ここからサイトの主なメニューです

著作権分科会 私的録音録画小委員会(第5回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年6月15日(金曜日)10時〜12時

2. 場所
アルカディア市ヶ谷 穂高

3. 出席者
(委員)
野村、石井、井田、大寺、華頂、亀井、河村、小泉、河野、椎名、津田、筒井、中山、生野、松田、森田
(文化庁)
吉田審議官、甲野著作権課長、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか

4. 議事次第
(1) 開会
(2) 議事
制度の枠組みについて
その他
(3) 閉会

5. 資料
資料1   私的録音録画に関する制度設計について
資料2 現行制度の概要について
資料3 諸外国の私的録音録画補償金制度

参考資料1 著作権保護技術の仕様を規制することについて
参考資料2 検討の進め方
参考資料3 知的財産推進計画2007(平成19年5月31日知的財産戦略本部決定)(関係箇所抜粋)

椎名委員当日配付資料(PDF:76KB)

6. 議事内容
(中山主査) それでは、時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第5回を開催いたします。本日は、御多用中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議の公開についてでございますけれども、予定されている議事内容から考えますと、特段非公開にするには及ばないと思われますけれども、それで特段御異議ございませんでしょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

(中山主査) ありがとうございます。それでは、既に傍聴者の方々には御入場いただいておりますので、そのまま傍聴をお願いしたいと思います。
 なお、本日は小六委員が御欠席でございますけれども、小六委員の申し出によりまして、日本音楽作家団体協議会顧問の野方英樹様がオブザーバーとして出席されております。よろしくお願いいたします。
 また、6月より政府全体でノーネクタイ・ノー上着というクールビズを励行しておりますので、本委員会でも軽装で差し支えないということにさせてもらいたいと思います。
 それでは、議事に移ります。事務局より配付資料の説明をお願いいたします。

(木村課長補佐) それでは、恐れ入りますが資料の確認をお願いいたします。
 議事次第、1枚物でございますが、これの下のほうに本日の配付資料のほうを示させてもらっております。
 資料1ですが、私的録音録画に関する制度設計について、資料2でございますが、現行制度の概要について、資料3諸外国の私的録音録画補償金制度の資料でございます。
 そして、参考資料の1、2、3ですが、参考資料1、著作権保護技術の仕様を規制することについて、参考資料2、検討の進め方について、これはこれまで配付している資料と同じものでございます。参考資料3でございますが、「知的財産推進計画2007」から関係箇所を抜粋したものでございます。
 あと、本日は資料番号なしの資料を配付させていただいておりますが、椎名委員からの提出資料でございます。本日の議事の中で発言する際に説明されますということでございます。
 資料のほう、洩れ等ございませんでしょうか。
 恐れ入りますが、参考資料3につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。参考資料3の「知的財産推進計画2007」でございますが、本年5月31日に知的財産戦略本部で決定されたものでございます。計画本体自体は大体全体で資料も含めまして140ページぐらいになるものなのですが、その中から私的録音録画等の検討に関係する部分のみを抜粋したものを配付させていただいております。第4章のコンテンツをいかした文化創造国家づくりの中の世界最先端のコンテンツ大国を実現する。この中の1としましてデジタルコンテンツの流通を促進する法制度や契約ルールを整備するという中に関係項目等ございまして、その中から関係あるものでございます。違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題を解決するということで、海賊版等の複製を私的複製の許容範囲から除外すること等を検討を進めるということです。あと、6といたしまして私的録音録画補償金制度の見直しについて結論を得るといったものでございます。
 なお、この報告書自体につきましては、知的財産戦略本部のホームページのほうでも本体自身は公開されておりますので、また後ほど御参照いただければと思います。
 以上でございます。

(中山主査) ありがとうございます。それでは、本日の議事に入りたいと思います。1つ目の課題といたしましては、前回、時間の関係で議論できなかった著作権保護技術の仕様の規制につきまして議論をしたいと思います。
 まず、事務局より説明をお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) お手元の資料の参考資料1を御覧いただけますでしょうか。前回配付した資料を再掲させていただいたものでございまして、内容については前回御説明をいたしましたので詳細には説明いたしませんが、1枚めくっていただきまして2ページの3のところがこの課題に関する問題点を整理したもので、制度改正は必要ないという考え方、制度改正は必要であるという考え方の両面から考え方を記述しています。この問題はもともと30条の見直しの中で委員からこういう内容についても議論するべきではないかということで議題に取り上げているわけですが、各国の法制等も見ましても、いわゆる私的録音録画補償金制度を導入するから、例えばそういった回避規制や仕様規制についてはするべきではないとかという議論よりも、もう少し大きな面からの議論というふうに承知しておりますので、この(1)と(2)ということで整理をさせていただきました。
 (1)につきましては、簡単に言いますと、特に法律の規制をしなくても著作物等が持つ性質とか消費者の理解とか世論の動向等を勘案して自然のメカニズムによって適切な選択が行われるので、特に法律上規制する必要はないのではないかという考え方です。(2)については、今まで著作権の保護技術がないときには、その行為が違法かどうかにかかわらず複製しようと思えばできたわけですけれども、それを技術的な手段で一切複製をできなくするという可能性が生じたことを考えると、文化の発展とかいろいろな情報を知る権利との関連で問題が生じる可能性があるため、あらかじめ著作権法に調整弁を設けておくべきであるという意見、これは制度改正が必要であるという意見ですが、中間的な案や、どちらの意見もそれぞれ踏まえた別の案というものがあるかも含めて少し議論していただきたいと思っております。以上でございます。

(中山主査) ありがとうございます。ただいまの御説明を踏まえまして、御意見等をちょうだいしたいと思いますけれども、何かございませんでしょうか。どうぞ、河野委員。

(河野委員) こちら標題が著作権保護技術の「仕様」の規制ということになっておりますけれども、内容を拝見するに、多分著作権保護技術をどういう場合に運用してよいかという話と、著作権保護技術の回避にかかわるお話の各国の状況が整理されているものではないかと理解をいたしました。
 回避については、日本の著作権法では30条で技術的保護手段の回避を伴う「複製」ということで規制をしていますが、アメリカなどでは回避行為そのものについて規制しているといった違いがございます。が、率直に申し上げて、資料として、そのあたりの整理が若干粗いのではないかと思います。
 また、30条私的複製の範囲を考えるときに、著作権保護技術をどのような形で運用していいか、あるいは30条以外のところの話にもかかわってきてしまうのかもしれないのですけれども、技術というのは一回かけてしまえば一律に利用が規制されるという性格のものですから、それをどのように考えるのか。要はほかの権利制限規定との関係も含め、当初法が予定した範囲が保護技術をかけることにより狭まったり広がったりしている状況をどのように考えるのか、非常に大きな問題ではないかと思っています。そういう問題を議論するには、少し事実認識として欠けているところがあるようにも思いますし、整理の仕方も若干粗いのではないかというふうに僣越ながら考えますので、本件きちんと議論するにあたって、その問題意識と現状認識の共有を別途させていただければと考えます。

(中山主査) その点は事務局のほうは何かございますか。

(川瀬著作物流通推進室長) 今の御意見は、委員のほうでそういう整理をして資料提出していただけるという理解でよろしいのでしょうか。ということであれば、今回の議論とは別に提出した資料に基づきまして、そういう時間を設けたいと思います。

(中山主査) わかりました。ほかに何か。生野委員どうぞ。

(生野委員) 著作権保護技術に関しましては、コンテンツの権利保護という側面と、コンテンツプロバイダーがユーザーに対して多様なサービスを提供する、選択肢を多く提供するという、そういったメリットがあると思います。自分の商品をどういう形で売り出すのか、それに対する規制を行うということは、市場原理を非常に歪めるという点、それと事業者の自由な経済活動に制約を課すということで基本的には反対です。

(中山主査) ほかに御意見ございましたら。もう一度、生野委員どうぞ。

(生野委員) 技術的保護手段、DRM技術に関しましては、実態面としてはかなり緩和するような方向の動きもあると思うのですが、現実に何かしら技術的保護手段に関して支障があるのかどうか、もしあったら教えていただきたいのですが。

(中山主査) その点はいかがでしょうか。現在のDRMについて問題があるかというお話ですね。

(川瀬著作物流通推進室長) 今の御質問に対する回答ではございませんが、私の説明のときに冒頭言いましたように、この保護技術との関係というのは私ども問題点を整理する場合にいろいろと考えたわけでございますが、幾つかの国でこの問題を法的に取り上げている国もありますが、補償金を払うのでその代償措置として例えばコピーを禁止してはいけないという考え方をとっている国はないと思います。
 基本的には、30条の適用の見直しということで、この問題点が出ていると思いますが、今の文化審議会著作権分科会の所掌を考えますと、私的複製全般につきましては法制問題小委員会で検討することになります。そのうちの私的録音録画に絡む部分については、この委員会で検討するという分担となりますので、河野委員から提出していただいた資料を踏まえ、議論をしたいと思いますが、最終的には、この場で結論が出せる部分と、法制問題小委員会で改めて私的複製全般の問題として議論していただくところに仕分けをして問題点を整理したいと考えております。

(中山主査) ほかに何かございませんでしょうか。それでは、この点はこのくらいにいたしまして、2つ目の課題に入りたいと思います。2つ目は私的録音録画に関する制度設計について議論をしたいと思います。まず、事務局より説明をお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) それでは、資料1をメインにしまして、資料2と資料3を参照しつつ御説明をします。資料1につきましては、未定稿ですが事前に委員にお配りしてお目通しをしていただいていますが、そのほかの資料については事務的に間に合わず、事前にお送りできなかったということを、まずおわびをさせていただきます。
 資料1ですが、補償の必要性がどうなのかというのは今まで議論をしていただきましたし、さらにこれからも議論を進めていくつもりでございますが、具体的な制度設計を仮にするとしたならば、どういうような制度になる可能性があるのか、また、その全体図の中でどういう問題点があるのかを少し整理をしてみました。分量が多いので時間がかかりますけれども、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、その制度設計を考える前に具体的に前提条件の整理ということで、これは何か新しい資料ということではございません。今まで議論されましたように、私的録音録画に関する幾つかの行為類型がございましたけれども、そのうちの違法複製物、違法サイト等からの録音録画や適法配信、有料放送からの録音録画については30条の適用範囲から除外するということでどうだろうかということでございます。
 ただし、前提になります行為類型については、条件がいろいろと重なってきており、それらについては、今まで議論いただきましたので、それらの議論を前提にして、全ての行為類型が対象外になるということではございません。例えばアの場合ですと、その罰則の適用はどうなのかとか、あとは、違法であるという事情を知っているものに限定するのかとか、イの場合ですと事業としてやっているものに限定するのか、それとも個人のホームページでやっているものも含めるのか、というような議論をしていただきましたが、これはある程度限定した上でということです。
 それから、著作権保護技術と補償の必要性との関係でございますけれども、これは何度も申し上げておりますように、この制度ができた以降の新たな問題でございます。これも以前資料を出させていただきましたように、基本的には著作権保護技術と私的録音録画補償金制度というのは、保護技術の内容によっては併存可能というふうに考えられます。ただ、次のような状況に至った場合には補償金制度が不要となると考えられるがどうだろうかということです。アが、非常に厳しい著作権の保護技術によって複製の量が減少したという場合、イが、権利者の選択肢が広がって、関係権利者がその選択肢の中から自分の意思に沿う著作権保護技術を選択できるというような状況になったとき、ウが、利用者の便を損なうことなく個別徴収、個別的な契約ができるようになった場合という3つの類型を記述しております。
 次にめくっていただきますと、仮に補償の必要性があった場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方ということで、まず制度の大枠として、私どもは今までの議論をお聞きしまして2つに分けさせていただきました。1つは録音録画機器とか記録媒体の提供という行為に着目した制度設計でございます。もう一つは録音源、録画源の提供という行為に着目した制度設計を考えてみました。実は現行の補償金のタイプというのはアのタイプでして、我が国を含めた補償金制度を採用しているすべての国がこのアのタイプです。それを検討するにあたっては、現行制度を改善して対応するという形になるわけですが、対象機器、記録媒体の範囲、決定方法、支払い義務者補償金の決定方法等、幅広い議論が必要だと思います。イについては、これは今までそういった制度を導入した国はございませんので、そういう意味では初めての試みです。それから、後で御説明しますけれども、制度設計としては非常に単純な制度設計になると思われます。
 それでは、アの制度設計の問題ですが、まず対象機器とか記録媒体の範囲についてです。お手元の資料2を見ていただきますと、資料2は現行制度の概要について書いているものでございますが、対象機器・記録媒体の範囲は、その1ページのところに線が引いていますように、デジタル方式の録音録画の機能を有する機器ということで、括弧書きでその除外するものが書いてあり、最後に政令で定めるものということになっております。記録媒体も同じような記述でして、その具体的な機器・記録媒体で、今政令指定されているものがその2のところに書いているものでございます。
 資料2の3ページを見ていただきますと、この表はウの改善すべき課題と対応策の内容に従って参照をしていただくということで御説明させていただきます。
 まずウの対象機器ですが、現行制度は私的録音録画にもっぱら使用され、かつ記録媒体を内蔵しない、いわゆる分離型の専用機器を想定した制度設計です。現在は、録音録画機能以外の機能を併せ持つ機器、これを汎用機器と言っておりますけれども、それから記録媒体を内蔵した一体型の機器というものが主流となりまして、ここ数年この傾向が顕著になっているということです。
 その次ですが、そういった一体型の機器とか汎用機器を用いて行う録音録画が急速に普及してきたということから、負担の公平性との観点からこの対象機器の範囲を見直す必要があると考えますがどうでしょうかということです。
 まず上の表を見ていただきますと、まず横軸が分離型の機器か一体型の機器かということで、分離型・一体型も含めて縦軸ですけれども専用機器と汎用機器。汎用機器もその機能としては複数あるが、やはり録音録画が主たる用途のものとそうでないものとがあるのではないか、というのがこの分類です。最後から2つ目の丸の事例で、専用機器につきましては、その記録媒体を内蔵した一体型の専用機器であっても私的録音録画にもっぱら使用される専用機器であることに違いないことから、対象にすることについて課題は少ないのではないかということです。この上の表で見てもらいますと、右側の上の一体型機器ですけれども、今の著作権法制では機器と機材を用いてデジタルの私的録音録画をすると補償金の支払義務が発生するのですが、法律上は一体型機器を用いて複製することを想定していませんでしたので、現在の法制では一体型機器についてはそもそも対象にならないということになっていますが、なぜ専用機器が現行法で対象になったかと考えれば、一体型の機器も対象に加えることについては課題が少ないのではないかと思います。
 それから一番下ですが、汎用機器でございますが、ポータブルオーディオレコーダーに代表されるような汎用機能を有するけれども、消費者の主たる用途は私的録音録画であるもの、それから通常のパソコンのように、消費者の主たる用途が私的録音録画であるものとは言えないもの、つまり複数の機能があり、それぞれ消費者が何の用途を使うかというのはもうそれぞれバラバラだというふうに考えていいただければ結構です。そういう分類があるのではないかと。
 aの場合ですと、それは前のページの表で見ますと、真ん中のところですが、専用機器であるポータブルオーディオレコーダーと汎用機器であるが主たる用途は録音録画であるものとの取り扱いは異なるものとすることは負担の公平性から問題があることから対象にすることが適切であると考えるかどうかということでございます。つまり、ポータブルオーディオレコーダーを例にとってみれば、単機能の専用機器であれば補償金の対象にするけれども、複数の機能を有しているというだけでその対象外にするのは負担の公平性から問題があるのではないかという問題意識でございます。
 一方、bの場合については、機器を買った購入者が私的録音録画に供する可能性がかなり低いものもあると考えることから、補償金の対象とするかどうかはこの論点をどういうふうにして整理するかを改めて検討整理が必要であるということで、現行制度の論理というものは使えずに、また新たな論点整理が必要だというふうに考えられますが、どうでしょうかということです。
 それから、イの対象の記録媒体についてですが、記録媒体も現行法においても記録媒体の汎用機器化が進んでいるということから、これについて範囲を見直す必要があると考えるがどうでしょうかということでございます。
 それから、対象機器・記録媒体の決定方法ですけれども、現行は政令指定方式ということになっております。それで現行制度の問題点でございますが、専用機器については現行の政令指定方式の継続または改善で対応可能と考えられますけれども、汎用機器につきましては、それが録音録画に用いられるかどうかは、使用されている技術の特定だけではなくて、その用途、ある意味では主観要件なのですが、そういった要素も考慮して判断されるべきであると考えるので、専用機器・専用記録媒体を前提として技術方式により対象を特定する現在の方式では対応が難しいのではないかという問題点がございます。それから、新たな対象の追加に迅速に対応できないとか、決定プロセスの透明性とか、消費者への理解というものも問題点として挙げられるというふうに考えております。
 5ページにいきまして、改善すべき課題と対応策ということで、汎用機器・記録媒体についても全部か一部かは別にしまして、仮に対象に加えるとすれば新たな決定方式を考える必要があると考えられると思いますけれどもどうでしょうかということです。例えば次のような方法に弾力的に、または迅速かつ透明性のある決定方法にすることは考えられないでしょうかということで、例として政令で定める基準に照らしまして公的な「評価機関」の審議を経て文化庁が定めるという方式をとりあえず例として挙げてみました。それについてはどうでしょうかということでございます。その内容としましては、政令で一般的な基準、技術の特定やその用途を定めまして、具体的な対象については評価機関で議論されるということで、汎用機器についても利用実態を考慮して判断できるというメリットがあるのではないかと。公的な評価機関については、例えば権利者、製造業者、消費者、学識経験者等でいわゆる利害関係者も加えた機関で構成をすれば、その透明性も確保された決定プロセスの中で審議できるのではないかと思います。政令指定よりも迅速に対応できるのではないかというようなメリットがあるのではないかとも思っております。
 それから、補償金の支払義務者でございますが、現行制度につきましては資料2の2ページを見ていただきたいと思います。現行制度は、原則支払い義務者は利用者でございます。30条の2項を見ていただくと、本来は利用者が私的録音録画にあたりまして直接権利者に支払うということが原則になっていますが、なかなか実務上は不可能ですので、別途支払いの特例という制度を設けておりまして、機器ないし記録媒体の購入者が機械を購入するときに、指定管理団体から請求があれば一括前払いするという制度でございます。その一括前払いに製造業者または輸入業者が協力をするということになっているわけで、表を見ていただくと、簡単な表ですが、指定管理団体がその機器の購入者の方に補償金を請求するのですが、どうやって支払い義務者である利用者が支払うかというと、それは機器とか記録媒体の本来の価格に補償金が上積みされた価格で購入するということになるわけで、製造業者・輸入業者はその販売量に応じて一括して指定管理団体に払っていただくということです。それで一回も著作物の録音録画に供しないという人は別途返還請求が認められているという制度でございます。
 もとの資料1に帰っていただきまして、3のイですけれども、現行制度の問題点としては、やはり専用機・専用媒体の録音録画を念頭に置いた制度設計だということでございます。ただ、仮に汎用機を対象とする場合には、やはり現行制度では対応できないのではないかということが一番下の丸でして、1つの理由としてはいわゆる返還制度の問題点が拡大をしてしまう。返還制度の問題点というのは、返還額が少額過ぎて実効性のある制度とすることが困難、立証責任は利用者にあるというようなことでございます。
 1枚めくっていただきまして、30条の見直しにより仮に違法なサイト等からの録音録画や適法配信からの録音録画が30条の範囲外になったりしますと、さらに著作物等の録音録画、そういった手段以外のいわゆる私的録音録画をしない人、さらに返還制度の対象が増えることになりますので、矛盾が拡大することになります。
 また、実務面では著作権保護技術の強弱やある特定の機器等が私的録音録画に供される割合などを補償金に反映しようとした場合、支払い義務者が利用者では反映しにくいと考えられます。
 それから、改善すべき課題と対応策としては、現行の制度設計は専用機器・専用記録媒体を前提なものですから、仮に汎用機器を対象にする場合には、やはり現行制度のように支払い義務者が利用者では対応できないのではないかということでございます。
 仮に見直すとした場合には、選択可能な制度は我が国以外の国で採用されている製造業者製造業者・輸入業者が支払い義務者になるということが適切と考えられるけれども、どうでしょうかと。この考え方は次のような整理というふうに考えております。
 まず、録音録画機器の提供があるから私的録音録画が行われるという因果関係があります。それから、現行法では利用者が補償金を支払うのが基本ですけれども、個々の利用者から補償金を徴収するのは事実上困難でございまして、現行制度においても実質的には製造業者等が補償金を支払っているという実態がございます。また、今回の制度見直しにより負担の公平性の点から汎用機器も対象にするということであれば、返還制度に関する問題点等の拡大によって対応できないということですから、30条の存在によって利益を得ており、現行制度においても実質的に補償金を支払っている製造業者等に著作権保護のために協力を求めることが適切と考えられるというのが、その支払い義務者を製造業者・輸入業者にする考え方を整理したものでございます。
 それから、補償金額の決定方法については、これは資料2の3ページを見ていただきますと、現行の制度はこの表を見ていただきますと、まず指定管理団体が製造業者等の団体の意見を聞きましてまず補償金の額の案を定めます。事実上はそこで関係者の話し合いというのが行われるわけでございますが、それが文化庁長官に対する認可申請という形で出てきまして、その文化審議会に諮問答申の上、補償金額を認可をするというような形になっております。
 補償金額の決定方法について、資料1に戻りまして7ページを見ていただきますと、現行制度の問題点としては、現行制度における補償金の決定手続きには大きな問題点はないと思われますが、次のような点で改善の余地があるということで(ア)と(イ)を書いております。1つは著作権の保護技術によって補償金額の額にどういう影響を与えるかということについての考え方が実務上も制度上も整理されていないのではないかということ。それから、補償金額は申請以前に関係者が協議をするという実態があるわけでございますけれども、決定方法や透明性にやや欠ける面があるのではないかということです。
 対応策としては、後で御説明しますが、欧米では法令で補償金額を決めている例もありますが、デジタルの時代になりまして関係者間の協議によって補償金を定めるという方向に変更されつつあるという傾向にあるわけでして、そういう意味で関係者の協議方式が前提となっている現行制度については原則として維持してもいいのではないかと思われます。
 補償金の決定プロセスの透明化を図るためには、例えば現行法では文化審議会著作権分科会の使用料部会という学識経験者だけで構成されているところの意見を聞くことになるわけですが、例えば前述の評価機関、つまり対象機器を指定するようなところで学識経験者と利害関係者で構成された機関で意見を聞くということではどうだろうかということです。また、著作権保護技術の影響を補償金に反映させるよう、その旨の根拠規定を定めるというようなことも必要ではないかと考えられますが、どうでしょうかということです。
 それから、補償金管理協会につきまして、これは資料2の4ページを見ていただきますとおわかりのように、現行法では録音と録画を分けまして、それぞれに補償金管理協会を設立して請求事務を行うということになっていますが、問題点としては最近では録音録画機器が完全に別々というよりも、1つの機器で録音と録画ができるという機器も発売されておりますから、同じ機器等に対して2つの団体から別々に補償金を請求するという可能性も生じてまいっています。それから、補償金管理協会の事業の1つとして共通目的事業がありますが、現行制度では現実には両団体では調整はしていますが、独自に事業を実施しているというような実態がございますので、次の8ページですが、対応策としてはそれを1つにするという考え方ではどうだろうかということです。
 それから、共通目的事業につきましては、資料2の5ページでございますが、現行ではどういう事業に使うかという事業の対象範囲は法律に明記されておりまして、それが(2)の12、これが実は法律で明記されている事業なのでございます。補償金の額につきましては、次の6ページの(3)を見ていただきますと、補償金の2割以内で制度で定めるということで、政令で2割ということで補償金の20パーセントが共通目的事業に定められるというのが現行の制度でございます。
 問題点としては、これは文化審議会著作権分科会、平成18年1月の報告書では共通目的事業の内容が十分知られてない、権利者のみならず広く社会全体が利益を受けるような事業への支出が見られるというような御指摘があるところでございます。
 対応策としましては、その共通目的事業自身はその制度の設計上やはり廃止する必要はないのではないかと。ただし、イのような御指摘もございますので、事業内容を検証等を実施した上で、共通目的事業の支出割合を必要に応じて見直すことが必要と考えられます。また、事業の透明性を確保するため、事業内容の公開を義務づける等の措置が必要と考えられるが、どうでしょうかということでございます。
  7でございますが、補償金制度の広報のあり方ということで、今その補償金管理協会に補償金制度の広報義務はないわけでございますが、広く消費者に補償金制度の仕組みや意義を啓発普及することは必要なことであるので、補償金管理協会に補償金制度の広報義務を法律上課すということでどうでしょうかということでございます。
 最後にその他、何か問題があるかどうかということでございます。
 9ページにいきまして、録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計でございます。これは現行制度の改善というよりも、全く新しい制度ですので、最初に制度の概要を示した上で、制度上の課題や対応策について整理をするという手法で記述しております。
 まず、補償金の概要ですけれども、補償金の支払い義務者については、これは支払い義務者は録音源・録画源の提供者ということになります。ただ、提供者の範囲は広うございまして、直接消費者に録音源・録画源を提供しているということであれば、例えばCDの販売業者とかレンタル業者、図書館、配信事業者、放送事業者、中古販売事業者、それから友人に貸すということであれはその消費者自身というようなことが考えられますが、間接的に提供しているということであれば、例えば音楽のCDの製造業者とか、放送の場合であれば番組供給者なども考えられるわけです。
 補償金額の徴収及び決定につきましては、これは権利者が録音源・録画源の提供者と録音録画、貸与、公衆送信、送信可能化、これは許諾権が働く利用行為ですので、当然そこには使用料が発生するわけですが、その使用料に補償金分を上乗せして請求するということが最も一般的だと考えられます。その補償金の額については、その録音録画の使用料については通常は交渉で決まるわけですから、その交渉の際に補償金の額についても交渉して決定すればいいということですので、例えば著作権が管理事業者に預けられた場合、例えば音楽などの場合については、その管理事業者と利用者との交渉ないしは管理事業者の使用料規程の中で決めるということになります。それから、個別処理の場合については、当事者同士の交渉で決めればいいということであります。
 それから、補償金管理協会や共通目的事業につきましては、これは通常の使用料に上乗せして補償金を徴収するわけですから、徴収代行機関は必要ではなくなりますし、録音録画の使用料に上乗せさせて個々の権利者に分配されますので、共通目的事業も必要でなくなるということになります。
 ただ、次の制度上の課題と対応策ですけれども、まず、そういった制度の考え方を整理してみますと、録音録画源が提供されるから私的録音録画が行なわれるという意味では因果関係があると思われます。録音録画源の提供者は30条により無許諾で録音録画されることを承知の上で録音源・録画源を提供している。権利者が録音源・録画源の提供者との契約で私的録音録画の補償金相当額を徴収できない。つまり相手方が法的根拠がないのになぜそんな補償金を払わなければならないのかという拒否するという可能性があるので、法制度上に合法的に補償金を請求できるような仕組みにする必要があるというのが、そういった考え方の基本的な考えということだと思います。
 改善点と問題点ということで幾つか書いてみましたけれども、管理協会を経由して補償金を徴収する必要がなくなりますので、特別に補償金の額を決める必要もないし、共通目的事業も必要なくなるので、制度としては非常にシンプルな制度となる可能性がございます。
 ただ、問題点としては、録音源・録画源が提供されるから録音録画ができるという確かに因果関係はあると思いますが、そもそもこの数十年来、世界で議論されてきた私的録音録画問題の本質といいますのは、便利な録音録画機器が広く普及したことによって、その許諾を得ない複製が蔓延して、それが権利者に被害を与えているのではなかいというところが、そもそもの私的録音録画問題の本質ですので、それが録音録画ができる商品を提供したから録音録画が広まったということになるわけでして、そうすると私的録音録画問題の本質を根本から見直すという必要が生じてきます。
 また、CDの購入者とか放送の視聴者の中には録音録画機器も所有してない者も多いわけで、このような消費者からも個別の使用料に上乗せして補償金を取るという制度ですと、対象機器の決定の論点は解消されますが、私的録音録画の可能性を一切無視して補償金を徴収することになるなど、制度の不合理さが目立つのではないかと思われます。
 これも本委員会で議論されましたように、レンタルCDについては私的録音につながる可能性が比較的高い分野ではございますが、図書館への貸与とか友人への貸与などの類型とのバランスを考えますと、レンタル業者だけに補償金支払い義務を課すというのはやはり問題が多い制度だと思われます。さらに、レコード製作者や映画製作者については同時に製造販売事業者等である場合が多いわけですから、制度設計によっては自分が自分に補償金を請求するというようなことになる可能性があるということで、問題点も多い制度にならざるを得ないと思います。
 なお、この問題につきましては、著作権審議会第10小委員会の報告書にも、上のほう、3行目ですが、いわゆる源泉払い制度ということで使用料へ報酬の上乗せ方式ということが議論をされております。詳しいことは割愛しますが、下から5行の「しかし」というところの後ろからを見ていただきますと、この考え方も1から3の理由によって採用すべきでないという意見が大勢であったということで、過去の審議会でも否定的な見解が出ております。
 最後ですが、12ページを開いていただきますと、補償金制度以外の方法、つまり契約ベースで対応できる制度ということになるわけですが、補償金制度を廃止しまして無許諾・無償の利用を認めた上で、そういった30条の改正をした上で契約ベースで権利者が録音録画、貸与、公衆送信、送信可能化等の契約をする際に、事実上補償金を含めた使用料で許諾するという方法も考えられるわけですが、制度上根拠のない補償金の支払いに製造・提供業者が応じるかどうか、また消費者の理解が得られるかどうかということですが、そのようには思えないので実行性がないのではないかと考えられます。
 それから、資料3でございますけれども、これは審議にあたって各国の制度を一覧表にまとめてみました。横軸が制度を持っている国でございまして、縦軸がそれぞれの項目ごとになっています。例えば2の導入時期とか対象行為ですが、ドイツは録音録画、アメリカは録音、カナダは録音ということになり、録画については補償金の対象外の国もあります。
 それから例えば4ですが、4はドイツを見てもらうとデジタル・アナログの別は問うておりません。一体型も含むとなっております。ほかの国もデジタル・アナログの別は問うてないところが多いわけでして、フランスとかオーストリアとかそういったところは一体型も含むという取り扱いになっています。アメリカはデジタルのみでございます。
 5番目はその対象機器と機材の手続きですけれども、ドイツは法律の別表で定められていますが、実際は交渉だということ。フランスは中立委員、利害関係者で構成された委員で決定されると、そういったことがわかると思います。
 次にめくっていただきまして補償金額の決定手続きの6番につきましては、ドイツは法律の別表で定める額が適用されることになっていますが、これは協議方式の改定が進められております。フランスは委員会、中立委員、利害関係者で構成されたところで決定をするという制度があるようです。
 7の単価、これは御覧いただければわかると思います。
 徴収額の8ですけれども、これは私的録音と録画と合わせたものですけれども、ドイツであれば231億円、フランスが244億円、以下ずっといろいろ見ていただければわかると思います。ただ、アメリカ、カナダは。録画を対象としておりませんので、これは録音だけの使用料ということになっております。
 なお、我が国との比較をするということであれば、現行制度の概要の資料2に我が国の使用料の額については載っておりますので参照していただければと思います。大体日本ですと録音録画合わせまして40億円弱というのが現在の状況でございます。
 11番の支払い義務者につきましては、これは何度も申し上げておりますように、日本以外の国は製造業者、輸入業者でございます。
 13番の共通目的事業につきましては、例えばフランスやオランダ、オーストリア、スペイン等につきましては共通目的事業が義務づけられているというようなことになっております。以上でございます。

(中山主査) ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえまして、御意見をちょうだいしたいと思います。これがまさに制度の核心ですので十分時間を取ってございますので、では亀井委員から。

(亀井委員) ありがとうございます。亀井でございます。まず、この資料1について、今日は資料1の中には引用されてはございませんが、第10小委員会の報告書などを読みますと、基本的に著作物の利用の責任はその受益者たる利用者が負うのが原則というところが出発点になっていて、このラフジャスティの制度を作るというふうに書かれております。現行の制度設計時にはこういった理念がきちんと議論をされて整理をされた上で作られたという理解ですけれども、本日のこの資料1を拝見しますと、一体その理念はどこにあるのかという疑問がございます。これからその理念について御議論をされるのかとも思いますが、このような資料では表面的にその制度改正の議論をするということになってしまわないかという懸念がございます。
 前提条件の整理というようにありますが、前回もまさに補償の要否をめぐってかなり議論があったと思いますが、そういったことについて一切触れられてもおりません。何が整理かという気もいたします。30条の範囲のことにつきましても、違法サイトであるとか適法配信という言葉は踊っておりますけれども、この定義の意味するところ、これもまた満足に議論されたかという実感もございません。それ以外についても全く議論が不十分なまま、することでどうかと聞かれましても、素直に、はい、そうですとは言えない状況、それが前提であるということであります。
 (2)に至りましては、これは以前から事務局が出されているそのままの表現でございまして、幾つか意見を申し上げたつもりもございますが、そういうものが全く反映をされていない。JEITAとしてはアの条件はもう成就しているのではないかというふうに考えておりますけれども、そういうことも書いていない。
 それから、仮にということで、それは置いておいて制度論をしようよということで始まるわけでございますが、これまでの本委員会の議論からと書かれてございますが、どうしてそのような記述が出てくるのかということが全く理解に苦しむということでございます。
 対象機器・媒体について汎用機器・汎用媒体というところへ拡大するということが提案されておりますけれども、ラフジャスティスの制度の上で拡大するということは、さらにラフにするということでございますので、全く妥当とは思われませんし、まさに先ほどの理念は何かということだと思いますが、これはお金がほしいと言っているようにしか聞こえないと、言い過ぎかもしれませんが、そのようにさえ思います。
 消費者の主たる用途と書かれておりますが、それが現行の政令の「主として用に供される」という表現と一体どこがどう違うのかと。主観的要件という説明をされましたけれども、その基準は非常に曖昧でありますので、例えば汎用と言われていますパソコンをCDのコピーを目的に買う方がいらっしゃると、その用途は一体何だということになろうかと思います。
 それから、一体機器、汎用機器を用いて録音録画が増えていると書かれておりますけれども、例えばポータブルオーディオプレイヤーを買ってネット配信で聞かれるという方が仮に増えたとしても、それはこの前提条件にあるとおり補償金の議論の外だということであれば、それはそもそも補償金を負担する義務がないということですから、負担の公平性の観点から問題と言われますけれども、そこは果たしてそうなのかという疑問がございます。
 決定方法につきまして、現行法の政令指定という枠組みは文化庁だけで決められるのではなくて、さまざまな観点からの政策調整が必要だという前提で政令になったということだと理解しておりますので、例えばと挙げられている方法では全くそれそこまたその考え方というのはどこへ行ってしまうのか。法的安定性や明確性のためにも、そういった政令であるということが必要であろうというふうに考えられます。
 それから、例えばこの例では、それによって迅速化されるというふうに書かれておりますが、それではこのように形式的なその評価委員会を設けて、一回その議論をして、その後文化庁が決められるということで早くなるというふうにおっしゃっているとしか見えませんで、この審議会でいろいろ申し上げてもそれが取り上げられないということを考え合わせますと、一体これはどう決定されていくのかという非常に大きな不安がございます。
 支払い義務者について、これはメーカーにとって非常に大きな御提案をされていまして失笑するしかないんですけれども、外国の制度を引き合いに出されておっしゃっておられるということが1つの点です。ドイツではもともと機器メーカーが著作権侵害において間接侵害者だというのが議論の出発点であったと理解をしておりますので、そこで出来上がってきた制度と、我が国がこの制度を導入したとき、当然そのドイツの状況も勘案しながら決めた今の制度において、その判断は一体何だったのかと。経緯が全く違うということは今どうひっくり返すという立法事実の変化があるのかということについて説明がいるのではないかと思われます。
 それから、返還制度がワークしていないという問題ございますけれども、104条の4の2項ですか、立証責任を利用者に負わせているという点であるとか、あるいは運用上問題がないかという点であるとか、あるいは補償金制度自体の認知が低い中で返還制度自体についてどれほどの人が承知されているかというあたり、そういうあたりの議論を全くしないままに返還制度については支払い義務者を変えれば忘れることができるというふうに言っているようなふうにしか読めない。そういう議論をしていていいのかという疑問がございます。
 最後に、実質的に補償金を支払っている製造業者に、著作権保護のために協力していただくことは適切と考えられるという事務局のお考えが書かれておりますけれども、現在メーカーが負っている協力義務以上に支払い義務のことをおっしゃっているのだということであれば、これは今のような議論のプロセスでは何をか言わんやという感じでございまして、全く受け入れることはできないというふうに考えております。
 その他、この資料については細部にわたりいろいろわからないところ、それから異議のあるところと多々ございますので、次回もこの資料で議論がされるということであれば、意見書にしたためて改めて次回提出をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

(中山主査) ぜひまた意見書をお願いしたいと思います。まさにそういう点についてこれから議論をしていただきたいと思いますけれども、何か川瀬室長のほうからありますでしょうか。

(川瀬著作物流通推進室長) 委員がおっしゃるとおり、まさしく議論のたたき台ということでございますから、それぞれのお立場によってそれぞれ御意見があると思いますので、ぜひ事務局としてもペーパーで出していただいて、それを踏まえて議論をしたほうが、より理解度が深まると思っております。メーカー側の方に限らず、権利者側、学識経験者、消費者の方もできれば意見書を出していただければ幸いでございます。

(中山主査) では、亀井委員、よろしくお願いします。椎名委員、先に手を挙げていましたので。

(椎名委員) 僕は亀井委員の御意見に反対でして、前回の様々ご議論がありましたけれども、入口の議論で終わってどうするのだというところが大勢を占めていたと思います。まさにこういった中身の問題に入っていったときに、今、亀井委員も縷々御指摘になったように、まさにその中身についてこれから議論していけばよろしいのではないかと思っています。
 それで、この資料1の(2)の著作権保護技術と補償の必要性との関係というところのイの権利者の総意に基づいて複製をコントロールできる場合とあるのですが、こういう考え方でくくるのはとても危険だと思います。例えば配信などのプラットホームからユーザー端末のハードウエア、ソフトウエアに至るまで一手に独占しているような事業者さんがあった場合に、その地位を利用して一定の配信価格や保護技術のレベルなどを権利者に求めて、権利者がそれを飲まざるを得ないというような場合にも、これは権利者が選択したのだから補償の必要性がなくなるということになるとすれば、それはその事業者が独占的に上げる利益が全く調整されないということになると思うんですね。
 また、この部分に関連する話として前回にも出た話なのですが、現在総務省のデジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会の場において、コピーワンスの見直しに関する論議が行われているわけです。その様々な検討を経て一応COG運用たす枚数制限というような形で着地をしようとしているわけですが、この着地点ということについては、実演家も、そして多分放送事業者さんも、あくまでも録画補償金制度の存在を前提として一定の妥協を検討してきたものです。このことは検討委員会というものが補償金制度について議論する場ではないということがありながら、あくまでも関係はしてきますので、補償金制度との関連については検討委員会の中でも何度も言及し、またJEITAさんからも特段の反論はなかったように記憶しています。
 ところが、一方で前回こちらの委員会でJEITAさんが提出された資料を拝見しますと、このイの部分の考え方を引用するような形で著作者等の意思でコントロールできる利用は補償の必要がない。つまり、デジタル放送に関する補償は必要ないというふうに主張されています。総務省で何年間も議論してようやく着地点を見出そうとしている矢先に何でこのような資料を出されたのかということについては、その真意はわからないのですが、その真意はどうあれ、今後出てくる着地点というものについては、著作者との意思でコントロールできるような状態であるとも考えておりませんし、また、録画補償金制度を前提としない話であれば、あそこの議論は白紙に戻るというふうに考えています。その点をよく御理解いただいておく必要があるのではなかいと思っています。コピー回数制限のレベルはどうあれ、メーカーさんは新たな規格の製品を製造し販売し利益を上げられるわけですよね。そうした成果が何らかの形でコンテンツやクリエーターに還元されるべきであるというのがあの検討委員会の考え方だったと思いますし、今日的にも大きな課題になっている部分だと思います。
 このイの部分に話を戻しますと、この下のウについてはよく理解できるのですが、現時点でこのイの部分のような考え方で考えていくことは僕は反対です。このような言い方をしなくても、ウの考え方に含まれているものというふうに考えています。以上です。

(中山主査) それでは、河村委員。

(河村委員) 議論を元に戻すつもりは全くございませんが、そもそもこの議論というのは、参考資料3の「知的財産計画2007」からの抜粋にもありますように、「補償金制度については廃止や骨組みの見直し、ほかの措置の導入も含めて抜本的な検討」が目的のはずです。入口で終わってどうするとおっしゃいましたけれども、そもそも制度設計に入る前にそのことをお話しするのだと私は思っておりました。先ほど亀井委員がおっしゃったように、この間の議論について何ら、結論が出ていません。また、大変恐れ多くも中山主査が先日の委員会で、一番最後におっしゃったことは、私の言ったことを誤解されているのではないかと気になりましたので、そのことについても、申し上げさせていただきます。
 無許諾でテレビである音楽を流したら、それは結果的にみんながそれを好きになってその音楽が売れるかもしれない。でも、売れるからいいというものではないというふうにおっしゃいました。私が申し上げていたのは、私的録音録画によって音楽の権利者の方たちも自由な録音ができることで、そういう便利で人気のあるものを売るということによって利益があるかもしれませんねということを申し上げていました。それの対象になっているのはあくまでもユーザーの私的録音の範囲でございます。許されている範囲ですることがどれだけ損失につながっているのかを示してほしいと申し上げました。主査のおっしゃった無許諾で著作権法に違反して何か流したものが結果的に音楽の人気につながったということとは全く別のことでございまして、主査がおっしゃったことは、結果として音楽家の利益になったとしても、それが人気が出て売り上げにつながったとしても、そんなことは許されるべきではないと私も思っております。ですから、利益が少しあるのだからいいのではないかと申し上げていたのではなく、どこに損失があるのか、私的録音録画をすることによって総体が増えることによってどのような損失があるのかということを投げかけたのですけれども、そういう根本的なことを投げかけますと、重箱の隅ですとか言葉尻をとらえてと言われまして答えていただけないのですね。それで全くそこの部分は飛ばして、先ほど亀井委員もおっしゃいましたけれども、今日は補償の必要性があるとの前提に立ってという資料が長々と読み上げられたわけでございます。
 椎名委員が再三にわたって情報通信審議会のほうのコピーワンスの論議とつなげていらっしゃいます。コピーワンスの議論が長い間かかって決着のようなものを見たと。私はそのことについて言いたいことは山ほどございますが言いませんけれども、それと並行してそれが偶然かどうかわかりませんけれども、文化審議会のほうで私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しが行われているわけです。そういう検討が行われているにもかかわらず、補償金がないのだったら私的な録画など許さないということをもしも権利者さんが決められるのであったら、このような審議会は必要ないのではないでしょうか。何のためにこのようにみんなで集まって必要性について考える場があるのかというのを大変疑問に思います。
 私はこの間も申し上げましたけれども、撤廃だとかそんなことを申し上げたわけではございません。まず何が損失なのかをはっきり示してくださいと。はっきりが難しいとしても説明してほしいと言うと重箱の隅、言葉尻と言って、まるでお答えいただけないのですね。それで、まあ、何となく損失はあるのだろうというところから前提に立って話が進んでいくというのは全く納得することはできません。すみません、長くなりました。

(中山主査) それでは、河野委員。

(河野委員) 前提条件の整理というところで、今まで話をされてきたことをおまとめいただいたということでしたけれども、私どもJEITAの主張で反映されていないと思われるところがありますので、改めて私どもの主張をここで確認させていただきたいと思います。
 ちなみに、これは突然言い出したことではなくて、3年前でしたでしょうか、法制小委員会で補償金の議論がされていたときにヒヤリングということで多分お呼びいただいて、そのときから終始一貫してずっと同じことを申し上げてきています。情通審の場でも考え方としては同じことをお答えしています。ですから、何かどうなったから突然話が変わったということではない,ということはまず御理解いただければと思います。
 まず(2)の1つ目の丸ですけれども、著作権保護技術と私的録音録画補償金制度は、保護技術の内容によっては併存可能と考えられる、ここまでは賛成です。保護技術の内容ですけれども、これも随分昔に御説明をした記憶がありますが、平文、暗号化されていないものに著作権保護信号がついてきて、それを見て機器が何らかの反応をするといったタイプの保護技術の内容、こういうものについては法律等による強制がない場合は著作物利用のエンフォースをすることが難しいであろうと思われる局面があると思います。ですから、こういう保護技術の内容については補償措置の検討ということが必要であろうというふうに考えます。
 一方、平文に著作権保護信号がついてくるということだけだとエンフォースが難しい、ということでいろいろお話し合いをし、どうしたら秩序ある著作物の利用環境作りに御協力できるのかということで今までやってきた結果、コンテンツをリリースするときに暗号化することで、契約のチェーンで著作物の利用をエンフォースすることにしたらどうだろうかという試みを随分してきたわけです。
 こういう場合は、コンテンツのリリースですとかその著作物が流通していく過程で、契約によって適切な対価の還元ということをしていく仕組みができると思います。現行の契約でそうなっていないことを理由に、全部末端で起こる私的複製のところで処理しようというのはいかがなものかと思います。やはりせっかく技術を使って著作物の利用がコントロールできる仕組みというのを、コンテンツ産業の方とハードメーカーと、それはもちろんユーザーの方々のご理解をいただきながら、一緒に作り上げてきた市場のわけですから、そういうところについては適切な対価の還元というのは契約をベースになされるべきだと思います。
 よって、この前提条件のところで、その保護技術の内容によって補償の要否を検討する必要のあるものとないものがある、という点がまず押さえられるべきではないかと考えます。ありがとうございます。

(中山主査) ありがとうございます。ほかに、どうぞ。

(オブザーバー野方氏) 日本音楽作家団体協議会の顧問をしております野方と申します。よろしくお願いいたします。
 申し上げたいことはたくさんありますが、多分ここは1つ1つ今伺っていた中でも意見のあるところを申し上げるのは、多分次のペーパーのときに譲ったほうがいいのかなと思いますので、本日は配付された資料に基づきまして、こちらで考えておりますことを申し上げたいと思います。
 今、資料1の最初の著作権保護技術と補償の必要性との関係というところで少し議論がありまして、椎名委員のほうからコピーワンスの問題とここは非常に密接につながっているというところに関しましては、著作者団体である私どもも同じ考えを持っております。
 それはそれとして、ここの部分で私どもが非常に心配することは、著作権保護技術というものがいつまでどれだけ有効であり続けてくれるのかということだと思っております。1つの例が、過去に、これは著作者がかけている技術ではないのですけれどもSCMSという技術がございまして、CDはそのSCMSがかけられた状態で世の中に出たわけですけれども、それがオーディオ機器できちんと反応していたのが、パソコンという機械が出てきたときに、その保護技術が機能しない形になってしまったわけですね。このように技術というものがどこでどう無効化されてしまうか、あるいは、今ある技術は例えばパソコンで申し上げればウインドウズのXPですとかマックOSの上で動くのでしょうけれども、そのOSが変わっていったときに、これからCDやLPレコードが使えたぐらいの間永続的に守られ続けるのか、今買った音源というのは20年後でも聞けるのかといったところについて、私ども著作者は不安を感じているというところは申し上げさせていただきたいと思います。
 資料1の中身についてですけれども、これもいろいろ御意見を今伺いましたが、小六委員のほうからも2006年の6月のこちらの小委員会の席で、著作者にとっての新たな補償金制度の確立が必要であるということを申し上げさせていただいておりますし、今まではどちらかというとその補償が必要なのかどうかという議論の流れで私どもがいろいろとお話に答える形であったかと思いますが、このように資料1のような形でやっと私どもが訴えかけていた議論をここでしていただける状態になったかなと考えております。そういう意味で大変資料としては評価しているところでございます。
 資料の中身につきましても、小六委員が出しました資料では、基本的に私的使用の目的として供される複製についてはすべてカバーしていただきたいということを申し上げておりますので、パソコン等の取り扱いについてはまだこれからペーパー等で申し上げたいことはございますけれども、その他2以降でまとめられていることにつきましては諸外国にもいい例がございますので、それらに沿ってこれからも検討を進めていただけたらいい、と考えております。以上でございます。

(中山主査) ありがとうございます。どうぞ、松田委員。

(松田委員) 今日の資料1の資料の中で、補償金の額の決定方法、6ページなのですが、私も今の河野委員が言われたことや今日のオブザーバーの発言などについて一部それぞれ賛成するところがありますが、技術の発展によって30条の本来補償金の、これからどうなるか含めて、対象としていた部分について、どれだけ実質的な被害があるかということは、通信においてはDRM、その他についてもコピープロテクションの技術との関係で、その枠が30条の個人における複製利用、その補償の必要な枠がどれだけ多くなるか少なくなるかってかなり流動的なのだろうと私は思っているのです。特に通信におけるDRMが発展してきたときには、もしかしたら理想的な社会においてはそちらのほうに移行して、その部分は補償金をかけなくてもいいねという社会になるというのは1つの理想だと私は思っているのですね。
 そうすると、その理想的な社会になるまでの間は、この補償金の額の決定の方法については、DRMとコピープロテクションとの関係で、頻度がどうであるかということを定期的に調べて評価機関によってそれを見定めていくと。そういうことによって、各パーセンテージも検討していくということの制度の中に組み入れるというお考えは事務局の中ではございませんか。

(川瀬著作物流通推進室長) 具体的な制度設計の中でどのように取り込んでいくかという問題はあると思いますが、このペーパーでも提案していますように、著作権保護技術が与える影響というのは、当然その補償金額に影響すると思います。そこは考慮する必要があると思います。ざっと言いますと、一切制限がない場合のコピー、それから制限がある場合のコピーによって補償金も一緒でいいのかという議論は当然あると思いますし、諸外国においてもやはりそこの部分を法律上明定するかどうかは別にして、実額に反映していこうという試みが各国ともされているということですから、私は委員がおっしゃるように、そこのところはこの著作権保護技術の時代にあって自然な流れではないかと思います。
 その延長線上に、まさしく委員がおっしゃるように補償金制度が必要でない社会というものがあるわけで、そういう社会になれば補償金制度の存在意義がなくなるわけですから、そのときには廃止をされればいいのではないかなと思っております。

(松田委員) これは事務局にそういう考え方はありませんかというのを振るのではなく、委員が考えることだと思います。私はそういう意見を持っているということではあります。これ、前の委員会からずっと私は同じことを言い続けておりますので、そのデータを見ながら補償金の割合を改訂して、そして理想的社会においては場合によってはゼロになるかもしれない。そういうふうに技術も発展していって法律の枠の中でそれをだんだん進めていくということをしなければいけないのではないかなと考えています。その過渡的な状態においては、どうしてもこの問題はジャスティスに近づきたいけれどもラフである、ということは否定できないと私は思っています。だとしたら、できるだけそれをラフの部分を小さくする制度として運用できるような枠組みを審議会で考えるべきだというのが私の意見です。

(大寺委員) 言いたい点はいろいろあるのですが、1つ技術的保護についてですけれども、絶対的な保護技術というのはあり得ないということで、やはりそれはそのイノベーションの進展に応じてコピーガードとそれを外す、その技術の追いかけっこであろうと思います。したがって、そうしたもののほかにやっぱり補償金制度というのは別途必要であろうというふうに思っています。
 そこで、私どもの立場からちょっと申し上げたいのは、2ページ目のところで、世界で初めて録音源・録画源を対象にするというところで、先ほど第10小委員会のことを出されまして非常に否定的な見解を出されているということでございますが、確かにその制度のよってきたるところ、そういうところからというのもありますし、さらにこれから考えますと、例えばそうしたコンテンツのプロバイダーというのは非常に多様化していると。従来のような放送事業者やそういうほかにも、個人でありますとかNPOだとかいろいろな事業者が多様化してまいりますし、また、そこのルートもいろいろ多様化していくだろうと思っています。それから、そうしたコンテンツを重畳的に使っていくということでの問題もあると思います。そういう意味で現在の制度に比べて制度設計がはるかに単純とおっしゃいますが、私どもがこの録音源・録画源を提供という立場から見ると、非常にいろいろな問題を抱えているだろうと思っています。以上です。

(中山主査) ありがとうございました。どうぞ生野委員。

(生野委員) 今の大寺委員がおっしゃったことに関して、レコード会社の立場で一言、言わせていただきます。9ページ目の「2制度上の課題と対応策」、「ア 考え方」の2つの目の丸のところで、コンテンツ提供者が権利者に対して補償金云々というような書かれ方がされているわけですが、こんなことが実際あり得るのでしょうかというのが私の考えでございます。
 レコード会社は、古くはSP盤からアナログレコード、CDという形でレコードをずっと変わらずに販売しているわけです。それに対して、ハードメーカーの方でビジネス上の観点から、これはビジネスになるなというところでいろいろなコピーマシンを開発されて現在の私的録音録画実態が生じているというところであります。不利益を受けているのは権利者だけではなくて、当然のことながらコンテンツプロバイダー、レコード会社であれ映画会社であれ不利益を受けています。むしろ、レコード会社あるいは映画会社は一番不利益を受けていると言えるかと思います。これに対してレコード会社あるいは映画会社がほかの権利者に対して補償金を云々ということは、こんなことがあり得るのかということが私の意見です。以上でございます。

(中山主査) ほかに。はい、井田委員、どうぞ。

(井田委員) 井田でございます。まず順番に前からいきますと、前提条件の整理ということで書いていただいて、今回大変細部の資料を出していただいていますけれども、今回その制度設計ということで非常に唐突なイメージを抱いています。これから制度設計もやりながら前提条件も検討ということを主査が言っておられましたので理解はしますけれども、その制度設計に入る前の前提条件ということで、1番のところにもう言い切っていられるのですけれども、これまでの小委員会の議論の結果というふうには読めないと思うのですね。これについてはいろいろ議論があって、まだ結論といいますか、議論を深めないままでこれでどうかというふうに書かれていますので、ちょっとそこら辺がどう考えていいのかなというように考えます。
 例えば、ここでは有料放送なども入れるというふうに入っていますけれども、同じような考えで言いますと、レンタルの複製についても当事者の方の意見をお伺いしたいということで呼んでいただきまして、聞かせていただいたのは非常にありがたかったのですが、結局お話を伺っただけで終わっているかなと。それについてここの場ではレンタルというのをどういうふうに扱うかということも議論されてないような気がいたします。いろいろ御主張はあったと思うのですけれども、客観的に見ましたらレンタルからの複製に対処するために貸与権が創設されたというような指摘もあったと思うのですけれども、そうであればどうなのかということを、ここでやはり議論すべきではなかったのかなと。まだできてないのではないかなと考えています。
 それから、前から順番にと思っていましたけれども、皆様方いろいろ中身について言っておられますので。4ページのところで対象媒体についてということでも書いておられますけれども、ここで何を言わんとされているのかというのはよくわかりません。もし汎用媒体も補償金の対象にすべきではないかということを言っておられるとしますと、私的録音録画をしない人からも取る、つまり補償金をかけるということであれば、私的録音録画をしない人からも徴収するということになりますので、それはやはりあり得ないのではないか。特に媒体につきましてはビジネスユースで使われている方もたくさんあるわけでして、その場合もこの汎用機器・媒体を対象にするということは、そのビジネスユースで使っている場合も私的録音録画補償金がかかると、そういう論理はあり得ないのではないかなというのを考えております。以上です。

(中山主査) これは一応たたき台ですから、いろいろな意見が出てきて当然で、どんどん議論をしていだたきたいと思います。どうぞ、津田委員。

(津田委員) 様々な委員の方々の御意見をお伺いしていて、なかなか議論が錯綜というか、どこに出口があるのかなと僕も考えているのですけれども、個人的に今考えているのが、30条もいじらず補償金制度はそのままという現状維持が一番いい結論ではないかなというのが僕は今、正直なところ思っています。やはり整理していただいたこの30条の前提条件のところの30条の範囲の縮小というのが、ちょっと僕、これに関してはこの前の委員会でもちょっと問題もあるのではないかということで協議されているのですが、やはりそれの意見がちょっと反映されてないということもあるので、もし前提条件のところで検討項目として入れられるのであれば、そういった現状維持の今の制度の中で是々非々でやっていくという、そういったものも検討項目として挙げていただけるといいのかなというのが1個あります。
 その30条のところに関して言うと、やはりいろいろな問題はあると思いまして、どうしても海賊版からの私的複製とか違法配信からのダウンロードを規制したとしても、家庭内の複製行為を取り締まることは実質的にはほとんどできないですよね。物事すべてそういった形で法改正の目的として家庭内の違法からのコピーをソースにしたコピーを取り締まろうということ、実際に取り締まれなくても抑止効果があるのであろうということであっても、じゃ実効性としてどれだけ意味があるのかという議論は当然あるでしょうし。僕はそこで大きな問題になるなと思うのは、ユーザーの側で自分が接している著作物というのが、利用許諾のもとに提供されたものなのか判断する手がかりというものがないという。特にインターネットみたいなデータ中心のものであると、これが違法なものなのか、これが合法的なものなのかというのはわからないまま、自動的に機械がコピーしてしまっているというところがあるわけで、そういった違法なものがコピーしているかしていないかということがユーザーにとってわからないという意味では、それが違法なものからコピーすることは違法になってしまうのだよということが前提になってしまうと、常に不安な状態でユーザーはインターネットというのを利用しなければならなくなると、そういった意味の悪影響というのはすごく大きいなと。
 いろいろな議論がある中で、情を知って行なってというところで、そのコピーに関しては違法にするというような規定も、そういった制限規定みたいなのを用意するみたいな議論もあったと思うのですが、これ自身が利用者保護に役に立つかというとまた疑問もあって、結局ユーザーからしてみれば、情を知ろうが知るまいが、結局結果としてできるコピーというものは同じものになりますし、そうなったときにその辺は司法判断でどうにでも認定できてしまうのかなという問題がありますし。いろいろな権利者団体の方というのは大体インターネットの犯罪ですよということはよくキャンペーンも行なっておられますから、そういう意味ではユーザーが情報を知る機会というのは非常に増えているという考え方もありますし。
 あと、もう1つ大きな問題としては、今「知的財産推進計画2007」のほうでもありますけれども、著作権法違反の非親告罪化ということがその検討項目として入っていて、これとセットで組み合わせたときに違法なダウンロードのものが30条の外になってしまうというときに、本当にいろいろなものが著作物に対して論じたり研究したり楽しんだりということが、インターネットを使うこと自体が常に何か犯罪行為に近くなってしまうというような意味でのエンドユーザーに対してインターネットが楽しめなくなってしまうという、そういう意味で悪影響というのはすごく僕は懸念されています。
 話を多分その立法目的のところの話に戻していくと、何でそういった30条の外に置くのかという話の目的としているのはもちろん海賊版対策ということだと思うのですよ。海賊版対策というところで、でも、今の現行法で海賊版対策はできないのかというと、それはそんなことはなくて、当然日本には送信可能化権というのがありますし、海賊版をばらまく行為自体も基本的には禁止されているわけですから、本来海賊版を規制したいのであればその送信可能化権と海賊版頒布のそれを禁止というところで、そこで対処していくというのが本来の筋道ではないのかなと思います。やはり著作物を守るための保護が日本は甘いのではないのかという意見も多分あるかと思うのですけれども、ただ、やはり罰則という意味ではこの前の著作権法改正で5年以下から10年以下になっていますし、非常に罰金というところも上がっていますよね。そういう中で世界的に見ても水準というところでは非常に厳しい著作権保護の水準になっているというふうに僕は考えていて、そういうところでさらにそういった強化を、特にエンドユーザーに対して影響が大きい30条の変更を行って、また強化をするということはやはりその本筋からも外れているし、エンドユーザーに対してのすごく萎縮効果というのが大き過ぎるというところがあるのかと思います。
 僕が最後に思うのは、この議論を持っていてユーザー的に極論的に言うと、今回の文化審議会の議論でこの30条を変えるのか、それとも補償金を残すかというもし二択なのであれば、おそらくエンドユーザーはある程度補償金があることによってユーザーが自由にコピーできるのだったら補償金があったほうがいいだろうと。そうじゃなくて、インターネットとかの自由にコピーができなくなってしまうみたいな、そういう可能性がある、インターネットを使っているだけで犯罪になるかもしれない。しかも、それが非親告罪化されて、いつの間にか自分が犯罪行為にわからないうちになっているかもしれないということ、そういったものの萎縮効果、しかも、それがよくわからないうちに法改正が進んでいるというのは、非常にエンドユーザーに対しては問題が大きいのではないのかと思います。幾つか論点ありましたが以上です。

(中山主査) 犯罪については、これを犯罪とするかどうかはこれからの議論で、犯罪にしないということも大いにあり得ると思いますけれども、室長どうぞ。

(川瀬著作物流通推進室長) 委員、少し誤解をされていると思いますが、私ども前期の小委員会から今期にかけて30条の見直しの議論はいろいろな意見を頂戴しておりますが、その中で現行法は私的目的の複製に関しては、それが30条の範囲かどうかにかかわらず罰則の適用は除外しております。私どもとしてはその流れから言うと罰則の適用はないのではないかという資料は出させていただきました。
 それに対して私どもの理解では、罰則を適用する必要があるという意見は1件もなかったわけですから、その自然の流れから言えば当然今回違法サイトからの複製について30条の適用範囲を外すとしても、特に罰則の適用が必要だということであればまた別ですけれども、今の審議の流れから言えば同じように罰則の適用がないということになると思います。ということですから、まだこの委員会の結論は出ていませんから、今の時点で言明するわけにいきませんけれども、今までの委員会の審議の流れからいえば罰則の適用は排除するという流れになると思います。

(中山主査) 罰則の適用はそれでよろしいですか。

(津田委員) まさに本当に、それはインターネットというメディアの特性というのがおそらく今までの著作権ビジネスと相いれない部分というのは多々あるというか、インターネットというのはやはりネットというのがコピーを前提にした新しいメディアであるから、ゆえに従来の著作権法と齟齬が出てきているというのが、今こういった問題のおそらく根本的なところにあると思うのですけれども、仮にその罰則がないままいって、でも違法状態というのばかりが増えていくといったときに、それはユーザーにとってどうなのか、それが本当に正しい状態なのか。であれば、もともとそういった法改正をして、罰則がなくても違法状態ばかりが増えるという法改正をすることにどれだけ実効性があるのかという意味で、そのところの根本的な議論というのはする必要があるのではないかなと僕は思います。

(川瀬著作物流通推進室長) 委員がおっしゃるとおり、まさしく私はそうだと思います。それで今回の30条の見直し、特に違法サイト・違法複製物の点については権利者側からの強い要望がありまして議論をしていただいているところでございます。したがって、法律の建前を変えればいいということではございませんので、これは当然その変えることによってどういうことが起きるのかということも見た上で変えるということです。したがって、私どもの理解では、その法律を変えることによって、より一層違法サイトの撲滅に効果があると聞いておりますので、当然権利者側は法律改正によって違法サイトまたは違法海賊版の縮小に努力をされるということだと思います。
 また、委員がおっしゃるように、違法サイトの見分けをどうつけるのかというような問題点もございますが、これは私どもも以前言いましたように、今レコード会社、映画会社の方にそこの識別する、その法律の問題ではないですけれども、どういうふうな運用をするのかということは検討をお願いをしておりまして、実は、ほぼ大体検討結果がまとまっておりますので、次回のこの小委員会でその方法について御説明をいただこうと思っていたわけです。委員がおっしゃるように法律を変えただけではだめだ、これはわかります。法律を作るときにも単に法律を変えるだけですということでは通らないわけで、それに対して権利者側がどのように取り組むのか、どういう秩序を実現をしたいのか、そのためにどんな努力をするのかというのがセットの話ですので、もし仮にこの審議の場で30条の範囲の改正をお認めいただければ、それに対して権利者側は重い責任を負うということです。多分、今日お出になっている権利者側委員の方は、その覚悟があって私どもにその法律改正の提案をされていると私どもは認識をしております。

(生野委員) 津田委員とは海賊行為及びそれに伴う流通をどう考えるかというところの基本的な姿勢といいますか、考え方のところで異なっているのかなと思います。特に違法サイトからのダウンロードについては、国際条約上の「通常の利用を妨げず」に抵触している。当然のことながらアップロードに関してのエンフォースメントもやっていますし、それは今後も引き続きやらなければいけない。このコインの裏表であるダウンロードの規制、この両者が伴って初めて海賊行為に対する対策が可能だということ。音楽の場合は比較的わかりやすいのかもしれないのですが、ファイル交換においてはレコード会社は音源を提供しておりません。基本的に今は全部違法なものです。
 最近では携帯向けの違法サイトが非常に急増しているわけですが、PC向け、携帯向け、両方合わせてコンテンツプロバイダー、配信事業者と連携をして、適法な流通のものはこれですというような形での識別マークの検討をレコード協会のほうで行っておりまして、先ほど川瀬室長のほうから説明がありましたとおり、次回この場でその検討状況、中間報告的なことになりますが、それはさせていただきたいと思っております。
 ちょっと長くなりましたが、30条の範囲の縮小に関しましては、違法複製物・違法サイトからの私的録音録画に関しては、当然のことながら除外していただきたいということ、それ以外についてもこの場でいろいろ意見は表明させていただいたとおりでございます。まだ、これから先に議論があるということなのですが、仮に30条の範囲がこういう形、こういう内容で定められるといたしましても、今後その30条の適用範囲において、3ステップテストとどう適合しているのかしていないのか、そこら辺について今後のDRM技術の普及動向ですとか、さらなる私的録音録画実態の変化を見据えて検証は不断にやっていかなければいけないことだと考えております。以上でございます。

(中山主査) ありがとうございます。では、華頂委員どうぞ。

(華頂委員) 津田委員が何が違法で何が適法だかユーザーにはよくわからない、グレーであるというふうに言われましたけれども、生野委員もおっしゃいましたが、国内では商業映画の適法配信の配信業者、これが30から40ぐらいです。そこで適法に配信を行っているのですけれども、音楽と同じようにウイニーとかシェア、要するにファイル交換ソフトですね、ここで流通しているものはすべて違法です。だから、違法サイトからのダウンロードもここに書いてありますように範囲の外に出していただいて文字通り違法にしていただければ、ファイル交換ソフトでダウンロードしたものはすべて違法だというキャンペーンもすることができますね。

(津田委員) わかりやすい例で言うとYou Tubeという海外の動画配信サイトがあると思うのですが、あそこは当然最初は著作権侵害されたものばかりが映像が上がっているというところで始まったそういうサイトで、実際も当初は9割とか99パーセントぐらいが違法な著作物の複製から成り立っていたというサイトであることは事実だと思うのですが、その後、やはりトラフィック側ってこれはメディアとして有効ではないのかなということを、特にアメリカの権利者の人は今判断して、例えば音楽であればいろいろなインディーズとかメジャーもYou Tube側と契約をしてオフィシャルにPVという形で配信して、それはユーザーは見ることができるようになってきています。当然テレビ局も今You Tubeに対して配信しているということもあって。
 でも、ユーザーから見たときに適法なのか違法なのか。そういったオフィシャルに権利者から提供される合法的なコンテンツがある一方で、You Tubeにはユーザーが勝手に許諾を得ないでアップロードしたコンテンツというのもありますが、でも、それというのは見え方としては一応マークとかはついているけれども、ほとんど違いがわからないようになっているというときに、別にファイル交換ソフトだけではなくて、そういったシームレスにそれが果たしてオフィシャルとして、オフィシャルなコンテンツなのかそうでないのかなという状況はかなり続いていくと思うのですね。また新しいサービスも登場してくるでしょうし。そういう意味では、僕はやはりアップロードしたその送信可能化権で海賊版というのは対処するべき問題であって、ユーザーの行為にまで立ち入るべきではないのかなという気が僕はしております。

(華頂委員) 海賊版を駆逐する一番の王道というのは、同じようなルートで正規品をきちっとした形で流すことが一番海賊版の対策では王道なのですね。でも、ネットでの違法配信についてはその王道が通用しないのですね。非常に闇の部分が多いというか、これを本当に根絶するためにはものすごい費用もかかりますし、そんなことできないわけですよ。だから、とにかくそういう違法なものは違法であるんだということを明確にしなければいけないのではないかなと思うのですけれどもね。

(松田委員)  You TubeないしはYou Tubeに近いサービスは、日本でも雨後の筍のように今、大企業も含めてそれをやろうなどということを考えているところもあるのですね。そこではやはり適法なものとそうでないものがわかりやすくしてもらいたいという権利者がちゃんど契約したところはマークをつけてもらうと、これはぜひやってもらいたいと思います。
 それから、今の世の中、これから先の世の中が、利用する側がおれは利用者なんだから、私は利用者なんだから、何も注意を払わないで利用していいのか、そういう社会でいいのかということは、実はこの30条がその接点に私はなっているのだろうと思います。ある程度明確に違法なことがわかっていたら、それに接近しないように法律制度を作っていくということのも重要なことではないかなと思っています。

(中山主査) ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ、森田委員。

(森田委員) 論点が錯綜していますのでちょっと戻りますけれども、最初のころに河村委員がおっしゃった前回の中山主査のまとめについでですが、私も前回そのように申し上げようと思っていたところでありまして、適切なまとめをしていただいたと思っております。
 前回河村委員の御発言をお伺いしておりまして、いわゆる情報財における損害概念というのをどう考えるかというそもそもの問題について、法律家が共有しているある前提があると思うのですが、それとは違う前提に立って発言をされているというふうに聞こえるところがあり、その点を主査は指摘されたと思いますので、私は適切なまとめだったというふうに思っております。
 それから、補償の必要性に関して、最初のころに亀井委員と河野委員からそれぞれ御発言がありましたけれども、それぞれの関係については必ずしも十分に理解できていないところがありますので、その点についてさらに御質問させていただきたいと思います。現在ここで検討している問題というのは、録音について言えば、CDというコントロールがかかってない媒体が残っていることが問題の根源にあるといえます。仮にこれがなくなってしまって、すべてコントロールかかることになれば補償金制度はいらなくなるということでは多分大方の意見の一致はあって、それまでの過渡期の状態においてどういう補償金制度で組んでいくべきなのかというのが現在の問題だと思います。
 このような過渡期の状態に対する評価ですが、先ほどの河野委員の御発言というのは、技術的にはコントロールできる仕組みがあるけれどもそれが普及してないというのをどうとらえるかということについての発言だったように思うのですが、その普及していないというのをどういうふうにとらえるか。例えば、今日示された二番目の選択肢で、音源提供者が補償金の支払義務を負うべきだというのは、音源提供者がある程度コントロールできる仕組みなどを備えて提供すれば補償金はいらなくなるのだけれども、それを備えないまま音源を提供した場合には一定の責任を負ってしかるべきだという考え方として理解することもできるように思いますが、先ほどの河野委員の御発言にもコントロールができてない状況に対するある程度否定的な評価が前提としてあるように感じられました。他方で、亀井委員が前回提出された資料では、リリース後のコンテンツ利用のコントロールができないものとしてCDが挙がっておりまして、コントロールできないということは事実としてできないというものとして客観的・中立的に受け止めた上で、それが補償の必要があるかないか、すなわちコピーに伴う重大な経済的損失があるかないかというところのラインでどう評価するかというところを議論されているように思いました。事実としてコントロールできてないこと自体は別に音源提供者の責任でもないし、これはいろいろな要素が絡み合ってそうなっていることですからだれの責任であるということはできないので、それは関係者が今後は協力してそちらのほうに向かっていくのが望ましいと考えるのであれば協力していくことは適切だと思いますが、現状の評価としてはそこではニュートラルに評価されているように思います。そうしますと、河野委員と亀井委員の御発言のスタンスには前提に違いがあるように感じたのですが、私のような理解でよいのかというのが一番目の質問であります。
 それから、先ほど亀井委員の御発言の中で、今日の資料について1ページの(2)のアの「私的録音録画の総体が減少し一定の水準を下回ったとき」には不要となるという基準が挙げられていることに言及されましたが、前回提出された資料とあわせて考えますと、CD音源というのが残っていて、それにコントロールできない状態が残っているという現状認識からは補償金はなお必要であるということになるように思われますが、しかし、先ほどJEITAとしては現時点においてもう既にこの水準を下回ったというふうに考えているという御発言がありましたので、そうしますとここで言う「一定の水準」というのはどういうものを考えておられるのかという点について、もう少し説明をしていただければさらに御発言内容がよく理解できるようになると思いましたので、この点について質問させていただきたいと思います。

(中山主査) どうも私の発言が物議をかもしてしまい申しわけないです。私が言いたかったのは、損害があるとかないとかいう議論を盛んにされていますので、著作物という情報における損害とは一体どういうものですかということを考えてもらいたいということを言っただけで、だからああせいこうせいということは一切述べておりません。損害概念そのものについてちょっと考えてほしいということを言っただけなんです。ですから、その結果がどうこうということは言ってないので、まさに森田委員のようなつもりで発言したのですけれども、その点はこの際あまり議論しても特に実益があると思いませんので、今の森田委員の発言につきまして、何か亀井委員あるいは河野委員ございましたら。

(河野委員) 最初のほうの御質問についてお答えしたいと思います。私の多分申し上げ方がわかりにくかったのだと思います。前回のJEITAから出させていただいた資料の理解と主張は、亀井委員も私も同じJEITAの主張として変わるところはありません。先ほど申し上げた中の平文たす著作権保護信号がついていてというところなのですが、そこは先ほど野方さんもおっしゃっていましたけれども、今や音楽CDは著作権保護技術がないほうにカテゴリーせざるを得ない状況に残念ながらなってしまっているのかもしれません。なので、リリース後コンテンツがどのように利用されるか想定できている、というふうに音楽CDについて申し上げることは、私は個人的には非常に抵抗があります。
 このような状況になってしまうのは、平文たす著作権保護信号というタイプの保護技術が市場で機能するためには、法律等による何らかの強制力が必要となるからだと思います。強制力のない世界では、当初想定していない利用が出てきてそれが広がっていくことを著作権者側は止めるすべがない。暗号化してコンテンツをリリースすればその後の利用についてはある程度コンテンツホルダーの意思が働きますが、そうでない世界についてはそれは難しいのではないか、との認識です。それがイコール、前回出させていただいた資料で言うと、リリース後どのようにコンテンツが利用されるか想定ができないということです。こういう場合については、補償の要否を検討する必要があるのではないかという趣旨で申し上げました。お答えになっていますでしょうか。

(中山主査) では、亀井委員お願いします。

(亀井委員) 森田委員からの御質問で、先ほどの前提条件(2)のアが私どもとしては条件が成就していると申し上げたことだと思いますが、前回御説明をいたしました資料では、全体がコピーし得る環境としてとらえたときに、平成4年の現行法の施行以来状況が変わってきていて、そもそも総体とは何ぞやというのがもともとあったわけですけれども、図でいいますと右側の部分が増えてきているということがありますので、左に残った音楽CDをベースとする補償の必要性がありやなしやという議論の果てに、制度維持コストとの兼ね合いで維持する必要があるのであれば維持、というふうな方向へ議論が進んでいくと、そういうプロセスで申し上げています。
 JEITAとしましては、その左側の部分というのが制度維持を果たしてするだけの、今議論されますと制度施行されるのは2年後あるいは3年後だということと理解しておりますので、2010年、11年の声を聞くころに果たして残す必要性があるのかということを前々から申し上げていて、それはもう一定の水準、ここで言う一定の水準というのがもともどどの程度かということがありますが、制度を維持するだけの意味がなくなるのではないかと申し上げているということでございます。具体的にどこに一定が引かれるかということについては、具体的な何かがあるわけではございません。総体という言葉を借りれば減っていることには違いないと考えております。

(椎名委員) ちょっと繰り返しになりますが、JEITAさんの資料で言うところの右側の、「利用が想定できる」というところで地上デジタル放送を入れておられたのですが、それは事実と違うと思いますし、そういうことを含めてその総体が減少しているとも思いません。
 また河村委員などが前回の議論が尽くされてないというふうにおっしゃったのですが、権利者不利益論、不利益の立証みたいなところに終始して、結局は数値化できないのではないかみたいなところにたどり着いたと思います。そして、その表裏にあるのは、私的録音からだれが利益を得ているのかということ、そのことの検証をしなければいけないのではないかということを申し上げました。
 そういう意味で、消費者が得ている利益、メーカー等の利益ということを再三申し上げてきたわけですが、とりあえずこの何年かの私的録音録画補償金制度の議論の中でも、メーカーの利益というところに関しては何ら資料は出てこなかったと思うので、今日私のほうからこれを提出させていただきましたので、簡単に御説明したいと思います。
 私的複製が自由であることから生じるメーカー等の利益についてということで、内容としては1ページ目のまずデジタルコンテンツ関連プロダクツ市場規模専用機器関連ということで、いわゆるAV機器として定義されるもののうち、デジタルコンテンツに関連する機器等の市場規模について2001年から2006年までの推移をまとめたものです。この数字は第3回の小委員会にも出ましたオーディオレコードの売り上げ推移のグラフと同様に、あくまでも売り上げ全体市場規模ということですので、これ自体が利益をあらわすものではないですが、それを含む市場規模というふうに御理解いただければいいと思います。御覧になってわかると思いますが、オーディオレコードの売り上げ推移とは見事に反比例して推移している様が見て取れると思います。
 海外の市場において我が国のメーカーがどのような位置を占めているかについては、これは別な資料を検討しなければならないと思うのですが、世界でも有数なプレイヤーである日本のメーカーが、前回海外との比較でお示ししたフランスやドイツなどの権利者や消費者のためには補償金を負担しても、日本の権利者や消費者のためには負担しないということの理由がわかりません。
 これらの内訳としましては、大きく映像系、音楽系、図書・画像・テキスト系、家庭用ゲーム機という4主類に分けて色分けしてあるのですが、その構成するプロダクツの内訳としては次のページにまとめてあります。まず映像系につきましてはデジタルビデオレコーダー、ハードディスクレコーダー、DVDレコーダーとプレイヤー、デジタルレコーダーを含むデジタル放送受信端末というふうになっておりまして、もちろんこの中には私的複製とは関係ないプレイヤーや単機能なテレビ受像機の部分も含んでおります。次に音楽系につきましては、CD・MDプレイヤー、レコーダーに始まりまして、ラジカセ、ステレオセット、これはいわゆるミニコンポだと思いますが、その他ヘッドホンステレオ、テープレコーダー、モバイルオーディオというふうになっております。それから、図書・画像・テキスト系ということで、その大半を占めるのがカーナビでございます。あとわずかに電子辞書端末等ということになってございます。最後に家庭用ゲーム機として据置型、携帯型、その他というふうになっています。
 その次のページなのですが、現在私的複製のための重要なツールの立場を占めるに至った汎用機器関連の市場規模ということで、まずはハードウエア関連、つまりパソコンということになりますが、これについてサーバーディスクトップ型とノート型に分けて表示してあります。またそれに関連するソフトウエアということで、新品のパソコンにバンドルされている以外の、単体で販売されたクライアントOSと、音楽映像系ソフトウエアの市場規模のふたつについてまとめてあります。今回奇しくも事務局のほうでメーカー負担の可能性という点についてにも言及されたところではあるのですが、ぜひこういった私的複製から得られる利益の部分ということについても、観点としては配慮をする必要があるのではないかということで資料として提出させていただきました。データの出典等につきましてはそれぞれ御参照ください。

(中山主査) それでは、生野委員どうぞ。

(生野委員) 違法サイトからのダウンロードの件に関してこだわるのですが、先月、この委員会でもネット上の侵害実態に関して報告させていただきました。適法に販売している数量と同等あるいはそれ以上の数量の違法サイトからのダウンロードが行われているという。このままだとはっきり言ってレコード産業は、音楽配信で立ち行かない。先ほど津田委員のほうから違法サイトからのダウンロードを規制することに関して反対の意見が出されたわけでございますが、津田委員としては、そもそもこういった利用形態が権利者の通常の利用を妨げたとしても許容されると考えているのか、それとも本来ないほうがいいのだけれども、なかなか見極めは難しいというところで反対されているのか、どちらかお聞かせ願いたいのですが。

(津田委員) もちろん実態として例えば今「着うたフル」というものが日本のレコード会社にとって大きなビジネスになっていることはわかっておりますし、それを妨げるもとして「違法着うたサイト」というものが登場していて、そこでユーザーがビデオにダウンロードしていて、その分、本来着うたを買っていた層が買わなくなっているということは実態としては僕も把握はしていますし、それが別に全部肯定するなどということはありません。当然、だからそういった違法着うたサイトに関しては送信可能化権の範囲でどんどん摘発するなり警告してつぶしていけばいいことであって、それをよくわからないでダウンロードしているユーザーにまで萎縮効果みたいなものをやる必要がどこまであるのかなというところに僕は疑問を持っているという点があります。
 あともう一つ、これは何度も言っていますけれども、実際に中学生とかが違法着うたサイトにアクセスして、それをSDカードにコピーして中学生とかでこの音楽を回しっこしているという実態は僕も女子中学生とかいろいろのところにユーザー調査をしたときにそういう実態があるということも聞きました。ただし、その彼らが限られたお小遣いの中でどれだけ違法着うたサイトがなければ買っていたかというと、僕はやはりそれは単純にただだから買っている、それが違法な着うたに対しての売り上げを伸ばすのかというと、そこに対してのやはりまだ疑問というのもあるので、ただだから買うという人と、ただだからダウンロードするという人というのを禁止すれば単に売り上げが伸びるのかというと、また別の議論になると思いますし、僕はやっぱりちょっといろいろずれましたけれども、何が言いたいのかというと、違法着うたサイトを問題視するのであれば、通常の法律の範囲でやっていけば全く問題ないのではないのかなということです。当然違法な行為自体を肯定するということではありません。

(石井委員) 議論の中でDRMあるいはコピーコントロールが進んできたら私的複製という世界はなくなるのではないかというような意見もありましたけれども、私はやっぱりこの私的録音録画というものはきちんと守っていくべきである、。これは文化的な面もそうだろうし、例えば契約でだれかにコントロールされるとかそういうことがなくて自由に放送番組などが録音録画できるというのが、これは精神的にも大事なことではないかなと考えております。
 ただ、その場合にそう言ったからといって、権利者を完全にそこから阻害してしまっていいのかというと、やっぱりそれはコンテンツなりクリエーターというものがあるから、それは何らかのかかわり合いというものを持っておく必要もあるのではないかなと思います。そこで私的録音録画補償金というのは一定の私は価値を持っているのではないかというふうに思います。ですから、JEITAさんからありましたように、スクランブルをかけた上でコピーコントロールやっているから補償金の必要はないのだとか、そういうことには直接つながらないのだと思います。
 あるいは、もしそうであるならば、最初に出演者なりそういう人との契約でそこを処理してくださいということがあるかもしれません。これはおそらく例えば今まで出演料1万円払ったところ、その分上乗せして1万100円とか、そういうふうなところになってくるのかとも思うのですけれども、そうなりますと今度は逆に文化庁さんのペーパーでいきますと録音源・録画源の提供者が補償金を払うんだというところに一種近づいてくる。したがって、その最大の問題点としては、実際に録画機器を持っていらっしゃる方、持っていらっしゃらない方にも等しくそれらの負担をお願いするというようなところにも結びついてきて、ちょっと問題が含まれているのではないかなというふうに考えております。そういう点で、この私的録音録画補償金制度というのは一種こういう1つの文化を形成する上でも有効な役割を持っているのではないかと思います。

(中山主査) この議論は当然次回もするわけで、今日はもう時間がまいりましたけれども、一応議論の流れがありますので、手を挙げていただいた方の御意見だけは伺いたいと思います。まず河村委員、簡略にお願いいたします。

(河村委員) 申しわけありません。森田先生、中山先生という先生に対して申し上げて大変恐縮ですけれども、私が伺いたかったのはまさにそういうことなのです。損害概念とおっしゃいましたけれども、消費者は何に対して薄く広く補償金を取られているのか、何のために払っているのかを聞きたかったわけですね。そうすると椎名さんなどの言い方をすると、友達に複製をあげたときにマイナス1枚とか、恋人だったらだめで奥さんだったらいいのかとか、そういう議論があったという話も聞きました。そういうことをおっしゃるから、全体として全く私的録音録画ができなかったときに売り上げは上がるのかということを申し上げました。
 ですから、中山先生や森田先生がおっしゃったことは、私の解釈ですけれども、逆を返すと実害がなかったとしても、ということをおっしゃったのだと思います。権利者さんがこういう場合は1枚の損失、2枚の損失、とおっしゃっていたときは、何もそういうことに対して皆さん反論というか疑問を呈さないで、もしかしたら実害はないかもしれないけれども補償金は損害概念に対して払っているのかもしれないならそう説明していただきたいです。どう説明しようがというよりも、どんな理由でも補償金制度がありさえすればいいんだというふうにしか聞こえないので、私は何に対して補償金を払っているのかと言い続けているわけです。ですから、実害があるのかないのか、損害概念だとおっしゃるならそのことを説明していただきたいです。

(中山主査) では、亀井委員どうぞ。

(亀井委員) あまり本質的なところではないのですが、椎名委員の出されたこの資料でおっしゃっている私的複製とメーカーの利益ということの因果関係の御説明がありませんし、この市場規模と皆さん御承知のように売り上げ、あるいは利益というものは全く会計上扱いの違うものでございますし、そもそもこれはどういう意味で出されたかということがよく理解ができません。
 それから、利益を上げたらそれは補償金の原資であるというお考えのようですが、そういう発想をしている国があるのかないのか。私はないのではないかと思いますので、これがどういう意味があるのか、メーカーはどういうことを考えているのかとおっしゃいましたので、正直わからないと申し上げたいと思います。

(中山主査) では、簡略にお願いいたします。

(椎名委員) 法制度上どこの国が考えているとか言ったつもりはなくて、ただ、私的複製に関する補償金制度というインフラがあって、ユーザーもよい、権利者も満たされるということを考えたときに、当然ながらその私的複製から起こる不利益・利益ということを検討しなければいけないだろう。そういう意味で不利益ばかりに話がシフトしていたところでありますので、そこから得られる利益はどのぐらいだろう。メーカーは私的複製に関連する機器をえらい勢いで売っていて、一体どのぐらいの売り上げを上げているのかということを検証する必要があったということで、これがそのまま利益だとも何とも言っておりません。ただ、そういった全体での利益・不利益を調整するために補償金制度があることは現実ですよね。だから、そういう意味で提出させていただいたということです。これをどう判断いただくかは各委員にお任せしたいと思います。

(中山主査) すみません、ごく簡略にお願いいたします。

(井田委員) 今の御説明に対する反論ではなくて、判断してくださいということですので前提としてちょっと御質問なのですが、この構成するプロダクツという中にあるデジタル放送受信端末というのは、これは例えばテレビ等も含めてのことですよね。ですから、非常にこのグラフはパッと見たらものすごく伸びていると。1つはさっき亀井委員が言われましたように売り上げと利益は全く違うものですからまずそこで違うのですけれども、仮に販売としましても、今は大変大きな勢いでハイビジョン受信機等が伸びていまして、当然プレイヤー、これは権利者の方が作られたコンテンツを見ていただくというもので、これらは全くこの私的複製とは関係ない話です。それらを全部混ぜてここに数字を出しておられるということだけ御指摘させていただきます。

(中山主査) 議論の佳境でストップをかけるのは私としても心苦しいのですけれども、時間でございますので、この続きは確か27日だったと思いますけれども、ぜひまた次回も活発な御議論をお願いしたいと思います。
 それでは、本日の討議はこのくらいにしたいと思います。最後に小委員会の内容も含めまして事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) 本日は長時間ありがとうございました。次回は主査から今御発言がありましたように、もう一度この資料1をもとにしまして改めて議論したいと思います。なお、先ほど申しましたように、意見書という形で提出していただいたほうが議論の促進になると思いますので、もちろん可能であればということでございますが、事前に意見、補償の必要性の意見でも結構ですし、できれば検討項目に沿って考え方を書いていただければありがたいですが、それはお任せをしますが、できれば出していただければというように思います。
 それから、次回は今日御発言があった内容については私どもでまとめさせていただきまして委員の意見ということで類型化して資料を提出したいと。そういうことで改めて再度最初から議論をしていただければと思います。
 次回は6月27日の水曜日でございますけれども、10時から12時、またすみません場所が変わりますが、フロラシオン青山での開催を予定をしております。
 なお、おわびでございますけれども、資料2の6ページの表がございますが、この下の点線の表が、これは実は1年ずれておりまして、平成11年からこの表ということになっております。それで委員の方々にはこの訂正した資料を再度送らせていただきますので、差し替えていただければと。傍聴者の方にはその資料をアップロードする際に訂正したものをアップロードしますので、それを御参照いただければと思います。申しわけございませんでした。以上でございます。

(中山主査) それでは、必要がございましたらぜひ意見を文書にしてお願いいたします。内容の正確性を期すという意味と、あと議論の時間も節約できると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第5回私的録音録画小委員会を終わりといたします。本日は活発な御議論ありがとうございました。

〔了〕

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ