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第1章 大学施設の管理運営をとりまく状況

1. 国立大学等の法人化による変化

 
法人化に伴う施設関係財源の変化
   平成16年4月の国立大学等の法人化により、従来の国立学校特別会計が廃止され、国立大学等施設の整備及び管理運営に必要な経費として国から措置されるのは、施設整備費補助金等(施設整備費補助金、施設費交付金、長期借入金)と運営費交付金の2本立てになった。(他に自己財源、外部資金がある。)
 運営費交付金には施設の管理運営に必要な経費として、修繕、点検保守、清掃、警備等及び施設の劣化防止を対象とした「教育等施設基盤経費」が算定されている。(光熱水費は別途教育研究経費等に含む。)教育等施設基盤経費は各大学等の施設保有面積をベースに算出され、平成17年度は国立大学全体(大学共同利用機関を含む。ただし、附属病院施設を除く。)で約520億円が計上されている。この他に施設整備費補助金若しくは施設費交付金を財源とする営繕費があり、平成17年度は約54億円が計上されている。

法人化で高まるコストマネジメントの重要性
   運営費交付金は、「特別教育研究経費」等の増額要因を含め、全体として教育研究の水準維持に必要な経費が配分されている一方、国立大学等は効率化係数と附属病院の経営改善係数への対応に積極的に取り組むことが必要になった。このような制度の中で教育研究の実効を高めるには、運営経費全体の効率化が必要であり、その一環としてコストマネジメントによる施設運営コストの効率化が不可欠である。
 運営費交付金は大学等の裁量による執行が可能な経費であり、大学等は自らの方針に基づく弾力的な予算執行を行う一方、学内外に対する説明責任が求められる。各大学等は法人化のメリットを最大限に活用し、従来の既成概念にとらわれない創意工夫の実践と情報交換を通じ、切磋琢磨していくことが極めて重要である。


2. 大学施設の適正な水準維持の重要性

 
大学のアイデンティティーの重要な要素
   キャンパスや校舎は、学生、教職員、卒業生にとっては自大学への愛着や誇りのみなもとであり、来訪者にとっては、当該大学の活動状況や社会的地位等を測る要素の一つである。さらに、受験生にとっては、施設の充実度は志望校を選択する上での大切な要素といえる。
 大学等がその施設を長期的な計画に基づき適切に整備し、維持管理することは、自らの魅力を高めることにつながり、優秀な学生や研究者を獲得する上での重要な条件である。

国際的な水準の確保、安全性の確保
   国際社会への貢献並びにわが国の活力の維持の観点から、諸外国の研究者及び留学生の受け入れが重要である。そのため、諸外国の大学施設の整備状況を勘案し、内外の優秀な研究者を引き付けるような教育研究環境を備える必要がある。
 また、教育研究の安全を確保することは大学として最も基本的な責務であり、これに必要な設備の整備や機能の維持は、大学等の施設運営の最も基礎的な業務である。安全対策や環境保全対策は年々規制が強化されつつある分野であり、各大学等は教育研究活動の実状に応じ、法令遵守の精神を基本に、関係法令等に則った対策を講ずる必要がある。

国から出資された資産に対する説明責任
   国立大学等の施設の大半は、法人発足時に国から出資されたものであることから、国立大学等は、これらを有効に活用しかつ将来にわたって適切に維持していくとともに、その実施状況を国民に対し説明する責任がある。施設の劣化や機能低下は資産価値の減少と同義であり、大学運営にも悪影響をもたらす。


3. 大学施設のコストマネジメントの必要性

 
効率的な財務経営への寄与
   大学等における施設関連経費は、新増改築や大規模改修等の投資的経費と、修繕費、点検保守費、運転監視費、清掃費、警備費及び光熱水費等の経常的経費で構成される。これらの経費が運営経費に占める割合は少なくなく、その増減は財務経営に大きく影響する。
 しかし、単なるコスト縮減は安全衛生の確保や教育研究の遂行に影響を及ぼし、大学等の活力低下や資産価値の低下を招くことに他ならず、適切なコストマネジメントによる合理的な対応が必要である。仮に施設の修繕費や老朽機器(照明、空調等)の更新費をカットして一時的に運営コストを下げても、なすべき事の先送りでは、施設の劣化を早め将来の経費を増加させる結果を招く。
 コストマネジメントの実現には、必要なことには応分の経費を充てるメリハリのきいた経費配分と、配分された経費の執行に最も経済的メリットの高い手法を駆使するという二つの要素を併せ持つことが必要である。

公共工事のコスト縮減の一環
   公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議(平成15年9月18日)において、「公共事業コスト構造改革プログラム」が決定され、国立大学等の施設整備費も対象となっている。このプログラムは公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直すもので、平成19年度までに15パーセントのコスト縮減が目標である。
 目標の達成には、建設コストの縮減に加え、新たに規格見直しによるコスト縮減、事業の迅速化による便益向上、将来の維持管理費の縮減があげられており、これらはいずれもコストマネジメントの目標に合致する。

省エネルギー対策の強化
   エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」という。)が平成14年6月に改正され(平成15年4月1日施行)、第一種エネルギー管理指定工場注釈1の指定対象が全業種に拡大された。大学等はこれまでエネルギー管理員の配置義務のみであったが、エネルギー消費原単位を年平均1パーセント以上低減させることが求められることとなった。
 さらに、第一種エネルギー管理指定工場に該当する場合はエネルギー使用合理化の中長期計画の作成や定期報告が、第二種エネルギー管理指定工場注釈2に該当する場合には定期報告が、それぞれ義務付けられた。
 大学等では教育研究の高度化に伴ってエネルギー消費量が増加傾向にあり、断熱性能や空調機器等の効率アップ、使用者の省エネルギーマインドの向上等により、教育研究活動の活力を維持しつつ、エネルギー消費原単位注釈3を低減させていく必要がある。
 
注釈1 第一種エネルギー管理指定工場
 燃料等の年度使用量(原油換算)3,000[キロリットル]以上、または、電気の年度使用量1,200万[キロワットヘクタール]以上
 国立大学65団地、私立大学46団地が該当
注釈2 第二種エネルギー管理指定工場
 燃料等の年度使用量(原油換算)1,500[キロリットル]以上、または、電気の年度使用量600万[キロワットヘクタール]以上
 国立大学42団地、私立大学74団地が該当
注釈3 エネルギー消費原単位
 大学の場合、業務のために要したエネルギーの使用量を建物延床面積その他の当該業務に供した施設の規模等エネルギーの使用量と密接な関係をもつ値で除して得た値

京都議定書の発効
 国際的な気候変動対策を進めるため、平成9年に地球温暖化防止に係る京都議定書が採択され、平成17年2月に発効した。その骨子は、温室効果ガス注釈4排出量を平成20年から5か年で、平成2年を基準に先進国全体の少なくとも5パーセント削減することであり、このうち日本は6パーセント削減することとされている。
 平成14年度のわが国の温室効果ガスの総排出量は13億3,100万トンで、基準となる平成2年の総排出量12億3,700万トンを7.6パーセント上回る状況である。大学等からの排出量は、国立大学だけでも年間150万トン以上と推定され、大学等としての社会的責務を果たす観点からも削減努力が不可欠である。
 
注釈4 温室効果ガス
 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCS)、パーフルオロカーボン類(PFCS)、六フッ化硫黄(SF6)


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