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課題4.文化芸術活動を支える拠点・資源をいかに活性化するか

方策11
 文化施設(文化会館,美術館・博物館等)のネットワーク化を図る
 文化会館については,稼働率が悪い,自主事業があまり行われていないなどの指摘もなされているが,文化会館をはじめとする文化施設は地域における文化芸術活動の拠点としての役割を果たすことが強く求められている。文化施設を活性化するための一つの方策として,文化施設が互いに連携し,ネットワーク化を図ることで課題が解決できる場合もある。それにより,費用負担の軽減や情報の共有化が図られるとともに,存在自体を地域内外に発信することも可能となる。
 このようなネットワークには同地域にある異分野の文化施設が連携する例,県境等を越えて同分野の文化施設が連携する例,大都市と町村の文化施設が連携する例などそのパターンは様々である。

(事例16)地域の文化施設が県境を越えて事業連携を図っている事例
  例: C−WAVE(シーウェーブ)ネットワーク協議会(九州5県)
 C−WAVEとは,九州における中・小規模の公立文化施設により構成されているネットワーク協議会である。C−WAVEという名称は,文化(Culture)を創造(Creation)し,伝達(Communication)する,うねる波(Wave)となることを目指して付けられたものである。平成5年に宮崎県門川町総合文化会館が,規模の同じような文化会館では,共通の課題を抱えているのではないかと考え,その課題をともに解決することを目指して連携することを呼びかけたのがきっかけとなり,大分,宮崎県内7館により設立された。平成16年現在では,鹿児島,熊本県,福岡県の文化会館も加わり,11施設までその連携が拡大している。なお,連携の効果を上げ,競合を避けるため,施設規模や施設間の距離などについて一定の制約を設けている。
 文化会館の事業費のうち文化芸術団体等の招へい費が非常に多くかかるという共通の課題の解決に向け,招へいに際して各文化会館が共同で経費を負担することで,公演開催のための経費を削減することができ,住民に低料金で質の高い文化芸術の公演等を提供することが可能となった。
 さらに,公演する側の文化芸術団体等からの注目も高まり,積極的な情報提供が得られるようになった。また,C−WAVEでは,年4回,各施設において研修会を巡回実施するとともに,首都圏へ出向いての制作者や出演者との面談,助成・支援団体からの情報収集を協働して行う等により,強力な連携が形成されている。このような連携から得られる効果は施設運営のノウハウの蓄積や職員不足の間接的な補完にまで発展を見せている。


方策12
 地域の特色ある文化財の積極的な活用を図る
 各地域には,それぞれのまちを形成してきた生活の歴史があり,地域の文化財はその歴史を具現化している地域のシンボルである。地域の特色を表す文化財に着目した専門家が,市民と協力してボランティア活動を推進することにより,文化財が地域の文化芸術活動の拠点となるだけでなく,教育活動の拠点にもなりうる。

(事例17)地域の文化財を教育活動の拠点としても活用している事例
  例: よこはま洋館付き住宅を考える会
 よこはま洋館付き住宅を考える会は,横浜の歴史を踏まえた街の特色の一つである洋館付き住宅に,人が長く住み続けるための保存・活用コンサルティング等の支援活動を通じ,これからの人の住まい方や,住環境,生活の質について考え,それを実践に結びつける活動を行うため平成11年に発足した。洋館付き住宅とは,大正から昭和初期に都市に建てられた和風住宅の玄関脇に小さな洋館がついた建物である。その存在は,横浜の住宅地の風格を醸し出すものであったが,近年急速な建て替えなどにより,その多くは失われつつある。
 よこはま洋館付き住宅を考える会は,建築の専門家と市民及び大学の建築関係研究者が協力してボランティア活動を推進している。具体的には,横浜市の郷土資料館との共同企画による文化芸術事業を実施し,洋館付き住宅をイベント活動や発表の場として活用することにより,地域の文化芸術活動の拠点を創出している。また,子どもたちに対して,土曜日を活用して,修復作業や環境に影響の少ない住居についてのワークショップ(参加型講習会)などの体験学習を行っている。さらに,貴重な洋館付き住宅の存在や状態を正確に把握し,データベース化し保存する活動も行っている。
 この活動を支えているのは,体験学習を実施するに当たって会のメンバーである教員が指導案を作成し,建築の専門家が子どもたちに伝えていくための専門知識を提供するなどの適切な役割分担と連携である。また,ワークショップ(参加型講習会)では,洋館付き住宅を修復した宮大工の参加協力を得て,本物の道具や技術を子どもたちが直接体験できるように工夫するなど,外部の専門家の参加を積極的に促し,緩やかな連携により様々な情報を提供するという会の運営方法にもそのポイントがある。


方策13
 学校や社会教育施設などの既存の遊休施設を有効活用する
 学校や社会教育施設は,学校教育あるいは生涯学習の場として活用されるとともに,地域住民にとっての文化的な地域づくりの拠点としての機能も求められている。余裕教室や廃校施設に新たな役割を与えて再生させることで,新たな地域の文化的シンボルを作ることができる。例えば,余裕教室や廃校施設については,様々な用途への転用が可能となっており,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等の公演・展示や練習の場としても利用できる。このように,既存の遊休施設の有効活用を図ることにより,多額の初期投資を必要とせず,地域における文化芸術活動の拠点を確保できる。

(事例18)廃校等の文化施設への転用により地域の文化芸術活動の拠点になっている事例
  例: 京都芸術センター(旧明倫小学校)
 京都芸術センターは,統廃合で閉校となった明倫小学校を改修し,京都市の文化芸術を総合的に展開する拠点として平成12年に整備された。京都で文化芸術を学んだ学生等に職業芸術家を目指して活動を継続するためのアトリエや稽古場(けいこば)を提供し,京都に若手芸術家が住み続けることができるよう支援することを通じて,京都の文化の創造力・発信力を高めることを目的としている。また,文化芸術の鑑賞だけに留まらず,文化芸術活動を直接体験し,さらに文化ボランティアとして積極的に参加するよう促すことにより,市民が支える京都の文化芸術の振興を目指している。さらに,常勤職員(最長3年)として「アートコーディネーター」8名を配置し,事業の企画・実施を担当することで,文化芸術活動の企画等を行う人材育成を図っている。
 同センターは,若手芸術家に公開制作や市民とのワークショップ等の地域貢献活動を条件付け,スタジオを最大3ヶ月間無償で貸し出す事業は毎回多くの応募があり,センターの利用を通じて形成された若手芸術家のネットワークが京都における新たな文化芸術活動の展開を促している。
 同センターは地域の自治組織の尽力により明治2年に設立された小学校を母体とし,地域住民の自治活動の場となってきたという歴史があり,まちづくりや地場産業とのつながりも深かったことから,センターへの改修後も地域住民に親しまれている。センターを利用できる若手芸術家の数は多くはないが,地域住民と文化芸術とを近づけ,地域に支えられた文化芸術活動が活発に行われていることは高く評価されている。
 また,校舎の歴史ある外観や講堂等の文化財的価値を保存・活用していること,大小の部屋が数多くあり多様な活動に対応できること,京都市中心部にあるため交通の利便性がよいことなどは,芸術家や市民から高い評価を受けている。



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