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序章 大学の施設運営をとりまく状況

1.大学施設の適正な水準維持の重要性

  教育研究の発展の基盤
 
   大学施設は、独創的・先端的な学術研究や創造性豊かな人材育成のための活動拠点であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって、不可欠な基盤である。
 それぞれの大学の目標に向けた教育研究を円滑に進めるため、対応する施設の量と質を適正な水準に保つ必要がある。

  大学のアイデンティティーの重要な要素
 
   在学生、教職員にとって、キャンパスや校舎は自大学への愛着や誇りに密接に関連しており、また、来訪者にとってキャンパスや校舎の現況は、当該大学の活動状況や社会的地位等を測る要素の一つであると考えられる。施設が長期的な計画に基づき適切に整備され、また、維持管理されることにより、当該大学の魅力を高めることにつながる。
 また、大学に進学する者にとって、「施設の充実度」は志望校選択基準の上位にあると考えられる。
   国際的な貢献、わが国の活力の維持等の観点から、諸外国の研究者及び留学生の受け入れが重要であるが、そのためには諸外国の大学施設の整備状況を勘案し、国内外の優秀な研究者を引き付けるような研究環境を備えることが必要である。

  説明責任の遂行
 
   平成16年4月に、国立大学法人が国立大学法人法により発足した。
 国立大学法人の施設は、法人発足時に法人の業務を確実に実施するために必要な財産的基礎として国から出資されたもの及び発足後施設整備費補助金によって整備されたものがほとんどであることから、国立大学法人は施設を教育研究のために有効活用できるよう、適正に維持管理する責務がある。
   一般に大学の建物は超長期に使用されるため、必要な水準設定の見直しを行い適時適切な維持保全を行い、教育研究の安全を確保することや機能の陳腐化による教育研究への制約、そのことに起因する利用率低下を避けること等を利用者に保障していく必要がある。
   従って、施設を適切な水準に維持管理すると共に、その実施状況等を国民に対し説明する責任があると考えられる。


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2.大学施設のコストマネジメントの必要性

  効率的財務経営に寄与
 
   大学における施設経費は、新増改築工事、大規模改修及び修繕の工事費、法令等に基づく点検保守費、ボイラーや廃水処理施設等の運転監視費等で構成される。
 また、清掃や警備等は建物の配置や構造等によって費用が変動するなど施設と密接な関係にある。さらに、光熱水料についても、建物の断熱や自然採光方式、建築設備機器の効率などと密接な関係にある。
 これらの施設経費及び関連する経費(以下「施設関連コスト」という。)の大学の運営費に占める割合は大きく、その増減は財務経営に大きく影響する。
 財務的観点からだけの無理なコストの削減は、安全衛生の確保や教育・研究の成果に悪影響を及ぼすおそれがあるため、適切なマネジメントを行う必要がある。

  国立大学法人発足でより重要化
 
   国立大学法人制度への移行により各大学の自主性・自律性が大幅に拡大し、弾力的な運営を行うことが可能となった。各大学等は法人制度のメリットを最大限に活用し、それぞれの個性を生かした工夫と取組を積み重ね、切磋琢磨していくことが国民の期待に応えることになると思われる。
 運営費交付金については、これを有効に活用し、さらに効率化を図ることが求められており、教育研究の実効を高めるためには、施設マネジメントによる施設関連コストの合理化が不可欠であると考えられる。

  公共工事のコスト縮減の一環
 
   公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議(平成15年9月18日)において、「公共事業コスト構造改革プログラム」が決定された。
 このプログラムは、従来から取り組んできたコスト縮減の行動計画に加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直すというもので、平成19年度までに15パーセントのコスト縮減を図ることとしている。この縮減目標の達成には新たに(ア)規格の見直しによるコストの縮減、(イ)事業の迅速化が図られることによる便益の向上、(ウ)将来の維持管理費の縮減、によるものが加えられた。
 尚、このプログラムは国立大学の施設整備費補助金も対象としている。
 新たに示された公共工事コスト縮減の方策は、いずれも施設マネジメントの目標に合致するものであり、公共工事コスト縮減の一環としても施設のコストマネジメントに積極的に取り組むことが有効である。


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3.省エネルギー推進の必要性

  省エネルギー法の改正
 
   エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下省エネルギー法という。)が平成14年6月に改正され(平成15年4月1日施行)、製造業等5業種注釈1に限定されていた第一種エネルギー管理指定工場の指定対象が、全業種に拡大された。
 従来、大学はエネルギー使用量が多い場合でも、キャンパスにエネルギー管理員を置くこと等が義務付けられるのみであったが、この省エネルギー法改正により第一種エネルギー管理指定工場に該当する場合、エネルギー使用の合理化の目標達成のための中長期的な計画の作成、定期の報告が必要となった。
 また、第二種エネルギー管理指定工場に該当する場合、定期の報告が義務付けられた。
 なお,省エネルギー法では,エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1パーセント以上低減させること等が求められる。
   
資料>
  第一種エネルギー管理指定工場
 
  燃料等の年度使用量(原油換算) 3,000キロリットル以上
または、電気の年度使用量 1,200万キロワット時以上
国立大学65団地、私立大学46団地が該当

  第二種エネルギー管理指定工場
 
  燃料等の年度使用量(原油換算) 1,500キロリットル以上
または、電気の年度使用量 600万キロワット時以上
国立大学42団地、私立大学74団地が該当

  エネルギー消費原単位
   大学の場合、業務のために要したエネルギーの使用量を建物延床面積その他の当該業務に供した施設の規模等エネルギーの使用量と密接な関係をもつ値で除して得た値

   省エネルギー法は、内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資することが目的であり、大学を含む民生事業部門の影響を無視できないとして改正が行われたものである。
 大学においては、教育研究内容の高度化に伴い、エネルギー消費量が増加することが考えられ、建物の断熱や建築設備機器の効率の向上など積極的な施設マネジメントの取り組みにより、大学の活力を維持しつつエネルギー消費原単位を低減させていくことが必要である。


注釈1 製造等5業種 製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業


  京都議定書の発効
 
   国際的な気候変動対策を進めるため、平成9年に地球温暖化防止に係る京都議定書が気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議(COP3)において採択された。その骨子は、温室効果ガス注釈2排出量を平成20年(西暦2008年)から平成24年(西暦2012年)の5か年で、平成2年(西暦1990年)を基準に先進国及び市場経済移行国全体として少なくとも5パーセント削減することであり、このうち日本は6パーセント削減することとされている。京都議定書の発効には一定条件を満たす関係各国の批准が必要であったが、平成17年2月にそれを満たし発効した。
   
資料>
 
(1) 京都議定書とは
 気候変動枠組条約の目的を達成するためCOP3(第3回締約国会議)で採択された議定書。先進国等に対し、温室効果ガスの排出量を1990年比で、2008年〜2012年に一定数値(日本6パーセント、アメリカ7パーセント、EU8パーセント)を削減することを義務づけている。また、右削減を達成するための京都メカニズム等を導入。我が国は平成14年6月4日締結。現在140カ国及び欧州共同体が締結している(平成17年2月2日現在)。ロシアの締結により発効要件が満たされ、平成17年2月16日に発効。
 
参考)京都議定書の発効要件
 55カ国以上の批准、及び締結した附属書1国(先進国等)の1990年における二酸化炭素の排出量の合計が全附属書1国の1990年の二酸化炭素の総排出量の55パーセント以上を占めること。

(2) 気候変動枠組条約
 大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン等)の増大が地球を温暖化し自然の生態系等に悪影響を及ぼすおそれがあることを背景に、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的として、1992年の地球環境サミット(UNCED。於リオ・デジャネイロ)で署名のため開放された条約。1994年に発効。現在我が国を含む188カ国及び欧州共同体が締結(平成16年5月現在)。

   平成14年度(西暦2002年度)のわが国の温室効果ガスの総排出量は13億3,100万トンであり、基準年である平成2年の総排出量12億3,700万トンと比べ、7.6パーセント上回る状況である。国立大学だけでも年間排出量150万トン以上と推定される大学等においても、排出量削減の努力が不可欠である。
 今後、地球温暖化対策の推進に関する法律の改正により、エネルギー消費の大きい事業所(大学等を含む)に関する対策が強化される予定であり、また、政府機関の率先行動計画の策定も検討されている。


注釈2 温室効果ガス
 二酸化炭素(シー オー ツー)、メタン(シー エイチ フォー)、一酸化二窒素(エヌ ツー オー)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCS)、パーフルオロカーボン類(PFCS)、六フッ化硫黄(エス エフ シックス)


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