ここからサイトの主なメニューです

3.陸域観測技術衛星「だいち」による防災利用実証実験計画

 本検討会では、「2.」で整理を行った各防災関連府省庁等から提出された衛星の防災利用ニーズの中で、「だいち」を用いた防災利用実証実験として有用と思われる施策を以下のように整理した。本実証実験は、「だいち」の防災分野の利用をより一層促進するとともに、「だいち」以降の防災のための次期地球観測衛星システム等の開発・運用等に向け、防災関連業務における地球観測衛星利用の実効性向上の検証等を狙いとしたものである。以下に列挙した施策の実現に向け、それぞれの施策ごとに関連府省庁・機関等によるワーキンググループを設置し、当該防災利用実証実験を進めていくこととする。

【防災利用実証実験計画】

 
1 衛星地形図の作成及び防災利用に関する実証実験

 
【概要】
   「だいち」の観測データと地図情報を融合し、実証実験に参加する関係機関からの要求に基づいた衛星地形図を作成した上で、災害の予防や被災時の状況把握等にこの衛星地形図が利用できることを実証する。

【参加機関】
  警察庁、防衛庁、消防庁、国土地理院、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

2 火山活動の評価及び噴火活動の把握に関する実証実験

 
【概要】
   日本列島・領海内の主要活火山等を定常的に観測し、「だいち」の観測データによる火山活動の監視及び異常検出の手法について検討を行い、火山活動の評価に利用できることを実証する。特に、噴火活動の開始が確認された場合には、当該火山の緊急観測を行い、降灰や溶岩流等の噴出物の範囲、地形変化等の解析により、噴火の規模や影響の範囲の把握等に衛星データが利用できることを実証する。

【参加機関】
  火山噴火予知連絡会(事務局:気象庁、実験参加機関:気象庁、国土地理院、海上保安庁、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人産業技術総合研究所、大学等)、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

3 地殻・地盤変動及び被害把握に関する実証実験

 
【概要】
   地殻・地盤変動を定常的に観測し、「だいち」の観測データから地殻変動等の異常を検出できることを実証する。地震発生時には、被災地域の緊急観測を行い、被害状況の把握等に衛星データが利用できることを実証する。

【参加機関】
  地震調査研究推進本部、国土地理院、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

4 RASにおける「だいち」データ利用に関する実証実験

 
【概要】
   大規模地震等による被災状況の把握を目的として内閣府が開発した「人工衛星等を活用した被害早期把握システム(RAS)」における「だいち」の観測データの利用可能性について実証する。

【参加機関】
  内閣府、独立行政法人防災科学技術研究所、財団法人リモート・センシング技術センター、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

5 海上・沿岸災害状況把握に関する実証実験

 
【概要】
   重油流出等の海上・沿岸での災害が発生した際、海外の災害も含め緊急観測を行い、「だいち」の観測データから災害状況を把握できることを実証する。

【参加機関】
  海上保安庁、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

6 土砂災害の予兆及び被害把握に関する実証実験

 
【概要】
   国土交通省(国土技術総合政策研究所)が指定する地域の土砂災害危険箇所を対象として、地すべりの予兆把握の技術実証を行うとともに、土砂崩れ全般の被害把握のための技術実証を行う。

【参加機関】
  国土技術総合政策研究所、独立行政法人宇宙航空研究開発機構

7 その他

 
【概要】
   風水害による被害把握に関する実証実験や地方公共団体の多様な防災活動における衛星地形図の利用実証実験等を検討中。

【参加機関】
  国土地理院、地方公共団体、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人宇宙航空研究開発機構 等

参加機関は平成18年9月現在のものであり、今後変更があり得る。

【検討事項】

   各防災関連府省庁等から提出された地球観測衛星の防災利用ニーズに的確に応え、防災関連業務における衛星データ利用の実効性を高めるためには、防災のための次期地球観測衛星システムを構築する前に、データ提供に関する現在のサービスや支援等を改善し、内容を充実・強化させていく必要がある。よって、上記防災利用実証実験等を実施していく中で、以下のようなサービスや支援等について実践していくことが望まれる。

1 データ提供体制の強化
   各防災関連府省庁等に対し、災害発生直後に迅速なデータ提供が行われるためには、提供機関の窓口の一元化、緊急時に対応できる24時間提供体制の確立、衛星から取得したデータの処理・提供時間の短縮などが必要である。少なくとも、観測から1時間以内のデータ提供を目指し、作業の自動化や設備の整備等を進めていくことが望まれる。

2 取得データのデータベース化
   取得した衛星データから災害状況をより的確に把握するためには、災害発生前後のデータを比較することが極めて重要である。従って、過去に取得した衛星データに関する情報をデータベース化し、必要なデータを瞬時に利用できるシステムを整備することが必要である。

3 関係者間の連携強化
   防災関連業務における衛星データ利用の実効性を高めるためには、各府省庁・機関間で情報を共有するための基盤を確立する必要がある。例えば、データ提供機関が「だいち」の観測計画、取得データの処理・解析事例、グランド・トゥルース調査情報、データ利用マニュアル、データ利用に関する質疑応答等の情報を積極的に提供し、関連府省庁・機関と共有していくような取組みが望まれる。

4 利用環境の整備
   防災関連業務において衛星データを有効に利用するためには、各防災関連府省庁や機関等に適切にデータを処理・解析する技術や、画像に写っている事象を正確に把握できる画像判読の技術を有する者が必要である。また、そのような作業を容易かつ効率的に実施できるようにアプリケーションソフトを充実させ、ユーザが利用しやすい形でデータを提供することが重要である。よって、防災関連業務に携わる担当者がデータを扱うための知識・技術を備えられるよう、データ提供機関等において「だいち」データに関する利用研修を実施するとともに、利用機関の業務に適したアプリケーションソフトの開発やデータ配付等を行い、ユーザが衛星データを利用しやすい環境を整えることが望まれる。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ