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参考1-2

飛行船分野ワーキンググループ 評価調書の集計及び意見


1   研究開発の実施体制
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の実施体制 0 2 0 0

  評価根拠のコメント
分野別の研究開発スケジュールの設定及び変更が的確であったか。
 
飛行船分野の研究開発スケジュールは的確であった。
この成層圏プラットフォーム研究開発(以後SPF研究開発と略称)以前の段階では、日本国内に大型(40メートル以上)の飛行船を設計・製造できる技術ならびに拠点は存在しなかった。それを踏まえて、平成11年度から技術実証機の計画・検討に着手せず、平成15年へ先送りした判断は妥当であった。先ず小型の飛行船を設計・製造し、その経験、ノウハウを積み上げる方式で大型飛行船の設計・製造を行う方針変更は、的確な判断だったと評価する。平成15年7月の第7回開発協議会で技術実証機が電源系要素(再生型燃料電池)開発の遅れを踏まえ、技術実証計画を白紙に戻したことも的確であった。
研究開発課題の困難度等を勘案し資金計画及び実施体制に反映したか。
 
「人材の確保」を考慮し、研究実施体制が十分であったとは言えない。
飛行船システム全体で検討した場合、最も重要で、課題解決が困難と思われた電源系特に再生型燃料電池の開発への資金計画は十分ではなかった。他の業界(燃料電池自動車、住宅用ソーラーシステム)の基礎技術開発を頼りにしていた点は反省すべきである。しかしながら、成層圏環境で使用できる再生型燃料電池の独自開発には、更なる多額資金が必要であった。
本研究開発に適した人材を確保したか。
 
人材(人員数)確保が不十分の感あり。一部メーカー任せが見受けられる。
適切な人材を確保したと判断する。
研究開発の技術的検討が十分であったか
 
「空力・推進」分野で不十分な点が見受けられる。
SPF研究開発の初期計画段階において、結果論であるが夢を追いすぎてフィージビリティスタディが十分でなかったと考える。平成12年度に成層圏滞空試験機開発と低高度での定点滞空試験機開発に計画を変更した段階ではしっかり技術的検討は行われている。
研究開発の過程において予定した技術的結果が得られなかった場合に原因究明を行い適切に対処したか
 
原因究明は適切だったと考えられる。
SPF開発研究の目的の一つであった成層圏大気の分析が、分析装置がうまく作動せず、失敗に終わった。不具合原因究明委員会が設置され原因の調査が行われたが、原因をしっかり絞り込めなかったが、地上試験で機能は確認されており、原因究明としての対処は尽くされたと考えられる。

2   研究開発の達成状況
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の達成状況 0 1 0 1

  評価根拠のコメント
最終的な目標は達成できたか
 
成層圏滞空飛行試験・定点滞空飛行試験の目標に対しては十分。150メートル級技術実証機の目標に対しては十分とは言えない。
研究開発初期の段階における非常に高い目標である実証試験は達成できなかった。しかし、計画見直しを行った目標、すなわち成層圏へ飛行船を投入した滞空させることと、4キロメートルの低高度で飛行船を滞空させる目標はクリアし、電源系を別にすれば実証試験にほぼ目処をつけた技術レベルに達しているものと考える。
十分な技術的知見及びデータが得られたか
 
特に「空力特性把握」に関して、150メートル級技術実証機実機を使用する試験は困難なので、小型モデルを用いた試験による空力特性推定法及び数値解析のよる推算法の確立が望まれるが、この点に関して十分な知見が得られたとは言えない。
この成層圏プラットフォーム研究開発以前の段階では、日本国内に大型の飛行船を設計・製造できる技術は存在しなかった。文字通りゼロレベルに近いところから立上げ、成層圏16キロメートルまで40メートル級の軟式飛行船を打上げ滞空させ、60メートル級軟式飛行船を4キロメートルの高度で定点滞空試験を成し遂げて、成層圏プラットフォーム研究開発に必要な多くのデータと知見を得た点は大いに評価できる。 ただし、当初の目的であった実証試験ができなかった点と成層圏大気の採取と分析のデータが、なんらかのシステムの不備で得られなかった点は十分に反省しなければならない。
このSPF計画以前の段階では、日本国内に大型の飛行船を設計・製造できる技術は全く存在しなかったことを考慮すると、40メートル級以上の大型の無人飛行船を製造し、成層圏へ投入し滞空させ、4キロメートルの低高度であるが定点滞空させる技術を獲得した。また、ロケット打上げと同様に、飛行船を運用するに当り、地上から高層までの気象(気温、風力、風向)を把握し、あらかじめ予測する技術は不可欠である。なお、ソーラー無尾翼飛行機(ヘリオス)の墜落事故も気象が原因と言われている。
研究開発の費用対効果は妥当であったか
 
費用対効果については不明である。
研究開発の費用対効果が妥当か否かの判断は非常に難しいので、この段階では判断できない。
論文・特許等の新しい知の創出に貢献したか
 
「材料・構造」の分野では貢献度大と認められる。
技術論文が16件、特許が16件は、使用した研究開発費の観点から判断すると少ない。ただし、口頭発表が83件あり、順次技術論文や特許として新しい知の創出に貢献することを期待する。
当初予期しなかった副次的効果はあったか
 
風予測手段の確立は大きな効果があった。
成果の他分野への波及効果はあったか
 
大規模膜構造技術の確立と超軽量膜材料の開発及び風予測手段の確立と低密度環境における高効率推進技術の開発は、他分野への波及効果があると認められる。

3   今後の課題
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
今後の課題        

  評価根拠のコメント
残された技術的課題
 
150メートル級技術実証機の空力特性推算法。
定点滞空誘導・制御技術の高度化。
成層圏環境に長期間耐える膜材および膜接合体の開発については、成層圏環境(低温,高温,低圧,高紫外線)に耐える膜材開発、特にその接合部強度について長期間の耐久試験評価は実証試験に先立ち、十分に実施することが不可欠である。膜材には昼夜の熱サイクルが加わるので、熱サイクル試験も実施する必要がある。なお、成層圏環境は地上においても技術的に再現できる。これまでの研究開発でも部分的には行われているが、十分ではないと判断する。
大型飛行船の製造技術については、これまでの研究開発で68メートルの飛行船を製造しているが、成層圏プラットフォームを実現するためには150メートルを越える大型の飛行船を製造する技術の確立が必要である。
その課題の技術的見通し
 
上記課題の1、2点目については、何れも然るべき人材の投入により、数年内に解決可能と考えられる。
上記課題の3点目については、地上において成層圏環境条件を作ることが可能なので、開発した膜材の評価ができるので、資金と時間があれば十分に開発可能である。上記課題の4点目については、資金と時間があれば開発可能である。

4   総合評価
   
  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待外れ
総合評価 0 1 1 0

  定点滞空飛行試験機、成層圏滞空飛行試験機に関しては期待以上の成果であるが、その成果の150メートル級技術実証機への適用に関しては十分とは言えない。
  SPF研究開発の初期段階における技術実証機の見通しが、主に電源系要素(再生型燃料電池)開発の遅れにより全く立たなくなった。平成15年9月に立ち上げられた「成層圏プラットフォーム電源系研究会」にて電源系技術について調査・分析が行われ、平成16年3月26日付けの報告書で、SPF用の電源の現状と課題がまとめられた。この調査・分析はもっと早期にやっておくべきだったと考える。時期的に適切であったかは疑問が残る。
  電源系、特にSPF用の再生型燃料電池の開発研究は最先端の要素技術であり、再生型燃料電池に特化した形でも継続した方が良い。
  電源系で、SPF用のソーラーセルの開発研究は、宇宙開発とも連動しており、また地上利用への波及効果も大きいので大いに進めるべきと考える。
  これまでに得られた成果を関係学協会の了解を得て、分野毎に合本の形でとりまとめ、関係機関に配付することができれば、この研究開発で得られた成層圏プラットフォーム計画や飛行船に関する貴重なデータやノウハウがまとまった形で継承されるので、検討してほしい。その際、論文だけでなく講演前刷集も含めておくことを希望する。論文になっていれば、講演前刷集は省略してよい。
  北海道大樹町の多目的航空公園に構築した実験場とインフラは、今後のSPF開発、現存する有人飛行船、無人飛行船にとって大変貴重であり、大いに活用することを考えるべきである。現在有人の飛行船は国内に2隻あり、民間に適切な価格で開放し、飛行船の整備に活用したり、台風襲来時の退避場所に活用したりできることを検討してほしい。 大樹町の要望があれば、協力して飛行船に関する有料の博物館のような施設を作り、教育の場、維持管理費用の一部分および大樹町の観光資源として活かせると考える。

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