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4 教育内容に関する規定の大綱化

(1)  基本的考え方
 大学・短期大学について教育内容に関する指定規則の大綱化を図るに当たっては、次のような考え方に基づき検討を行った。
1  各大学・短期大学がその教育理念・目的に基づいた体系的な教育課程を偏成しやすいようにするとともに、看護学の発展や看護学教育の教育方法等の改善に対応できるように、授業科目等に関する個別かつ詳細な規定の簡素化を図る。
2  指定規則が看護職の教育に関し、教育内容の水準確保という機能を果たしていることを踏まえ、現行の指定規則に規定する教育内容の水準が大学・短期大学において担保され得るように配慮する。
3  大学設置基準等の大綱化の趣旨を生かすことができるよう、可能な限り大学設置基準等との整合性を図る。

(2) 基本方針
 教育内容は指定規則上、看護職の課程ごとに別表1(保健婦)、別表2(助産婦)、別表3(看護婦3年課程)及び別表3の2(看護婦2年課程)において、それぞれ授業科目及び授業時間数により規定されているが、これらの規定については、次のような方針で見直す必要がある。
1  授業科目について
(ア)  基礎科目(人文科学、社会科学、自然科学、外国語、保健体育)については、大学設置基準等の大綱化により、開設授業科目について、一般教育科目等の科目区分を廃止し、卒業要件についても科目区分別の必要単位数を廃止したことを受けて、指定規則では特段の規定はしないこととする。
 大学設置基準等において「教育課程の編成に当たっては、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない」旨規定されており、各大学・短期大学において教養教育の重要性に配慮した教育課程の編成がなされるものと考えられる。
(イ)  専門基礎科目(医学概論、解剖生理学等)については、個別の授業科目としてではなく、専門基礎教育の内容として大枠のみを規定し、教育内容の水準を確保しつつ各大学が自由な発想の下に多様な枠組み、名称で授業科目を編成できるようにする。
 現在規定されている授業科目は、医学・保健学・福祉学等看護学の近接領域であって看護学の専門教育の基礎となる教育内容を含むものであることから、その趣旨を表すような規定に改める。
(ウ)  専門科目(看護学概論、基礎看護技術等)については、個別かつ詳細に規定されている授業科目を廃止し、専門教育の内容として基礎看護学、成人看護学等の大枠のみを規定することにより、教育内容の水準を確保しつつ各大学・短期大学が自由な発想のもとに多様な枠組み、名称で授業科目を編成し得るようにする。
2  授業時間数について
(ア)  大学設置基準等においては、授業時間制ではなく単位制をとっていることから、指定規則においても単位数で規定することとする。単位制をとることにより、大学・短期大学における看護学教育の教育方法の開発の進展、他の学部との間での授業の相互履修、今後の学際分野の進展に対応した選択範囲の拡大等、各大学・短期大学において特色ある教育課程の編成が促進されることが期待される。
(イ)  専門基礎教育及び専門教育については、教育課程の多様な枠組み、名称で授業科目を編成し得るようにする趣旨を生かすために、個別の教育内容ごとに必要単位を示すことはせずに必要総単位だけとする。
 但し、現行の教育内容の水準を確保する観点から、現行の授業時間数を確保し得るように単位換算を行う。
(ウ)  臨床実習については、看護職に就くものとして講義で得た基本的な知識、技術及び態度を自らの体験を通し学ぶ上で不可欠なものである。臨床実習の具体的な実施に当たっては各大学・短期大学で看護学教育全体の中での在り方を検討した上で実習計画をたてる必要があることから、専門教育の内数として規定することとする。その際、現行の実習時間を確保し得るよう単位換算した単位数を規定する。
(エ)  選択必修科目については、現行指定規則においては教育課程の一部において各学校の特殊性が出せるようにとの観点から導入されている。しかし、今回の指定規則の大綱化は教育課程全体を通して、各大学・短期大学の教育理念・目的に基づいた特色ある教育課程編成ができるようにすることを目的としており、選択必修科目だけを個別に規定しておく必要がないことから、選択必修科目分の単位数を専門基礎教育と専門教育にふりわけて規定する。
(オ)  現行指定規則の授業時間数を単位数に換算するに当たっては、便宜上、それぞれの授業科目について通常実施されている授業形式を想定し、別添参考資料(省略)のように、講義15時間、演習30時間、実習45時間を1単位として換算する。
 なお、大学設置基準等においては、1単位の授業時間数は、講義及び演習については15時間から30時間までの範囲で、実験、実習及び実技については30時間から45時間までの範囲で、各大学・短期大学において定めることとされている。したがって各大学・短期大学では、それぞれの教育課程の編成方針に従い、この時間数の範囲でそれぞれの授業科目についての1単位当たりの授業時間数を独自に決める必要がある。
3  その他
(ア)  別表1〜別表3の2の備考に規定されている事項については、各大学・短期大学がその教育理念・目的に基づいた特色ある教育課程を編成できるよう、必要最小限に留めることとする。
(イ)  助産婦教育課程を規定した別表2の備考の実習中の分娩の取扱いについては、助産婦教育にとって不可欠な内容であることから、現行指定規則通りに規定する。

(3) 各課程の具体的な規定内容
 以上のような基本方針に基づく具体的な規定内容としては、看護職の課程ごとに以下のように規定されることが適当と考える。

1看護婦教育課程(3年課程)…別表3に対応
  教育内容 単位数 備考
専門基礎教育 医学、保健学、福祉学等の専門教育の基礎となる教育を含む。 21単位以上  
専門教育 基礎看護学、成人看護学、老人看護学、小児看護学、母性看護学を含む 59単位以上 うち臨床実習23単位以上。
合計   80単位以上  

2看護教育課程(2年課程)…別表3の2に対応
  教育内容 単位数 備考
専門基礎教育 医学、保健学、福祉学等の専門教育の基礎となる教育を含む。 14単位以上  
専門教育 基礎看護学、成人看護学、老人看護学、小児看護学、母性看護学を含む 41単位以上 うち臨床実習16単位以上。
合計   55単位以上  

3保健婦教育課程…別表1に対応
教育内容 単位数 備考
公衆衛生看護学、疫学、健康管理論、保健福祉行政論を含む。 21単位以上 うち保健所等における実習3単位以上。

4助産婦教育課程…別表2に対応
教育内容 単位数 備考
助産学概論、生殖の形態・機能、母性の心理・社会学、乳幼児の成長発達、助産診断学、助産技術学、地域母子保健、助産業務管理を含む。 22単位以上 うち病院、保健所及び助産所等における実習8単位以上。

実習中分娩(妊娠七月未満の分娩を除く。)の取扱いについては、助産婦又は医師の監督の下に学生一人につき十回以上行わせること。

(4)  教育内容の水準確保
 現行指定規則が、保健婦(士)、助産婦、看護婦(士)教育に関し、教育内容の水準確保という機能を果たしていることから、指定規則の大綱化を図った場合、大学・短期大学における看護学教育について、一定水準の教育内容が確保され得るかどうか問題があるのではないかとの指摘も一部にある。
 しかしながら、以下のような理由により、大学・短期大学における看護学教育は、一定水準の教育内容が確保されるものと考えられる。
1  大学・短期大学については、大学設置基準等により高い水準の施設・設備、教員等教育条件が確保されているとともに、各大学・短期大学においては、カリキュラム委員会等が設置され、シラバスの作成等を含め主体的に教育課程の在り方を検討できる教員組織が整備されている。
 なお、大学及び短期大学の設置に際しては、大学設置・学校法人審議会において、大学設置基準等を含む各種規定に基づいた厳正な審査が行われている。
2  看護系大学の関係者の間では、大学基準協会により平成6年7月に「看護学教育に関する基準」が定められ、看護学教育の理念・目的や教育課程等についての共通理解が得られている。現在、各大学・短期大学においては、同基準に基づいた取組みが進められているとともに、自己点検・自己評価システムの導入を図り、教育の質の向上に努めている。
3  文部省においては、定期的に看護学視学委員による看護系大学・短期大学の実地視察を行い、看護学教育の取組みに対する指導助言を行っている。

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