著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第9回)議事録・配付資料

1.日時

平成19年10月31日(水曜日)10時〜12時5分

2.場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3.出席者

(委員)

上野、大渕、梶原、金、久保田、佐々木(隆)、里中、椎名、瀬尾、津田、常世田、都倉、中山、野原、野村、生野、松尾、三田の各委員

(文化庁)

高塩文化庁次長、吉田長官官房審議官,山下著作権課長 ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. 利用円滑化等の具体策について
    • 1権利者の所在不明の場合の利用
    • 2権利者が複数存在する場合の利用
  3. 閉会

5.配付資料

資料1
  現行裁定制度の改善について
資料2
  著作隣接権に関する裁定制度について
(参考)我が国の裁定制度一覧
資料3
  共有著作権関連規定の見直しに関する論点について
資料4
  共同実演に関する論点について
参考資料1
  本小委員会における検討状況(著作権分科会第23回(10月12日)配付資料)
(※(第8回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2
  第23回著作権分科会及び第8回小委員会における主な意見
参考資料3
  第8回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録
(※(第8回)議事録・配付資料へリンク)

6.議事内容

【大渕主査】

 おはようございます。ただいまから第9回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を開催いたします。本日も御多忙の中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては、予定されております議事内容を参照いたしますと、特段非公開とする必要はないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場いただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】

 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【著作権調査官】

 議事次第の一枚紙の下に配付資料一覧がございますので、そちらと見比べながら御確認をお願いします。本日は資料4点、参考資料3点をお配りしております。資料2の後ろには資料2参考としてA3の1枚紙があります。それも含めまして、過不足等ございましたら、御連絡いただければと思います。
 よろしいでしょうか。

【大渕主査】

 ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は、前回の論点整理に基づきまして、利用の円滑化方策について、具体的な制度について議論したいと思いますが、その前に10月12日の著作権分科会でこの小委員会の検討状況について報告がなされましたので、その状況について事務局より説明をお願いいたします。

【著作権調査官】

 それでは、参考資料1と参考資料2を御覧ください。参考資料1が10月12日の著作権分科会に提出しました資料でございまして、内容は前回の9月27日の小委員会の配付資料と同じものです。その後ろに委員名簿や、これまでの審議経過の資料をつけて御報告いたしました。時間もあまりなかったため、何を検討しているのかという検討の観点のみを御紹介するという形でございました。
 その後、分科会の委員から2点ほど御意見がございまして、その御紹介の資料が参考資料2でございます。1点目の御意見は、50年がいいのか、70年がいいのか、100年がいいのかという数字の議論では永遠に結論が出ない。利用システムの整備などをうまく作れば、50年以後70年までの間のものだけではなく、死後50年たっていないものについても非常に便利な仕組みができる。そういった便利な仕組みをつくることについては、通常であれば権利者は一致団結して大反対をするけれども、保護期間延長の議論の中で話をするのであれば、このチャンスをうまく使って利用者にとっても使いやすいシステムを構築する絶好の機会ではないか。ということで、早く決着をして、より便利なシステムになるよう具体的な議論を進めるべきである、という御意見です。
 2点目は、国際的なハーモナイズが必要だという議論なら別だけれども、保護期間延長によって創作のインセンティブを高めるべきだという議論であるとすれば、既に作られている作品も遡及的に延長することについて納得できるような説明がない。そういうことについて納得できるような議論がなければいけない、という御意見がございました。
 御紹介は以上でございます。

【大渕主査】

 それでは、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第にありますとおり、本日の議題は、議事(1)、利用円滑化等の具体策についてということですが、これを大きく分けますと、その下にありますとおり、1の権利者所在不明の場合の利用と、2の権利者が多数存在する場合の利用、この2つに大きく分けられるかと思います。
 まず1の権利者所在不明の場合の利用の円滑化方策について議論したいと思います。事務局から資料について御説明をお願いいたします。

【著作物流通推進室長】

 それでは、私から資料1に基づきまして、現行の著作権者不明等の場合の裁定制度の現状について御説明をさせていただきます。
 資料1を御覧いただけますでしょうか。裁定制度につきましては、皆様御承知のとおり著作物の利用に限って対応されるものでございまして、著作権者が不明等の利用によりまして、著作権者と連絡することができないという場合に、文化庁長官の裁定を受けて、文化庁長官が定める額の補償金を供託することによりまして、適法に著作物を利用できるという制度でございまして、これは著作権法の67条にございます。
 裁定制度につきましてはこれまで34件、著作物につきましては8万9,669件ということで、別紙1にその実績がございますので、必要に応じて御覧いただければと思います。
 それから、制度の流れについて、3ページを御覧下さい。これは図式化したものでございますが、著作物を使いたいと思う人は、通常は文化庁に制度に関する御相談がございまして、私ども担当がこういう方法によってできますということを御説明し、そのための権利者探しをしていただくということになります。後で少し詳しく御説明しますが、名前からの調査や利用者を通じた調査、一般又は関係者への協力要請、専門家への照会などを行っていただきます。
 権利者が見つかれば許諾を得て利用していただく。権利者が見つからない場合については、一定の様式に従って文化庁長官へ裁定の申請を出しまして、補償金の額について文化審議会に諮問をする。具体的には、文化審議会の著作権分科会に使用料部会という常設の部会がございますので、そこで検討していただいて、議決をしていただきます。その議決が文化審議会著作権分科会の議決になりますので、手続的には使用料部会での審議で終了ということになります。そして、補償金を「供託所」に供託して、著作物を利用するということでございます。
 1ページに戻っていただきまして、申請から裁定までに要する期間としては、おおむね1ケ月程度でございます。
 それから、裁定に要する経費としましては、政令で手数料が定められておりまして、1万3,000円ですが、これは国庫に納入していただくことになります。
 それから、後ほど説明しますが、インターネットで著作権探しをしていただくということで、社団法人著作権情報センターに著作権探しのページを開設しており、そこで広告をしていただくという方法がございます。別紙2を御覧いただけますでしょうか。ここに書いておりますように、基本料金として2万1,000円、それに加えてホームページに詳細広告を掲載する場合には、詳細広告1ページごとに1万500円、それから、リンクを張る場合には2,100円となっております。掲載実績としては今まで5件ございます。
 元に戻っていただきまして、2ページでございます。裁定制度の運用面について見直しが必要だという御意見がございまして、文化庁では平成17年に裁定制度の見直しをしておりますが、どこがどのように変わったかというのが別紙3でございます。この表の墨付きかっこが必須の要件でございまして、さんかくは場合によってはということでございます。
 必須要件としては、「人名辞典」とか「人事興信録」とか名鑑類といったもので調べていただきます。それから、インターネットで検索していただく。それから、一般又は関係者への協力要請ということで、ホームページに掲載するか、新聞広告等を出していただく、これはどちらでも結構だという位置づけでございます。あとは、場合に応じて、例えば勤務先とか所属団体が明らかな場合には、そういったところに問い合わせていただくということでございます。
 以上でございます。

【著作権調査官】

 引き続きまして、資料2でございますが、裁定制度につきましては、著作権以外に著作隣接権についても裁定制度が必要ではないかということで、この小委員会で御意見をいただいておりました。詳しい意見は参考資料1の7ページ以下に掲載してありますが、資料2の1にもまとめております。
 簡単に御紹介いたしますと、実演家の所在不明の場合等もあるので、著作隣接権についても裁定制度が必要ではないかという御意見、それ以前の問題として権利者情報を管理すべきという意見、関係者間でファンドを用意して、どこかに積み立てておいて、それで対応すればいいのではないかという御意見、実演家等保護条約との関係の整理が必要ではないかという御意見がございました。
 著作隣接権の裁定制度につきましては、過去に、平成17年の契約・流通小委員会におきまして、現行の裁定制度に関する評価や課題の整理が行われておりますので、そちらを御紹介させていただきます。
 結論から申し上げますと、条約との関係で整理すべき問題点が多いとされております。どのような条約の規定かと申しますと、【参考1】に関係する条約の規定を掲載しております。実演家等保護条約と呼ばれておりますが、「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約」の15条で、保護の例外をどういう場合に定められるかという規定がございます。私的使用、時事の事件の報道に伴う部分使用など、一定の場合に例外を定めることができるとされているほか、15条の2項では、著作物保護に関して国内法令に定める制限と同一の種類の制限を定めることができる。こういった規定になっております。「ただし」としまして、強制許諾については、この条約に抵触しない限りにおいてのみ定めることができるとしており、こういった制限があるわけでございます。
 実演家の保護に関する条約は、その後、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約という条約が定められて、アップデートされております。その中では、いわゆるスリーステップテストでございまして、通常の利用を妨げず、正当な利益を不当に害しない特別の場合、この3要件に合致するのであれば制限をすることができるとなっているわけですが、もう1つ、その条約の中では規定がございます。今御紹介した条約は、過去のローマ条約の締約国にあってはローマ条約に基づく既存の義務であって締約国が負うものを免れさせるものではないということになっておりまして、実演、レコード条約だけではなく、実演家等保護条約(ローマ条約)の義務も満たさなければならないということになっております。
 こういった条約の規定の関係で、2年前の検討では著作隣接権の裁定制度については整理すべき問題点が多いのではないかといったまとめをされておりました。
 4ページにまいりまして、諸外国の立法はどうなっているのかということで関係法の御紹介をさせていただきます。カナダでは、所在不明の場合の裁定制度がございまして、77条で、著作権の保有者の所在を確認するために相当な努力を払っており、所在が確認できない旨の確信を得た場合には、次の目的物について、委員会が許諾証を発行することができるとなっておりまして、実演家の実演の固定物、レコード、伝達信号の固定物といったものが対象になっております。つまり、実演家の権利、レコード製作者の権利の対象になるものでも裁定をすることができるという規定がございます。この規定がローマ条約とどういう関係になっているのかということについては、まだカナダの担当局に問い合わせしておりませんので、趣旨が確認できておりませんが、こういった立法をしている国があるということの御紹介でございます。
 こういった国際条約の状況とか諸外国の状況を踏まえまして、我が国はどう考えるのかという点で、5ページに議論のポイントを幾つか掲げさせていただきました。1番目としまして、必要性があるのかないのか、2番目は、事務局でもう少し整理が必要な部分ではありますが、国際条約との関係をどう考えるのかという議論。3番目としまして、この委員会の御意見としては、専ら実演家について御提案があったわけですが、そのほか、レコード製作者、放送事業者等についても想定すべきかどうか。4番目としまして、著作権の裁定制度と比較して、要件等について何か考えるべきポイントがあるのかどうかということでございます。著作権の裁定制度については、裁定をしてはならない場合として、「著作者が出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるとき」を挙げておりますが、隣接権の場合にはさらに考えなければいけない事由があるかどうかなどについて御意見を賜れればと思っております。
 以上でございます。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいま、「権利者所在不明の場合の利用」というテーマについて、裁定制度を中心に御説明いただきました。権利者の所在不明の場合の利用につきまして、いろいろと御意見があったところですが、さらに議論を深めていただければと思います。
 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 現在の裁定制度は使いにくいこともありますが、それでも使えないことはありません。しかし、それは従来の著作権のプレイヤーが出版社とかレコード会社とか放送局とか、そういうごく限られたところが利用していたからできたのであって、このインターネット時代、つまり万人が著作物を利用するという時代には、これをいくら簡略化しても果たして利用できるかということはかなり疑問に思えるわけです。それではどうしたらいいかという答えを私はもちろん持っていませんし、すぐ出るとは思えませんが、今回の結論として出すかどうかは別として、ぜひ一般人が使う場合の想定も議論していただきたいと思います。

【大渕主査】

 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】

 今、中山委員から意見がございましたが、裁定というのは、裁定金が国庫に入るということ考えてみても、権利をなくしてしまうと言ったらおかしいのですが、一切国が決めてしまうという状況ではないかと思うのです。そういうことをするためには、権利を移転とは言いませんけれども、国に替わってしまうということに対しては、こういう慎重な制度にならざるを得ないと思います、ただ、今の裁定制度では実際にはなかなか使いづらいというのは私もよく聞きます。
 どちらかというと権利者がいないけれども、権利者に代わって代行するようなシステム、私はよく「管理センター」と言うのですが、そこのところで許諾は出します。その前に、最初にデータをそこが持っていて、そこに聞いたら今あるデータを調べられる。ない場合はそこに公示をする、今の著作権情報センターがやっているようなことですね。それである一定の要件を満たしたときにはそこで許諾が出せる。いわゆる強制許諾をそこのセンターに持たせる。その代わり、後で権利者が来たら差止めも報酬請求もそこのセンターにできる。ただ、差止めはできるけれども、使ったことに対する罰則はないとか、その金額に関しても、センター内のものである程度基準を決めた金額を支払うと。
 まずはそういった、当事者の側からこういうことを言うとちょっと良くないかもしれませんが、何らかの代行するシステムがないと、自分の権利の使いようを知らない権利者も多いし、それに関して全員がきちんと自分の権利を管理できるかというと、今後、権利者も増えるし難しいと思うのです。一時的に許諾を出す、そして権利者の手続を行う。ただ、後でそれを公示したりいろいろな広報で自分が権利者だということがわかったりすればお支払いもするし、後で止めてほしいとも言える。そういうセンターの強制許諾という、一つ何か媒介を置かないと難しいのかなと思っております。
 また、最初の許諾権が一番重要だったりすると思うのですが、絶対嫌だと、使ってほしくないという人はかなり意思をはっきりさせている場合が多いように私は思います。そういう人はここに「私の著作物は使わないでくれ」と言っておけば使わないでしょう。一番わかりやすいのは、権利者の意識もあまりなく、実際に対価が入ったり許諾したりしなければならないという意識もなく権利を持っていらっしゃる方たちもかなり多いと思うのです。そういうことに対して一つの集中的な管理機構を作ることで、これからの多いニーズと多い権利者に対応していく。そういうシステムができたらいいのではないかなと思います。
 その中で、先ほど70条の件もありましたけれども、本人の意思とか、そういうものを見て、著作者を揶揄したりとかマイナスになるような使い方をしたりとか、そういうことは許諾をしないというような規定を設けるとか、著作者がやるべき機能をまとめてやると。そしてまた、ここのところで出た収益はプールしておいて、権利者でもいいですし、個人に分配でも何でもいいですけれども、少なくとも国庫金ではない、権利者の方にちゃんと流れるような形を考える。そういうシステムがあれば、もっと軽微な利用ができるようになるのではないかなと。これがローマ条約にどう抵触するのかとか、その辺りはわかりませんけれども、やるとしたら、裁定ではなくて、代行的なシステムが一つ中間にあるととても使いやすくなるのではないかなと思いました。
 ちょっと長くなりましたけれども、以上、アイデアの段階ですが、そういったことを考えています。

【大渕主査】

 佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】

 御承知のとおり音楽配信等では今相当な楽曲数があり、場合によっては100万曲とか200万曲、そういうサービスがあるわけですが、現実の処理の問題として、JASRAC(ジャスラック)さんはじめ権利者団体さんへ申請をして、その結果ある楽曲に関して、JASRAC(ジャスラック)さんが1曲の中の2割とか3割の部分について管理していないと。現状ではまだ外国曲の事例が非常に多いのですが、1つの著作物を相当数の権利者で保有している場合に、いろいろな理由があると思いますが、ときどきそういう形で一部の権利者の所在が不明で、管理団体も把握していないという形で、請求が1曲のうちの7割だけくるとか、8割だけくるとか、6割だけくるという事例が前からございます。
 実務的にはその権利使用料を企業としてはプールして、なおかつ権利者を探すということになりますが、一方的にその部分、1曲のうちのある部分に無断利用という状況になってしまうわけですね。それに関するリスクが1つあります。それから、御承知のとおり企業は年度ごとに会計を行いますから、保留金を何期にもわたってプールできない事情がございます。そういうことで、我々としましては、権利者団体さんの一定の使用料をどこかに供託するなり預けるなり、そういった仕組みがあれば、お金の問題はひとつ解決するわけですが、後に権利者があらわれたときに、従来の権利者団体の使用料規程の範囲で解決できるような仕組みと、企業として留保している使用料相当額を供託するといった仕組みがないと、膨大な楽曲を大量に使うときに、そのコストと管理だけで大変なことになってしまいます。
 今の瀬尾委員の部分と一部は被るのではないかと思いますが、迅速に大量のコンテンツを大量に使用する仕組みというのを工夫しないと、我々は悪意で利用するわけではないので、たまたま従来は100パーセント権利者にお金を支払うことができたのが、ある時期、一定期間、権利者がわからないために払えない。こういったことは日常茶飯事ですね。特に、著作権の流通というか売買が活発な海外の作品は非常に多い。国内はあまりそういうことはないと思うのですが。こういった問題を円滑に日常的に処理できるようなルールがあると、事業上非常に円滑にコンテンツ流通が活性化するのではないかと思います。

【大渕主査】

 それでは、椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 実演家の裁定制度、著作隣接権の裁定制度について、実演家が不明な場合ということを、しばしば放送事業者さんがおっしゃっていて、放送番組の二次利用が進まないネックになっていると、そういうお話はこの会議でも何回か出てきております。そのときにもお話ししましたが、放送番組に関して考えますと、二次利用を想定していない状態でずっと作られてきた過去がある。また、二次利用をしようと思っても、ビジネスモデルが成立しないということでなかなか利用が進まないということの一種のはけ口として、実演家の所在不明の場合とか、実演家の許諾権の過分な行使というようなことが言われ続けているわけですね。
 保護期間の延長とかいう保護レベルを引き上げる話がされている一方で、実演家に関しては保護レベルを下げる話、裁定制度が保護レベルを下げることになるかどうかはわかりませんが、例えば実演家の保護期間の話でいうと、この前、国際的なハーモナイゼーション、国際的なバランスのお話が出ていて、実演家だけ延ばすことは無理であるという話が出たわけです。そういう意味でいうと、諸外国でも、ここではカナダの事例が出ていますが、強制許諾の制度があるのはカナダとイギリスぐらいでしょうか。それは実演家の保護期間の時の話と関係なくはないと思うのです。この問題についても、そういう国際間のバランスの中で考えていかないと、実演家に関してだけ権利を切り下げるという話ばかり出てきてしまうという状況は非常に遺憾に思います。
 実際に去年もIPマルチキャストに関する権利の切り下げの法律ができてしまったりしていて、以前裁定制度について放送事業者さんがおっしゃったときに、僕も意見を申し上げましたけれども、二次利用を想定して、例えば出演者リスト等を権利者団体との間で共有していけば、集中管理で十分対応できるのではないか。また20年前に出演した人について、この連絡先がわからないのは権利者団体のせいだと言われてもそれは困る。それはそれで、今、知財本部でそういったものに関する第三者機関による何らかの手当が必要なのではないかという議論もされているわけです。そういう話が進行している中で、裁定制度によって解決しようというのは、ちょっと時期尚早でもあろうし、実演家としてはちょっと納得がいかない部分であります。
 以上です。

【大渕主査】

 それでは、梶原委員、どうそ。

【梶原委員】

 まず、現行の裁定制度の運用の改善についてということですが、前回の御説明だと全体で2ヶ月ホームページに出して、3ヶ月、裁定制度にかかるということで、全体で5ヶ月もかかるのであれば、放送事業者としても放送番組のコンテンツ流通がなかなか難しいというお話を申し上げましたが、今回の説明で実際は申請から裁定まで要する期間は1ヶ月程度であるという御説明がありました。これでさらにホームページに掲載する期間も2ヶ月から1ヶ月程度にしていただいて、全体で2ヶ月ぐらいになれば、期間の面ではかなり使いやすいと思います。ホームページに2ヶ月出すのも1ヶ月出すのもそんなに変わらないと思います。1ヶ月出すのと半年出すのとでは相当変わると思いますが、ホームページに掲載する期間もさらに緩和していただければと思います。
 それから、今、椎名委員から「放送事業者が実演家不明の場合に裁定制度の必要性を要望している」というお話がありましたけれども、こちらとしても実演家の方々の当時の所属事務所とかは当然把握しているわけですが、実演家の方というのは、端役で出られた方などは恐らく廃業されて、事務所に聞いてもどこに住んでいらっしゃるかわからないというケースがどうしても出ると思うのです。いくらその方の当時の住所とか所属事務所を把握していても、そういったことはどうしても出てきます。
 例えば、100人出演者がいて、1人わからなかったということで、ドラマ番組がビデオ化できないとか、番組販売できないとかいったことについて、本当にそれでいいのかどうかというのは、放送事業者としてもその辺はもう少し、裁定制度でなくてもいいのかもしれませんが、99人のためにコンテンツを流通させるということを考えることは必要かなと思っています。

【大渕主査】

 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 以前も梶原委員と意見のやりとりをしたかと思うのですが、この問題は放送番組が想定していなかった二次利用をしましょうという場合に、現段階において過去のものと定義されるもの、そういうものについて対応策が必要だという御意見はよくわかりますが、裁定制度という法律での手当ては、反復して利用することを想定しているわけですよね。そういうものまで必要があるのかというところで、裁定制度が必要だというところの論拠が非常に薄いと思います。
 以前裁定制度について、過去のものについて必要なのか、これからのものについて必要なのかという質問をしたと思いますが、そのときに過去のものが問題だとおっしゃった。過去のもの関して言えば、放送局さんと我々隣接権センターで、過去には限らないわけですが、権利者が所在不明な場合あるいは委任関係が明確でない場合の何らかの対応措置を一緒にやろうというところでもあるわけです。その一方で、法律による解決を求めるというのは、ちょっと仁義に反する話なのではないかと思うのです。
 僕は裁定制度のように反復して利用できるシステムが必要であるというまでの状況にはないと思いますし、先ほども申し上げたように、コンテンツにかかわる権利者情報、出演者情報をホルダーさんの方できちんと管理されて、それを権利者団体と共有していく、あるいは、二次利用が起きる前に何らかの契約関係を成立させるという方策で、十分対応していけると思います。ですから、裁定制度までは現時点では必要ないのではないかと思います。

【大渕主査】

 梶原委員、どうぞ。

【梶原委員】

 経団連の場でもこの問題については話をしていまして、法改正まで求めるのか、あるいは、第三者機関みたいなところをつくって、わからなかった場合そこに使用料を預託してやるのかということを議論しているところですけれども、放送事業者として著作権法の改正を要望するかどうかというところまでは結論づいていません。
 ただ、経団連の場で話す中でも、最終的な法律的なリスクは当然あるわけで、これをゼロにしない限り、許諾権がある中で、本当に第三者機関みたいなところでやっていいのかどうかという議論も一方であって、その辺はちょっと悩ましいところだと思いますので、民間の中で著作権の許諾をするしないということをやることが本当にいいのかどうかということは、もう少し議論する必要があるのかなとは思っています。

【大渕主査】

 では、三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 今、主に隣接権の問題で議論が進んでいるわけですけれども、裁定制度の問題、隣接権の問題と同時に、いわゆる図書館等の資料の保存の問題というものがあると思います。この2つはある程度しっかり分けて議論をする必要があると思います。こういう資料の保存の問題については、隣接権と全く違うのは、例えば図書館で古い図書を電子写真に撮って保存する。複製をつくりますので、複製権を侵害するわけであります。これは、図書館に行けば紙の本を手にとって読むことができるということの代替に、新聞をマイクロフィルムで見るように、違う媒体にして図書館で見る。あるいは、その図書館のファイルをネットでつないで、家庭の端末で見ることができるということにする場合もあるでしょう。
 しかし、現実問題として図書館で読めるものを別の媒体に複製して、同じように見られるようにするということであります。この場合は使用料とか対価をとるものではありません。無償でやるものであります。こういうものを図書館がつくる場合に、現存の著作者がおりましたら、文芸家協会等に許諾を求めることができるわけでありますけれども、相当年数たったものに関しまして、例えば著作者の没後50年以上たっているもの、あるいは、著作者がいつ死んだのかもわからないような古い文献に関して、これを複製しようとしたときに著作者がわからないというような事例が非常に多いわけですね。
 今回、このシリーズのヒアリングの中でもこういうものに対しても何とかしてほしいという要望が出てきましたし、また、保護期間50年を70年にしますと、そういうものが一挙に増えるので問題であるという御指摘がありました。50年を70年にするということもありますけれども、50年以内のものについても、例えば40年とか30年程度のものでも、著作者が不明な場合というのは現実的には多いのではないかなと思います。こういうものは対価を求めないものであります。一方で、隣接権を別にして、普通の書籍の場合について申し上げているわけでありますけれども、自分の著作を本にして発表した人は読んでほしいから本にするわけですね。
 現行の裁定制度というのは著作権を守るということにスタンスの重力がかかっているわけで、勝手に読まれては困るということで、広告を出しなさいとか、相当の努力をしなさいと言われているわけでありますけれども、基本的に本として世の中に出ているものは、多くの著作者の願いとしてはできるだけ読まれる、図書館に行けば読めるということでありますし、もしも復刻版を出そうという出版社があるならば、「どうぞ出してください」というのが多くの著作者の願いであろうと思います。その著作者が亡くなって、遺族も行方不明になっているとしても、本を出した著作者の願いというのは、とにかく世の中、何十年後の人にでも読んでもらいたいという思いはずっと残っているだろうと思います。
 にもかかわらず、現行の裁定制度では利用ができないということになっているので、これは著作者の意思にも反しているような状態になっていると思います。これを思い切って簡略化することによって、著作者の意思が伝わると。そういう制度をつくることが我々の義務でもあると思います。ただ、著作者の中に、あるいは、御遺族の中に、本を出してしまったけれども、後になって恥ずかしくなってもう世の中から回収したいというような思いになる場合もあると思うのです。そういうものについては、これからつくるデータベースのようなものに、意思表示をして、「この本は絶版にしてほしい」というような意思を出しておけば、裁定制度で無理やり利用するということはないということにしておけば、読まれたくないという人の意思もまた反映することができるわけであります。
 そうではなくて、本を出しっ放しにして、文芸家協会等にも登録せずに、いなくなってしまう人の本は一種の公共財産と考えて、図書館等のアーカイブにしても、あるいは、ネットでそれを読むということに際しても、なるべく自由に流通するようにやるというようなことが必要ではないか。つまり、著作権によってそういうものまで無理やり守ってしまう必要はないのではないかなと考えます。ですから、こういうものに関する裁定制度と、隣接権に関する裁定制度はある程度分けて考える必要があるのではないかと思います。

【大渕主査】

 常世田委員どうぞ。

【常世田委員】

 図書館のお話をしていただいたので、どうしても言わなくてはいけなくなったものですから発言させていただきます。三田委員のおっしゃるとおりですが、ちょっと補足をさせていただきたいと思います。きょうの資料1の別紙1でも平成11年度から件数が増えていますが、これは国会図書館での新しい事業を展開するに当たって問題が起きてしまったということで、ヒアリングでも国会図書館の方から御説明があったところであります。さらに私どもとしては権利制限の拡大ということで、法制問題小委員会でも要望を出しているところでありますが、権利制限で通らないとすると、裁定制度の方に比重が移ってくるのではと思っております。
 1つは、再生手段の入手困難という問題があります。つまり、現行の著作権法では、本そのものがぼろぼろになってきてもう保存できないという場合には、無許諾で保存のために複製をつくるということは権利制限の中で、図書館の現場での複製が法的に認められておりますが、例えばベータのビデオとかバージョンが古くなったデジタルのコンテンツとかいうものは、コンテンツそのものが古くなっているわけではないのですが、再生するための機械が入手できなくなってきます。
 通産省から新しい法律ができて、中古の機械の販売・流通についての規制の法律ができてしまいましたので、ますます古い機械を入手することができなくなってしまいまして、コンテンツそのものを図書館はたくさん抱えておりますけれども、それを再生する手段がなくなってしまう。図書館は再生可能な媒体に複製したいと考えるわけですが、現行法では認められていないので、権利制限で無理であれば裁定制度で何とかする以外ありません。
 もう1つは、障害を持っている方のための例えば録音テープの作成を図書館でやるわけですが、これも何回もお話しておりますように、行為そのものは複製なのですけれども、障害を持った方にとっては媒体変換をしないとそのコンテンツを理解することができないわけですから、実態は利用するための媒体変換なのです。しかし、行為そのものは複製になってしまうので、今は許諾を受けているのですが、現実に作家の方が見つけられなくて、図書館としては録音テープをつくりたいけれども、つくれないという現状が起きています。
 大作家の小説を読むというのではなくて、ほとんど知られていない方、一生の間に1冊か2冊しか御本をつくらない方の本が9割以上利用されているというのが図書館の現状でありますので、これはなかなか見つけることができないという壁が存在している。これは、今、権利制限でお願いしているところでありますけれども、それが無理であれば、裁定制度で解決していく以外にないのではないでしょうか。この辺もぜひ御検討いただきたいと思います。

【椎名委員】

 今のお話に意見を差し挟むわけではないのですが、おっしゃった通産省の法律というのはPSE法(電気用品安全法)のことだと思うのですけれども、私、ちょっと関係していまして。稀代の悪法であるということで、つい先ごろ改正されまして、古い機材も売れることになっておりますので、その点だけ補足します。

【大渕主査】

 生野委員、どうぞ。

【生野委員】

 先ほど椎名委員から著作隣接権、実演家に関する裁定制度の意見表明があったわけでございますが、レコードに関して裁定制度との関係をどう考えるかということにつきましては、世の中に流通しているレコードのほとんどは、個人というより企業が発売しているわけでありまして、レコード製作者に関して権利者が不明にという状況はほとんどないと考えております。よって、少なくともレコードに関しては裁定制度というのは必要ないのではないかと考えます。
 それから、契約・流通小委員会における検討で、著作隣接権の裁定制度に関して、ローマ条約との関係が整理されておりますが、そのときから今でもこの解釈は変わっていないと私は思っています。先ほど事務局から説明がありましたけれども、ローマ条約15条2項ただし書きに「強制許諾は、この条約に抵触しない限りにおいてのみ定めることができる」と書かれておりまして、ローマ条約自体が国内法に委ねる旨を明文の規定で認めている場合、例えば7条2項等がありますが、レコード製作者の複製権等を含め、それ以外については強制許諾を設けることができないと理解しております。仮にそうであるのであれば、著作隣接権の裁定制度をどうするかということを議論してもなかなか前に進まないところがあるので、ローマ条約との関係についてここで議論するのか、それとも事務局の中で再度整理していただくのか。そこら辺はどうでしょうか。

【著作権調査官】

 ローマ条約との関係については今回間に合いませんでしたが、次回、間に合えばもうちょっと整理したものを用意したいと思います。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 さっき言い忘れたのですが、具体例としては明治時代あるいは大正時代に発行された『早稲田文学』とか『三田文学』を、大学のホームページ上で読めるようにするというものがございます。これは大変有意義な活動でありまして、雑誌に載った小さなコラムのようなものは単行本化されておりませんので、資料としてだれでも読めるようにするということは大切なことであります。ところが、明治時代や大正時代に雑誌の中でコラムを書いた人は作家として生きていないわけですね。ペンネームなのかもしれないし、だれなのかもわからないし、いつお亡くなりになったのかもわからないということであります。
 今、『早稲田文学』は明治時代のものは大学のホームページで読めるになっていると思いますが、それは大体死後50年たっているだろうということでホームページに出しているわけであります。ですから、これを70年にしますと、明治時代の人も引っかかるかなと。そういう形での古い雑誌の復刻なりホームページへの掲載が大変難しくなってくるということがあります。そういうものを裁定制度で何とかクリアできないかなと期待しているわけであります。このように復刻をしたりホームページ上に出すというのは営利目的の行為ではありません。お金がもうかるわけではない。むしろ復刻をしたりホームページ上に出す手続をするために大変費用もかかるわけですね。ですから、著作者に対してお金を払うということではありません。全部無償でやる。むしろ資料の保存のためにやるということであります。
 そういうものと、例えばプロダクションがつぶれた映画をDVDにしてもうけようというようなものとが、今の制度でありますと、同じように1万3,000円要るとか、情報センターに出すのに3万円ぐらいかかるという状況です。全く無償のことをやっているのに4万円ぐらいお金が要るというのは、とうてい払えるようなものではありません。ですから、営利を目的としないものに関してはほとんど無償で裁定されるようなシステムの確立が必要ではないか。それと営利目的のものとは別に考える必要があると考えます。

【大渕主査】

 津田委員、どうぞ。

【津田委員】

 先ほどの生野委員の御意見に反論するというわけではなくて、補足ですが、以前、僕はレコード会社の廃盤ビジネス、廃盤を復刻するビジネスの取材をしていたことがあって、そのときに現場のどちらかというとインディーズ盤だったり、自主流通をやっているようなところ、以前メジャーなレコード会社に出していた廃盤になっているものを復刻させるというビジネスが3〜4年ぐらいに盛り上がったことがありました。そのときに一つ問題になったのが、権利者が不明になるということがとても多かったという話なんです。
 60年代、70年代に出していたレコードの権利者ということで、最初に事務所に当たります。事務所に当たるとレコード会社が権利を持っているのではないかということでレコード会社に行く。それがまた事務所にあるのではないかという、たらい回しになったりして、結局、契約書も残っていないような形で、アーティストやシンガーはどこにいるか連絡がつかないというようなケースも結構あって、復刻させたいCDがなかなか復刻できないという状況もあったので、全体の数としてはそれほど多くはないけれども、三、四十年前でもそういった事例は生じているという意味で、そういったものを裁定制度で解決する仕組みというか必要は、レコードについてもあるということはお伝えしておきたいと思いました。
 以上です。

【大渕主査】

 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 レコードについても放送番組についても、結局は権利者情報をどのように持つか。まさか廃盤が復刻すると思わないから権利者情報が散逸する、あるいは、二次利用を想定していないから権利者情報がトレーシングできないという状況は、コンテンツホルダーさんと権利者団体の間で、権利者情報を共有してプールするシステムを確立できれば、これは解決していく問題だと思います。過去のものについても、わからなくなってしまったもの、あるいは、たどれないものの解決というのは、裁定制度によらなくても、何らかの方式が必要であるということは理解できますが、コンテンツホルダーさんと権利者団体が協力して、何らかの形の取組をすれば解決できる問題なのではないかと思います。現在、第三者機関であるとか、民民での取組が検討されています。そうすると、ここで大上段に振りかざして法律による解決を導入するまでの動機づけが希薄なのではないかと思います。

【大渕主査】

 金委員、どうぞ。

【金委員】

 椎名委員に今の発言について御質問をしたいと思います。データベースを構築するとか集中管理をするといったその他の手段で解決できないというときに、最終手段として裁定制度というものが使われると思います。その前の段階でほかの手段によって解決できたものについては、裁定制度がどういうものであっても、いわゆる介入する余地はほとんどないと思われます。そういう意味では、その他の手段とこの裁定制度というのは別のものではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【椎名委員】

 法律上免責になるかどうかという意味でいうとそれは明らかに違うと思いますが、第三者機関のあり方がどういうふうになるのかというのはいろいろなイメージで言われていますけれども、そこで使用料などをプールするわけですよね。プールをして、不明だった人が出てきたらいつでもお支払いできる形をつくると。また、それを年次を切って民法上の請求権の消滅とかいったところとの関係でルールをつくっていくというようなことで解決できるのではないでしょうか。裁定制度というものとは根本的に違うとは思いますけれども、いくらでも知恵は出せるのではないかと思っています。

【大渕主査】

 梶原委員、どうぞ。

【梶原委員】

 かなりの部分、椎名委員のおっしゃるようなことをすれば少なくはなってくると思います。ただ、実演家の方々がすべてCPRAさんに入っているわけでもないので、その辺の対策というか、権利の集中管理を進めるということは、これから大事なことだと思いますけれども、必ずしもすべての問題がそれによって解決するとは思えないかなと思います。
 それからもう1つ、「主な議論のポイント」で、放送事業者の所在不明についても想定すべきか、ということが書いてありますけれども、隣接権者としての放送事業者が通常その著作物を利用するときに何かかかわるというのはあまり想定されないのかなと思います。海賊版ということぐらいしか隣接権者として権利行使できることがないので、つくってもあまり意味がないと思います。

【大渕主査】

 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 CPRAですべてが集中管理されているかどうかは問題ではないと思います。権利者情報をコンテンツホルダーがきちんと開示していく、それでその委任先を明確にしていくということを反復的にやることによって、今後生じないだろうと言っているのです。管理しているのはCPRAだけではありません。自分で管理しているところもあるし、音事協さんみたいに非一任型で管理しているところもある。それをワンストップ的な形で共有するような仕組みをつくれば解決できます。別にCPRAがすべて集中管理できていないということがネガティブな理由にはならないと思います。

【大渕主査】

 梶原委員、どうぞ。

【梶原委員】

 どうしても実演家の方は人数が多く、メインの主役級を張る方だと一生ずっとその仕事をやっていかれると思うんですけれども、例えば大河ドラマでいうと年間で300人ぐらい出るわけですよね。その中でも端役の方はたくさんいらっしゃるわけです。そういった方は、当時の事務所はわかりますけれども、その後、事務所をやめて、家庭の主婦になっていらっしゃる方やほかの仕事についていらっしゃる方もあるでしょう。そういったときに所在がわからなくなってしまうということは、いくらデータベースをつくっても起きてくるのではないのかなと思います。

【椎名委員】

 それは過去のものと今後出てくるものとについて言えば、今後出てくるものを、300人ぐらいの端役の権利者情報まで集めていられないとおっしゃるのですか。そうではなく、過去のものについておっしゃっているんでしょう。過去のものだったら裁定制度でやる必要はないということを言っているのです。

【梶原委員】

 これからつくる番組であっても、どこの事務所だということはわかるわけです。でも、その方だって将来俳優さんをやめて家庭に入ることはあるわけです。そういったときに連絡先を事務所がすべて把握しているわけではないのです。雲隠れしてしまうということだってあるわけですから、そういった場合の問題はどうしても起こるのではないでしょうかということを申し上げているのです。これからつくる番組であっても、そういった方々というのは、少数かもしれませんが、出てくると思います。一生どこかで俳優の仕事をされているのであれば、そういったことはないんでしょうけれども、やめてしまった人についてどうやって調べていくのかというところの問題はどうしても残るんだと思います。

【椎名委員】

 では、やめてしまったら、転職したら、結婚したら、著作権は行使できなくなるという仕組みの方が問題ですよね。

【梶原委員】

 そんなことを言っているわけではないんですよ。

【椎名委員】

 裁定制度はそのために必要だという理由がわからないんです。例えば出演時に権利者情報を共有していれば、所在をつかんでいく、例えば集中管理団体であれば、管理委託契約を締結して、分配が発生したときに分配できるようにしていくというのは、集中管理団体のシステムの話ですよね。そのことと、300人もいて、そういう事例が、少ないかもしれないけれども生じるから裁定制度が必要だ、というのは話の飛躍があると僕は思えてならないんです。

【瀬尾委員】

 これは放送番組や何かいろいろなことがあるかと思いますけれども、私は、先ほど申し上げた裁定制度と通常の利用の中間的な一次預かり的なことについてもう少しつけ加えさせていただきたいと思います。
 例えば、若いカメラマンが仕事をしたときに著作権ごとの契約、著作権譲渡契約を最初から迫られる場合が大変多い。使う方にしても、いちいち許諾を得なければいけない、お金を払わなければいけないのは嫌だという気持ちもあるでしょうけれども、一番の理由は後々になってその彼がずっと連絡をとれるかどうかに対して非常に強い不安を持っているということであると聞いています。つまり、この写真を彼がわからなくなってしまったら使えないのだと。そうすると最初から管理するために著作権譲渡契約をするという理由もあるという。
 私は出版の方に「それはないでしょう。最初から著作権丸ごとでなければ仕事をあげないというのは横暴でしょう」という話をしたことがあります。そうしたら、「いや、そういう話ではないんだ。わからなくなってしまうんだ」と。特に今は非常に機械がよくなりましたから、カメラマンになることは、資格もありません。そうすると、若いうちにちょっと仕事をしている、でもすぐいなくなってしまうという事例が大変多い。そのときには、これを使いたいと思ったときに使えなくなっては困るので、そういうことをしているのだという話を聞いたことがあります。
 ですので、何らかの中間的な措置がないと立場の弱い著作権者にとっては逆に不利な状況を招いてしまうということがある。例えば、私が不明な著作権者に対してある一定の強制許諾を持つような組織が許諾を出していく方法があるというのは、一見、権利者は自分の権利であるということと矛盾することがあるような気がするかもしれませんが、きちんと機能して流通するシステムがないと、現場の若い世代の権利者、若い著作者たちにとって不利な状況を生み出してきている。そういう状況があるということを踏まえていただきたいと思います。
 また、非常に大きな番組をつくるとか大きな利用はあるかもしれません。しかし、ちょっと使いたいとか、軽微な利用が非常に増えてきている、ホームページ上にしても何にしても増えてきている。そういう場合に軽微な利用で、かつたくさん流れていく、これはスリーステップテストの特別な場合といっていいのかどうかという話はあるのかもしれませんけれども、私は著作者がいないという特別な場合なのかと思っております。そういうことを考えた上で、今裁定・オア・ナッシング、要するに、オール・オア・ナッシングではない段階的なシステムを運用していくことで、いろいろな問題を解決できるのではないかということとともに、権利者もそれによって大変プラスになるということを申し上げておきたいと思いました。
 以上です。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 出版関係の委員の方がいらっしゃらないので、代わりにお話するということになるのかもしれないのですが、出版の世界はもっと複雑でして、1冊の本を出すために出版社を立ち上げて、1冊の本を出したら解散というようなこともありますし、本を出すのは出版社ばかりではなくて、建築会社や普通の会社が社史のようなものを出す場合もありますし、個人は私家版といって一生に1冊だけ出す場合もあります。作家の方とか出版社そのものも一匹狼のような形態が大変多くて、必ずしも権利者団体に加入するということが前提に考えづらい側面もあるわけですね。
 先ほどお話した障害を持った方のための録音テープの問題一つ考えても、障害者というのは、もともとの障害者の方よりも問題になっているのが中途失明者です。例えば、糖尿病、交通事故、加齢による視力の減退、ここにいらっしゃる皆さんもあと10年もしたらほとんどそういう状態になるんです。ですから、一部の方々の問題ではないんです。さらに言えば、一次資料を読むことができてはじめてそこから新しい再生産、新しい創作が生まれるわけですから、最初の作品を読むことができないということは、次の再生の権利も奪われているとも考えられるわけです。
 そのときに作家の居所がわからないということについて、データベースはもちろん重要なことだと思うので、これは対立概念ではない。中間のシステムは早く立ち上げて、それはそれで機能させなければいけない。そこから漏れたところについては裁定制度で対応するしかない。だから、対立する概念ではないのではないかと思います。

【椎名委員】

 裁定制度自体に疑問を投げかけているつもりはないんです。ただ、国際的なバランスの問題とか、例えば保護期間の保護レベルとのバランスとの問題とかいうところで、実演に関する権利制限がやたら俎上に上ってくる風潮の中で、こういった話が出てくることに疑問を呈しているのであって、誤解を生じるといけないのですが、裁定制度そのものに疑問を投げかけているつもりはありませんので、それだけ申し上げておきます。

【大渕主査】

 久保田委員、どうぞ。

【久保田委員】

 常世田さんのお話は総論として理解しますが、先ほどの制限規定と裁定制度の関連の中で、現状を変えていこうということだったのですが、常世田さん自身は制限によって、対応しようとしているのか、別の方法を、もしくは中間みたいなことを考えるということが、私はちょっとイメージできないんです。全然違う問題をとても大きなところで話しているような気がしています。制限規定の方だと、コンピュータのプログラムは47条の二の第一項によってリプレースとか、バックアップはプログラムの著作物の複製物の所有者の場合にはできると書いてある。
 そういった趣旨から考えると、とりわけ障害者のためのリプレースみたいなことは非常にわかりやすい。それなら制限規定で議論していくということなんですけれども、そこがうまく制限規定がつくれないと現状があるということを前提で、裁定制度の見直しをというのはピンとこない。そこはもう少し突っ込んだ意見は何かありますか。

【常世田委員】

 恐らく権利制限の方で法制化する場合には、法律として成立するためには、障害の種類とか障害の程度、それから、それを健常者に流れないようにするためのシステムの確立とか、かなり厳密に決めないと、また法務局で塩漬けというような形になってしまうのではないかと思います。そこで漏れるところがどうしても出てくる。例えば、一過性の事故で入院して、手術をして目が見えなくなっている人というのは障害者手帳を持っていないのですから、そういう方たちに対応する場合にはどこかでフォローする仕組みがないとだめなのではないかなと思います。
 それから、権利制限で全部、図書館でオーケーというふうにいくかどうか。アメリカなどの場合はほとんどオーケーになっていますけれども、フェアユースみたいな概念が導入されれば、それはまた別な話ですが。そうではないとすると、権利制限だけで全部オーケーというわけにはいかないので、やっぱり裁定制度で使わなければいけないところも出てくるのではないかなと思っているところです。

【久保田委員】

 現実には、視覚障害者や聴覚障害者の方たちがリプレースして使用している装置やハードウェアは非常に機能が限定的なので、そういう点では一般論としては、いわゆるパソコンなどのコンピュータというのは汎用機として特定の機器から外されているわけで、まず制限規定に盛り込み、例えば補償金制度によってハードウェアを具体例として特定していくということで相当カバーできるような気がするのですが、それはいかがですか。

【常世田委員】

 今、私がお話しているのは、権利者が追跡できないというそもそものお話をさせていただいているので。本を書いた作家が見つけられない、どこに住んでいらっしゃるのかもわからないというようなところですよね、そこを今お話させていただいているつもりです。許諾がとれる状態にあれば、ほとんどの方はオーケーしてくださる事例の方が多いんですけれども、中には自分の作品は活字で読んでいただくことしか想定していないので、録音テープ化は許諾できないという方もいらっしゃるんですね。そうなると、聴覚でしか作品と接することができない方は知る権利という憲法の最も重い権利を奪われてしまうというところまでいくのではないかなと私は思っております。それは追跡できた場合の話で、ここは裁定制度ですから、追跡できない場合のお話をさせていただいております。

【大渕主査】

 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】

 裁定制度についていろいろな議論がある中で、今の図書館のお話がありますが、私の個人的な意見としては、図書館の役割自体が、旧来からずっとあった図書館と違ってきた部分もいろいろ出てきているのではないかなと思っています。ただ、今後も社会の中で重要な役割を果たし得るところであるし、図書館という部分においては、単なる一利用者ではなくて、違うポジションが別の議論の場で、図書館とは何ぞや、図書館というのは著作権法上どういう扱いを受けるのかという議論の中で、今の機械という問題が語られてくるべきで、裁定の中で一利用者として話していくと公共性や何かで違和感があるように思います。
 例えば図書館においてこういうことをするのはいいとか、「図書館においては」という前置きで語られるような部分が必要なのかなと。そのためには図書館の機能というのは何なんだというふうなそもそも論からいかなければいけないのかなと感じているので、今回の裁定の話と直結というのはちょっと違和感があるように思うんですけれども、どうでしょうか。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 図書館の話ばかりで申しわけないんですが、瀬尾委員がおっしゃっているように、社会政策的な側面での検討が、著作権分科会や小委員会を含めてどうなのかというお話なのかなと思うんですけれども、私もそれは賛成です。法律の討議だけをしていたのでは結論が出なくて、社会政策的あるいは経済的な政策を加味した議論がないと結論が出にくいということについては賛成です。

【生野委員】

 瀬尾委員と常世田委員のお話に全く賛成で、社会において図書館の果たすべき役割は何なのかというところがまずあって、図書館もいろいろな種類の図書館があるわけですよね、国立国会図書館から公立の図書館から学校の図書館から。それぞれ性格は異なると思いますので、異なるところでどう考えるかというところも検討しなきゃいけないのかなと。一括りで図書館という形でどうあるべきかというのは議論としては間違った方向にいってしまうのではないかなと思います。

【大渕主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、まだ議論は尽きないかと思いますが、時間の関係もございますので、とりあえず本日の主要議題の2番目であります、権利者が多数にのぼる場合の対応策というテーマに移ってまいりたいと思います。
 まず、事務局から資料について御説明をお願いいたします。

【著作権調査官】

 それでは、資料3と資料4に基づきまして、御説明をさせていただきます。
 今、主査から御紹介ありましたように、利用の円滑化方策としては、権利者が不明な場合と並びまして、権利者が多数に上る場合の円滑化策も大きな要望としてあげられていたわけでございます。詳しくは参考資料1の8ページ以降に今まで出た意見を掲げておりますけれども、資料3の1にも要約しておりますので、簡単に御紹介いたします。
 著作権法の65条に共有著作権の行使の規定がございます。具体の規定は下の四角囲いになっておりますが、共同著作物の著作権や、その他共有に係る著作権の場合には、他の共有者の同意を得なければ持分を譲渡することができなという規定や、権利行使は全員の合意によらなければならないという規定がございます。ただ、正当な理由がない限り、同意を拒んだり合意の成立を妨げることはできないというルールになっております。
 これらのルールにつきまして、どういった御意見があったかと申しますと、著作権者が著作者である場合とそうでない場合とで、今御紹介した正当な理由の判断基準を分けてはどうかという御意見や、2番目は、共同著作物以外の場合、先ほどの65条は共同著作物の著作権と、その他相続などの承継によって共有になる場合がありますが、そういった共同著作物以外の著作権の共有の場合にも同じようなルールが適用されるというのは妥当性があるのかどうかという御意見。3番目としまして、複数の権利者が1つのコンテンツに対して権利を有している場合、例えば映像の中に音楽の著作権、脚本の著作権、美術の著作権、いろいろな種類の著作権が含まれているような場合がありますが、そういった場合に一定の条件の下に利用が可能となるような制度は考えられないかといった御意見。
 一方で、これらの問題については、権利の集中管理を進めることで解決できるのではないか、代表者を定めることで解決がつくのではないか、一部の相続人の所在不明の場合が専ら問題になるだけではないか、そういった御指摘もあったわけですけれども、本日は今御紹介した3つの御提案について検討してはどうかということで、資料を御用意させていただきました。
 2ページに移っていただきまして、これまでの審議会において共有著作権についてどういう御議論がされていたかということでございます。昨年の著作権分科会の報告書では、ソフトウェアの共同開発とか映画の製作委員会方式を主として念頭に置きまして、権利行使について全員の合意が必要とされる規定の見直し等について検討が行なわれております。
 下の四角囲いのところで、専ら議題とされていましたのは、2の検討課題のところでございまして、1人が所在不明等で合意が得られない場合はどうしたらいいか、多数決原理を導入することについてどう考えるか、あとは、譲渡について同意がなされなかった場合にどうしたらいいのか、共有者が共同著作物を使用する場合にどう考えたらいいのかといったことを課題といたしまして、検討が行なわれたところでございます。
 結果としましては、専ら念頭にあったのはソフトウェアの共同開発などのものでしたので、権利関係についてあらかじめ契約で定められる場合が多いので、個別のケースに応じて契約で処理されている、またはそうすることが望ましいということもありまして、特に65条は任意規定でして、契約で別の定めをすることができますから、現時点においては緊急に著作権法上の措置を行なう必要は生じていない、そうしなくても実務の妨げになるものではないというような結論をいただいておりました。
 この報告書では主として契約関係のある者の間での共有を念頭に置いて議論が行なわれておりますので、相続など、あらかじめ権利行使をどうするかという取り決めがない場合については、なお検討の余地が残されているのではないかと思っております。
 そういった前提を踏まえまして、議論のポイントですが、1点目は、合意の成立を拒むことができる「正当な理由」をどのように考えるのかということでございます。具体には、4ページの真中あたりに矢印がありますが、「正当な理由」の判断基準について何らかの指針を示すことは可能かということです。趣旨としましては、「正当な理由」とはどういうものなのかということがはっきりすれば、より利用の円滑化につながるのではないかという趣旨で、議題の1番目に掲げさせていただきました。
 3ページに戻っていただきまして、現行の規定では「正当な理由」がどのように考えられているのかという御紹介ですが、立法趣旨としましては、一番上のまるのところですが、財政状態がよくない場合とか、許諾を与えようとする相手との間でトラブルがある場合などが「正当な理由」として想定されております。
 実際の裁判例ではどのように認定されているかと申しますと、1つ目は、一方の共有者が合意成立のための協議も何もしていないというような場合には拒む「正当な理由」があると。2番目の事件では、更にいろいろと考慮していまして、諸般の事情を比較考量した上で、一方の共有者が権利行使できない不利益を考慮してもなお、行為を望まない他の共有者の利益を保護する事情がある場合に「正当な理由」がある。そういった形で判断がされております。
 次のページにもう1件御紹介しています。こちらは、先ほどの共有者の合意を得るための努力をしないことが合意拒否の「正当な理由」になりうるというのを引きつつ、共有者側にも必要な努力が必要だとして、その相対的な関係で「正当な理由」が認められるかどうかを判断する。そういった形で判断されております。
 このような現行法とか裁判例を踏まえまして、「正当な理由」について、この場で何らかの指針が示せるのかどうか。示せるのであれば、利用者側も権利者側も、こういう場合には拒否できないだろうという共通理解でできて、利用が進む可能性もあるのではないかということが議題の1番目でございます。
 次に5ページにまいりまして、2番目でございます。こちらは先ほど御紹介した冒頭の意見に関係する部分で、共に著作物を創作することによって成立した共有関係と、相続などによって生じた共有関係とで、適用するルールを変えること、もしくは判断を変えることについてどう考えるのかという点でございます。先ほど御紹介した65条の規定の趣旨は、共有著作物の創作意図とか共有著作権の一体的行使の観点から特例が設けられているということでしたので、創作意図の共有がある場合とない場合とで「正当な理由」の判断基準に違いが生じるのかどうか。もし生じるとすればどのような差異とするのがいいのかといった点。それと、契約関係がなかった場合にはルールを変えて多数決原理を導入することについてどう考えるか。そういう点が御議論になるかと思います。
 3番目は、この資料の冒頭の3番目の意見で、1つのコンテンツに対して複数の権利が存在している場合にも、共有著作権と同様のルールを適用すべきなのかどうか。すべきだという御意見もありましたけれども、そういった点でございます。
 なお、フランスでは、1つのコンテンツに複数の種々の権利がある場合にも、共同著作物と考えているようでございます。例えば、バレエに関して曲と台本と振付などに、それぞれの権利がある場合に、日本だとそれぞれの著作物だと考えるわけですけれども、フランスでは、共同著作物と考えているようでございます。
 フランス法の場合と日本法の場合で著作者の概念といいますか、どこまでを1つの著作物と捉えるのかという話かもしれませんが、そういった概念に違う部分があるかもしれないものの、こういう規定があるようでございます。こういった場合について、日本法も「正当な理由」がない場合には同意を拒むことができないという共有著作権と同様の法理を導入すべきかどうかが御議論になるかと思っております。
 6ページ以降は、御参考までにということで、7月9日の小委員会でも御紹介した現行法の趣旨でございます。
 それから、資料4は、共有著作権の規定に関連しまして、同じルールが著作隣接権にも準用されておりまして、基本的に同じルールでございますけれども、隣接権に関しては少々別の問題点もあるということで、それをまとめております。
 どのような問題点かと申しますと、1でございますが、「知的財産推進計画2007」で問題提起がされておりまして、著作権法上の実演家の著作隣接権の共有に関する解釈を明確化するべきだということが言われております。この背景としましては、1人の反対があって、コンテンツが利用できないという声をときどき耳にするのですが、仮に、先ほどのような「正当な理由」がなければ合意の成立を拒むことができないというルールが適用されているのであれば、こういった声が聞こえてくるというのは一体どういうことなのだろうかと。恐らくそういう問題意識が背景にあるのではないかと推測しておりまして、そういったことで、共有の場合の著作隣接権の解釈を明確にすべきだということが言われたのではないかと思っております。
 では、現行法がどうなっているのかについて、2以下で整理をしております。まず、著作権法上「共同実演」の定義規定は特に置かれておりません。平成13年に著作権分科会において議論がされておりまして、2人以上の者が共同して行った実演について、各人の寄与を分離して利用することができないものを「共同実演」として、規定を整備すべきだということが言われておりました。ただ、実務に照らしてどこまで規定すべきなのか整理が非常に難しかったという点もございまして、規定はまだできておりませんけれども、そういった提言はされております。
 立法時の趣旨としましても、各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものについては、1つの実演として観念すべきだということが逐条解説に書かれております。例えば、合唱とかオーケストラ、バンドの演奏、演劇上演といったものについては、1つの実演として考えるべきではないかということが言われております。
 次のページにまいりまして、実務上はどのように取り扱われているのかについて簡単に御紹介いたします。放送番組を例にとりまして、関係団体に実務を聞いてみました。この図は、大きな四角が1つのドラマだといたしまして、登場人物がa、b、cで、主役がaというようなドラマを想定して、それぞれのシーンごとに登場人物がいるわけですけれども、こういったときに利用許諾をどういう人にとっているかということです。まず、ドラマ全体を1つの「共同実演」と考えるような運用はされておりません。例えばシーン2でしたら、登場人物はbとcしかいませんので、この場合にはbとcだけの許諾を得てその部分を使うというような運用がされているようでございます。それから、シーン2はb、cの「共同実演」なのかということでは、実務としてはそれぞれ個別の実演と考えて個別に許諾をとっていて、特にそこに「正当な理由」があるかどうかは考えていないという運用がされているようでございます。
 それを踏まえまして、議論のポイントとしましては、ちょっと専門的な議論になるかもしれませんが、放送番組や映画の場合には、「共同実演」という概念がそもそもあるのかないのか。概念がそもそもないためにこのような実務上の運用がされているのか、実務と法解釈の関係がどうなっているのかを考える余地があるのではないかということが議論の1番目でございます。
 2番目で、仮に「共同実演」だと考えられるとすれば、「共同実演」と捉えるものと捉えないものの基準はどこかに置くべきなのか。その他、「正当な理由」として合意を拒める場合はどういうものが考えられるのか。実務に混乱を生じない基準がつくれるかどうかといった点が議論のポイントなろうかと思っております。
 正直、非常に専門的な話も多くて議論が盛り上がる材料を御用意できているかどうか自信がないのですが、そういった問題提起がございましたので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 共同著作権の規定、「共同実演」の規定について御説明をいただきましたが、それぞれの制度のあり方について議論を深めていただきたいと思いますので、ただいまの点に関しまして、御自由に御発言をお願いいたします。

【椎名委員】

 「共同実演」に関して、例えばオーケストラとかバンドのメンバーの1人が反対したために利用ができなかったということについて、以前、事務局から「そういうような事例があるんですか」という質問を受けまして、「聞いたことないよ」という御返事をしたんですが、その後、事務局はいろいろヒアリングをされたと思うんですけれども、具体的にどういう事例があるということを教えていただけますか。

【著作権調査官】

 我々の方でも専ら放送番組に関してしかまだ御意見を伺えていなくて、これから先また実務の方を聞いて回らなければいけないと思っているんですが、実演家団体の感触としては、1人の反対があって合意が得られないという場合はそれほど多くないということを言われることが多いです。拒否があった場合というのはどういうのかというと、例えば放送番組であれば、裏番組で同じ出演者がかぶっているような場合に拒否があるなどです。あとは、使われ方で、バラエティーなどが典型的だと思いますが、笑いのタネにされるのでというような場合とか、思想信条的な事由とか、そういったことが専らであって、特にこれは理由がないなということで拒否されたというようなことは、感触としては持っていないと、実演家団体からは伺っております。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 裁定制度に関していろいろなものが一緒くたに議論されつつ進行しているように思うんですけれども、私が考えるのは主に出版物であります。そういうものに関しては、裁定というものは必要になるが、リアルタイムで出されたものは著作者がはっきりしているわけですね。ですから、発行後相当年数たったものに関して著作者は行方不明になっているということで、それを復刻したりネット上に掲載したりする場合に何らかの利用できるようなシステムが必要であるということであります。
 ところが、これとは別に、ネットの時代になりますと、“一億総クリエイター”というような言い方がされて、ホームページの書き込みコーナーとかチャットとか、そういうものに何か文字を打ち込みますと、著作権が発生すると。それを例えば出版物にしようとした場合に著作権をどうするんだというような議論、これはリアルタイムの議論ですね。こういうものとある程度分けて考える必要があるかなと思います。
 例えば、出版物の場合、座談会を本にするということがありまして、こういう議論も本にできるかもしれないと。そうしたときに、たまたまある人が別な人にやり込められて非常に不本意な思いをしたのをそのまま出版されては困るというような理由で、これは本にしてほしくないということはあるかと思います。これは、その人の出したくないという意思がありましたら、それは出さないということでいいと思うんですけれども、インターネットのホームページ上の書き込みの場合は、書いている人がどこにいるのか最初からわからないわけですね。でも、たまたま非常におもしろいものができることがあります。
 例えば、『電車男』という映画にもなった作品は、もともとは電車の中で美人に会ったというような話をホームページの書き込み欄に書いていきますと、それに全国からいろいろな励ましの声とか、こうしたらいいだろうというアドバイスとかがどんどん書き込まれて、それに対してまた最初に書いた人が反応していくというような形で、その全体が非常におもしろいということで出版物になり、また映画にもなったわけであります。こういうものがリアルタイムの話で共同製作物が自然にできてしまうということであります。
 多くの書き込みは、書き込んだ人の所在が最初から全く不明でありますので、これを出版物にするという場合大変な困難ができることは事実でありますけれども、リアルタイムで所在不明の人がいるというような場合に、裁定制度を適用していいのかどうかということも議論されるべきだろうと思います。例えば、発行後20年とか30年たっているということであれば、一次的な利用の形態は既に済んでしまって、それを復刻するかどうかということが議論されるわけでありますけれども、今言ったようなネットに関しては、リアルタイムで最初から著作者が不明であるという場合もあります。こういうものについてもある程度分けて考える必要があるのではないかなと思います。
 以上です。

【大渕主査】

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】

 2点ございます。第一に、共有著作権の行使に関する65条の規定についてであります。この規定は、共同著作物の創作によって著作権が共有となる場合のみならず、共同相続等によって著作権が共有となる場合も含め、共有著作権一般について一律に適用される規定であるにもかかわらず、その立法趣旨としては、起草者によって「共有著作物の創作意図」などといったよくわからない説明がなされていたりいたしまして、これはおかしいのではないかというのは確かにそうかも知れません。
 ただ、きょうの御説明の中でも触れられていたのかもしれませんけれども、65条3項の「正当な理由」の解釈をめぐる議論においては、共同著作物の創作によって共有著作権になった場合と、それ以外の場合とを分けるという解釈が見られますし、実際にそれは可能であろうと思います。そういう意味では、きょうはガイドラインを示すという提案がなされているわけですけれども、そうしたことを示す必要が実際どのくらいあるのだろうかという点がポイントになるように思います。もし必要があるとすれば、少なくとも共同著作によって共有著作権になった場合とそうでない場合とを分けるというのが、一つのあり得る選択肢かと感じた次第であります。
 第二に、「共同実演」についてであります。確かに、起草者の書いたものを読みますと、あたかも「共同実演」というものが前提として認められているかのような記述が見られます。ただ、103条によって65条は著作隣接権が共有に係る場合について準用されているわけですけれども、64条の規定は、実演家人格権について準用されておりません。その意味では、「共同実演」というものが認められていることを前提に著作権法ができ上がっているとは必ずしもいえないのではないかと考えることもできようかと思います。また、実演というのは、著作物の創作以上に、共同でなされる場合が現実として多いと思いますので、もし「共同実演」を安易に認めてしまいますと、実演の利用を阻害するおそれがあるのではないかというところも問題になるところでありまして、同様のことは最近、中山委員も教科書で指摘されておられるように思います。
 ただ、仮に「共同実演」というものを認めたといたしましても、これが成立するためには、共同著作と同じ3つの要件を満たすことが必要となります。ですので、とりわけ「その各人の寄与を分離して個別的に利用することができない」ことが必要になります。例えば、ドラマに複数の実演家が出演しているという先ほどのケースでも、それぞれの実演家の寄与が分離利用可能だという場合は、ある実演家が登場していないシーンのみを利用する際には、そのシーンに登場していない実演家の許諾は要らないということになるのではないかと考えられます。
 同様のことは、共同著作の要件をめぐっても、座談会における個々の発言が分離利用可能かという点をめぐって議論されております。この点、座談会というのは、出席者相互間の発言がからみあって、ひとつのムードを作り出し、著作物が完成するものであり、個々の発言は独自の価値を持たないから、個々の発言は分離可能ではあっても分離利用可能ではないとする学説もなくはありません。しかし、いくら個々の発言がそれだけでは経済的な価値を有しないとしても、個々の発言のみを取り出して利用することが可能である以上は分離利用可能だということで、共同著作は成立しないと考えるのが妥当ではないかと考えられます。共同実演においても、これと同じことが問題になるのではないかと思います。
 他方、仮に「共同実演」を認めないという立場をとったといたしましても、合唱ですとかオーケストラですとか、そういう場合には、各実演家は全体の音の発生に関与していますので、その音を利用するということになりますと、その音の発生に関与したすべての実演家の著作隣接権が及ぶということになるのではないかと思います。そうすると、別に「共同実演」というものを認めなくても、その音に関与したすべての実演家は許諾権を有しているということになります。これは、著作隣接権というものが禁止権として定められている以上、不可避のことではないかと思います。
 そうすると、「共同実演」というものを認めるか認めないかということの違いは、ある実演家が音の発生に関与していないことが明らかな部分のみを利用するという場合、――例えば、オーケストラの打楽器奏者の方が最後の1音しか音の発生に参加していないというときに、その曲の冒頭部分だけを利用するというような場合――に、その打楽器奏者の方の許諾は不要だということでいいのか、それとも必要だとした方がいいのか、という点にあるのであり、結局のところは、この点をどのように考えるかというのがこの問題の決め手になるのではないかと考える次第でございます。
 以上です。

【大渕主査】

 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 今の上野委員の最初の方の意見とも関係する、「正当な理由」の判断基準を示す必要があるかということですが、私は示す必要はないと思っております。世の中、事件というのは実にいろいろなものが起きまして、考えられないような事件がたくさんあって、判例というのはそういうものを積み重ねゆくわけですが、判例の蓄積のあとは、こういうものであると言うということはできますけれども、事前にあらゆる事件を想定して書くことは不可能です。
 書くとすれば一般的・抽象的で役に立たないものになるか、書いても裁判所は違うことを言って恥をかくか。行政の判断と裁判の判断が違ってしまったということになりかねないわけです。したがって、裁判規範についてガイドラインをうっかり出すと、まずいことが起きるのではないかと思いますし、実際問題、いろいろなことを想定して書くのは不可能だと思います。したがって、現在は「正当な理由」を、ここの段階でガイドラインを出すということは困難であると私は思っております。
 もう1つ、65条の規定ですが、先ほどから共同著作者の場合の共有とそうではない場合の共有と違うのではないかという話が出ておりましたけれども、私は同じに考えるべきではないかと思っております。共同著作者の場合の事件は多く、確かに書いた人ですから、それなりの思い入れはあるんですが、それは64条(人格権)の問題であって、65条は財産権として割り切るべきだと思います。財産権の中に人格権を入れるとややこしいことになります。例えばAとBが2人で書いたと、Bが持ち分を関係ない第三者に譲渡した、そういう共有もあれば、Bが死んで子どもが相続したという場合は、第三者と書いた本人の中間的な地位もありますし。そんなことを考えていると非常にややこしくなるので、65条は財産権、64条は人格権、そう割り切った方がいいのではないかと思っております。

【大渕主査】

 ほかにいかがでしょうか。
 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】

 共同著作に関して、私も図らずも理解しているとは言えないかもしれませんが、先ほどの流れからしますと、共同著作の中で、嫌だという人がいた場合ではなくて、その中で何人かがどこに行ってしまったかわからない、その人たちに対してどうするかという話が一番問題なのかなと私は思っているんですね。実際に共同著作の中の1人が嫌だと言って、「正当な理由」があって、それが使えないというのは、許諾権ですから仕方がないのかと思います。
 ただ、いなくてわからないと。通常であれば断られる理由はないけれども、その人がいないから許諾がとれなくて使えない。これをどうしたらいいかということで、裁定とか今のような問題につながってくるのかなと思っているんですが、先ほどからいない場合にどうしたらいいか、どうしてほしいかということについて、関係者の皆様からの意見が伺えないので、いない場合についてはどうすると円滑になると思っていらっしゃるのか、また、いない場合というのはほとんどない、先ほどの梶原委員のお話だといない場合があるというお話だったので、その場合にどうしたらいいのかについて御意見があれば伺ってみたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

【大渕主査】

 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 それは単に著作者不明の場合と同じではないでしょうか。それで何か特別なことをしなければならない理由はないように思います。現に共同著作者の場合で、死後50年もたちますと、著作権者がわからなくなってしまう著作物は結構あると思います。だから、それは不明の場合と同じ手続で、不明の方を簡略にしていけばよろしいのではないかと思いますが。

【瀬尾委員】

 それは不明の場合の取扱い、もしくは裁定のような公示の方法をとっていくということですね。ということは、先ほどの裁定制度を簡潔にしていこうという流れと直結するということになりますね。けれども、現在の裁定制度、いわゆる国が代わって権利を行使するという制度だと使いにくいという議論に戻るかなという感じがします。
 そういうことであれば私が先ほど申し上げたような、私が申し上げたのは共同著作物ではなくて、個別の著作物なんですけれども、今の裁定制度を変えるのか。または、それと、現在の利用の中間的な組織をつくると私は申し上げましたが、そういった何からの方策が有効なのか。そういうことに関してはいかがなものでしょうか。そういうことは有効になるのでしょうか。

【大渕主査】

 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 すみません、瀬尾委員の構想がわからないものですから何とも言えないのですけれども、JASRAC(ジャスラック)のように任意に預けるのならそれはそれで結構なことですが、そうではなくて、もっと強制的に全部やってしまおうという話ですと、これまたいろいろ法的問題が出てきます。スキルが詳しくわからないと何とも反論のしようがないと思いますが。

【瀬尾委員】

 自分だけイメージを持っていてもなかなか口で伝わらなくて申しわけございません。複写権に関しての話の中で、ある国ではこういう場合、とりあえず許諾を出すと。自分が委託されているのもそうではないものもすべて許諾を出すという権限をあるところがきちんと定められて、そこのところが複写権の管理をしています。後で例えば権利者が見て、「自分の作品がある」と公示されるわけですね。公示をされて、自分のが使われたとなると、後でそのセンターに行くとそこからお金が支払われる。
 そういう仕組みがあるかどうかはわからないんですけれども、私のイメージでいくと、後から「あれに使われているんだけれども、もう今後は使わないでくれ」と言うこともできる。それを使った方に罰則は設けないとか、いわゆる許諾を出す代理業務みたいなところをする。それに要件をつけていって、かなり絞った状態での強制許諾センターみたいなものをつくるというイメージなんですね。

【中山委員】

 問題は、権利者が任意に預けるのか、それともそのセンターなるものがすべての著作物を強制的に管理してしまうのか。そういうイメージが湧かないのですが。

【瀬尾委員】

 そこのところでさっきの不明ということが出てくるんです。例えば、出版社でも権利者団体でもそうだけれども、そういう情報をすべてそこに集中していって、その所在がわかれば当然そこに回すと。そこにすべてを集中していけば、そこに聞いて最大の手を尽くして調べたと言えるだけ調べて、あとは例えば一定期間ネット上で探すとかいろいろなことをした上でやるということです。要するに、今の裁定制度と非常にスキームが似ていて、手を尽くしてやってもわからなかった場合はそのセンターが許諾を出すと、そういうイメージです。

【久保田委員】

 任意なんですよね。

【瀬尾委員】

 そうです。

【金委員】

 それはある意味では民間の裁定制度になると思うんですが、裁定する権限を民間のある方が持つということですか。

【瀬尾委員】

 それを民間のある特定の、前の登録制度ではないですけれども、やたらとそれができてしまうのは問題があるので、法律でここのところに強制許諾を許すという組織をつくって、そこがそれを取り仕切るというイメージですね。

【金委員】

 それは政府が強制許諾をするというのと全く同じだと思うんですよね。

【瀬尾委員】

 一緒ですね。

【金委員】

 そこにどういう根拠があるのかなということになると思うんですよ。

【瀬尾委員】

 根拠というのは法的な根拠ですか。

【金委員】

 法的な根拠というか、政府の中である著作物の利用において強制許諾を実施するときに直面する問題と全く同じような問題が発生している。

【瀬尾委員】

 それは裁定制度と同じ問題ですよね。

【金委員】

 それを特に民間の特定の主体に対してそうした強制許諾権を実施できる、適用できる権限を与えるということは、リスキーな話だなと思います。

【瀬尾委員】

 それはわかります。

【大渕主査】

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】

 資料3の5ページ目に3といたしまして、「1つのコンテンツに対して複数の権利が存在している場合」というのが挙がっております。現実には「複数の権利」という場合もありますけれども、複数の著作物という場合もあり、その場合は結合著作物の問題になるのだろうと理解いたしました。
 確かに、結合著作物の場合ですと、外形上は一つのコンテンツとして一体化されているとしても、そこには複数の著作物があるわけですから、それぞれについて別々の権利者が決定権を持っているということになりますので、1人でも反対するとそのコンテンツ全体を使うことはできなくなるということになろうかと思います。ただ、結合著作物というのは、共同著作物と異なりまして、分離利用が可能だということなのですから、反対している人の著作物だけを除外すれば残りの著作物は利用できることになります。ですので、それでいいではないかという考えもあろうかと思います。例えば、作曲家だけが反対しているのであれば、音楽だけ取り替えればすむというわけです。とは申しましても、結合著作物としてのコンテンツの中から一部の著作物を除外することは、現実には容易でないかもしれませんので、そうだとすると、このことがコンテンツの円滑な利用を阻害しているということになるのかも知れません。
 そのような観点からしますと、ご紹介がありましたようなフランス法を参考にして、何らかの立法をするということも考えられようかと思います。ただ、結合著作物がどのような過程で作成されるかということに関しましては、いろいろなケースがあろうかと思います。この点、ドイツ法には結合著作物に関する9条という規定があります。これは、結合著作物は結合著作物でも、複数の著作者が、各自の著作物を共同で利用するために相互に結合させた場合について、信義誠実により期待できる限りにおいて、各著作者は他の著作者に対して結合著作物の利用等について同意を求めることができるということを規定したものであります。つまり、第三者によって無断で結合された場合はこの規定の適用を受けないことになります。
 こうしたことからしましても、結合著作物について一般に適用される規定をつくるというのは少し問題があるかもしれません。これに対して、著作者が自発的に結合させたような場合でしたら、その結合著作物の利用について事後的に反対するためにはそれなりの理由がない限り認められないというような制度を設けるというのは、一つの選択してあり得るのかなと考えております。

【大渕主査】

 佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】

 音楽の場合で、先ほど御説明した中で触れてなかったのですが、不在のリスクに対して保険でカバーできないかという研究をしたことがございまして、一部、保険会社さんと話をして設計をしてもらったと、業界としてお願いしたことがありますけれども、当然、保険料が高くなるということと、無断で利用するという法律的なリスクがあるので、保険だけでカバーできるのかというところがあるものですから、何らかのルールなり根拠を法制度的にも整備していただくと、軽微な部分についてですが、円滑な利用の促進につながるのではないかなとは思います。

【大渕主査】

 都倉委員、どうぞ。

【都倉委員】

 私の限られた法律的な知識で、もし間違っていたら御指摘いただきたいんですけれども、JASRAC(ジャスラック)の見解によりますと、我々作詞とか作曲家、音楽をつくる立場の人間で、この結合、共有著作権、著作物というものはいつも意識していかなければいけない。欧米のミュージカルみたいな一つのプロジェクトで、グランドライツみたいなものが発生する場合はちょっと別のケースだと思うんですけれども、結合著作物を志向している国は日本であると。アメリカ、イギリスなどは結合という、つまり、分離できる。例えば作詞と作曲を分離できるという概念はないと、JASRAC(ジャスラック)の事務方からは説明を受けているわけです。
 そこで、法律と契約という2つの構造を持っている、例えばJASRAC(ジャスラック)の場合だと出版社と作家の契約、作家同士の契約というのは出版社というものを通じて著作権譲渡契約書をつくるわけですけれども、もう1つ、JASRAC(ジャスラック)に作品届というものを出します。このときに作品届の中に作詞、作曲を、普通の場合は作詞家、作曲家がその作品届に作詞家、作曲家として登録をするわけですけれども、中には作詞だれだれとだれだれ、作曲だれだれとだれだれと。わかりやすく言えばレノン・マッカートニーと。ビートルズの場合は、作詞がジョン・レノンで、作曲がポール・マッカートニーと一般的に言われていますけれども、実は全然違いまして、『イエスタデー』という曲はポール・マッカートニーの作詞作曲なんですね。これは何の証拠もありませんが、周りのスタッフとかプロデューサーのジョージ・マーチンなどの発言で明らかなんです。これは作詞レノン・マッカートニー、作曲レノン・マッカートニーで作品届を出していると。つまりこれは分離できないわけですね、日本的な概念でも。
 例えば、作詞阿久悠・都倉俊一、作曲阿久悠・都倉俊一とした場合は分離できないわけですが、結合著作物の概念として作詞、作曲を一般的な作品登録、あるいは、出版社との契約にしていますと、これは分離ができるという概念であると。しかし、そんなことは歴史始まって以来日本の音楽のクリエイションの中で、作詞と作曲を分離して、新しい詞をつけて、またそれを再発売するというような事例は一回もないと僕は記憶しています。ただ、これはあくまでも道義的な概念でありまして、実際は日本の場合は結合著作物という概念であるならば、完璧に法律的には分離できるというふうな考え方で正しいのかどうか、これは専門家の方に。
 そうすると相続も含めて一般の利用的には、例えばコマーシャルなどで我々の作品を利用する場合に必ず許諾というものが出てくる。例えば、メロディだけをとって、言葉を商品の言葉に置き換えてしまう、こういう申込みがよくあるんですね。それは作詞家の了解をとる。そこで作詞家には拒否権があるという商慣習があるんですが、法律的な面では、冷たい言い方をすれば、その作詞家の拒否権は無効であると。こういう概念であると。そうなると、我々作曲家としては作品の利用範囲が際限なく増えていくということですけれども、そんなことをやってしまうと、我々が業界にはいられなくなるということもあるんです。その辺の結合著作物と共同著作物という概念をはっきりさせれば、利用頻度の概念が変わってくると思うんですが。もしできたら、専門の先生方の御意見も伺いたいと思います。

【大渕主査】

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】

 フランス法に限らず、わが国の旧著作権法の解釈上も、歌詞と楽曲が共同著作物になりうるという解釈があったと承知おります。しかし、少なくともわが国の現行著作権法上は、分離利用可能なものは共同著作物にならず、結合著作物になりうるにすぎないと解釈されております。ドイツでも同様だと思います。
 そうなりますと、例えばAが作曲をし、Bが作詞をした場合、歌詞と楽曲は結合著作物ということになります。そして、作曲をしたAがBの作詞にも創作的に関与しており、作詞をしたBもAの作曲に創作的に関与していたという場合、歌詞はAとBの共同著作物、楽曲もAとBとの共同著作物ということになり、それら2つの共同著作物があわせて結合著作物を形成しているということになります。この場合でも、やはり歌詞と楽曲は分離利用可能ですから、それらがまとめて共同著作物になるわけではないと理解するのが一般的であります。そういう意味では、現行著作権法上、歌詞と楽曲は絶対に共同著作物にならないといって差し支えないと思います。いかがでしょうか。

【大渕主査】

 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 上野委員のおっしゃるとおりだし、そういう例はないとおっしゃったけれども、あるのではないですか。例えば、私の中学校の先輩の園まりという人の『夢は夜ひらく』という曲は、藤圭子の『圭子の夢は夜ひらく』というので、歌詞は違うけれども、曲は同じというのがありましたし、『ズンドコ節』とかいうのもあったような気がしますし。ですから、許諾を事実上得たかどうかは知りませんけれども、法的には全く別個のものであって。現にあるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

【都倉委員】

 『ズンドコ節』は知らないのですが、『圭子の夢は夜ひらく』というのは、たしか作詞家が共同作詞家、旧作詞家の権利は擁護されていたという記憶があります。さっき上野委員がおっしゃったケースで、今当たり前に行なわれているのが、バンドの連中が4人5人全員で詞を考えて、4人5人全員で曲も考えて、1人行方不明になるということはよくあるんです。そういう意味では、今おっしゃった意味を僕が正しく理解していれば、作詞家も共同でつくって、その5人が全部権利を持って、作曲も権利を持っているけれども、これは結合であると、こういう概念なわけですね。
 現実問題としては、そういう中で、例えば作詞の部分でも1人が行方不明だったり、あるいは、絶対権利を渡さないと。けんか別れしてバンドを解散するというケースはよくあるわけですけれども、相手憎しで権利は絶対に譲らないというようなことで、そこで利用が滞ってしまうというようなことは頻繁にあるような気がします。

【大渕主査】

 それでは、時間も過ぎておりますが、本日の2つの論点につきまして、大体の方向性については御議論いただいたかと思います。ただいま出ておりました共有か、結合かというテーマはその一例だと思うのですが、2番目の論点、共有著作権の規定と「共同実演」の規定に関しましては、今その一端がいみじくもあらわれたのではないかと思います。今の楽曲の点とかいろいろありますが、今のあたりで出ていたのではないかと思いますけれども、非常に専門的な内容になりますので、法的な問題点を専門家のグループでまず一定の整理をいただいた上で、それを踏まえて本小委員会で議論していただいた方がより効率的であるように思います。とりあえず、このように法的な問題点につき専門家のグループで整理していただいた上で、それを踏まえて本小委員会で御議論いただく方が効率的なように思いますが、それでよろしいでしょうか。
 それでは、特に御意見がなければそういう形でやらせていただきますが、具体的な検討の進め方等については、恐縮ですが、主査に御一任いただくということで御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】

 ありがとうございます。
 そのほか特段ございませんようでしたら、本日はこのぐらいにいたしたいと思います。
 次回は、今回の御指摘を踏まえまして、さらに制度設計上の問題点などについて整理していただいて、あわせてアーカイブの円滑化方策の具体策についても議論できればと思います。
 それでは、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。

【著作権調査官】

 本日はどうもありがとうございました。
 今後の小委員会の日程ですけれども、次回は11月26日(月曜日)の10時から12時、場所は同じ三田共用会議所で予定しております。よろしくお願いいたします。
 以上です。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第9回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせていただきます。本日も熱心な御議論ありがとうございました。

午後12時3分閉会

(文化庁著作権課)