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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 調査研究協力者会議等 > 原子力安全規制等懇談会 > 試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(案) > 2.検討の背景


2 試験研究用原子炉等におけるクリアランス制度について

検討の背景

 現在、試験研究用原子炉施設は、8基が解体中であり、今後これらの解体作業の進展に伴い、放射性廃棄物として放射線防護の観点から特別の管理を要するもの以外に、元来、放射性物質による汚染のない物(放射性廃棄物でない廃棄物)や汚染のレベルが極めて低く放射性物質として扱う必要のない物が大量に発生することが見込まれている。この中で、放射性廃棄物と放射性物質として扱う必要のない物については、現在、これらを区分する基準がないため、放射性物質として扱う必要のない物であっても、管理区域に存在したものについては全て放射性廃棄物として取り扱われている。これは放射性廃棄物の量を徒に増やすことに繋がり、効率的で効果的であるべきという原子力規制の本来のあり方と矛盾するものとなり得る。また、近年では、廃棄物等の発生量抑制、製品等への再使用、原材料としての再生利用等が循環型社会形成推進のために必要とされており、この流れに逆行するものとなり得る。今後の解体作業の進展及び新たな施設の廃止を念頭に、放射性廃棄物と放射性物質として扱う必要のない物を区分する制度を早期に確立することが望まれる。これらの処分や再生利用等については、一義的には、発生者である原子炉設置者が主体的に取り組むことが求められる。国は、原子炉設置者のこうした活動に係る規制の枠組みや判断の基準を明確に示すとともに、原子炉設置者の保安活動に適切な関与が行えるよう現行の規制制度を見直す等の措置が必要である。

 試験研究用原子炉施設や核燃料物質の使用施設等を設置して、原子力の安全研究や様々な研究開発や教育研究を行っている日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構等の研究機関、大学等(以下、「原子炉設置者等」という。)の放射性廃棄物の処分については、文部科学省において、「RI・研究所等廃棄物の処分の事業に関する懇談会」が開催され、処分事業の実施に向けての課題等について検討が行われ、平成16年3月に、その結果が報告書として取りまとめられている。同報告書によれば、こうした放射性廃棄物の処分の実現は、原子力の研究開発をはじめ科学技術活動を今後とも着実に進めるために不可欠な課題であり、関係者においては、問題を先送りすることなく、最優先の課題として具体化を図っていくべきとの見解が示されている。

 原子力安全委員会は、平成11年3月に、主な原子炉施設(軽水炉及びガス炉)における固体状物質(コンクリート及び金属)を対象とした報告書「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」を取りまとめ、我が国におけるクリアランスレベルの規準値を示している。その後、平成13年7月に、軽水炉及びガス炉以外の原子炉施設を対象とした報告書「重水炉、高速炉等におけるクリアランスレベルについて」を取りまとめている。さらに、平成15年3月に、照射済燃料及び原子炉で照射された燃料被覆管や燃料集合体を構成する材料を取り扱う施設を対象とした報告書「核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)におけるクリアランスレベルについて」を取りまとめている(以下、原子力安全委員会のこれらの報告書を「安全委員会報告書」という。)。原子力安全委員会が示したクリアランスレベルは、国際原子力機関(IAEA)が平成8年に出版した技術文書「TECDOC-855」の考え方に基づき、科学的な観点から、我が国における放射線量を評価するための経路等について検討した上で、具体的に算出したものである。しかし、その後IAEAでは、「TECDOC-855」に示したクリアランスレベルについて見直しを行い、平成16年8月に「規制除外、規制免除及びクリアランス概念の適用」(IAEA安全指針RS-G-1.7)を出版したことから、原子力安全委員会では、RS-G-1.7で示された規制免除レベルの適用、評価方法、最新知見等、安全委員会報告書に反映するべき事項を抽出し、安全委員会報告書のクリアランスレベルの再評価を行っているところである。

 また、同委員会は、平成13年7月に、報告書「原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方について」(以下、「検認報告書」という。)を取りまとめ、クリアランスレベル検認にあたっての基本的な考え方を示した。この中で、同委員会は、クリアランスレベル検認を行う際の具体的な方法(運用)については、クリアランス制度が運用されるまでに行政庁によって整備されるべきものであるとしている。

 なお、経済産業省では、クリアランス制度について、原子力安全委員会のこれまでの取り組みと、日本原子力発電(株)の東海発電所の廃止措置を受け、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会において、原子力施設を対象とした報告書「原子力施設におけるクリアランス制度の整備について」(以下「廃棄物安全小委員会報告書」という。)が取りまとめられており、クリアランスレベル検認に当たって必要な技術的要件に関する基本的事項が示されている。

 上記のような試験研究用原子炉施設の現状、放射性廃棄物の処分の実現に向けた事業者の取り組み、クリアランスに関する検討の現状を踏まえ、研究炉等安全規制検討会(以下「規制検討会」という。)では、試験研究用原子炉施設等おけるクリアランス制度の導入に向け、国と原子炉設置者等のそれぞれの果たすべき役割を考慮しつつ、制度のあり方について検討を行った。

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