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参考1-4

通信・放送分野ワーキンググループ 評価調書の集計及び意見


1   研究開発の実施体制
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の実施体制 1 1 0 0

  評価根拠のコメント
分野別の研究開発スケジュールの設定及び変更が的確であったか
 
妥当であった。しかしミレニアムプロジェクトにともなう変更の影響は少なかったようにも見えるが、通信放送ミッションの試験の場である技術実証機の可能性を早期に断念し、可能性のある代替え手段に積極的に切り替えた意味で、選択の余地がなかったように思われる。できる範囲で、機敏で柔軟なスケジュールを立てている。ミレニアムプロジェクトを取り入れたこと自体は、冷静に評価が必要。
対象サービスの設定、開発機器の目標、そのための要素技術課題の明確化は、いずれの判断時期にも適切に行われたと評価できる。対象サービスの設定について、ニッチな目的に的を絞る案も出たようであるが、本来の目的を推し進める方針で進めてきたことは正しいと考える。理由は、日本の近年のワイヤレスサービスの普及状況を見ると、当該システムが無くとも地上系だけでサービスは十分提供可能とも考えられるが、当該システムの開発目的は日本のみならず地球的規模であるべきであり、本来の主目標設定は変えないことが、用途を広げ、かつ当然ながらニッチの目的にも応える研究開発となるからである。
研究開発課題の困難度等を勘案し資金計画及び実施体制に反映したか
 
既存技術の活用テーマ(IMT2000、デジタル放送)は、開発というより、成層圏で実験すること自体が重要であった。開発費としては新規のテーマ(DBF、アクセス技術)についての費用が主であろうが、おおむね妥当であった。飛行船の課題(膜、電源)が際立っていたのを考えると、平成14年より全体計画での配分の見直しがあるべきであったかもしれない。
14年度までは、研究の立ち上げ、目標達成に向けての探索期であり、その資金計画、実施体制ともに妥当であったと評価できる。
14年度末に15年度以降の研究開発計画を判断した時点で、本来の目的である高速無線アクセス、移動体通信、ディジタル放送、の実証を目指して、可能なプラットフォームの代替手段なども用いて多面的な実証実験を行うことを計画したことは、極めて的を得た判断であったと思われる。
また、旧通信・放送機構横須賀成層圏プラットフォームリサーチセンターを設置して効率よく研究開発が実施できる体制の下で実施したことも高く評価できる。
本研究開発に適した人材を確保したか
 
妥当であった。ITU活動の大きな成果を評価したい。
当該システムの研究開発の立ち上げ期を除き、ほとんど全期間を通して通信・放送ミッションの重要な技術要素の専門家をバランスよく配置し、合計7名の研究開発要員を確保したことは、高く評価できる。
研究開発の技術的検討が十分であったか
 
飛行船が十分に使えない状態で、代替の試験に偏ったり、回数、実験ミッション数低減を、余儀なくされたが、核となる項目は成果を挙げている。ただ、ヘリオスの実験、定点滞空実験においても、時間とお金が許せば、繰り返し実施しデータを蓄積すべき実験がいまでもたくさんあると判断できる。
重要な課題は網羅され、技術的検討は十分であったと評価できる。また、NASA(ナサ)のソーラープレーンを借用しての代替実験などによる実験を実施するなど、実験手法においても可能な検討は網羅されたと評価できる。
研究開発の過程において予定した技術的結果が得られなかった場合に原因究明を行い適切に対処したか
 
代替実験も含め、実験機会に制限があり項目を絞ったが、技術的にはほぼ予定通り。
地上の遠距離からの干渉電波など、予想以上の干渉問題が明確になった時点においても、急遽の対策技術を開発するなど、原因の特定と対策実験による技術開発の追究が十分行われた。

2   研究開発の達成状況
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の達成状況 0 2 0 0

  評価根拠のコメント
最終的な目標は達成できたか
 
本プロジェクトの目標が、機器開発の側面より、成層圏プラットフォームに関する魅力ある利用アプリケーションの実現性見極めにあったのであるから、飛行船が未完である以上、達成できなかったといわざるを得ない。通信放送ミッション機器の開発目標は概ね達成できたが、最終の搭載用実証機開発で試されるべき項目も多く(消費電力、電源重さ、耐環境)、継続して最後の山を越えることが重要である。
当初からの目的である、高速無線アクセス、移動体通信、ディジタル放送のシステムに必要な技術開発目標は、それぞれ十分に達成している。
しかし、成層圏プラットフォームとしての長期運用・維持メンテナンスまで含めた実用化に必要な総合判断に必要なデータは十分に得られていない。これは、当該プロジェクトの性格から、通信・放送ミッションの研究開発のみでは達成し得ないことであるため、プロジェクト全体として評価されるべき観点である。
十分な技術的知見及びデータが得られたか
 
数回の実験では、データ蓄積は不十分。
総合的な成層圏プラットフォームとしての、長期運用データは十分とは言えないが、個々のシステムの機能と性能の評価は十分行われ、技術的知見と必要なデータ取得は十分行われたと評価できる。
研究開発の費用対効果は妥当であったか
 
本プロジェクトの目標が、機器開発の側面より、成層圏プラットフォームに関する魅力ある利用アプリケーションの実現性見極めにあった。妥当な予算配分を執行し所望の成果を挙げた。しかし、最終の搭載用実証機開発で試されるべき項目も多く(消費電力、電源重さ、耐環境)、継続して最後の山を越えることが重要である。今後、実証機を含め運用試験にこそ費用が発生すべきである。
新しいコンセプトに基づく、チャレンジ要素の極めて大きい研究開発であるが、他の研究開発成果や過去に蓄積された技術データが十二分に活用されて、研究開発が実施されているため、投入された費用は必要最小限であったと評価できる。そのため、費用対効果は高く評価できる。
論文・特許等の新しい知の創出に貢献したか
 
 多くはないが、プロジェクト担当者の実務は高く評価したい。論文特許のみならず、国際的な共同研究のリーダシップ貢献、ITUなどの活動をどのように評価するか、この種のチャレンジングな大プロジェクトの経験が少ない日本での評価システムも見直すべき。
 オリジナル論文15件、国際会議発表45件、標準化奇書20件、特許14件、その他多数の口頭発表などが行われており、大きな知的成果を挙げている。
当初予期しなかった副次的効果はあったか
 
予想を確認する位置つけのテーマが多かった。ソーラープレーン実験などでの思いもよらぬ遠方局の干渉の観測は、干渉低減のアンテナ技術の重要性が再確認されたばかりでなく、成層圏飛行船の特長である広い視界を改めて確認する機会となっている。
日本での成層圏プラットフォームプロジェクトに刺激されて、他の先進国においても同様の狙いのプロジェクトが立ち上がり、あるいは企画されている事は、プロジェクトとしての副次的効果である。
また、通信・放送ミッションについては、日本からの勧告文書によって成層圏または高高度での通信形態が電波周波数分配の対象として設定されたことは高く評価できる。
成果の他分野への波及効果はあったか
 
魅力あるアプリケーションの実現可能性を探っているわけであり、波及効果の見積もりはプロジェクト開始時の予想と変わらぬであろうが、今後の推進をはかるためにも、地上ディジタル放送の経済効果だけでも、再計算する価値が出てきている。
海外でも、デジタルデバイド解消へ向けて、成層圏への関心が高まってきている。日本でも過疎過密に伴いデジタルデバイドは急速に進んでおり、衛星も含めて成層圏プラットフォームの推進力となり得ると思われ、今後の施策への示唆に富んでいる。
航空機など、高高度のワイヤレス通信サービスは今後の重要な課題の一つであり、この研究開発で得られた成果は、それらの分野に種々の波及効果がある。
また、プラットフォーム全体を効果的に用い大口径アンテナによる新たな可能性の示唆などの今後の可能性への波及効果も大きい。
その他
 
魅力あるアプリケーションの実現可能性を探っているわけであり、波及効果の見積もりはプロジェクト開始時の予想と変わらぬであろうが、今後の推進をはかるためにも、地上ディジタル放送の経済効果だけでも、再計算する価値が出てきている。
海外でも、デジタルデバイド解消へ向けて、成層圏への関心が高まってきている。日本でも過疎過密に伴いデジタルデバイドは急速に進んでおり、衛星も含めて成層圏プラットフォームの推進力となり得ると思われ、今後の施策への示唆に富んでいる。

3   今後の課題
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
今後の課題        

  評価根拠のコメント
残された技術的課題
 
ほとんどの項目は、搭載への(初期)準備を終えている。
ミレニアムプロジェクトへの便乗、飛行船の開発の遅れ、など、通信放送ミッションがその現場試験を行う機会が少なかった。しかし、機会が提供されれば確実にデータ蓄積とともに、提案されたアプリケーションへの機運が高まると思われる。
成層圏プラットフォームにおける通信・放送ミッションの研究開発としては、許容重量、許容消費電力、機構的なインターフェースなどのトータルシステムの実用化に向けての課題が残されている。
通信・放送ミッションに共通する課題としては、成層圏あるいは高高度における電波干渉問題があり、このようなシステムを実用化する上で重要な課題である。実施した研究開発の中で解決された部分もあるが、今後の個別のシステムを実用化するに当たっては、将来の周波数共用化の動向などを含めて、綿密な検討が必要である。
その課題の技術的見通し
 
ほとんどの項目は、搭載への(初期)準備を終えている。
ミレニアムプロジェクトへの便乗、飛行船の開発の遅れ、など、通信放送ミッションがその現場試験を行う機会が少なかった。しかし、機会が提供されれば確実にデータ蓄積とともに、提案されたアプリケーションへの機運が高まると思われる。
成層圏プラットフォームとしてのトータルシステムについては、プラットフォーム機構、電源系の課題の解決を見極めて、通信・放送ミッションにおける課題を整理する必要があるが、インターフェースや制限条件が明確になれば、その条件に合致するシステムを開発することに、それほど大きな困難性は無いものと思われる。
成層圏または高高度における電波干渉の問題は、衛星通信と地上通信でも既に経験している課題であり、ステップを踏んで着実に研究開発を進めれば解決可能な問題である。

4   総合評価
   
  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待外れ
総合評価 0 1 1 0

    評価根拠のコメント
  ここまでは、通信放送ミッション(全体プロジェクトの1部として)は順調に進んでいる。通信放送ミッション評価の立場では、「現在はミッションの進捗を評価する時期であり、成層圏プロジェクトの評価はこれからが詰め」の認識が強い。飛行船の開発時期をにらみながらも、技術の蓄積、代替機実証を進め、なんとしても技術の評価、アプリケーションの評価へ進むべきであろう。
成層圏プラットフォームの目標も、研究内容も国際的な活動が多く、評価に海外の人間の意見を入れるのが自然である。日本国内の社会的経済的な観点のみで評価するのは、近視眼的なものとなり国益を失う。日本に期待する役割など海外の声も聞くべきプロジェクトであろう。
  成層圏プラットフォームにおける通信・放送ミッションの研究開発は、当初の目標である、高速無線アクセス、移動体通信、ディジタル放送の3つの主要システムの実証に向けて、横須賀成層圏プラットフォームリサーチセンターを拠点として着実に実施されたと判断できる。本来の成層圏プラットフォームによる実験は、本来の20キロメートルレベルの高度では実施できなかったものの、代替手段として、気球によるデータ収集、NASA(ナサ)のソーラープレーンを借用しての実験などにより、可能な限りの技術データが取得できたものと判断される。
これらの研究開発と実験データの知的成果は、学術的にも今後の関連技術開発に有効なものが多くまた、新たなシステム研究の示唆に富む内容であることから、質・量ともに十分評価できる内容である。
以上のことから、当該研究開発は期待通りの実績を挙げたものと判定した。

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