2007年2月に公表された「映像コンテンツ大国の実現に向けて」の報告書において課題として提起された、権利者不明時におけるクレーム対応の第三者機関の運用方法等について、「権利者不明の場合の第三者機関」の研究会を設置し、検討を行った。
本研究会では、これまで5回の研究会を開催し、主に、権利者が不明の場合の対応、
第三者機関のあり方、
一部の人が反対した場合の対応の3点について、それぞれ論点を整理するとともに、課題の解決に向けた検討を行ったが、それらの検討結果は、以下のとおりである。
これらの課題に対して、この研究会では、実演家および肖像権やプライバシーに関わる一般人等の不明の場合を中心に議論を行った。
実演家が不明の場合、実演家の権利者団体である芸団協実演家著作隣接権センター(CPRA)が不明者の調査を行い、クレーム対応にも積極的に取り組むこととなった。その結果、不明実演家からのクレーム等は実質上ほとんどないと考えられることから、実演家の不明者があっても、放送番組の二次利用を進めることで、CPRAはNHKおよび民放在京5社とそれぞれ合意する方向である。なお、不明者の使用料は、最終的に所在が判明しなかった場合には利用者である放送事業者または放送事業者が指定する第三者に返還されることとなる。
現在、文化庁の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」において、実演家不明の場合の裁定制度の検討が行われているが、現時点においては、不明者の使用料を預託する機関を設立する必要性があるという方向で、幹事社が中心となって、具体的な制度設計を行っていくこととする。
ニュース番組、ドキュメンタリー番組などに出演した一般の方々が見つからない場合、当該放送番組を利用するか否かは利用者の責任において決定されるべきであるが、その際には利用のためのガイドラインの作成や紛争を仲裁する第三者機関の設立が求められるところである。放送事業者は、引き続きこれらの課題について検討を行う。
実演家が不明の場合の第三者機関と肖像権やプライバシーに関わる一般人の場合の第三者機関とは、それぞれ性格が異なるので、別組織が望ましく、また経費等の面から、既存の団体等を活用したほうが良いとの意見が大勢であった。また、第三者機関の法的責任に対する懸念を示す意見のほか、運営資金についてはネット配信事業者などにも負担を求めるべきだとの声もあった。
第六十五条 | 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。 |
3 | 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。 |
実演家について、主役級や準主役級の出演者は別として、それ以外の出演者がネット提供に反対した場合には、可能な限り権利者団体等が説得にあたることとする。