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第2節 量子ビーム産業利用研究会の組織化
本検討会の中間とりまとめを踏まえ、原子力機構や理研、高エネ機構等のビーム施設関係者を主体として、関連する産業界関係者の参画を得て「量子ビーム産業利用研究会」を試行的に開催する運びとなった。この研究会は、新たな産業利用の促進が期待される課題(ニーズ)を持つ企業ないしは企業団体等とビーム施設を有する研究機関(シーズ)等とが、具体的な研究開発課題にテーマを絞り込んで議論することを目的としている。
第1回研究会は、本年9月日本原子力研究所(現・原子力機構)東海研究所において開催され、ポリグルタミン酸(PGA)を研究する産学協同コンソーシアムからPGAの架橋反応と水の吸着・放出特性との相関についての課題を受け、中性子ビーム施設の研究者を中心に当該課題の解明のための効果的な方法が検討された。その結果、中性子小角散乱法等を用い、架橋反応過程等を動的に捉え、当該過程における吸湿・放出特性を調べることにより、両者の相関に係る知見が得られる可能性があることが見出された。こうした議論を踏まえ、企業側と施設側研究者との間で、早速共同研究の実施が検討されるなど、相応の成果が得られた。
第2回研究会は、本年12月理研和光研究所において開催され、食品関連産業、農林水産系企業・研究機関の参画の下、希少RI供給及びビーム育種の現状・将来について広範な討議がなされた。研究会での討議を通じ、イオンビーム育種による組換え体改変研究に係るビーム施設者側と利用者との共同申請により、競争研究資金獲得に成功した事例が紹介され、こうしたビーム利用研究における府省間・セクター間連携の有効性が示唆された。
2006年2月開催計画中の第3回研究会は、超伝導材料研究への中性子・放射光の相補的利用をメイントピックとして、施設者側や産学官の関係専門家の参画を得て、複数の量子ビームの相補的利用による当該研究分野の課題解明についての議論を予定している。
このような研究会は、ビーム施設側及び利用者側の研究者間の個別具体的な利用促進活動としての役割と同時に、新規ユーザー獲得といった当面の利用可能性の開拓という点でも有益であり、近接する業種のコンソーシアムや企業団体への波及効果も期待できることから、量子ビーム利用拡大の先鞭として極めて有効と考えられる。
今後は、より包括的かつ具体的に産業利用が期待されるニーズを吸い上げ、これらニーズに的確に応えていくためのシステムとして、主要分野毎に施設設置者、産業界の潜在ユーザー、大学等の関係専門家の参画を得て、こうした産業利用研究会を効果的に組織化していくことが望まれる。その際、複数のビームの相補的利用の有効性に留意するとともに、産業界の関心を効果的に喚起する上で、テーマ・領域の絞り込みに当たり、早期の「成功事例」創出を目指すことが重要と言える。但し、こうした成功事例の創出を図る上で、特定企業との踏み込んだ共同研究を行う必要が生じ、その際に当該企業との間で機密保持契約の締結等産学官連携のための所要の枠組み・ルールを整備することが必要となることに留意すべきである。
併せて、公的組織による成功事例の「顕彰制度」を創設・活用することにより、これら成功事例の成果を広く一般に喧伝し、関係する産業界の更なるビーム利用促進のためのインセンティブを付与することも有効と考えられる。
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