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2 大学・短期大学における看護学教育について

(1)  看護職養成の動向
 我が国においては、近年の医学・医療の急速な進歩、人口の高齢化、保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、人々の看護に対するニーズは複雑化、かつ多様化しており、これらに十分対応し得る資質の高い看護職(保健婦(士)、助産婦及び看護婦(士)をいう。以下同じ。)を養成することが社会的に強く求められている。
 具体的には、1医療全般にわたり広い視野と高い見識を持つこと、2生命に対する深い畏敬の念と豊かな人間性を持つこと、3最新の知識と科学的思考を基に他の医療従事者と連携をとりながら患者やその家族へ適切な援助ができること、4看護職としての社会的使命に基づき社会に貢献できること、5生涯にわたり自己の資質向上に努めることができること等が必要とされている。
 このような社会的ニーズに対応するためには、大学・短期大学における看護学教育が専門職の基礎教育として行われることがますます重要となってきている。
 平成4年12月に策定された「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(文部省・厚生省・労働省告示)においても、資質の高い看護職の養成のため、看護系大学・短期大学の整備充実が必要とされている。
 看護系大学・短期大学の設置状況をみると、平成7年度における看護系大学は41校(入学定員2,448人)、看護系短期大学は66校(入学定員5,680人)となり、平成3年度と比べてもそれぞれ30校(1,890人)と4校(610人)が増加するなど、近年、急速に看護系大学・短期大学の設置が進められてきている。

(2)  看護学教育の理念・目的
 看護学教育は、「確固たる倫理観に基づき、看護学に求められる社会的使命を有効に遂行し、生涯に亘り自己の資質の向上に努めることのできる看護専門職を育成する」(「看護学教育に関する基準」(大学基準協会))ことを目的としており、看護職としての基本的知識や技術の修得のみではなく、科学的思考力と倫理的判断力及び創造性を育成し、保健、医療の進歩に即応しつつ、将来高度な知識・技術を有する専門職または教育者・研究者となるための基盤を培うことを重視している。
 学問分野としての看護学をみると、人間のケアを中心に追求する人間学あるいは人間科学であり、医学、保健学、福祉学、心理学、社会学、哲学、その他の領域の知識や理論を必要とする学際的な特徴をもっている。したがって、看護学は、今後、近年の保健・医療・福祉ニーズの複雑化・多様化等に伴い、医学とは異なる独自の学問領域として発展することが求められている。
 このためには、各大学・短期大学において看護学教育の教育課程を編成するに当たっては、従来のように指定規則で詳細に規定された枠組みにとらわれず柔軟な発想で、各大学・短期大学の理念と目的を適切に反映させた多様な教育課程を編成することが期待されている。

(3)  大学設置基準等の大綱化
 大学・短期大学における教育課程については、学校教育法で大学及び短期大学の目的がそれぞれ、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知識、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」(第52条)、「短期大学は、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを目的とする。」(第69条の2)と規定され、これらの目的を実現するための具体的な仕組みが、教育課程の編成方針・編成方法、学生の卒業要件等として大学設置基準等により規定されている。
 大学設置基準等においては、従来、開設授業科目について、その内容により一般教育科目、外国語科目、専門教育科目等の科目区分が設けられ、卒業要件に関しこれらの科目区分別の必要単位数の細目が規定されていた。これらの規定により大学・短期大学の教育内容・水準が全体としてある程度保証されていたが、各大学・短期大学が、それぞれの理念・目的に基づき、学術の進展や社会の要請に適切に対応して、多様で特色ある教育課程編成を一層展開し得るよう、平成3年7月に大学設置基準等の大綱化が行われた。その結果として、開設授業科目についての科目区分は廃止され、卒業要件についても科目区分別の必要単位数は廃止し、総単位数のみ規定されることになった。
 大学・短期大学における看護学教育においても、このような大学設置基準等の大綱化を受けて、各大学・短期大学の教育理念・目的に沿った個性ある多種多様な教育課程編成の取組みがなされつつある。

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