学級担任だけでなくその他多くの教職員がそれぞれの視点から児童生徒の成長を見守り支援していくことができる点で評価が高い。他方、少人数学級の場合、生活集団と学習集団の一体化を基礎として学習意欲の形成・喚起を図ることができるとともに、40人学級よりも小さな集団となることにより、子ども同士の学び合いがより深まって学習指導の姿がより効果的なものへと変わる、特に小学校低学年など学校生活に慣れ親しむ段階において効果的だ、とする意見も多い。
 少人数教育については、様々な教育環境に適合させながら実施されるものであり、全国的に実証データを収集・分析することは難しい面もあるが、これまでのところ表2のような評価が報告され、全国的に普及・定着している。また、少人数学級など都道府県の独自の判断による取組みが進んでおり、教育条件の整備におけるナショナル・スタンダードの土台の上にローカル・オプティマム(地域における最適の状態)を実現するという取組みが行われることは、特に評価されるべきものである。このような取組みは、学校現場や保護者からも歓迎されており、今後その充実が望まれている。
 しかしその一方で、少人数教育は全国的に進んだものの、国・都道府県・市町村・学校の関係は従来のままであるため、学校現場の裁量が十分に高まっておらず、必要なときに機動的な教職員配置ができないことがあるという指摘もある。また、総額裁量制の導入により教職員配置等において大幅な弾力化が図られたものの、学校現場や市町村の意向が十分に反映されていないなどの指摘もあり、その運用に当たっては学校・市町村・都道府県間の相互の連携を図ることも必要である。さらに、LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症等の児童生徒への支援や食育、キャリア教育、読書活動等の充実といった第7次教職員定数改善計画の策定時にはなかった今日的な教育課題への対応も必要となっており、これらの課題に対応した教育条件の整備が求められている。
 今後、児童生徒や地域の実情に合わせて、個に応じたきめ細かな指導を徹底する必要があり、少人数教育の充実が重要となるが、児童生徒や学校・地域の実情、その時々の学年・学級の課題が様々である以上、その効果的な実施に当たっては、教職員の配置について、学校の裁量をいかに高め、市町村や都道府県の判断をどのように尊重していくかについて十分な考慮が必要である。


表2 【少人数教育の効果】(平成17年4月 文部科学省調査)

○少人数指導
区分 小学校 中学校
とてもそう思う そう思う あまり思わない 全く思わない とてもそう思う そう思う あまり思わない 全く思わない
学習 総じて児童生徒の学力が向上した 26.5% 72.7% 0.8% 0.0% 13.2% 83.0% 3.8% 0.0%
授業につまづく児童生徒が減った
(学力の底上げが図られた)
34.3% 64.2% 1.5% 0.0% 16.3% 79.1% 4.6% 0.0%
発展的な学習に取り組める児童生徒が増えた 14.9% 72.9% 12.2% 0.0% 10.1% 73.1% 16.8% 0.0%
生活 不登校やいじめなどの問題行動が減少した 6.5% 57.4% 36.1% 0.0% 5.5% 37.7% 55.7% 1.1%
児童生徒の基本的な生活習慣が身についた 6.5% 59.0% 34.1% 0.4% 2.9% 53.4% 43.5% 0.2%
指導方法 教師間の連携により指導力の向上や教材研究の深化が図られた 33.9% 62.5% 3.6% 0.0% 22.2% 70.0% 7.8% 0.0%
教師間の打合せや教材準備の時間が確保できない 12.6% 60.8% 25.6% 1.0% 15.9% 53.0% 28.2% 2.9%
その他 実施拡大のために教室などの増設が必要 31.9% 33.1% 30.0% 5.0% 25.3% 37.1% 34.5% 3.1%
学級編成人数を引き下げた方が効果的である 43.4% 38.4% 17.2% 1.0% 48.8% 37.2% 13.6% 0.4%

平成16年度に少人数指導を実施した学校から抽出した小学校477校、中学校478校へのアンケート調査結果

○少人数学級
区分 小学校 中学校
とてもそう思う そう思う あまり思わない 全く思わない とてもそう思う そう思う あまり思わない 全く思わない
学習 総じて児童生徒の学力が向上した 28.5% 70.2% 1.3% 0.0% 16.4% 77.7% 5.9% 0.0%
授業につまづく児童生徒が減った
(学力の底上げが図られた)
35.6% 63.1% 1.3% 0.0% 20.1% 77.2% 2.7% 0.0%
発展的な学習に取り組める児童生徒が増えた 13.6% 72.6% 13.8% 0.0% 5.5% 77.5% 17.0% 0.0%
生活 不登校やいじめなどの問題行動が減少した 31.6% 57.3% 10.8% 0.3% 20.5% 56.6% 22.4% 0.5%
児童生徒の基本的な生活習慣が身についた 31.4% 59.3% 9.0% 0.3% 10.6% 67.4% 22.0% 0.0%
指導方法 教師間の指導力の向上や教材研究の深化が図られた 22.4% 69.8% 7.5% 0.3% 16.2% 68.5% 15.3% 0.0%
教師間の情報交換が低調になり連携協力が図られていない 0.5% 2.3% 44.1% 53.1% 0.5% 3.7% 54.1% 41.7%
その他 実施拡大のために教室などの増設が必要 28.5% 36.3% 23.1% 12.1% 20.0% 32.0% 32.0% 16.0%
少人数指導・ティームティーチングの方が効果的である 14.7% 15.9% 54.2% 15.2% 18.3% 23.9% 50.5% 7.3%

平成16年度に少人数学級を実施した学校から抽出した小学校390校、中学校219校へのアンケート調査結果

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