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参考1-1

企画・運営等分野 評価調書の集計及び意見

1   研究開発の目標設定
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の目標設定 0 1 9 0

  評価根拠のコメント
研究開発課題の困難度等を勘案し目標設定を行ったか
 
適切に勘案されたとは言い難い。研究開発の目標設定については疑問がある。「成層圏プラットフォームの開発」という目標を掲げたこと自体を否定する必要はないが、そこではとにかく主要な目標は成層圏プラットフォームの実現である。その上で何をするかはそれにともなって行われることであるから、まず第一にこの主目標の達成の可能性が厳密に検討されねばならない。ところが現実には電源系において特に燃料電池に関し、また飛行船分野における素材開発に関し、大きく見通しが外れ、プラットフォーム自体の実現が無期限に延期されることになってしまったのは、最初の計画、目標達成の見通しに大きな問題があったと言わざるを得ない。
初期段階に夢を追いすぎ、フィージビリティスタディに欠けていたこと、実証機試験までの研究開発には、より多額の費用と人材が必要であったにもかかわらずその見通しを誤ったことは、研究開発課題の困難度に対する認識が不足だったことを意味する。
妥当。
大型の飛行船を造る実績も拠点も日本国内に存在しなかった。地上とは比較できないほど厳しい成層圏環境(低圧、低温、高温、強い紫外線)で使用する再生型の燃料電池システムの技術的困難度を勘案すると、目標設定が余りにも高すぎた。
電源系(太陽電池)についてみれば、民生技術をそのまま利用して、モジュール化、設置法等に特化した内容となっており、成層圏で必要となる太陽電池開発となっていない点に疑問が残る。当初から大きな予算をつけて、成層圏用太陽電池開発を目指すべきではなかったか。
目標設定に際し、固体高分子形燃料電池(PEFC)が開発途上にあることを念頭におかず、既に要素としての開発が終了したものとして開発目標を設定したものと考えられる。そのため、セルを購入し、それをスタックやシステムに組み上げることに主眼がおかれたように思われる。その意味で、困難度を勘案した目標設定になっていない。
平成11年の事前評価では、電源より膜材など船体そのものの挑戦的テーマが浮き彫りになっていた。しかしこの規模の長期プロジェクトでは、適当な間隔で技術進展を見極めながら計画修正してゆくこと(長期計画を毎年立て直すこと)は妥当なやり方であり、予測の甘さそのものを低く評価すべきではない。厳密に見ると、平成12年〜平成14年の時期に、電源の方式にAlternativeを考えられなかったことは、計画の弱点として尾を引いている。
第3回開発協議会(平成11年9月)での目標設定時およびその前段での部会議論などにおいて、「全く新しい要素技術を含み、それら要素技術の革新的進歩が必要」であり「フィージビリティスタディを継続し柔軟に対応してゆく必要性」が認識されていたにもかかわらず、基本に立ち返っての目標の見直しが不十分であったように思われる。
そうは思わない。ペイロード1トンの250メートル級プラットフォームがネットワーク化されれば、大きな社会利益を生みだすかも知れない。40メートル級の成層圏フライトは世界初であり、この技術レベルに到達したのは画期的であることは間違いがない。しかし、そこから 150メートル級の技術実証機への発展経路上にある技術的問題が十分検討されたとは思えない。さらに、150メートル級の技術実証機から250メートル級のプラットフォーム本体への差も大きく、この点が十分検討されたとも思えない。当初の「できるかぎり早く実用化の目途を立てる」と言う目的からすると、250メートル級のプラットフォームのネットワーク化を図るにはもっと高いレベルの技術開発スケジュールと予算が必要であったと思われる。この観点に立つと、最終目標を達成するための長期戦略目標の設定が適切ではなかったと思われる。特にネットワーク化したときの、寿命、製作コスト、維持コストの点についての議論があまりされていない。
また、地球観測については、成層圏プラットフォームのネットワークによる長期観測がゴールであるのに、バッテリー、標準ガスの運用上の問題から2時間程度のシステム開発を目標においており、技術開発の目標設定が疑問である。さらに、多数の成層圏プラットフォームがネットワークになった場合には、標準ガスの供給や、ネットワークが大陸スケールに拡がらないかぎり、高々度でのデータが有効な意味を発揮しないと思われる。その点に関する研究体制は取られていない。
もうひとつの疑問は、成層圏プラットフォームシステムのメリットそのものについてである。昨今の企業の国際化や拡がる国際貢献を考えると、人口稠密な狭い領域にメリットのある成層圏プラットフォームシステムと、全球をカバーできる人工衛星システムとの間の、長所短所をもっと検討するべきであった。
当初の目標設定が、困難度を勘案しての目標設定であったとは言い難い。それ以前に、全体目標が飛行船本体の開発なのか、地球観測(広義)なのか明確でなかったため、プロジェクト全体として見た時の困難度がどこにあるのかが、十分に検討されなかった。燃料電池開発や、大気観測機器開発、繰り返しの滞空実験の必要性などのBottle neckへの当初見通しは甘かった。
目標達成の見通しが的確であったか
 
的確でなかった。
電源系について、既存の技術を転用できるという見通しは的確ではなかった。
(変更された)目標に対し、分野によっては、開発あるいは学問的達成目標の検討が不十分であったように見受けられる。
研究開発の初期段階で実施されたフィージビリティ・スタディ(成立性の調査・研究)に問題があり、目標達成の見通しは不的確であった。すなわち、基本の要素技術が全て予定通り達成できないと平成15年度まで目標にしていた技術実証機が成立しない研究開発の進め方に問題があった。
出来合いのものを利用していたのでは、目標達成は難しい。成層圏固有の環境を考慮した太陽電池開発が必要であったと思われる。
目標設定に際し、PEFCが開発途上であること、使用環境に敏感であることを充分に把握していたとは言い難く、目標達成の見通しが非常に甘かったと言わざるを得ない。
ミレニアム採択の時点で、全体目標の影が薄くなっている。計画の電源を搭載せず、ミッションも絞ったミレニアム計画により、目標が漠然としたサブグループもあったであろうと想像でき、全体計画のまとまりを欠く原因となっている。ミレニアム採択の大変更であれば、予算やチーム編成、そして全体の連絡会の運営にいたるまで相当な変更があってしかるべきであった。議論がサブグループレベルでのものに留まっていたのが想像できる。逆にミレニアム実験機に関係したグループは、明確な線表を得て、膜材や管制制御システムの開発の目標達成に拍車がかかっている。さらに、ミレニアムがなければ、電源系の課題の難しさを認識し、計画変更する時期はもっと遅くなっていたかと思われる。
当初目標の20キロメートル高成層圏・定点滞空飛行に関する気象条件を含むあらゆる困難性要因の調査が、さらに慎重に行われていれば、要素技術の達成見通しがより正確になされ、より効率の良い研究内容となった可能性が大きい。
そうは思わない。適切でなかったことは、途中での重大な問題(電源系の問題、技術開発機の開発費用)による計画変更によって明らかである。例えば、平成11年9月の評価報告書には、平成10年度成果として、「耐風速30メートル毎秒条件下(全土に配置した場合のミッション達成率97パーセント)で20キロメートルで定点滞空する飛行船モデルに要求される技術的条件を抽出した。この場合、ミッション搭載重量1トンを満たす飛行船は全長245メートル、最大径61メートル、全備重量32.4トンシステムになる。…太陽電池と再生型燃料電池から構成される電源の高効率化・軽量化の技術的見通しを得た」とあり、また第3回開発協議会(平成11年9月)で「長期間滞空が可能な大型軽量の飛行船の実現性、運用性がにわかに高まり、多数の成層圏プラットフォームで構成される全く新しい通信基盤、地球観測・監視システムが構築できる可能性が生じてきた」としてネットワークシステムを構成する250メートル級のプラットフォームの実現可能であるとしているが、そのわずか2年半後の第6回協議会(平成14年5月)では電源に関する技術動向が変わったとして計画を変更している。さらに、第7回協議会(平成15年7月)では、150メートル級の技術実証機が莫大な費用がかかるとして事後評価後、今後を考えることになった。平成11年当時にこのような動向変化について予見できなかったのは不思議である。
的確であったとは言い難い。特にミレニアムプロジェクトになって観測が主目的になったときに、成層圏二酸化炭素観測の意義の再確認がなされなかった点やそれに向けて資源の投下に変更がなかった点から見て、目標達成の見通しが的確であったとは言い難い。
目標変更の方法が的確であったか
 
目標と変更した結果は妥当であったが、それが十分迅速に行われたとはいえない。一度初期の目標達成が不可能であることが明らかになった後には、目標変更は不可避である。その中で当初の計画中可能なものは進行しようとした努力は認められる。ただしその中でミレニアム計画に「乗る」ことにしたことは、いろいろな条件を考えれば適切な選択であったとしても、成層圏プラットフォーム計画全体の整合性を維持する上で問題がなかったかという疑問が残る。このことをふくめ、当初の目標達成が不可能であることがわかったとき、速やかにそれに対応して目標を変更し、体制を立て直すことが的確に行われたかにも問題が残る。
ミレニアムプロジェクト採択がなされた時点で、ミレニアムに採択された部分に重点を置きすぎ、残余の部分が後回しとなり、結果としてないがしろにされる形で変更したのは、適切ではなかった。
(変更された)目標達成後、技術実証機に向けての道程が明確ではなかった。
平成15年9月に立ち上げられた「成層圏プラットフォーム電源系研究会」にて電源系技術について調査・分析が行われ、平成16年3月26日付けの報告書で、SPF用の電源の現状と課題がまとめられた。この調査・分析は、本来研究開発のフィージビリティ・スタディの段階で、もっとしっかり実施しておくべきだったと考える。
目標変更も当初の目標を踏襲したものであり、根本的な目標変更になっていなかったと考える。また、研究開発は慣性力が大きく、本質的に目標を変更することは難しいと考える。
ミレニアムへの変更の議論の責任の所在が不明であること、「誰が」という議論が起きていないのが不思議である。この決定を認めた上での各サブグループの目標修正は概ね妥当であった。全体の目標が、サブグループ目標と次元の異なるものとして共に議論される機会、風潮が欠けていたと思われる。
フィージビリティスタディの継続検討が認識されていたにもかかわらず、その後のフィージビリティスタディの検討内容は、的確な目標変更を促すには不十分であったように思える。結果的に、目標変更が後追いになったものと思える。
「成層圏プラットフォーム研究開発計画」(平成11年9月 科学技術庁・郵政省)、「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」では、「平成15年度までに、二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測を可能とする成層圏滞空飛行船(成層圏プラットフォーム)による観測を実施する。」と変更されたのはおかしいと思う。すなわち、40メートル級で観測できる観測項目と観測測器は非常に限られたものであり、現在の温暖化問題を解決するための有効なデータを供給できないことは当時から予見できたはずである。もちろん、高高度における温室効果ガスの測定は重要な科学的課題であるが、ミレニアムプロジェクトにおいて、温暖化問題との関連で可及的速やかに行う項目であったかどうかも疑問である。現在では、京都議定書の第一約束期間に合わせて、諸外国では温室効果ガスや大気汚染物質の観測を衛星で行う計画が多く立てられている。この場合、科学的な検討により、成層圏観測よりも対流圏観測の重要性が指摘されており、そのため、JAXA(ジャクサ)の成層圏観測用センサーの開発も中止され、現在では対流圏の温室効果気体を測定するGOSAT衛星計画が進行中である。このような経緯をみても、初期の判断が適切であったかどうか疑問である。また観測測器も短時間しか観測できないものが目的とされており、プラットフォームのネットワーク化を目指した、壮大な計画にはなっていない。もし本当にやる気があったのならば、個々の技術的問題を解決するような投資と計画が必要だったのではないか。
第7回協議会(平成15年7月)で「技術実証機の開発には莫大な費用がかかることなどから、まずは、16年度の定点滞空飛行試験終了後、ミレニアム・プロジェクトの成果を取りまとめて事後評価を行う」としたのは適切だったと思う。しかし、技術実証機が「莫大な費用」がかかることが、なぜ、平成11年段階で予見できなかったかの方が問題である。ミレニアムプロジェクトにおける政府の指導に問題は無かったのかも検討するべきである。
また、第8回協議会での「平成17年以降、当分の間、文科省は電源系の開発を続ける、総務省は通信・放送」の決定も適切である。すなわち、問題解決に対してブレークスルーを生み出すような研究を粘り強く支援することは必要である。しかし、有能なPIを公募で選んで競争しながら開発するような形態が必要である。
その他
 
計画の評価を行うにしても、技術プロジェクトであるのであれば、被評価者がいるはずであるが、どうも組織体制のみ(しかも合同組織)が評価されるようで、責任の所在、あるいは賞賛される個人が見えてこない。期間を通しプロジェクト進捗についての質問に即答できる人はいなかったと思われる。専業で従事した人材はどの程度いたのかなど、あいまいである。
大目的として、実現されると非常に大きなメリットがある250メートル級の成層圏プラットフォームによるネットワークの形成が掲げられており、これがコストベネフィットまで考慮して実現できるかどうかを全体を統括している研究協議会でもう少し時間をかけて検討するべきではなかったか。1機程度の技術実証機を作るだけがせいいっぱいであったら、地球環境観測の観点からはあまりインパクトが無い。詳細な目標設定についても疑問がある。夏期に30分滞空するのは可能かも知れない。しかし、成層圏プラットフォームが実現された場合は、冬季にも運用したり、緊急時に離着陸させたりする必要がある。従って、冬季にも実験をする計画にするべきだった。これをクリアーできなければネットワーク化は不可能ではないか?その場合、上下降中には対流圏上層から成層圏下層での60メートル毎秒程度に耐えなければならない。吹き流し状態だと影響はミニマムに抑えられるが、風のシアーや乱流による影響を十分評価する必要がある。その場合、耐風能力は20メートル毎秒では十分では無いのではないか?いずれにせよ、成層圏実験は1回でなく、何回も行うように計画されるべきであった。


2   研究開発の推進方策
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
研究開発の推進方策 0 2 8 0

  評価根拠のコメント
全体の研究開発スケジュールの設定及び変更が的確であったか
 
疑問がある。
平成12年の第4回開発協議会において、平成15年度より技術実証機の基本設計開始とされているが、平成14年の開発協議会では、電源系の動向を受け、今後一年かけて実証機について検討するとされ、基本設計開始を棚上げにしている。この時点で、ミレニアムプロジェクト関連以外の研究(そのための予算消費)は一旦停止すべきであった。研究の方針を定めることをせずに、漫然と研究の継続を認めた開発協議会の判断には問題がある。電源系研究の見直しが平成15年になされたのは、全体の研究開発スケジュールの中で遅すぎた。平成15年9月〜平成16年3月の電源系研究会において、他業界で進められている成果を直接飛行船システム電源系に適用することは難しいという結論となり、それが第8回開発協議会に報告されたにも関わらず、そのことが平成15年度〜16年度における電源系開発のための予算支出(2,300万、1億5,000万)に反映しているように見えないのは問題である。
概ね的確。
SPF開発のうち、膜材と太陽電池の研究開発は、価格と耐久性に課題はあるが、ほぼスケジュール通り研究開発が進行した。再生型の燃料電池の開発は、厳しい成層圏環境と軽量化の壁に阻まれて、予定通り進捗しなかった。すなわち、初期段階のフィージビリティ・スタディが十分でなかったので、SPFの研究開発がスケジュール通りに進まず、スケジュールの設定や変更が的確だったとは言えない。
PEFCに係わる要素研究と再生型燃料電池のシステム検証との両睨みで研究開発のスケジュールを立てるべきであったと考える。しかし実際には、前者に係わる研究開発の計画は全くなく、後者に係わる研究開発のみが実施されたと言える。
成層圏プラットフォーム全体の計画としては、電源系以外は当初のスケジュールで進んでいると言えないか?課題毎のスケジュール変更は許容の範囲と評価できる。問題は、各個別課題を組み合わせた全体計画の推進チームがあいまいなことである。ミレニアム計画に参加したため、責任の所在も、その後の全体評価、そのものが難しくなっている。要素技術により進度が異なることが明らかになったので、電源系の要素技術に絞り集中的に行い、再び全体計画を練り直しては良いと思う。これを行うにも、今の体制では不可能で、全体を管理するチームが必要である。
全体スケジュールの設定はおおむね妥当であったと思えるが、スケジュールの変更については課題ごとの困難性を十分検討していれば、各要素技術の研究開発スケジュールをより適切に設定できたものと思われる。
40メートル級程度の成層圏滞空飛行試験機と定点滞空飛行試験機の作成については、ほぼ適切であった。しかし、最終年度に成層圏滞空試験を1回しかやらないような計画には無理があったと思われる。温室効果気体の観測を実用化するためには、何回も実験をする計画にすべきだった。また、大気状態が静穏な夏期のある日を選んで実験しており、本来は、もっと過酷な環境で実験する計画を行わない限り、さらに大きな技術実証機の準備にならないのではないか。そのためには冬季の実験も行うような計画であるべきであった。そうでないと技術実証機の力学強度に関する安全係数の決定もできないのでは無いか?
適宜状況変更に合わせてそれぞれに評価委員会、技術チーム会合が開かれ、変更がされている。しかし、動力仕様のちぐはぐに典型的に現れているように、飛行船本体、動力、計測機器の各サブプロジェクト間の調整が的確になされたとはいえない。
研究開発課題の困難度等を勘案し資金計画及び推進体制に反映したか
 
疑問がある。
飛行船の柔軟膜材構造にかかる部分については、その困難度を勘案した体制が結果として組まれていたが、電源系についてはその困難度を勘案した体制が最後まで組まれていなかった。固有の電源開発研究をするのには、平成15年度−16年度における電源系開発のための予算支出(2,300万、1億5,000万)は少なすぎ、また、そのための推進体制強化がなされたとは見えない。
推進体制の面で人材(数)不足が懸念される。
電源、特に再生型燃料電池の開発に、初期段階でもっと人材と資金を投入するべきだったと判断したので、その観点からは資金計画及び推進体制に反映していない。
太陽電池系についてみれば、既存の太陽電池技術を流用する立場であれば、現状以上の成果は難しい。また、資金的にもこのレベルで妥当。しかし、これでは新しい知見は少ない、社会に与えるインパクトは少ない。
民生用PEFCの開発が進む中、成層圏用PEFCの要素技術としての課題も浮き彫りにしえたはずであったにも拘わらず、そうした課題の洗い出しや資金計画や推進体制への反映は全く行われず、終始、再生型燃料電池のシステム検証に主眼がおかれた模様である。
資金の配分は、ミレニアム計画のためかも知れないが、実験のシステム運用の費用が電源や機体の要素技術より一桁大きな費用を費やしており、疑問が残る。長期的な目標ではなく、身近なミレニアム計画へ注力したようにも取れる。要素技術ごとの予算配分も含めて柔軟に修正を行う、力のある全体管理グループを作らなかったことが、原因ではある。なお、ミレニアム計画採択により、資金計画に変更があったはずであるが、資料からは読み取れなかった。当初の計画の中で、滞空実験前後での、管制システム部分の費用が、増額されていたのであろうか?
研究開発課題ごとの困難度等をより適切に判断して資金計画及び推進体制に反映する必要があったと思われる。
そうは思わない。技術実証機を実現するためには、最初からもっと高い技術レベルを目指すべきでは無かったか?
一貫した目標設定、プロジェクト全体を技術的見地から見る機能がなかったために、ちぐはぐな資源配分になっている。先に述べたように、困難度が、プロジェクト全体の見地から順位付けされておらず、飛行船はある程度開発に成功したが、電池、計測機器試験の面からは困難度の克服は出来なかった。省庁別の予算であることは承知していても、当初の飛行船開発(成層圏飛行船本体の開発)目標が地球観測(成層圏からの地球大気観測)目標に変わった時点で、計測関係やそれをサポートする電源関係に多めの資源配分をするべきであったと思われる。また、成層圏と対流圏に飛行船資源をわけたため、「成層圏」からの大気観測実験が一回の試験に終わったのではないかと思われる。
研究開発実施主体の選定は適切であったか
 
十分判断できない。
電源系については、それを主体的に開発する専門家が十分には配備されなかった可能性がある。
適切。
選定された研究開発実施主体は、市販のCCM(Catalyst-coated membrane)を購入してアッセンブリーしているだけであり、PEFCの要素技術に係わる研究開発を推進することは難しいと考える。
それぞれの要素課題の実施主体の選定は適切であったと思われる。しかし、技術的にもアカデミックにも困難な項目については、省庁や協議会、企業名などの組織化と同時に、このプロジェクトを専業とする人名が表に出てくるのが自然であると思われる。(予算や人数だけではなく、個人の研究能力プラスブレークスルーが一つも必要がないテーマであれば良いが、このプロジェクトは十分に挑戦的であることは最初から想定されていた。)
実施主体はそれぞれの実績などに照らして適切であったと思われる。
それぞれ有能な関係者が参加しているので適切であったと思われるが、もっと公募で競争を促すような選考法がとれなかったか。
電池に関する開発主体選定に疑問がのこった。
推進体制内の役割分担は的確であったか
 
概ね可。
開発協議会による決定には時間が掛かりすぎるように思える。これは、協議会が全体の寄り合い所帯であり、迅速な決定をすることができない仕組みとなっていたためであると推察する。分担体制とするよりは、全体としての開発の責任者に権限を集約し、その者が研究の継続、変更等に責任をもって当たるようにすべきであった。
分野によっては、メーカー任せの点もあり、然るべき人材投入がなされたのか疑問がある。
役割分担は明瞭であったと判断する。
CCMやMEA(Membrane Electrode Assembly)を製作し、分析評価しうる機関を参画させるべきであったと考える。
結果として、責任者が不明確で、個人のレベルまでの責任、評価がしにくい体制である。組織での分担を行っても、全体計画推進の責任は分担できるものではない。
目標設定の判断が最も適切に実施されていれば、それに相応しいより適切な役割分担もあったかと思われるが、実際に行われた目標設定においては妥当な役割分担であったと思われる。
地球観測については適切であったと思う。
的確であったとはいえない。役割に齟齬がないように割り付け、監視し、運営するプロジェクト全体を見ていた組織・ポストがどこだったのか明らかでない。
推進体制内の意思疎通は円滑であったか
 
よくわからない。
電源系研究会や開発協議会での、電源系開発の困難性に関する見解が、研究を行う現場に十分伝わっていたとは見えない。
指揮系統が明確でなく、責任の所在が曖昧なため、到達度に関する意思疎通が必ずしも円滑であったとは見受けられない。
省庁を横断する研究開発で、推進体制内の意思疎通は円滑でなかった。
意思の疎通は円滑だったと見受けるが、開発のベクトルに問題があったと考える。
ミレニアム計画でシステム統合の必要が明確化し、技術的な課題が見えてきて技術連絡会、関係機関連絡会さらに電源系研究会などで、議論が盛り上がっていったことが想像される。しかし、要素技術を扱うサブグループでの議論に比べ、全体システムを検討する場での議論が難しかったようである。たとえばミレニアムの扱いを、プロジェクト全体への影響の観点で、責任を感じて議論していた主体は、誰か、どの組織か? 中心チーム、人物の存在感が少し不足していたと思われる。
課題ごとの推進体制内では意思疎通は円滑であったと思われるが、プロジェクト全体の推進体制内の意思疎通においては、プロジェクトの基本的な目標や開発手法に及ぶような、高度に技術的かつ総合的な議論が日常的に行われ、意思疎通が十分だったとは必ずしも言えない。
わからない。
全体に各サブプログラム間でやりとりするべき仕様や滞空試験計画にちぐはぐが有り、意思疎通が十分であったといえない。
その他
 
開発の今後のあり方を検討する「技術実証機検討チーム」「電源系研究会」が、それぞれ検討に1年近く要している。開発がすでに開始している場合、このように時間を掛けて検討するのでは、その検討結果を開発に反映させることはできない(実際できなかった)。
成層圏大気の直接観測・採取は、失敗に終わったにもかかわらず、それが失敗であることを正式に評価し、認めることができないのは、組織としての自浄能力に欠けている。
この研究開発がスタートする時点で、大型飛行船製造の実績と拠点が国内になかったので、実績のある国外の飛行船メーカーに到達高度3,000メートル程度の有人または無人飛行船を製造させる選択肢があった。この有人飛行船を運用すれば、高度3,000メートル程度の大気圏下ではあるが、地球観測、大気観測、交通管制、災害地情報、通信・放送の技術開発試験は平行して効率よく実施でき、飛行船の可能性、成層圏プラットフォーム計画の有用性をもっと立証できたと考える。


3   今後の課題
   
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
今後の課題        

  評価根拠のコメント
目標達成のためのより効果的な企画・運営等のあり方
 
多くの計画を含みながらも全体が成層圏プラットフォームの実現にかかっているようなプロジェクトにおいては、多くの人々との協力が必要とされる一方、全体を統括して主目標の実現のための計画を、責任を持って推進する「司令部」がなければならない。そこには全体として業務の執行に権限と責任を持つ「司令官」(リーダー、マネージャ)と、高度の専門知識を持ってそれを補佐する複数の「参謀」(スタッフ)がいなければならない。今回のプロジェクトにおいては、それを欠いていたことが最大の問題である。開発協議会が最高意思決定機関であるということになっていたが、そのような非常勤の「外部の」人々からなる合議体は、本来執行機関に対する助言、或いは承認を与えるadvisory board或いはcouncilという性格のもので、執行上の責任を負うものではなく、また状況の変化に対応して速やかに措置を取ることができるものでもない。場合によっては名目上の最高機関である「協議会」の下に事実上は「事務局」が執行上の責任を負う場合もあるが、しかしこのプロジェクトのように複数の省庁、研究所が正式に関係している場合には「事務局」も「寄り合い世帯」としての性格を免れず、単一の「執行部」としての権限を行使することは困難であったと想像される。今後このプロジェクトが改めて再発足する場合には体制上の根本的な改善が必要である。
透明性の高い第三者機関による事前評価、中間評価を行うべきである。全体の計画を司り、今回のような計画不成就の場合には責任を取るようなリーダーを置くこと。この種の研究開発には継続評価を行う必要がある。また、折り返し時期には外部メンバーによる「中間評価」がなされ、それによって厳格な評価を受け、計画の修正をすべきである。
指揮系統、責任体制を明確にし、メーカー任せの点が無いように願いたい。
いくつかのグループが分担して研究開発した成果を持ち寄り、一つにまとめ上げるプロジェクトになっているわりには、中心となって動いているリーダーの顔が見えない。マネージング体制に問題はなかったか。
研究開発の途上で開発目標を変更したり、開発体制を修正したりすることは非常に難しいと考える。そのため、研究開発のスタート時点において、複数の専門家によって、研究開発の目標設定、開発実施主体の選定さらには開発予算の編成をしっかりと行うべきと考える。また、研究開発を推進する体制を明確にすべきと考える。
この種の技術的プロジェクトはアカデミックなチャレンジングな側面を有するものであり、国家規模であっても、個人が見え、組織(省庁や企業の協力)がこれを支える形体制をとるべきであろう。(今回は、有力な企業が全体計画に関するメインコントラクタとなることができなかったのであろうか。)現在においても、責任者、評価されている主体が何かが不明である。(個人評価プラス組織評価の両方が必要)やはり期間を通じて進捗を管理する推進チームの存在は必須であり、今後の推進もこの点を配慮する必要がある。
このような大きなプロジェクトであり、また技術的にも高度でフィージビリティが不明確な研究開発においては、全てを一元的に掌握し技術的に深い知識と経験豊富なプログラムオフィサーグループを核として研究開発体制をとることが是非とも必要であろう。また、目標に向けて一方向に研究ステップを踏んでゆくストレート型の研究開発手法は、目標が明確でフィージビリティも明確な場合は問題ないが、フィージビリティが十分明確でない場合、あるいは目標が社会的条件などで変わりうる場合には不適切であり、何度も基本に立ち返ってまた次の目標に受けて順次上昇してゆくスパイラルアップ型の研究開発手法が適しているはずである。わが国のプロジェクト研究は、ある時間を区切ったストレート型の手法をとる場合がほとんどであるが、課題の性格によって今後はスパイラルアップ型の手法を取り入れてゆく必要があろう。結果論であるが、本プロジェクトをスパイラルアップ型で進めていれば、もっと着実に投資効率よく基本技術の蓄積ができたように感じられる。
技術実証機のプロジェクトを考える前に、すでに製作したシステムを使って、もっと多くの実験を繰り返す企画・運営を立てるべきでは無いか?特に、冬季の実験等が必要である。また何よりも必要なのは、もう一回、成層圏プラットフォームシステムのフィージビリティーを検討し直すのが必要である。すなわち、現時点で蓄積できた経験や、地球観測や通信の現場での進歩をもとに、専門家に集まってもらってもう一回、建造の可能性、そのためのコスト、運営コスト、システムを投入した時に得られるサービス(この場合、日本規模ではなく、世界規模のマーケットや応用を考える)、そのサービスから得られる利益、衛星とのトレードオフを詳細に時間をかけて検討するべきである。
プロジェクト全体を技術面で統括する、PIあるいは統括責任者が明確にされる必要。さらに、全体の目標貫徹のために、全体予算をフレキシブルに動かせる仕組みが必要。
研究開発の企画・運営等にあたって改善すべき点
 
今回の事例で企画運営を担っていた開発協議会は、成果が上がるか否かを問わず、開発を継続することが前提となっていたのであろう。外部の評価を受け、開発にかかる困難が生じたとき、それを認め、途中での変更、場合によっては部分的撤退を決断することを可能とする仕組みを設けるべきであった。
推進母体としてのJAXA(ジャクサ)が設定したであろう本プロジェクトのJAXA(ジャクサ)内部での優先度と、JAXA(ジャクサ)が掲げる将来構想との関係についての考え方の開示が十分でない。
多くの技術分野にまたがる国家プロジェクトを推進するためには、研究開発全体を掌握し、必要な人材と資金を配分できる強力な開発推進の司令塔(3名程度、独立した専門職、掛け持ちではできない。)が必要と考える。ただし、司令塔の構成員をどのようなプロセスで選任するかが一番の課題である。会計検査院や外部評価機関が適宜チェックを入れて司令塔の暴走を防ぐ仕組みは必要である。
国の予算では、最初から詳細な実施計画が求められるため、採択されてからのフィージビリティstudyに時間がとれないのは分かるが、成層圏という未知の環境を対象とすることを考慮すると、もっと徹底したフィージビリティstudyが必要であったと思われる。
研究開発の計画段階において、燃料電池に造詣の深い専門家を複数参加させると共に、電源系の研究開発において技術を統括しうる責任者を配するべきと考える。
この種のプロジェクトは、費用や期間も見かけは大きくなるが、必須課題である要素技術についてこそ、民間の力を活用すべきで、開発期間、費用とも、実は全体プロジェクトより大きくなることも多い。国がきっかけをつくり、課題を洗い出した意味で、意義があったと思う。評価を通じてこの種の技術革新、科学の進歩への応援の気風を醸成することが、先進国日本の維持につながる。
目標の高い研究プロジェクトでは、仮の目標は設定したとしても、フィージビリティスタディの手を休めることなく十分検討して、目標そのものを基本に立ち返って見直すことも出来るような検討体制を作るように、企画・運営する必要があったと思われ、今後のプロジェクト運営に反映すべきである。
大型プロジェクトに関しては、官による計画的主導とそれに呼応する研究者による提案のダイナミックなコンビネーションが必要である。そのためには、研究公募プラス力のある研究者による応募競争プラス適切な評価の三位一体が必要である。これが欠けていたのでは無いか?また、「早期実現を目指す」と言う言葉がミレニアム計画で謳われているが、そのかけ声のために、問題点を良く検討して進んだり、ブレークスルーを作るために時間とお金をかけたり、開発者同士に競争させたりするプロセスが欠けていた無いか?このような問題をさけるために、欧米ではフェーズアップシステムが採用されており、進度の思わしくないものに関しては、中途で開発を中止させることが必要である。全体に責任をもつPIが公募に提案して、PIが作ったチームが全責任を負って実施するシステムの方が効率的であると思う。
予算が付く前に、しっかりとしたFSが必要であり、プロジェクト目標の設定、目標に沿った運営を一貫して監視、評価する外部委員会が必要。
その他
 
ミレニアム計画採択により、資金計画に変更があったはずであるが、資料からは読み取れなかった。当初の計画の中で、滞空実験前後での、管制システム部分の費用が、増額されていたのであろうか?

事後評価自体が不十分である。今回の3回の会合だけでは、レビューすることのできた情報は非常に限られていた。従って、そこから引き出される結論も不適切な部分を含むかも知れない。

4   総合評価
   
  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待外れ
総合評価 0 0 6 4

  全体としての計画が大きな問題であったが、個々の部分ではそれなりの成果も得られているので、全く期待外れであったとはいえない。
 今回の研究開発は膜材の開発、通信放送分野の研究など、評価できるものもある。しかしながら、成層圏に飛行船を打ち上げるという研究開発の目的からすれば、電源系の開発が期待外れとなり、技術実証機を打ち上げることができなかった以上、総合評価としては、期待外れとせざるを得ない。成層圏大気の直接観測・採取が行いえなかったことは、期待外れである。また、再生用の電源系ついては、一定の課題を克服すれば、今後、技術実証実験の実施が可能というのであればともかく、開発の目途が立たないというのでは、やはり期待外れとせざるを得ない。今後については、「なお数年かけて、200億〜400億の開発費用を投入することにより、再生電源の開発を含めて技術実証機を開発する」ことが可能かどうか、今回の評価の中で明らかにならないのであれば、技術の分野における第三者機関による客観的な評価が必要である。
 今回の評価もしくは、技術の分野における第三者機関による評価の結果、
 ―可能であると判断された場合
 成層圏プラットフォーム研究開発計画は、実現に必要な経費、期間を甘く見積もりすぎていた点で批判されるべきである。
 ―可能ではないと判断された場合
 成層圏プラットフォーム研究開発計画は、実現不可能な夢でしかない計画に、公費を投入したものであり、その点で批判されるべきである。

本プロジェクトが技術実証機を最終目標としていないという意味で。
 この成層圏プラットフォーム研究開発以前の段階では、日本国内に大型の飛行船を設計・製造できる技術は存在しなかった。文字通りゼロレベルに近いところから立上げ、成層圏16キロメートルまで40メートル級の軟式飛行船を打上げ滞空させ、60メートル級軟式飛行船を4キロメートルの高度で定点滞空試験を成し遂げて、成層圏プラットフォーム研究開発に必要な多くのデータと知見を得た点は評価できる。
 ただし、当初の目的であった実証機試験ができなかった点と成層圏大気の採取と分析のデータが得られなかった点は十分に反省しなければならない。
 これまでに得られた成果を関係学協会の了解を得て、分野毎に合本の形でとりまとめ、関係機関に配付することができれば、この研究開発で得られた成層圏プラットフォーム計画や飛行船に関する貴重なデータやノウハウがまとまった形で継承されるので、検討してほしい。その際、論文だけでなく講演前刷集も含めておくことを希望する。論文になっていれば、講演前刷集は省略してよい。
 北海道大樹町の多目的航空公園に構築した実験場とインフラは、今後のSPF開発、現存する有人飛行船、無人飛行船にとっても大変貴重であり、大いに活用することを考えるべきである。現在有人の飛行船は国内に2隻あり、民間に適切な価格で開放し、飛行船の整備に活用したり、台風襲来時の退避場所に活用したりできることを検討してほしい。
 大樹町の要望があれば、協力して飛行船に関する有料の博物館のような施設を作り、教育の場、維持管理費用の一部分および大樹町の観光資源として活かせると考える。
 このような大型の研究開発は、地道に要素技術開発を継続し、時期を見て大きなプロジェクトに挑戦するやり方で研究を推進することが望まれる。一時的に研究開発を行い、目標に到達しなかったから一切手を引くやり方では、せっかく獲得した技術やノウハウが伝承されず、打上げ花火に終わってしまうことを危惧する。この成層圏プラットフォーム計画は、成層圏プラットフォーム造りと応用研究の二つに分割して推進するべきである。成層圏プラットフォーム造りは、成層圏環境に長期間耐える再生型燃料電池ならびに膜材(膜接合体)の研究開発に注力し、その研究開発に目処が着いた段階で再挑戦する。応用研究は、成層圏用太陽電池の研究開発、通信放送技術や地球観測技術等の魅力ある応用研究は、既存の有人飛行船を借り上げる形で、低高度の大気圏で継続実施して技術開発を完成させておくことが望まれる。このやり方なら研究資金は大幅に圧縮できるものと考えられる。
最低限、成層圏でのデータが必要ではないか。
研究開発のスタート時点における専門家による計画の練り上げが不十分であったことで、開発ベクトルの方向が、ある意味、正しくなかったように見受けられる。また、研究開発の実施責任者も定まっていなかったようにも見受けられる。
平成17年度から成層圏プラットフォームが稼動し、様々なミッションが運用開始することを想定したとすれば、技術の見通しが甘いと評価すべきかも知れない。しかし、携わった多くの研究者は、技術的に敗北を感じるどころか、もう少しあるいは準備は整ったの思いではないか。ITUの動きを見ても(世界的に見ても)日本への期待は大きく、続けるべきである。経済的、社会的な観点では、しばらく電源系に集中投資をして、その成果をみて成層圏へと再集結することもあり得る。そのためにも、投資により早期な特性改善、軽量化が可能かどうかの見極めはなにより重要。
わが国におけるチャレンジングな大型研究開発の典型と思えるプロジェクトであり、総合的な目標は現時点では達成されていないが、各要素技術分野には多くの成果を得ており、また研究推進の方法論としても多くの貴重な経験を得ており、これらの得られたものが今後の研究開発に有効に活かされれば、総合的評価としては許容できる範囲と思われる。
この結論は、技術実証機プロジェクトを中止すると言う提案では無い。項目3で述べたように、結論を出すためには、成層圏プラットフォームシステム自体のフィージビリティーと利益についてもう一回、専門家による詳細な検討を行い、長期戦略を立て直すべきである。
地球観測と銘打ってのプロジェクトなら、他にも重要な観測は多い。資源の機会損失があった。そもそも、ミレニアムプロジェクトの産業育成目標と十分にFSの要る科学技術目標のフェーズがあっていなかった。結果論であるが、成層圏と言いながら成層圏での地球観測はなされなかった。目標に向けて、効果的に資源が使われるように運営されなかった点に原因がある。産業面、科学・技術面での副次効果が十分とはいえない。

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