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第2章   学校施設のバリアフリー化等に係る計画・設計上の留意点

 計画・設計上の基本的留意事項
(1)  関係者の参画と理解・合意の形成
 学校施設のバリアフリー化を推進するためには、施設整備に関する企画、基本設計、実施設計及び施工の各段階において、学校、家庭・地域、行政(教育委員会、営繕部局、都市計画部局、財政部局、防災部局)等の参画による総合的な検討を行うことが重要である。

(2)  適切な整備目標の設定
 学校施設のバリアフリー化に関する整備に際しては、個々の学校における施設利用者の特性、施設用途、立地環境、運営面でのサポート体制等に対応し、過度な整備とならないように適切な整備目標を設定することが重要である。整備目標の設定に当たっては、新築建物のみならず、既存建物においても多様な人々が安全かつ円滑に利用できるように、ユニバーサルデザインの観点から検討することが重要である。
 また、必要に応じて整備目標を段階的に設定し、計画的に整備することも有効である。

(3)  バリアフリー化等の事後点検の実施
 施設利用者からのニーズの進展や多様化に対し、改修整備等を柔軟に実施できるように計画することが重要である。
 また、事後点検を実施する組織を設置し、定期的に施設利用者と情報交換等を行い、施設のバリアフリー化等の状況について検証することは、バリアフリー化の進展のために有効である。

 わかりやすく、円滑に建物に至ることができる配置計画
(1)  外部から建物に出入りしやすい建物配置
 敷地境界及び駐車場等から明確で、できる限り段差のない建物配置とすることが重要である。

(2)  建物間の移動がしやすい建物配置
1  校舎間、校舎と屋内運動場間等の移動については、動線が短く、できる限り平面移動が可能な建物配置とすることが重要である。
2  児童生徒数の将来動向を的確に検討、把握し、長期的な視野に立った建物配置とすることが重要である。

(3)  安全で移動しやすい敷地内通路
1  敷地境界及び駐車場から建物の出入口までの通路、建物間の通路等の敷地内通路は、歩行者と車の動線を分離した計画とし、安全かつ円滑に利用できるものとすることが重要である。
2  敷地内通路は、できる限り段差を設けず、表面は滑りにくい仕上げとすることが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。
3  スロープや階段を設ける場合は、安全で使いやすいように、その手前に存在を認識できる措置を講じるとともに、勾配、手すりの設置等に配慮することが重要である。
4  通路やスロープを横断する排水溝等の蓋は、通路面との段差をなくし、蓋のスリット等は杖や車いすのキャスタ等が落ちないように配慮することが重要である。
5  視覚障害者が敷地境界から受付やインターホン等の案内設備まで安全に到達できるように、音声・点字等による案内の設置又は視覚障害者誘導用ブロックの敷設等の配慮をすることが重要である。
6  階段、スロープ等は、認識しやすいように他の部分と色相や明度の差を大きくしたり、材質を使い分けるなどの配慮をすることが望ましい。

(4)  建物から円滑に移動できる屋外運動場
 建物の出入口から屋外運動場へ至る通路には、できる限り段差を設けないように計画することが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。

(5)  利用しやすい駐車場
1  建物の出入口に到達しやすい安全な位置に、十分なスペースを持つ車いす使用者等の利用する駐車場を確保することが望ましい。
2  車いす使用者等の利用する駐車場には、わかりやすい表示をすることが望ましい。

 わかりやすく、快適に動きやすい平面計画
(1)  どこにでも円滑に移動できる平面計画
1  同一階においては、できる限り段差を設けず、平面移動が可能な計画とすることが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。
2  障害のある児童生徒等が利用する教室等が複数階にわたる場合には、エレベーター等の昇降設備を設置することが重要である。

(2)  動線が簡明な平面計画
1  児童生徒の利用スペースを集約して計画したり、可能な限り遠回りとならない動線を設定する等、動線が簡明な平面計画とすることが重要である。
2  児童生徒等が、まとまりのある活動空間を通り抜けることなく、それぞれの必要に応じ円滑に移動することができるように明確な動線を設定することが重要である。

(3)  認知・把握がしやすい明確な空間構成
 建物内での自分の位置を認知・把握しやすくするとともに、教職員が児童生徒の行動を見通せるように、明確な空間構成とすることが重要である。

(4)  安全で移動しやすい避難経路の確保
1  災害時の避難経路は、できる限り段差のない経路を確保するとともに、明確な動線とし、屋外又は一時待機スペースまで可能な限り一人で避難できるように配慮した計画とすることが重要である。なお、一時待機スペースから屋外までの避難及び一人で避難することが困難な児童生徒等の避難については、運営面でのサポート体制と連携し、安全かつ円滑に実施できるように配慮した計画とすることが重要である。
2  多人数が同時に利用する施設を避難階以外の階に計画する場合は、複数の避難動線を設定する等、非常時の迅速な避難に配慮した計画とすることが重要である。
3  避難経路は、児童生徒が日常的に利用している経路と同一になるように配慮することが望ましい。
4  防火戸は、車いす使用者が通過できる仕様のものを設置することが望ましい。

(5)  誰にでもわかりやすい案内表示
1  案内表示は、建物の出入口やエレベーターホールなど、動線の要所に、利用者が認知しやすく、通行の支障にならない位置に設置し、日本工業規格(JIS)の案内用図記号*6を用いるなど、わかりやすいものとすることが重要である。
2  屋外運動場、屋内運動場、図書館等の学校開放や災害時の応急的な避難場所等として不特定多数の者が利用する施設は、外部から認識しやすい位置、大きさで施設名を表示することが有効である。
3  視覚障害者の利用に配慮して、点字表示や案内・サインの拡大表示等を行うことが有効である。
4  視覚障害者や聴覚障害者の利用に配慮して、避難口誘導灯は自動火災報知器と連動して誘導音、点滅機能及び非常文字表示装置等を設置することが有効である。

 使いやすく、安全で快適な各室計画
(1)  利用しやすい教室等
1  柱や壁のコーナーの面取りを行うとともに、できる限り突起物、支障物をなくすなど、鋭利な凹凸のない空間とし、多様な行動に対し十分な安全性を確保することが重要である。
2  適正な吸音性能を持つ天井、壁材を採用することが重要である。特に、一定の静寂さを必要とする空間については、適度の遮音性を持つ仕様とすることが重要である。
3  安全性、快適性に配慮して、適度に弾力性があり、柔らかな手触りや暖かみのある素材を採用することが有効である。
4  障害のある児童生徒の学習方法に配慮して、教室内に教材・教具等が適切に配置できるスペースを確保したり、障害に応じた専用の学習コーナー等を設置できるように計画することが有効である。

(2)  移動しやすい屋内の通路
1  屋内の通路は、できる限り段差を設けず、突起物、支障物をなくすなど、安全でわかりやすい動線となるように計画することが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。
2  屋内通路は、安全かつ円滑に利用できる幅員を確保することが重要である。
3  スロープは、車いす使用者だけでなく、多様な人々が安全で使いやすいように、勾配、手すりの設置等に配慮することが重要である。
4  床と壁の立ち上がりの境を視認しやすくするため、床と壁の仕上げは、色相や明度の差を大きくしたり、材質を使い分けるなどの配慮をすることが望ましい。
5  車いす使用者に配慮して、必要に応じて通路の壁には車いすフットレストあたりを設置することが有効である。
6  障害のある児童生徒等の利用に配慮して、必要に応じて滑りにくい材質の手すりを設置することが有効である。
7  通路内に休憩できるスペースを設ける場合は、腰掛け等を設置するとともに、車いす使用者のスペースにも配慮することが有効である。

(3)  円滑に利用できる階段
1  階段は、安全かつ円滑に利用できる幅員及び勾配を確保するとともに、表面は滑りにくい仕上げとすることが重要である。
2  階段は、段の上端と下端を認識しやすくするため、色相や明度の差等に配慮することが重要である。
3  主要な階段は、直階段又は折り返し階段とし、踏面及び蹴上げの寸法は一定とすることが重要である。
4  段鼻は、識別しやすく、つまずきにくいものとすることが重要である。
5  手すりは、視覚障害者にとっては有効な誘導サインともなるため、設置位置などに留意し、連続して設置することが有効である。
6  視覚障害者の利用に配慮して、階段の手すりに階数を点字で表示することが有効である。

(4)  利用しやすいエレベーター
1  エレベーターは、障害のある児童生徒等が利用しやすいように、主要な経路に隣接して設置し、案内表示を適切に設置することが重要である。
2  エレベーターの間口、かごの形状・大きさ、操作盤の位置、手すり等は、障害のある児童生徒等の利用を配慮して設置することが重要である。
3  エレベーター乗降ロビーは、前面に車いす使用者が回転できるスペースを確保することが重要である。また、車いす使用者が直進でエレベーターに進入又は退出できるように設置することが望ましい。
4  障害のある児童生徒等が、休憩時間内に円滑に移動できるよう、要所にエレベーターを設置することが望ましい。
5  エレベーターのかご及び昇降路の出入口の戸には、エレベーターのかごの中を見通すことができるガラス窓を設置することが望ましい。
6  視覚障害者の利用に配慮して、エレベーター乗降ロビーの押しボタンやかご内の操作盤等に、点字等の表示を行うことが有効である。
7  聴覚障害者の利用に配慮して、緊急時の応答、過負荷ブザー等の音声情報を視覚情報等でも表示することが有効である。

(5)  誰もが利用できる便所
1  便所は、障害のある児童生徒等の利用に配慮した計画とし、車いす使用者用便房*7を設置することが重要である。
2  車いす使用者用便房を設置する便所については、便所及び便房の出入口並びに通路について、車いす使用者の通行が可能な幅員を確保することが重要である。
3  床面は滑りにくい仕上げとし、便所及び便房の出入口並びに通路は段差をなくすとともに、戸を設ける場合には円滑に利用できる仕様とすることが重要である。
4  小便器の一個以上は、床置式又は壁掛式低リップ*8とし、手すりを設置することが重要である。
5  障害のある児童生徒等が休憩時間内に教室を移動しながら利用することを考慮し、各階に車いす使用者用便房を設置することが望ましい。
6  多機能便房*9については、多機能便房以外の便所と一体的又はその出入口の近くなど、適切な位置に設置することが望ましい。
7  車いす使用者用便房や多機能便房には、緊急通報ボタンを設置することが望ましい。
8  洗面台の一個以上は、座位でも容易に使用できる高さ、使いやすい水栓の設置、車いすでひざ下が入るスペースの確保等の措置を講じることが望ましい。
9  視覚障害者の利用に配慮して、洗浄ボタン、ペーパーホルダー等の機器の配置を統一することが有効である。
10  視覚障害者の利用に配慮して、案内板等に便所の位置及び男女の別を点字等により表示することが有効である。
11  視覚障害者や聴覚障害者の利用に配慮して、便房の戸に使用中か否かの表示装置をわかりやすく設置することが有効である。

(6)  出入りしやすい教室等の出入口
1  出入口は、車いす使用者の通過を妨げるような段差を設けず、通過可能な幅を確保するなど、安全かつ円滑に利用できるように配慮することが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ等を設置することが重要である。
2  出入口の戸は、開閉しやすい形式のものを設置することが重要である。
3  車いす使用者が戸の開閉や出入りを行うために必要なスペースを確保することが望ましい。
4  出入口の戸のガラス等は、衝突時の事故防止等に配慮することが望ましい。
5  視覚障害者の利用に配慮して、点字や浮き彫り文字により表示を行うことが有効である。

(7)  建物に出入りしやすい昇降口、玄関
1  建物に出入りしやすいように、分かりやすい位置に、昇降口、玄関及び受付の配置を計画することが重要である。また、運営面でのサポート等の観点から、職員室や事務室等の配置にも考慮して計画することが重要である。
2  昇降口、玄関は、床面を滑りにくい仕上げとし、車いす使用者の通過を妨げるような段差を設けず、通過可能な幅を確保するなど、安全かつ円滑に通過できるように配慮することが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切なスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。
3  出入口の前後には、車いす使用者が方向転換できるスペースを確保することが重要である。
4  昇降口、玄関の戸は、開閉しやすい形式のものを設置することが重要である。また、必要に応じて、自動ドアを設置することが望ましい。
5  昇降口、玄関の戸のガラス等は、衝突時の事故防止等に配慮することが望ましい。
6  受付の位置は、高齢者、身体障害者等に対する情報提供やサポート等の運営体制を考慮して計画することが有効である。
7  出入口付近に受付カウンターやインターホン等の案内設備を設置することが望ましい。この場合、視覚障害者誘導用ブロックや音声により案内設備への誘導を行うことが有効である。
8  視覚障害者や聴覚障害者の利用に配慮して、建物や施設の情報案内を点字、音声、文字等により適切に表示することが有効である。
9  車での送迎が必要な児童生徒等の利用に配慮して、車寄せには屋根を設置することが有効である。

(8)  操作がわかりやすい建築設備
1  建築設備は、操作しやすく、わかりやすいものとすることが重要である。
2  スイッチ、コンセント、手洗い場等の設備は、大きなものを使いやすい位置に配置することが重要である。
3  放送、音響設備は、聴き取りやすいように配慮することが重要である。また、聴覚障害者に配慮して、放送、音響設備とともに文字情報を提示する電光表示板等を設置することが有効である。
4  施設利用者の特性や施設用途、立地環境等を考慮し、聴覚障害者の利用に配慮して移動式又は固定式磁気ループ*10等を設置することが有効である。

(9)  利用しやすい家具
1  黒板、机、いす、各種棚等の家具は、利用者の体格に配慮して設置することが重要である。
2  高さ等の調整が可能な机、いす、黒板等を設置することが望ましい。
3  視覚障害者が楽な姿勢で読み書きを行うことができる傾斜調整が可能な机や、点字機器、教材拡大機器等を使用できる広い机面の机など、障害の特性に配慮した家具を配置することが有効である。

(10)  適切な照明設備
 施設利用者の特性、施設用途、立地環境、照明の用途等を考慮して、見やすくまぶしさのない良質な光の得られる照明器具を選定するとともに、適切な照度、照明器具の位置等を計画することが重要である。

(11)  明確な色彩計画
 色彩計画は、その組合せ等により、エリア表示、誘導方向表示、サインなどと代替可能であるため、色相や明度の差に配慮するとともに、視覚面や心理面での効果等を十分に検討して計画することが重要である。



*6  案内用図記号:日本工業規格のJIS Z 8210(案内用図記号)により規定。
*7  車いす使用者用便房:車いす使用者が円滑に利用することができるように、腰掛便座、手すり等が適切に配置され、十分な空間が確保されている便房。
*8  壁掛式低リップ:前方に張り出した受け部(リップ部)が床置式と同様に低く設計されている小便器。
*9  多機能便房:障害のある児童生徒、高齢者、身体障害者に限らず、乳幼児を伴う者等の多様な人々が可能な限り容易に利用できるように、腰掛便座、手すり、オストメイト用の汚物流しや水栓、オムツ交換シート等を設置し、車いすの回転や介助者の同伴等多様な動作が可能な空間が確保されている便房。
*10  磁気ループ:教室やホールの床下などに電線をループ状に敷設し、アンプ等を通して音声信号の電流を流すことにより磁場を形成する。そして補聴器の誘導コイル(テレホンコイル)でその磁気を受信し音声信号として聞きとるシステムである。騒音に強く、電線が敷設されたループの中では、話し手との距離に左右されずに、どこにいても安定した状態で音声信号を聞くことができる。


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