(1) |
芸術家の地位向上のための条件整備
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基本方針では,芸術家がその能力を十分に発揮でき,安全で安心して活動に取り組める環境を整備するとともに,芸術家等に対する積極的な顕彰等を行い,芸術家等の社会的,経済的及び文化的地位の向上に努めるとしている。
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○ |
これを踏まえ,国においてはこれまで顕彰や表彰がなされてこなかった分野でも顕彰や表彰を行うようにするとともに,芸術家等が安心して活動に取り組める環境づくりのために,創造の現場に関わる人々が相互に合意できる基本的なルールの形成に向けて,関係者間の話し合いを促進するなど,適切な支援を行っていくことが望まれる。 |
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(2) |
国民の意見等の把握,反映のための体制の整備
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基本方針では,文化芸術の振興のための基本的な政策の形成や各施策の企画立案,実施,評価等に際して,芸術家等や学識経験者のみならず広く国民の意見等を十分把握し,反映される体制の整備に努めると指摘されている。
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○ |
文化庁ではこれまで29道府県で文化芸術懇談会を開催し,文化芸術の振興に関して直に意見交換する場を設けてきたほか,著作権法や文化財保護法の改正に伴う政省令の整備の際にも,広く国民の意見を掌握するよう努めてきており,こうした取組を継続していくことが求められる。 |
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(3) |
支援及び評価の充実
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基本方針では,文化芸術活動に対する支援について,公平性及び透明性を確保し,適切な審査方法及び評価に従って実施し,結果を公開するとともに,支援の仕組みや方法などの在り方及び多様な手法の活用の検討を進めるとしている。また,芸術家,文化芸術団体に対しても活動成果等の還元や,適切な情報公開,効果的な運営などの努力を求めている。
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○ |
文化芸術活動への支援に関しては,平成16年2月に文化政策部会が「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について」を提言している。ここでは,創造活動への支援,基盤形成への支援及び新たな評価体制の確立が提言され,文化芸術活動への支援の充実が図られたところである。
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○ |
文化庁の各施策は「文部科学省政策評価基本計画」に基づき,政策の評価が毎年行われ,評価結果も公表されている。評価に当たっては,必要性,効率性,有効性等の観点から評価が行われ,定量的な資料(データ)を用いて具体的な達成効果も設定されているが,文化芸術活動は数値化によってその内容を評価するにはなじみにくい分野であることから,定量的評価のみならず,定性的評価を含む適切な評価方法を開発することは今後の課題となっている。
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○ |
一方,公的な支援を受けている文化芸術団体等に対しても,活動成果等の国民への還元や適切な情報公開などが引き続き求められる。 |
(委員からの課題提起) |
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地道な芸術活動が,きちんと評価されることが大切である。「優れた」文化芸術活動が,有名であることや経済の論理に置き換えられないよう留意すべきではないか。 |
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個々の文化施策に対する評価は,非常に難しい問題である。定量的な評価が困難なものをどのように評価するかが課題であり,文化政策の評価方法について一定の指標が示されれば,地方公共団体の文化政策にも資するのではないか。 |
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企業による文化芸術の支援の場合には各社が特徴を出していくべきだが,国による支援の場合には公平性も求められるのではないか。 |
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行政の公平性はよいことだが,文化に関しては必ずしも平等主義だけではやっていけないのではないか。平等主義で全部を少しずつやると結局個性のないものができてしまう。弱いところを支えるための理由や,日本にとっての必要性も議論すべきではないか。 |
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地方の文化芸術活動が競い合うことで差異が出てくるのは当然としても,国として最低限の格差是正(ナショナルミニマム)も必要ではないか。 |
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地域によっては平均的かつ普遍的な文化に触れたいという要望も強くあるので,最低限必要な文化が全国津々浦々に行きわたり,それを基盤に新しい文化を地域がつくり上げるという捉え方も必要ではないか。 |
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住むところによって「文化を味わう心」に格差が生まれないようにすべきである。 |
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(4) |
関係機関等の連携・協力
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基本方針では,関係府省間の連携・協力体制を整備するとともに,関係機関や地方公共団体等との連携を推進することが示されている。
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○ |
文化が教育,福祉,観光等と密接な関連をもつようになっていることから,関係府省が連携して施策を実施できる体制を整備することが求められる。また,様々な制度が文化芸術を支える基盤に影響を与えることを考慮し,関係省庁との連携を図ることが必要である。 |
(委員からの課題提起) |
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文化政策は数ある政策の中の一つの領域として捉えられているが,今後は,政策全体を貫くような形で機能すべきではないか。 |
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文化支援のための中間支援組織を支援して,文化関係者どうしの連携を支えることが必要ではないか。 |
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21世紀の日本にとって,文化は大きな力である。付加価値の高い経済活動を実現するのに文化は一つの柱になるし,観光と結びつけば大きな産業の推進にもなるので,文化を総合的に捉えて考えるべきではないか。 |
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現行の留意事項は文化庁が直接関与し得る範囲内だが,今後は,国,地方公共団体,民間非営利団体との関係についても留意事項としてはどうか。 |
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なお,本部会では,基本方針に掲げられた留意すべき4つの事項の他にも,以下のような課題が提起された。
(委員からの課題提起) |
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創造性と知的財産の問題,文化多様性の確保も留意事項に取り上げてはどうか。 |
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公益法人改革の動きも踏まえた文化芸術団体等の在り方や評価も検討していくべきではないか。 |
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