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  第5節 専門研究者・支援者の育成のあり方

   量子ビームは、これまで学術研究における基幹プローブとして利用されるとともに、最近はがん治療、医薬品開拓、植物改良等様々な方面に利用が広がっており、これから益々量子ビームの利用は高まることが予想される。今後、量子ビームの利用促進及び利用者コミュニティ拡大を図るためには、物質・生命科学等ビーム利用に関する高い専門性を有する研究者の育成はもとより、主たるビーム供給源となる加速器に係る高い専門性を有する研究者や、利用者向け支援サービスを行うビーム利用支援者といった人材の育成が必要となる。
 現在、これら人材育成や教育の中心は大学であり、特に最先端の研究、新たな利用、高度化等を支える研究者の育成は主として大学院において行われているが、それらは大学共同利用機関による共同利用体制に支えられている部分も多い。また、オールジャパンでの人材育成や教育のためには、量子ビームに関する加速器施設は全国にバランスよく配置されることが望ましいが、先端加速器は大型化してきており、一大学での建設・維持が困難になってきているため、大学とは別の大型施設を共同利用する必要性が高まっている現状にある。
 このように、技術の進展と今後の利用可能性の拡大に鑑み、加速器に係る高い専門性を有する研究者やビーム利用支援者を育成するための方策として、
 
1 専門人材の育成・確保に向けた大学・大学院教育の充実・強化及びポスドク制度(海外への派遣を含む)の活用(例:総合研究大学院大学において設置計画中の高エネルギー加速器研究科の大学院5年一貫教育プログラムの活用、修士の学生を対象としたCERN夏期セミナーの活用等)
2 量子ビーム利用を支える専門技術者を対象とした研修・訓練の充実(例:粒子線医療のための医学物理士育成等)
  等を活用すると同時に、新たに、
 
3 先端的な量子ビームの活用により、高校生・大学学部生を対象とした教育・研修ができる仕組み(サマースクール等)を創出していくことも必要である。
   なお、高エネ機構で実施される加速器科学総合支援事業の活用により、人材育成の一翼を担う大学等が行う加速器科学の研究・教育について連携・支援を図るとともに、大学の学生に加え、民間の技術者に対しても加速器開発技術の提供・支援を行ったり、技術者を直接指導したりすることにより、幅広く人材育成の場を活用・展開していくことも期待される。
 また、産業界での量子ビーム関係の人材育成においては、大型加速器施設の適当な間隔での建設により技術継承が行われてきた面があるが、最近、産業界での加速器建設に対する技術が一部において空洞化が起こりつつある、と言われている。今後産業界での加速器技術者の技術承継のためには、大学、公的機関との人事交流や専門家のための講習会を開催する等により、技術者が常に新しい情報に触れられるような場所を提供することが有効であろう。

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