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第2節 ビーム利用に係る各種促進プログラムの導入
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<利用促進プログラムについて>
量子ビームについては、ナノテクノロジー・ライフサイエンス等最先端科学技術・学術分野から、幅広い産業利用が期待されているところであり、既存の大型施設はもとより、数年のうちに本格的なビーム供給を開始するJ-PARCやRIBFのポテンシャルを十分に引き出し、利活用を促進していくためには各種のプログラムを整備する必要がある。
既にイオンビームについては、重粒子線の医療利用や電子線による材料加工等、先駆的に産業利用が進んでいるが、量子ビーム全体で見れば、昨今の加速器技術の進歩によるビームの多様化や高品位化に比して、産業界に対する情報発信や利用機会提供の不足により、必ずしも十分な産業利用が進んでいるとは言い難い状況にある。
特に、中性子ビームの利用については、従来、研究用原子炉から供給される中性子線の利用が大部分であり、利用可能な施設がごく少数であることや安全規制上の厳しい制約等の理由から、必ずしも産業界等にとって利用しやすい環境が整っていたとは言い難い。さらに、これらの事情から、産業利用の観点からの中性子ビームの持つ特徴・利点や潜在的な利活用の可能性が関係コミュニティに十分認識されておらず、相乗的に情報不足が継続する状況にあった。
これらの状況を踏まえ、SPring-8の先行事例も参照すれば、今後の量子ビーム利用促進に向けた効果的なプログラムとして、以下の導入を検討することが望ましい。
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量子ビーム利活用コーディネータ等の設置
量子ビームを利用する最先端大型施設は数が少なく、産業界からの潜在的利用可能性についての認知度は必ずしも高くない。また、利用に際しての適切な相談先の不在により、積極的な利用や新規参入に対するインセンティブが働きにくい状況にある。
これらを改善すべく、ユーザとビーム供給者を効果的に結び、各種量子ビームの特徴や利用にあたっての条件等について幅広く相談に応ずるとともに、各種ビームの横断的・包括的利用を促進するためのコーディネータ及びアドバイザー(非常勤)を設置し、量子ビームの利用を促進する必要がある。
その際、結晶構造解析等においては、中性子ビーム利用と放射光利用との間に相補的な関係がある等、利用者の詳細かつ具体的なニーズを踏まえ、中性子ビーム、放射光を含む量子ビーム全体の横断的利用を視野に入れた、適切な助言や機動的な提案を行うことが有効である。これらの観点を踏まえ、適切なコーディネータの人選を行う他、ユーザの利活用課題の機密部分に係る秘密保持義務の仕組み等の体制整備に留意する必要がある。
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量子ビーム利活用トライアルユース制度の創設
放射光については、従来のX線利用の延長との認識から、産業界等においても比較的認知度が高く、利用に際しての敷居は低い。他方、中性子ビームについては、利用可能施設が極端に限られる上、中性子線に対するネガティブな一般的印象から、利活用に対するインセンティブが低いものであった。
しかし、水素原子との相互作用性やスピン偏極が利用できる点等、中性子線のみの持つ優れた特長は、今後産業利用において大きなブレイクスルーをもたらすことが期待され、また、今後、2008年度に予定されるJ-PARCのビーム供給開始以降は、より高品位なパルス中性子線の供給が可能となり、産業利用への期待はさらに高まる。
またRIビームについては、2006年度のRIBFの完成により、従来は未開拓であった元素のRIを世界に先駆けてビーム等として多種類・大強度で生成することが可能となる。これにより、調べたい現象・物質・時間に応じた元素(約3千種にわたるRI核種)を選択することが可能となり、医療・材料・環境等の分野における有用なツールとして利用が進展していくことが期待される。
これらの状況を踏まえ、RIビームの更なる産業利用促進やJ-PARCの本格運用に向けた中性子ビームの潜在的ユーザの開拓を図るため、原研高崎研究所の各種イオンビーム源及び東海研究所のJRR-3等を用いたトライアルユース制度を創設し、産業界等が実際に試行的に各種ビームを利用する機会を増やすための取組みを実施することが有効と考えられる。
その際、所要の支援サービスの提供等を通じ、長期的にユーザの確保を図るとともに、トライアルユース終了後のユーザのニーズを十分に把握した上で、実際の利用が実施できるような制度設計を行う必要がある。
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量子ビームのパブリシティ向上及び産業利用促進に向けた広報活動
量子ビーム利用についての潜在ユーザ開拓に向けた戦略的広報の強化及び一般的なパブリシティ向上を図るとともに、上記の「量子ビーム利活用コーディネータ等の設置」、「量子ビーム利活用トライアルユース制度の創設」の効果的推進の支援を行うため、先駆的な量子ビームの利活用事例紹介等を行う定期刊行物・ハンドブック等の発行や、量子ビーム技術の理解増進、利用者と供給者間のインターフェース強化等を目的としたポータルサイトの構築を推進することが有効と考えられる。
その際、既存の定期刊行物や関連ホームページ等との役割分担を意識し、必要に応じそれらを発展的に拡張する等の合理的方策を検討する必要がある。
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<プログラムの推進方策について>
これらのプログラムの実施に際しては、各分野のビーム利用において、産業界とのインターフェースの役割を有する関係専門機関に対し、横断的な共通基盤(プラットフォーム)としての効果的な量子ビーム利用環境システムを構築していくことが重要である。このため、こうしたプラットフォームの整備・運営を司る中核的な機関を設置し、一体的かつ体系的にプログラムを推進していくことが望ましい。(図表7(PDF:129KB)参照)
但し、この種の機関の設置に際しては、行政改革の流れの中で、新規組織・機関を創設することは予算的にも困難な状況にあり、既存の機関・組織を発展的に改組・活用する方向で検討を行う必要がある。その際、当該機関は、量子ビーム利用促進プログラムの性質上、原研等の有する量子ビーム利用施設等との相応のインターフェースを持ち、量子ビーム技術について専門的な知識を有する機関であることが望ましい。 |
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