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参考1-3

電源系ワーキンググループ 評価調書の集計及び意見


1   研究開発の実施体制
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の実施体制 0 1 1 0

  評価根拠のコメント
分野別の研究開発スケジュールの設定及び変更が的確であったか。
 
太陽電池の種類をアモルファス系から薄型単結晶シリコン系に変更したのは妥当な判断である。選定当時、アモルファス系太陽電池の変換効率は十分でなく、要求を満足するセルは、単結晶薄型に限られていた。
電源系に関しては、システムの検証に重きが置かれ、燃料電池セルの成層圏特有の課題に対しては、課題の抽出すら行われていないのが実情であり、当然、研究開発スケジュールもこうした課題の解決を目指した計画にはなっていない。
研究開発課題の困難度等を勘案し資金計画及び実施体制に反映したか。
 
太陽電池に関しては、太陽電池開発そのものではなく、出力目標を達成するセル材料の選定、モジュール化技術開発、設置法などが主課題となっているため、妥当である。
固体高分子形燃料電池にとって電解質膜の加湿は最重要課題であるが、低圧でかつ環境の温度変化が激しい成層圏用は自動車用や家庭用に比べても一層厳しいと考えられる。しかし、こうした課題に対する資金計画や実施体制は皆無である。
本研究開発に適した人材を確保したか。
 
太陽電池に関しては、主たる研究者は1名であり、研究課題、予算から判断して妥当と思われる。ただし、開発チーム全体として、太陽電池部分について、どのようなディスカッションを行っていたかが問題である。年4回の客員との研究会は有効と思われるが、その議論の内容が問題。
再生型燃料電池に関しては、現フェーズ(平成10〜16年度)においては、セルを外部からブラックボックス的に購入して発電に供しており、上記の成層圏用燃料電池に特有の課題に対して研究開発を実施できないのが実情であり、こうしたセル技術に関する人材も不足している。
研究開発の技術的検討が十分であったか
 
太陽電池に関しては、標準状態のピーク出力にのみ注目しており、日毎の発電量(kWh(キロワットアワー))という観点が全く欠けている(データがまったく示されていない)。
再生型燃料電池に関しては、水の電気分解と燃料電池の発電とを組み合わせたシステムでの検討はなされたが、成層圏特有の最重要課題である低圧とセルの加湿との関係、あるいはスタック軽量化の決め手となる金属セパレータに対する検討が皆無に近い。
研究開発の過程において予定した技術的結果が得られなかった場合に原因究明を行い適切に対処したか
 
研究開発の早い時期に太陽電池セルをアモルファス系から薄型単結晶シリコン系に変更した点は、評価できる。
再生型燃料電池に関しては、研究開発の過程において、外部の燃料電池のスペシャリストをアドバイザーに迎えるなど課題抽出に関して適切な対処がなされていない。

2   研究開発の達成状況
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の達成状況 0 2 0 0

  評価根拠のコメント
最終的な目標は達成できたか
 
太陽電池に関しては、g/Wという目標に対しては目標を達成しているが、そもそも発電量kWh(キロワットアワー)の目標ではなく、ピークWでの目標値としている点は、実用化に際して大きな課題を残している。
再生型燃料電池に関しては、システム検証を目指した当初の最終目標は達成できたが、最終目標そのものが成層圏用燃料電池にとっての最重要課題と考えられる低圧での電解質膜の耐久性向上を目指したものになっていない。
十分な技術的知見及びデータが得られたか
 
太陽電池に関しては、飛行船に実際に設置する際の技術課題等は把握されていると思われる。
太陽電池に関する実際の発電特性は、地上付近でのデータにとどまっており、実際の成層圏では、日射条件、気象条件が全くことなる。例えば、成層圏では直達日射がほとんどであろうから、特に側面に設置したセルからの出力などは予測できない。成層圏での年間の気象データはどのくらい把握されているのか。
再生型燃料電池に関しては、システムの検証という観点では一定の技術的知見が得られたと考える。
研究開発の費用対効果は妥当であったか
 
太陽電池関係に対するこの程度の研究費用では、おおむね妥当。
再生型燃料電池に関しては、システムの検証という観点では研究開発の費用効果は妥当と言える。
論文・特許等の新しい知の創出に貢献したか
 
太陽電池に関しては、科学雑誌(論文誌)への公表は少ない。権威ある雑誌に投稿して議論して貰う必要あり。また、学会発表も非常に限られた範囲でしか行われていない。社会への広報が必要。
太陽電池に関して、特許は妥当。
再生型燃料電池に関しては、使用した研究開発費に比して論文や特許の数は少ないと言える。
当初予期しなかった副次的効果はあったか
 
太陽電池に関しては、特にないのではないか。
再生型燃料電池に関しては、特には無い。
成果の他分野への波及効果はあったか
 
再生型燃料電池に関しては、成層圏にとっての課題である軽量化について本来なら金属セパレータを採用すべきであるが、そうした研究開発はなされていない。
燃料電池の構成要素の国産化と言った観点からは、セル部材がブラックボックス的な購入品であり、期待薄と言わざるを得ない。
ピーク電力需要の平準化等に関して、再生型燃料電池を民生用に展開する検討の余地はあると考える。

3   今後の課題
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
今後の課題        

  評価根拠のコメント
残された技術的課題
 
太陽電池に関しては、W/gの目標は達成されても、コストの課題が残っている。また、標準状態でのW/gよりも、毎日の発電電力量の議論をすべきである。
再生型燃料電池に関しては、成層圏特有の課題である低圧でかつ激しい温度変化の環境下における電解質膜の加湿は、現フェーズで研究開発を進めているシステムに対しても影響が大きく、低圧におけるセルの耐久性向上は急務な技術課題と考える。
現在、固体高分子形燃料電池のスタック重量の大半はカーボン製セパレータが占めている。スタックの軽量化に向けては金属セパレータの開発が不可欠である。
その課題の技術的見通し
 
太陽電池に関しては、成層圏での詳細な年間気象データがあれば、シミュレーションは地上でのシステムよりも容易であると思われる。成層圏では、条件が安定しているからである。
地上用、宇宙用太陽電池開発は、非常に急ピッチで進められており、成層圏における毎日の発電電力量という観点で見直せば、別の材料系が有望となる可能性がある。
太陽電池に関しては、他の分野の成果を利用したものである。むしろ成層圏での応用だから、「こういう太陽電池を開発すべき」という提案が欲しい。
固体高分子形燃料電池の現状の自動車用や家庭用の技術を結集しても、成層圏の低圧環境下において耐久性の目標値を達成することは非常に難しいと考える。
再生型燃料電池に関しては、成層圏の低圧では低加湿運転が強いられ、電解質膜の分解が起き加水分解によって金属セパレータが腐食されると考えられる。こうした成層圏特有の環境において、軽量化の決め手となる金属セパレータの耐久性向上は非常に難しいと考えられる。

4   総合評価
   
  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待外れ
総合評価 0 0 1 1

  太陽電池に関しては、小規模でもよいから、成層圏での発電電力量の測定が最重要課題。(特に太陽電池の表面温度、設置角度との関係など)
  再生型燃料電池のシステム検証としては、一定の成果を収めたと考える。
  現フェーズ(平成10〜16年度以降)においては、成層圏用の再生型燃料電池にとって致命傷と推測される課題に対しては、研究開発がなされていないばかりでなく、研究計画にも挙がっておらず、次期フェーズ(平成17年度以降)においては、研究開発計画の抜本的な見直し、および妥当な見識者の意見を反映すべきと考える。
  成層圏プラットホーム用燃料電池の軽量化は重量課題であるが、現フェーズでは研究計画にも挙がっていない。成層圏の低圧下では低加湿運転が強いられると予想されるが、こうした低加湿運転下においては電解質膜が分解し、フッ素の加水分解によって金属セパレータにとって非常に厳しい環境をつくられると考えられる。次期フェーズ(平成17年度以降)においては、本質的でない端板の軽量化ではなく本質的なセパレータの軽量化に対する課題に対しても取り組みを行うべきと考える。

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