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資料3

第2章 国際教育を取り巻く現状と課題

  (1)授業実践という観点から
 
 
一部の教員任せになっており学校全体の取組になっていない傾向
英語の実施すなわち国際理解という誤解、単なる体験や交流活動に終始など、国際教育の内容的希薄化、矮小化への懸念
 
 新学習指導要領に基づいて、平成14(2002)年度から本格実施となった総合的な学習の時間においては、「国際理解」が課題の一例として掲げられており、各学校における取組が広がっている。総合的な学習の時間が創設されたことで、国際教育を実践する時間・場所・人が確保され、優れた実践も行われている。一方で、学力向上への対応や学校行事のための時間確保のため、国際理解を取り上げるための時間を確保することが難しいという声もある。また、外国語や社会科等の教員や、関心のある教員が取り組めばよいものとして捉えられる傾向があり、学校全体の取組となっていないという指摘もある。さらに、英語を学習することがすなわち国際理解であるという考え方が広がっていたり、国際理解に関する活動が単なる体験や交流学習に終わってしまうなど、以前に比べ内容的に薄まっている、矮小化されているとの声もある。
 このような指摘の背景には、指導理念が確立できていないこと、必要性や緊急性が乏しいと捉えられていること、学習方法や教材開発が進んでいないため、教育効果が十分に上がっていないこと、指導の目標が明確でないため効果的な取組にならず、児童生徒の学びの成果が見えにくいこと、等があると考えられる。

  (2)教員の指導力という観点から
 
 
国際教育に関する研修の重要性が十分認識されていない
指導案作成や教材開発の方法等、授業づくりに直接役立つ実践的な研修が不足
国際教育に携わる中核的立場の教員が不足
 
 都道府県・市町村教育委員会主催の研修において、国際教育が取り上げられることは多い。しかしながら、その内容については、例えば、海外経験者や国際ボランティア経験者の体験談や、外国語教育に関する1、2時間程度の講演が主となっているなど、国際教育に関する体系的なものになっていない、あるいは実践的指導力の育成に資するものになっていないとの指摘がある。
 教員が主体的、自主的に行っている研修や各教科等の研究会においても、国際教育をテーマとして取り組んでいる例も数多くある。しかしながら、多忙等の理由により、参加する教員が減少傾向にあるといわれている。
 このような背景には、国際教育に関する研修の重要性が十分認識されていないことのほかに、国際教育に関する優れた実践者が育っていないなど、国際教育にかかわる中核的立場の教員が不足していることがあると考えられる。

  (3)海外派遣教員の活用という観点から
 
 
日本人学校等への海外派遣教員の経験や能力が十分に生かされていない
海外派遣教員の経験を評価・活用するという方針・方策が不足
  「海外経験を帰国後の学校教育全体に広く還元していく」という視点が教員自身にも欠如している面も
  海外派遣教員の情報発信を支援するような体制が不足
 
 日本人学校等に派遣された教員や青年海外協力隊、REX(レックス)プログラムに参加した教員など、多様な海外経験を有する教員がいる。これらの海外派遣教員は、海外で子どもたちへの教育という職務に従事していると同時に、派遣先において教員自身の見識を高め、資質能力の向上及び指導力の向上を図り、帰国後、派遣先での経験を、学校の国際化の中心として、国際教育や国際交流の推進、外国語教育や日本語指導の充実等に生かすことが期待されている。同様に、独立行政法人教員研修センターでは、国際的な視野、識見を有する中核的教員を育成するため、教員の海外派遣研修を行っている。
 海外派遣教員の中には、その経験を積極的に生かす活動を実践している例も見られる。例えば、日本人学校等への派遣経験者については「全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会(全海研)」、REX(レックス)プログラム経験者については「NPO法人REX(レックス)-NET」などの任意の組織に加入し、個々人が得た経験や知識を自ら実践したり、その成果を他の教員に普及することを行っている。また、日本人学校等のカリキュラムづくり、地域での研修会の実施に携わるなど幅広い活動をしている。
 一方で、海外経験を生かす場がない、海外派遣教員に対して必ずしも周囲が好意的にみていないとの指摘がある。この背景には、教育委員会や学校、他の教員の理解が不十分であることや、海外派遣教員の経験を評価し、活用するという方針が教育委員会や校長にないことなどがあると考えられる。

  (4)外部資源の活用という観点から
 
 
外部の人材や組織に関する情報が不足
学校と外部の人材や組織を結びつける機能が不在
 
 総合的な学習の時間を中心に、現状においても、学校の外部にある人材等を学校教育に積極的に登用することが行われている。例えば、豊富な海外経験を有する企業退職者が特別非常勤講師となり、世界各国で生活した体験に基づき、外国の生活・文化・政治・経済等を、わかりやすい形で子どもたちに語るということが行われている。
 また、国際協力機構[JICA(ジャイカ)]、国連児童基金[UNICEF(ユニセフ)]、国連世界食糧計画[WFP]等国際機関では、開発途上国の風土や暮らしぶりを紹介する写真教材等を通じて途上国の現状や課題について理解を深めるための教材やカリキュラムを開発しているほか、国際協力を実体験するプログラムを提供するなど、幅広い活動を行っている。
 このほか、地域の外国人を学校に招き、自国の文化や生活を紹介してもらい、交流を行うという取組も多く行われている。
 国際教育を充実させるためには、様々な形で学校の外部にある教育資源を活用していくことが必要であるが、すべての学校で取組が進んでいるわけではないとの指摘がある。この背景には、情報の共有や連携のための体制づくりが十分でないため、求める活動形態や学習課題に最適の組織等を見つけることができない、連携しようとする組織等の実態や実績について分からないなどの理由が考えられる。
 また、限られた時間の中で、特別非常勤講師等外部の人材の登用の効果を上げるためには、授業の目標や授業内容に関する打合せ等十分な事前準備や、児童生徒に対する事前・事後の学習などしっかりとした授業計画に基づいて行われることが重要であり、経費的な面とあわせて、学校側の受入体制を整えることが必要であるとの指摘もある。

  (5)海外子女教育という観点から
 
 
海外子女教育の成果の検証が必要
海外在留期間の長期化や現地校志向の高まり、子どもの低年齢化などの状況の変化への対応が必要
 
 国際教育の柱の一つである海外子女教育については、従来より、その時々の海外子女を取り巻く教育上の課題と改善方策について提言されてきており、それらの報告等に基づき、関係機関において施策の充実等が図られてきている。一方で、海外における幼児教育の在り方、補習授業校における教育など、なお一層の充実が求められる課題がある。
特に、海外在留期間の長期化や現地校志向の高まり、海外勤務者の若年化に伴う子どもの低年齢化など、さらには、現地や国際結婚による子どもの受入など、海外子女教育を取り巻く状況も変化している。
 海外子女教育と連動している帰国児童生徒教育については、近年、児童生徒が帰国後に居住する地域の分散化が進んでいる。また、海外滞在期間の長期化、幼少時の海外渡航などにより、日本語能力の向上や日本の学校への適応のための一層の支援の必要性などが指摘されている。

  (6)学校の多国籍化・多文化化という観点から
 
 
外国人児童生徒の増加、多様な言語と文化、在籍する地域・学校の集中と分散の傾向
日本語指導や学習支援など適応指導の充実の必要性
  不就学や母語の保持など新たな課題の出現
 
 現在、公立義務教育諸学校には、多数の外国人児童生徒が在籍している。ポルトガル語、中国語、スペイン語を中心に多様な母語を有する子どもたちが、日本国内の多数の公立学校に通っており、学校の多国籍化・多文化化が進んでいる。
 外国人児童生徒の公立学校への受入が増加した当初、これらの児童生徒の教育上の主たる課題は初期日本語指導であり、日本の学校生活への円滑な適応であった。しかし、日本で生まれ育った外国人の子どもたちが多数、義務教育諸学校に進むようになり、教育上の課題として、日常会話には不自由しないが、教科の学習内容を十分に理解するレベルの日本語能力を有していない児童生徒への日本語指導の充実が指摘されるようになった。また、各学校において国際理解に関する取組が広まるにつれ、外国人児童生徒のもつ異文化性など個の特性を生かした指導の在り方が求められるようになってきた。最近の新たな課題としては、公立義務教育諸学校や外国人学校で教育を受けていない子どもたちの問題や母語を十分に習得していない子どもたちの問題がある。
 日本に生活する外国人の増加が見込まれる中、日本の学校に通う外国人の子どもたちは今後とも増えることが予想される。外国人児童生徒の教育は、極めて重要な課題として、その充実を図ることは不可欠である。

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