ここからサイトの主なメニューです
参考1-5

地球観測分野ワーキンググループ 評価調書の集計及び意見

1   研究開発の実施体制
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の実施体制 0 0 2 0

評価根拠のコメント

  評価根拠のコメント
分野別の研究開発スケジュールの設定及び変更が的確であったか。
  <共通>        
 
成層圏プラットフォーム多数機がネットワークを形成する将来構想を踏まえた地球観測分野の開発構想なのか、将来とも1機程度の技術実証機しか可能では無いことを前提にした開発構想なのかで、開発目標が大きく変わる。この点に関する長期戦略が欠如している。これはプロジェクト全体の計画・審査体制にも問題があったことが示唆される。
プラットフォーム自体の開発が主であったと思われる。千年紀プロジェクトとして、CO2(二酸化炭素)観測を表に出した時点で、果たしてどれだけ飛行船による観測が、地球「環境」観測に貢献できるかの真剣な検討が要ったのではないか。肝心の環境観測部分への資源配分は十分でないまま飛行船が開発されていった。ミレニアムに関係ない実験が加わったことによって、成層圏での飛行船観測実験が手薄になったのではないか。
  <大気観測システム>      
 
技術実証機による長期観測がゴールであるのに、バッテリー、標準ガスの運用上の問題から2時間程度のシステム開発を目標においており、技術開発の目標設定が疑問である。また、多数の飛行船のネットワーク化に向けた、有効なデータ取得のための研究体制は取られていない。
現在の京都議定書実施期間中の二酸化炭素観測体制に関する検討の結果では、成層圏大気での観測では二酸化炭素の排出源の推定は不可能で、対流圏下層に関する、しかも大陸スケールの観測が重要であることが示されている。従って、1点の成層圏定点観測で得られる科学的知見は非常に限られたものになる可能性がある。また、高々度の二酸化炭素観測は、より基礎的な地球科学的研究としては重要であるが、気球や航空機による鉛直プロファイルを観測することが重要であり、これを成層圏プラットフォームの利用研究として行うのが妥当であったかは疑問である。
機器側の開発目標設定の変更は、11年当初はオゾン層計測しかあげられていないこと、10年度の可能なミッシヨンリストの中にも二酸化炭素があげられておらず、12年度のミレニアム目標が温室効果ガスにあるとの理由で、Co2(二酸化炭素)の成層圏測定の意義や可能性、必要な飛行船配置など十分に検討されずにCO2(二酸化炭素)計測を取り上げたことなど、も含めて、必ずしも適切でなかった。全般に、変更の理由とそれへの対応がどのような決定プロセスで行われたのかの分析が十分にはされていない。
途中で12年度に、成層圏での一回の無動力滞空試験と、対流圏で動力・制御滞空試験とに別れたが、飛行船による成層圏からの大気計測という一体化したプロジェクトという当初の目的からの資源分散があっtあったと思われる。
プロジェクト(成層圏プロジェクト)の多地点定点観測との当初の目的が変更され、「センサシステムの研究開発」に与えられた成層圏実験が一回だけという状況になり、地球大気観測という(全体)プロジェクトの中で資源配分が少なくなったことは、プラットフォーム側の事情とおもわれる。このような変更がどのような事情で行われたのか、説明は十分ではなかった。
12年度行われたミッション設定自体は妥当であったが、不動作に終わった結果から見て、プラットフォーム側との役割分担が十分に設定されたのかが疑問。
  <地球観測センサシステム>      
 
目標を高分解能、2次元観測、広画角観測においており、これは妥当である。
当初からADEOS-2衛星後継機の技術蓄積を課題として位置づけており、長期戦略の観点からも妥当である。
採用したマイクロボロメーター方式については、欧米の技術レベルに匹敵するために、もう少し高い機械仕様の設定が必要であったと思われる。
研究開発課題の困難度等を勘案し資金計画及び実施体制に反映したか。
  <共通>        
 
プラットフォーム全体計画の中で、最終目標である観測部分への資源投下は十分ではなかった。全体が、キャッチフレーズに掲げた「地球観測」という最終目標達成の観点からの仕様決定、資源配分にはなっていなかったのではなかろうか。
  <大気観測システム>      
 
観測項目の選択と手法が、長期戦略の観点から十分検討されたとは言えない。その観点に立った予算要求をしていない。
  <地球観測センサシステム>      
 
赤外観測を非冷却型センサーにおいた点は妥当であると思われるが、欧米と競争できるレベルの研究を行うつもりならば、予算が小さすぎる。
本研究開発に適した人材を確保したか。
  <大気観測システム>      
 
無人観測に精通した人材によって実施されており、この点は適切である。大気化学観測の専門家は当該研究機関だけでは不十分であったところ、大気観測検討ワーキンググループを作って、専門家の意見を聴取した点は評価できる。
内部スタッフが外部専門家の意見をとりいれて実施したが、結果として、目標に達せなかった。短期に目標設定の必要があったことが原因ではないかと推測され、さらなる専門家の投入が必要だったと考える。
  <地球観測センサシステム>      
 
JAXA(ジャクサ)には、リモートセンシング技術蓄積があり、また、この分野に関する専門技術者がいるので適切であった。
研究開発の技術的検討が十分であったか
  <大気観測システム>      
 
長期運用のためのシナリオ検討と技術的検討が十分されていない。
地上試験では、機器の技術的検討はされ、設定の最終目標は達成された。滞空テストにおける機器不動作の結果は、計測部分以外のメカニズムに対しての技術的検討が十分でなかったことを意味する。

  <地球観測センサシステム>      
 
適切であった。目標設定は、計測の技術的問題点をよく分析したものになっている。
研究開発の過程において予定した技術的結果が得られなかった場合に原因究明を行い適切に対処したか
  <大気観測システム>      
 
実機フライト実験で不具合が起こり、データが取れなかった。その原因追及は合同チームでなされ、実機は水没したために不具合の原因究明を実機で行うことはできなかったが、プラットフォームとのやりとりの整合が問題とみられる。
その他
  <大気観測システム>      
 
科学的価値:CO2(二酸化炭素)等のガス組成の高々度観測は、長期間実施されれば、地球物理学的な価値はある。
  <地球観測センサシステム>      
 
科学的価値:交通管制、大気環境、植生環境の測定の科学的・技術的価値はおおいにある。また、大気環境測定のために設定した偏光観測は科学・技術の両面で現在、課題になっている問題である。

2   研究開発の達成状況
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の達成状況 0 0 2 0

  評価根拠のコメント
最終的な目標は達成できたか
  <共通>        
 
技術実証機に搭載するための観測技術開発と言う点では、要素技術の開発は概ね達成できた。しかし最終目的である成層圏プラットフォームのネットワーク化と言う観点からすると非常に未達成である。安定して観測できるシステムが開発可能かについて評価する研究もなされていない。しかし、成層圏プラットフォーム研究全体の計画設定下では仕方が無いことであり、むしろこの全体計画自体に問題がある。
  <大気観測システム>      
 
実地フライトにおいて不具合があり、実機が水没するなどのために、データがとれておらず、また不具合の検証も実機でできていないので、研究の最終目的は達成されていない。
  <地球観測センサシステム>      
 
研究目的をほぼ達成できた。しかし、実戦投入するシステムの開発には、大型予算をかけてマイクロボロメーター開発と偏光システムの開発が必要である。そうすると将来の衛星後継機にとっても役立つ。
(千年紀プロジェクトではなく)12年度設定目標に関してはかなりの達成であるが、データがどのように利用されるかについて目標設定自体が十分と這いえない。
十分な技術的知見及びデータが得られたか
  <大気観測システム>      
 
一応地上でのテストに耐える計測機器開発を終了した。千年紀プロジェクトのゴールである地球観測(成層圏からの温暖化ガス計測)のデータはまったく得られなかった。
  <地球観測センサシステム>      
 
一定程度の技術的知見とデータが得られた。飛行試験2回実施し、装置の可動性は確認された。光学センサーの広画角光学系技術など技術改良が見られた。観測されたデータの科学的・社会的有効性に関してはさらなる利用開発がいる。
研究開発の費用対効果は妥当であったか
  <共通>        
 
今回設定した目標を達成すると言う点に制限すると、ほぼ妥当である。大学との共同であれば、もう少し安くできるかも知れない。
もし、全体プロジェクトのゴールが大気観測にあるとしたら、費用に対する効果は極めてよくない。他の観測プロジェクトへの機会損失を考えるとさらに効果は低い。
論文・特許等の新しい知の創出に貢献したか
  <大気観測システム>      
 
全期間で論文発表4件と、少ないので、知識の波及効果は小さい。
特許ゼロは機器開発を主目的としたプロジェクトとしては不満である。
  <地球観測センサシステム>      
 
論文10件は、ほぼ妥当な発表件数である。また、査読付き論文もあり、知識の発信はされている。
特許ゼロは機器開発を主目的としたプロジェクトとしては不満。
当初予期しなかった副次的効果はあったか
 
特になし。大気観測システムは、開発された機器の応用を考えている。
成果の他分野への波及効果はあったか
 
あまり無い。
地球観測センサシステムは、ADEOS2後継機センサーへの技術蓄積がある。

3   今後の課題
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
今後の課題        

  評価根拠のコメント
残された技術的課題
  <大気観測システム>      
 
長期観測システムの開発へつながる技術開発に全く手が付けられていない。
成層圏での温室効果ガス計測の意義についての再検討。どのよう現象解明に役立つか、どの炭素循環観測計画に貢献できるのか、炭素循環モデルへのどのようなインプットになるのかの検討が一番に必要である。
(意義があるなら)成層圏での運転状況の設定(どのように飛行船を上げるとどのような計測が可能なのか)に合わせた、可動メカニズムの開発がいる。
  <地球観測センサシステム>      
 
可視・近赤外計の光学系の特性測定と改良、熱赤外計におけるマイクロボロメーターシステムの高感度化が重要である。
得られたデータの解析によるエアロゾル量、地表面温度等の推定を行い、地球物理学的な観測が可能であることを実証する必要がある。
その課題の技術的見通し
  <大気観測システム>      
 
極めて難しい。標準ガスを運ぶシャトルなどを研究チームで構想しているが、コストを考えると実施可能とは思われない。
  <地球観測センサシステム>      
 
欧米等の高い技術例があるので見通しはある。ただし、我が国のマイクロボロメーター開発は遅れているので、相当の予算をかけて技術開発をするのが有効である。

4   総合評価
   
  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待外れ
総合評価 0 0 1 1

  <共通>      
成層圏滞空飛行試験機と定点滞空飛行試験機による観測を達成すると言う観点からは、要素技術の開発はできたと思う。
長期シナリオの欠如や研究期間の途中での成層圏プラットフォーム計画自体の根本スキームの変更に影響を受けて、観測システムの研究開発が中途半端になっている。徹底的にお金をかけて、最終的にやりきるビジョンと覚悟が感じられない。また、このような長期シナリオが無いと、技術蓄積によって、限られた予算でステップバイステップに進む努力もできない。
このように最先端科学と技術が融合して可能な研究は、やる気があって、問題の本質をいつも考えている代表研究者側からの提案をベースに、多機関の研究者がこの代表研究者のもとに有効にチームを組んで実施する体制が必要である。現在の国の研究予算システムではこのような体制による研究を有効に実施する措置ができていない。
ひとことでいって、環境便乗資源配分といわれてもしょうがない。
<大気観測システム>      
データが得られておらず、十分に最終目的が達成されたとは言えない。しかし、これはフライト計画が妥当では無いことにも起因する。
将来の技術実証機での長期観測の準備ができていない。特に、そもそも標準ガスによる検定システムを長期間どのように維持するかとか、機器を運用するためのバッテリーの性能試験などが全く検討されておらず、準備は十分ではない。
そもそもネットワーク化すると言う強い理念が途中で無くなったために、目標自体が2時間程度の観測を実現するものになってしまい、これでは、現在の研究成果が、将来のネットワーク化で必要な技術の基礎にもなり得ない。1点定点観測とすると気球や航空機と違って、何かメリットなのかがわからない。
結果として、滞空実験は行われず、結果の成否の判定のやり様がない。地上における成層圏シミュレーションでのテストで観測機器の性能は一部確認できたが、プラットフォームシステム全体としては、メカニカルな面で失敗に終わっている。
成層圏における温室効果ガス計測による地球規模炭素循環把握における意義自体が明確でなく(むしろ対流圏の計測が重要)、国際的な炭素計測ネットワークとのつながりが出来ていない。
プロジェクト(成層圏プロジェクト)の多地点定点観測との当初の目的が変更され、「センサシステムの研究開発」に与えられた成層圏実験が一回だけという状況になり、地球大気観測という(全体)プロジェクトの中で資源配分が少なくなったことは、プラットフォーム側の事情とおもわれる。このような変更がどのような事情で行われたのか、説明は十分ではなかった。
<地球観測センサシステム>      
お金をかけてマイクロボロメーター素子を開発すると言う段階が無いために、将来の衛星利用技術への技術蓄積になりにくい。
名前が大きすぎ、目標がどこにあるのかわかりにくい。計ればなにかがわかることは確かであるが、コストベネフィットのよいはっきりした目標を設定しておくべきであった。あえて、飛行船に乗せることを目的としないでも、研究は出来たのではないか。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ