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いかなる人材を育てるべきか −国際社会で求められる態度・能力 |
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初等中等教育段階においては、すべての子どもたちが、 |
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異文化や異なる文化をもつ人々を受容し、「つながる」ことのできる態度・能力 |
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自らの国の伝統・文化に根ざした自己の確立 |
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自らの考えや意見を自ら発信し、具体的に行動(することの)できる態度・能力 |
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を身に付けることができるようにすべき。 |
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これらは、国際的に指導的立場に立つ人材に求められる態度・能力の基盤となるものであり、個の特性に応じて、リーダー的態度・能力の伸長にも配慮した教育を。 |
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国際化した社会において、我が国の子どもたちが自立した個人として、いきいきと活躍できるよう、初等中等教育段階においては、すべての子どもたちが、 異文化や異なる文化をもつ人々を受容し、共生することのできる態度・能力、 自らの国の伝統・文化に根ざした自己の確立、 自分の考えや意見を自ら発信し、具体的に行動することのできる態度・能力、を身に付けることができるようにすべきであると考える。
多様な人々との日常的な交流が拡大する中にあっては、異文化や異なる文化をもつ人々を理解するだけでなく、理解した上で、それらを受容しながら「つながる」ことのできる力が重要となる。この力とは、相互の歴史的伝統・多元的な価値観を尊重しつつ、多様な異文化や人々の生活・習慣・価値観について違いを違いとして認識し、創造的な関係を構築する態度や能力であり、葛藤や対立を乗り越えてよりよい人間関係を作り出し、他者とのかかわりを通して問題を解決しようとする態度や能力である。また、そのためには、共存共栄的な発想を身に付けたり、一国の利益追求のみによらない全地球的視野、知らないことや理解できないことにも柔軟に対処する能力などを育成していくことが必要である。
異文化や異なる文化を有する人々に対して敬意を払い、理解し受容することは、自分自身の国やその歴史、伝統・文化を理解・尊重し、その上に立脚した個性をもつ一人の人間として自己を確立することによってはじめて可能となる。そのためには、自らを知り、自分らしさを受入れ、自分なりの判断基準を持ち、国際化した社会の中で生きる個人としての価値観を形成していくことが必要である。
多様な他者の中で、自己を確立し相互理解を深め、共生していくためには、対話を通して、人との関係を作り出していくような力が求められる。そのためには、自分の考えや意見を自ら発信し、他者の主張を受け止め、議論をまとめあげ、具体的に行動することのできる態度・能力が必要となる。また、外国語を含めた言語運用能力の育成とともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成していく必要がある。
国際教育を通じて児童生徒が身に付けるべきこれらの態度や能力は、国際社会において指導的立場に立つ人材に求められる態度・能力の基盤ともなるものでもある。我が国が、国際社会から理解、信頼され、国際的な存在感を高め、一層発展していくためには、国際社会に通用するリーダー的人材を育成することも極めて大切である。初等中等教育段階においても、個の特性に応じて、基本的な資質・能力に加えて、リーダー的資質・能力の伸長にも配慮しつつ国際教育に取り組むことも必要である。
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2. |
国際教育を推進するための基本的視点 |
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国際教育とは、「国際社会において、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の基礎を育成する」ための教育。 |
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異文化を理解するだけでなく、主体性や発信力を重視。 |
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国際教育とは、国際化した社会において、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の基礎を育成するための教育であり、端的に言えば、国際化した社会を生きる人材を育てる教育である。そのねらいは、自己を確立し、他者を受容し共生しながら、発信し行動できる力を育成することにあり、国際理解教育の目指していたところと変わりはない。
しかしながら、各学校における国際理解に関する取組が、ややもすれば、異文化「理解」の段階に留っており、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の育成が不十分であったとの指摘もある。これは、国際理解に関する理念の定着や理解が不十分であったことや、実践の基盤が十分整備されていなかったことにもよる。
また、21世紀の社会においては、国際化が一層進展しており、日本の国内外を問わず、一人一人の人間が、国際社会の構成員としてふさわしい態度・能力をもつことが求められており、単なる国際理解だけでなく、主体性や発信力を意識した教育を行うことが一層強く必要とされている。
国際教育を学校教育において効果的に推進するためには、海外子女教育、帰国児童生徒教育、外国人児童生徒教育といった各分野でこれまで育成されてきた人材や蓄積されてきた手法などを有効活用するとともに、国際機関、NGO(非政府組織)、NPO(非営利組織)、地域国際交流協会、企業や地域の海外経験者や留学生など、学校の外部にある人材や組織などの教育資源を活用していくことも大切となる。
本検討会は、そのような考えに基づき、今後の国際教育の推進においては、以下の基本的視点に立って、進めていくべきと考える。
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実践的な態度・能力を育成していくため、国際教育の実践力の向上と「学びの広がり・深まり」をもたらす授業づくりを。 |
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国際社会に通用する主体性や発信力は、体験的な学習や問題解決的な学習などを通じて、ものごとに柔軟に対処する力や、問題解決能力やコミュニケーション能力等を身に付けることによって育成されていく。
そのためには、社会の様々な問題を子どもたちの身近な課題として学校の教育活動に取り入れていき、学習の成果を子どもたちが自らとのかかわりの中で実感できるよう、調べ学習や体験学習、交流活動を広がりと深まりをもった学習につなげていくことが必要となる。すなわち、一つの学習の中で、子どもたち自らが、課題を発見・探求し、その成果を表現し、他者との対話を通じて学びを振り返り、さらに次の課題につなげていくという、螺旋的な課題探求・解決型の学習プロセスを大切にすることが不可欠である。
また、国際教育は、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間等を含めた学校の教育活動全体の中で取り組むことが大切である。国際教育では、地球規模の課題や今日的な課題として、例えば文化、環境、開発問題等といった教科横断的な課題を多く取り上げるが、これらの課題を理解するためには、教科等における学習で培われる知識や技能等が不可欠である。国際教育は、教科等の学習でも、「総合的な学習の時間」でも、取り組むことができるが、いずれの場合も、教科等における学習と「総合的な学習の時間」の関連を常に意識するなど、授業に広がりと深まりをもたらすことが重要である。そのことにより、基礎・基本の確実な定着が図られると同時に、思考力、判断力、表現力等の育成が可能となる。
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実践事例、手法、幅広い経験や優れた知識を有する人材や組織など国際教育にかかわる人材や資源を活用するため、共有の促進や連携のための支援体制の構築を。 |
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国際教育においては、子どもたちの身近な課題を子どもたちが実感できる形で取り上げることが大切であるが、そのためには、学校や地域の実態に応じた実践の工夫も必要となる。
学校の内外には、国際教育について幅広い経験と知識を有する人材や組織等が多数存在している。例えば、学校においては、日本人学校等への派遣教員や青年海外協力隊に参加した教員、REX(レックス)プログラム[外国教育施設日本語指導教員派遣事業]による派遣教員、独立行政法人教員研修センターによる海外派遣研修に参加した教員など、多様な海外経験を有する教員がいる。学校の外部には、海外勤務経験を有する企業関係者や海外からの留学生、国際機関、地域国際交流協会、関連学会、NPO、NGO、ボランティア団体などがある。また、これら組織では教材や学習方法についても、多種多様な教育的資産を有している。
これらの国際教育にかかわる人材や組織等の教育資源を最大限に活用し、身近なところから世界とのつながりを感じ、学校における国際教育の充実・活性化を図ることが大切である。そのためには、優れた実践事例や経験、手法などの共有を図り、学校・教育委員会と学校の外部にある人材や組織との連携を促進するなど、それら教育資源を活用するための体制を整備していくことが必要である。
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海外子女教育においても、「日本の教育を海外に」という視点に加え、「海外の日本人学校での先駆的な取組を日本の学校教育に生かす」という視点を。 |
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海外の日本人学校や補習授業校は、海外にいる日本人の子どもに対して、日本の学校と同等の教育機会を提供する上で重要な役割を果たしている。さらに、それに留まらず、国際教育として海外子女教育は、豊富な経験を有するとともに、英語教育、国際交流、少人数教育等、日本国内の学校における教育活動の先駆的取組を行ってきている。
また、日本人学校や補習授業校等の在外教育施設は、そこで働く教員にとっても、そこで学ぶ児童生徒にとっても、国際教育の実践の場であることから、日本国内の学校にとっても国際教育にかかわる資源として忘れてはならない存在である。
「日本の教育を海外に」という視点に加え、「海外の日本人学校での先駆的な取組を日本の学校教育に生かす」という視点を持ち、海外子女教育の分野での取組を、国際化に対応した教育の在り方を含めた日本国内の教育のために情報発信していくことは国際教育の充実に資するものである。 |