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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第8回)議事録

1. 日時
  平成18年12月20日(水曜日)10時〜12時

2. 場所
  三田共用会議所 大会議室

3. 出席者
 
(委員) 石井、井田、大渕、華頂、亀井、小泉、河野、小六、椎名、津田、土肥、苗村、中山、生野、松田、森、森田

(文化庁) 吉田文化庁長官官房審議官、甲野著作権課長、川瀬著作物流通推進室長ほか関係者

4. 議事次第
 
(1) 開会
(2) 議事
 
1 法制問題小委員会の審議状況の報告
2 海外調査報告
3 課題に関する検討
(3) 閉会

5. 資料
 
資料1   海外調査報告概要
資料2 著作権法第30条について(私的録音録画関係)
資料3 著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態等について(案)
(前回資料1の改訂版)
資料4 私的録音録画に関する補償措置の必要性について(案)
(前回資料2の改訂版)
参考資料1 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」に対する意見募集の結果概要(抜粋)
参考資料2 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」に対する意見募集の結果(抜粋)
参考資料3 第7回意見概要

6. 議事内容
 

【中山主査】 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第8回を開催いたします。御多忙中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開について決定をしたいと思います。予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われます。既に傍聴者の方々には御入場していただいておりますけれども、こういう処置で御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 ありがとうございます。それでは、傍聴者の方々はそのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 では、議事に入ります。最初に事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【木村課長補佐】 恐れ入りますが資料の確認をお願いいたします。本日の議事次第の中ほどから本日の配付資料一覧を示させてもらっております。
 まず資料の1ですが、本年の10月に私的録音補償金管理協会及び私的録画補償金管理協会様が実施されました海外調査の報告の概要でございます。
 そして、資料の2でございます。著作権法第30条について(私的録音録画関係)の資料です。
 資料の3、著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態等についての(案)改訂版の資料でございます。
 資料の4、私的録音録画に関する補償措置の必要性について(案)改訂版でございます。
 そして、参考資料でございますが、参考資料1といたしまして、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」に対する意見募集の結果概要でございます。法制問題小委員会資料より抜粋しております。
 続いて参考資料2ですが、同報告書に対する意見募集の結果(抜粋)でございます。
 最後に参考資料3でございますが、私的録音録画小委員会第7回の意見概要でございます。
 資料の配付漏れ等ございませんでしょうか。ありがとうございます。

【中山主査】 ありがとうございました。それでは、いつものとおり初めに本日の議題の段取りについて確認をいたします。今回は3つの議題がございます。
 まず初めに、去る12月11日、月曜日に開催されました法制問題小委員会におきまして私的複製関係の課題について、同小委員会としての報告書が最終的にまとめられましたので、審議状況について御報告をいただきます。次いで私的録音補償金管理協会と私的録画補償金管理協会が10月に実施した、2回目の海外調査の結果につきまして事務局より御報告をいただきます。最後に、前回に引き続きまして課題に関する検討をしていただくという、こういう予定になっております。
 それでは、まず最初に法制問題小委員会の審議状況につきまして事務局から説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 法制問題小委員会におきましては、本年の前半にIPマルチキャスト放送、それから罰則取り締まり関係ということで検討を行いまして報告書を取りまとめました後、私的複製、共有関係、また各ワーキングチームにおきます検討結果に関して検討が行われました。その検討の状況につきましては、第5回の私的録音録画小委員会におきまして、事務局より御報告をさせていただいたところでございますが、法制問題小委員会におきましては、これらの課題についての報告書案に関して、今年の8月末から意見募集を行いました。意見募集におきまして、当小委員会の検討課題にかかわる御意見をいただきましたので、本日はその概略を御紹介いたします。
 参考資料の1を御覧ください。参考資料1は意見募集の結果の概要でございまして、意見募集の結果の概要として法制問題小委員会において配付された資料のうち、私的使用目的の複製の見直しにかかわる部分を抜粋したものでございます。なお、意見の本体につきましては参考資料の2にございますので、必要に応じてあわせてごらんいただければと思います。参考資料の1におきましては、意見募集の結果の概要ということで、法制問題小委員会で行われました検討の項目ごとにまとめさせていただいております。
 この私的使用目的の複製の見直しに関する論点としましては、私的複製と契約との関係について、いわゆるオーバーライドに関する議論がございましたけれども、これについては私的複製と契約の関係を検討するにあたっては、著作権者等が契約の当事者となっている契約類型とそれ以外の類型とを分け、私的複製のあり方の基本的な考え方を踏まえた議論を行うべきであるとか、第30条をオーバーライドする契約条項の有効性はDRMの種類や、私的複製の回数や、複製先の媒体、利用者が一方的に不利益を被るおそれのある契約状況は含まれていないかを個別に判断すべき、といった御意見をいただきました。また、30条の趣旨・目的に照らせば、基本的にはオーバーライドに関しての契約については無効とすべき理由はないといった御意見もいただいているところでございます。
 続きまして、私的複製と著作権保護技術との関係についてですが、これについてはDRMの条件によっては正当な経済活動や学術研究、新たな創作の遂行を妨げるおそれがあるのではないか、DRMの採用に関しては、そのようなおそれに対応する最大限の配慮を必要とすべきではないかとか、あるいは著作権法技術というのはまだそれほど普及しているものではないので、またその私的複製全体をカバーし得ないということで将来図も全く見えない状況であるといった御意見、それから、そもそも著作権法技術との関係において複製可能な範囲内の複製についても、それがそもそも私的複製に該当するか否かは、なお個別に判断されるべきであるといった御意見を頂戴いたしました。
 続きまして2ページ目ですが、私的録音録画補償金制度ということについて、まさにその立法上の検討課題としまして検討課題に載っておりましたけれども、御意見の内容としましては幅広くさまざまな論点が含まれておりまして、昨年の法制問題小委員会及び本年の当小委員会におきます議論において、総じてこれまでも検討課題とされてきた論点ではございますけれども、このハードディスク内蔵型録音機器等の指定の可否に始まりまして、二重徴収の課題であるとか、あるいは著作権法技術等との関係、それから支払義務者や共通目的事業、分配の透明性などさまざまな論点について御意見を頂戴いたしました。内容については、詳しくは参考資料の2をまた御覧いただければと存じます。
 最後に違法複製物等の取り扱いについて、大きく賛成か反対かといった観点で御意見をいただいたところですが、これについて反対のお立場は、例えば一番上の御意見ですが、そもそも合法・違法の判断がつかないものや、あるいはファイル名と内容が結びつかないものが違法複製物であったといったように意図せずに違法行為を犯してしまうリスクを抱えることになってしまうので、仮に違法ということで30条から除外するとインターネットの利用自体を萎縮させることにならないかといった御意見、また、プライバシーに抵触する蓋然性が高いとか、そもそも家庭内の行為について規制することは困難であるといった、30条の立法趣旨を前提に議論を進めるべきであるといった御意見をいただいたところです。
 一方で、違法複製物に関しては、30条の適用除外にするべきという御意見もございまして、それは上から2つ目や3つ目の御意見でございます。あとは、そもそもこうした違法複製物等を私的複製としてダウンロードすることを違法として規制しないならば、違法な複製行為を助長し著作権者の利益を害するおそれがあるといった御意見もいただいているところでございます。
 なお、その他の御意見としまして、必ずしも私的複製というところにとどまらない御意見も幾つかいただきました。また、全体としましては、例えば3ページ目ですけれども、まず議論の方針としまして、私的録音録画小委員会で、私的録音録画についてまず検討して、その検討結果を踏まえて法制問題小委員会で全体のあり方について検討を行うという進め方に賛成であるといった御意見や、私的複製の範囲については個別の事案ごとに権利者の利益を不当に害するものではないかを慎重に議論し検討されるべきである、といった御意見などがございました。私的録音録画の範囲につきましては、当小委員会において御検討いただいているところでございます。
 法制問題小委員会では、この意見募集の内容も踏まえまして、本件については第5回の当小委員会において御報告させていただきました内容で、12月11日に法制問題小委員会としての報告書を取りまとめたところでございます。法制問題小委員会としては、本件につきましては、この私的録音録画に関する当小委員会におきます検討の状況を見守り、その結論を踏まえ必要に応じて私的複製のあり方全般について検討を行うこととしております。
 以上、法制問題小委員会の審議の状況につきまして、事務局より御報告をさせていただきました。

【中山主査】 ありがとうございました。引き続きまして海外調査の結果について事務局から説明をお願いいたします。

【森下管理係長】 著作権課の森下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本年の10月中旬に行われました私的録音録画補償金制度に関します海外実態調査の報告につきまして、その概要を御報告いたします。なお、報告書そのものにつきましては現在最終校正の段階に入っておりますので、来年の1月中ぐらいまでには報告がなされるものと思います。
 資料1をごらんください。1ページめくっていただきまして目次でございます。今回調査いたしました国につきましては、イギリス、スペイン、それから前回法改正の審議中でございましたフランス政府に訪問いたしまして調査を行いました。それからアメリカ、カナダ、この5カ国でございます。
 まず初めに、全体的な部分につきまして御説明をいたします。ヨーロッパにおきましては、特に私的複製とDRMにつきまして、各国ともよい選択肢を模索中であるという状況でございましたけれども、その中でも特に注目される点といたしましては、2006年におきましてスペイン、フランスにおきまして「EUディレクティブ2001」を国内法化するため、技術的保護手段の使用の程度を考慮いたしまして補償金を課すというような著作権法の改正が行われた、というところが注目される点であろうと思います。
 一方、アメリカにおきましては課金制度によるロイヤリティーの収入といったものは年々減少傾向にございまして、関係者もこの課金制度の発展をあまり望んでいないというような状況でございました。
 カナダにおきましては、イギリスの影響をほとんど受けておりませんで、ヨーロッパ諸国と同様にDRM等のよい選択肢を現在模索中であるというような状況でございました。
 それでは、国ごとに御説明をしたいと思います。1ページ目でございます。イギリスでございますが、イギリスにおきましては、まず私的録音・録画に係る議論の経緯といたしまして、1977年のウイットフォード委員会の報告書、グリーンペーパー、ホワイトペーパーにおきましていずれも賦課金制度を採用することが提言されておりますけれども、権利者、製造業者、消費者団体等におきまして議論が行われた末、1957年法の全面改正といたしまして賦課金制度を導入しない1988年法、これが1989年に施行されております。
 この際の議論の内容といたしまして、もともとイギリス法におきましては賦課金制度を採用しておりませんので、この著作権法というのは私的録音のほとんどを違法としておると。国民が違法な行為を行っていることを前提とする賦課金制度には疑問である、あるいは著作物を録音しないものに対しても賦課金制度を採用する、といったことについては反対であるというようなさまざまな反対論が行われまして、現在ではイギリスにおいて賦課金制度は採用されていないという状況でございます。これは基本的には法が私的領域に立ち入るべきではないというイギリスの伝統的な考え方によるものと考えられると思います。
 現在の賦課金制度への対応につきましては、御案内のとおり採用していないのですけれども、第70条に放送または有線番組を私的使用のためにタイムシフトを目的として録音・録画する行為は著作権侵害の責を問わない旨の規定がある。これ以外に私的使用目的に録音・録画を容認する規定は現在存在いたしません。したがいまして、私的使用のためにする他の形態の著作物の録音・録画、これはすべて違法であるというふうに考えられております。
 実際問題といたしまして、権利者は違法な行為に対して権利行使を事実上していないというような実態が見られました。イギリス法におきましては、私的使用のための録音・録画の範囲は非常に狭く解されておりまして、権利者の受ける損害というのは非常に軽微であって、まさに不問にされてもいいというものでございます。ですので、権利者の保護というのは、法制度上整備されているんだというようなイギリス政府の見解でございました。
 それから、EUディレクティブへの対応でございますけれども。2001年のEUディレクティブにおきましては、自己の著作物が他人の私的使用のために複製される場合においては、公正な補償を受けることを条件として複製権が制限されるというような規定がございます。イギリス政府におきましては、EUの加盟国、他国が採用している補償金制度に同調せず、現在もその姿勢を維持しております。またEUディレクティブが求める水準を既に満たしているということで、補償金の制度を採用する必要がないという考え方を示しておりまして、そもそもEUディレクティブそのものについてはソフトローであると、ハードローではないというような考え方がございまして、その指令には抵触しないということを名言しておりました。
 最後にDRMについてでございますけれども。イギリス政府の見解につきましては、DRMによって私的録音・録画の問題が全面的に解決できると考えているわけではなくて、比較的新しい技術であるのでビジネスモデルの作成には慎重であるべきなのだというような見解を持っておりました。このことにつきましては、2005年の10月から各界の権利者を集めまして異なる利害を持つ関係者が合意できるような水準を作れるように政府が関係者の議論を促進しているのだというような状況の報告がございました。
 続きましてスペインでございます。スペインでは、1879年法におきまして、私的使用目的であっても権利者の許諾なく著作物を録音録画する行為は、そもそも著作権侵害とされておりました。その後1981年に権利者団体と政府によりまして私的録音の実態調査が行われ、その結果、著作者等の利益に大きな影響を与えているということが判明をいたしました。それによりまして1987年に著作権法を改正いたしまして、私的録音録画補償金制度を導入しております。その後2001年のEUディレクティブを受けまして、2006年に技術的保護手段の使用度合い等に応じて補償金額を決定することを内容としました著作権法の改正が行われております。これにつきましては本年の6月に施行をされている状況でございました。
 制度の概要といたしましては、私的複製につきまして補償金を受けることができるのは著作権者、レコード製作者、ビデオ製作者、実演家ということになっております。製造業者、それから輸入業者が徴収団体に対しまして補償金を支払わなければならないというような義務が定められておるところでございます。
 実際の補償金額の決定方法でございますけれども、補償金の対象となる機器、記録媒体につきましてはアナログ・デジタルの区別をしておりません。補償金の額につきましては法律で一定額を明記しております。2006年の改正によりまして、デジタル録音録画機器・記録媒体の場合に限って、製造業者と徴収団体との交渉を経まして、スペインの文化省、産業観光商務省が「共同省令」ということで補償金を承認するというような方法を導入したというような報告が行われました。
 この改正法におきましては、交渉当事者と政府が補償金額を決定する際に、例えば技術的保護手段の利用可能性など、7項目にわたる基準を考慮に入れて決定する旨が規定されております。なお、この方法につきましては見直しができるというような規定もございました。
 現在の対象品目でございますが、機器・媒体それぞれ額が決定されておるところでございます。なお、i Podなどのオーディオレコーダーにつきましては現在課金対象とされていないわけでございますが、今まさに行われておりますこの関係者の協議を経まして、課金対象とする場合においては、スペインの文化省、産業観光商務省が共同で承認をするというような仕組みになろうかと思います。
 それから、支払義務者でございます。これにつきましては製造業者、輸入業者とされております。なお、流通業者と卸・小売業者につきましても連帯責任を負うというような規定になっております。
 返還請求の制度でございますが、これにつきましては制度を有しておりません。そのかわり補償金の免除制度という制度がございまして、2006年の改正法におきましてはパソコンのハードディスクについては補償金を無条件で免除するというような規定を設けたところでございます。
 それから、補償金の徴収・分配でございます。徴収団体がございまして、それが政府の決定された分配率に基づいて傘下の団体に分配をしております。分配率につきましては、私的録音の場合は著作者50パーセント・実演家25パーセント・レコード製作者25パーセントということで分配をされております。私的録画の場合におきましては、それぞれ均等割を行いまして分配を行うということになっております。
 共通目的事業でございますが、これにつきましては徴収額の最低20パーセント以上を支出することが義務づけられております。その内容が毎年スペインの文化省に報告されているというような報告の義務が課されておるところでございました。
 最後に補償金制度とDRMにつきましては、先ほど御案内しましたとおり技術的保護手段の使用度合いに応じて補償金を決定するというような仕組みを設けております。今後、関係者間の協議を経ましてスペイン文化省、産業観光商務省に報告がなされる予定になっておりますので、その動向が注目されるだろうと思っております。
 今度はフランスでございます。フランスにおきましても、スペインと同様に、EUディレクティブを国内法化するための法改正が今年行われたところでございます。まず制度の概要といたしましては、私的複製を排他的権利の例外として認めまして、レコード、ビデオグラムに固定された著作者、実演家、レコード、ビデオグラムの製作者に対して報酬請求権を有するというような仕組みになっております。
 対象品目におきましては、アナログ・デジタルを問わず記録媒体のみ補償金の対象とされております。なお、これにつきましては、機器から取り外し可能な媒体だけではなくて、機器に内蔵された媒体についても含まれるというようなことになっております。
 実際の補償金の額の決定方法でございますが、記録媒体、補償金の料率、支払方法につきましては、国の代表を委員長といたしまして報酬請求権団体、製造業者、輸入業者の団体、消費者団体、これで構成されます私的複製委員会におきまして多数決により決定されるということになっております。補償金の額につきましては、記録媒体の種類、記録可能時間に応じて決定されるということになっております。
 (4)のi Pod、PC、ハードディスク、フラッシュメモリの取り扱いでございますが、i Podにつきましては2002年の7月4日の決定におきまして支払いが義務づけられております。外付けのハードディスク、フラッシュメモリにつきましては現在私的複製委員会で対象とするかどうかを検討中でございます。パソコン内のハードディスクにつきましては現在は対象外でございます。
 支払義務者でございますが、支払義務者につきましては製造業者、輸入業者に義務が課されております。しかしながら、一定額が媒体に上乗せされておりますので、実際には消費者が補償金を払っているというような考え方であろうと思います。
 徴収・分配におきましては、徴収分配協会が一定割合に基づいてその分配を行っておるという状況でございました。免除制度につきましては、その免除される場合を限定列挙されております。
 文化目的事業でございますけれども、文化目的事業につきましては、その25パーセントを創作援助活動、あるいは生の興行の普及、芸術家の育成活動等の文化目的事業に現在使用されておるところでございます。
 そして2006年の今回改正されました法律のポイントをこれから申し上げたいと思います。今回の法改正におきましては、私的複製に係わる部分、それから企業に対しても著作物あるいは隣接権で保護される著作物、これを国会図書館やそういった資料館に登録を義務づけるといったこと、それから集中管理団体に対する管理監督権限を強化するというようなことの中の1つの項目として今回改正が行われたという報告がなされました。その中で今回憲法院におきまして、違憲とされた部分を除いて公布をされております。したがいまして、これから御説明をいたします部分につきましては違憲とされておりませんので、既に公布をされているという状況でございます。
 改正の際の優先事項といたしまして、私的複製の例外と補償金制度、DRMの関係についてさまざまな議論がなされたということでございました。その結果、以下2つの点につきまして優先事項とすべきということで決定されたということでございました。まず1つ目は消費者の中に根付いている私的複製の例外を守ること、2つ目は創作活動に対する正当な報酬を認めるため、私的複製に対する報酬を守ること、この2つが優先事項とされ、法改正がなされたというような話を伺いました。
 実際の法改正のポイントといたましては3つございます。1つ目が私的複製の例外を維持するということでございます。ただし、スリー・ステップ・テストの要件を追加規定しております。この1につきましては法改正の作業中に実はひと騒動事件がございまして、「マルホランドドライブ」という映画がございました。その「マルホランドドライブ」という映画のDVDに施されております技術的保護手段が原因で、物理的にDVDの複製が不可能であったということから、この技術的保護手段によってその使用者に認められている私的複製の権利が侵害されたということで、その当該DVDの購入者、消費者団体がその技術的保護手段の使用の禁止を求めてDVDの製作会社を訴えたという事件がまさにこの法改正の作業中にありました。
 その際、パリ控訴院におきましては、この原告の請求を認めたわけでございますけれども、パリ破棄院におきましては原告の請求を認めず、原審の判決を破棄し差し戻し命令を下したということがございました。結局その判決の内容といたしましては、「私的複製の例外といったものはEUディレクティブに照らして解釈されなければならない」ということをうたった上で、「私的使用のための複製といったものは、元来その製作費を償還するのに必要な収入源であるDVDの形での著作物の通常の利用を妨げるものであってはならないのだ」ということで、ここでスリー・ステップ・テストの要件を持ち出しております。
 こういったことがございまして、なおフランスにおきましてはこのスリー・ステップの要件を国内法に有していなかったということもありました。その関係でただし書きとしましてここに書いてあるように、スリー・ステップ・テストの要件を追加規定をしたというような経緯があったというふうに報告がなされました。
  2でございますが、報酬請求権制度を維持したということでございます。ただし、報酬の額に技術的保護手段の使用の程度及びそれらの影響を考慮に入れることといったこと、それから二重課金があってはならないこと、これを新たに法律に明記したことでございます。この二重課金につきましては、実務上そういったことはないわけでございますけれども、それを法文上明確に定義をしたということでございました。
  3に私的複製の例外の利益を保証するための規定、これを新たに設けたというところでございます。私的複製の例外の利益と技術的保護手段との関係を調整するために、独立行政機関であります技術的手段規制局を設置をしたということでございます。この技術的手段規制局につきましては、その業務としまして技術的保護手段の利用が私的複製の例外を受益者から奪う結果をもたらさないよう、常にこれを監視するというような業務としてこの機関が設置されたというような報告がなされました。
 なお、この制度改正にあたりまして、製造業者、輸入業者がDRMプラス契約によって報酬を支払うことが可能という考えから報酬請求権制度の維持に反対したわけでございますけれども、現在の技術的保護手段の信頼性といったものは十分でないということが明らかであるというふうに考えられまして、現在の報酬請求権制度が維持されたということでございます。
 最後にスリー・ステップ・テストの要件を遵守するために必要な場合におきましては、技術的保護手段を使用してあらゆる複製を妨げることも認められるのだということがこの法改正における憲法院の決定でも確認をされているというような報告がなされました。
 続きましてアメリカでございますが、アメリカにおきましては、既に御承知のとおり、オーディオホームレコーディングアクトと言われる家庭内録音法が既に制定されておりまして、その適用範囲におきましてはデジタル音楽の録音を主たる目的とする機器、媒体のみでございます。それ以外の汎用コンピューターや汎用コンピューターに関連する機器・媒体などは適用除外とされております。もともと家庭内録音法といったものが汎用コンピューターといったものを適用対象外として作られたものでございますので、i Podなどもコンピューターを介して音楽をダウンロードすることができるということから、この法律の対象外というふうに考えられているというようなことでございました。
 対象品目におきましては、当初のDAT、DCC、MDでございまして、これ以降新たな追加はございませんので、年々そのロイヤリティーの収入も減少傾向にございました。
 支払義務者につきましては、製造業者、輸入業者が支払いの義務が課されております。
 返還制度と分配におきましては、返還制度は現在有しておりません。分配につきましては法定で規定されておりまして、それぞれ各権利者に分配が行われております。
 最後にDRMにつきましては、いわゆるSCMS、これが一種のDRMということを位置づけておるということでございまして、DRMの技術としてどの方法が適切なのかということを模索中でございました。まだ標準化するには至っていないという状況でございました。
 最後に(参考)として書いておりますけれども、現在アメリカにおきましては、課金制度を改正する計画は全くないというような政府の見解がございました。権利者、製造業者、さまざまな関係者におきましては、いずれもこの課金制度といったものが著作権問題の解決に効果的なものではないということを皆様方が考えているというような報告がなされました。
 それから、カナダでございますけれども、カナダにおきましては、私的録音補償金制度が導入されておるわけでございますが。制度の概要の部分を見ていただきますと、音楽の著作物、実演、レコード、これを聴覚的な記録媒体に複製する行為、これがアナログかデジタルかを問わず権利侵害にはならないということになっておりまして、その聴覚的な記録媒体の製造業者、輸入業者が支払義務が付されているということでございます。
 対象製品につきましては、アナログ、MD等記載されているとおりでございます。
 補償金の決定方法でございますけれども、私的録音補償金制度につきましては、実はカナダ産業省、カナダ民族遺産省という2つの省がございまして、その2つの省が制度を所管しております。それとは別に独立行政審判所でございますカナダ著作権委員会というところが、補償金の額を決定するという仕組みになっております。
 ですのでアといたしまして、徴収団体であるCPCCが補償金の対象製品と料率の案をカナダ著作権委員会に提案いたしまして、それを委員会が公告し、異議申し立てを受け付けるという流れになっております。その後、異議申し立てがあれば同委員会がヒアリングを行って、その結果、修正等を行って補償金額を決定するというような仕組みになっております。なお、この決定につきましては、司法審査が行われるということでございます。特に注目すべき点としましては、2003年にこのカナダ著作権委員会がi Podなどのオーディオレコーダーに課金する決定をしたところ、先ほど申し上げた司法審査が行われまして、同委員会の決定が否定されたというようなことがございました。
 8ページでございますが、支払義務者でございます。これは製造業者、輸入業者というふうにされております。
 そして、返還請求制度につきましては、これは現在有しておりません。しかしながら、聴覚障害者を代表する団体に対して記録媒体を販売する場合については補償金が免除されるというような規定がございます。
 共通目的事業につきましては、これについては制度設計時に関係者の同意が得られなかったということから、その支出は採用されておりません。
 補償金の分配につきましては、カナダ著作権委員会が決定した分配率に基づいて関係者に分配が行われているところでございます。
 補償金の徴収額につきましては、実は2000年から徴収が開始されておりまして、2004年がピークでございます。2005年は若干減少の傾向にございます。これはおそらくi Podなどのその対象機器が司法審査の結果否定されたということの影響もあるのだろうと思います。
 最後に補償金とDRMの関係につきましては、ヨーロッパ諸国と同様に最良の選択肢を検討しているというような状況でございまして、権利者の間におきましても意見がまだ統一されていないというような状況でございました。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの報告につきまして御意見、御質問ございましたらお願いいたします。

【大渕委員】 まだ情報が入っていないかもしれませんが、資料1の関係で、先ほど御説明いただいたように、このEUのディレクティヴでは公正な補償を受けることを条件として複製が制限されるということが求められているのに、イギリスは、このようなディレクティヴが求める水準を既に満たしており賦課金制度を採る必要がないという考え方の下にこの制度を採用していない、要するにEUディレクティヴには抵触していないということで採用してないということのようですが、これに対してEUのほうはどのように考えているのでしょうか。イギリスの主張どおり、どういう理由かはわかりませんけれども、何らかの理由でEUディレクティヴが求める水準を既に満たしているからかまわないと考えているのか、それともEUの側から見るとまた別の見解なのかということについて、何か情報をお持ちであれば教えていただければと思います。

【森下管理係長】 実はそのことにつきましても各国に聞いたわけでございますが、それはイギリスの国内法についてはそれぞれの国に任せられているということで、そういった情報が提供されなかったということでございます。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】 支払義務者のところで、スペインとフランスを見比べると、両方とも製造業者または輸入業者ということなのですが、フランスのところには媒体の価格に上乗せされているために実際には消費者が報酬を支払っていることになると付記されています。これは要するに明示的にその金額を乗せていることを告知しているという意味でしょうか。

【森下管理係長】 スペインとフランスにおきましても、法律上の支払義務者は製造業者というふうになっておりす。これは考え方を変えているまででございまして、実際にはスペインにおきましても消費者が支払っているというふうに考えられるということで、スペインとフランス、両方とも同様の考え方だと理解していただければと思います。

【椎名委員】 フランスのところに特に書いてあるのは、フランスにおいてそういう考え方であったということですね。

【中山主査】 ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ、松田委員。

【松田委員】 スペインの制度なのですが、EUの指令を受けて2006年で制度を改正して、使用度合いに応じてその補償金額を決定するとされています。技術的保護手段の使用度合いに応じてというのは、技術的保護手段がかかっているものについては補償金をかけない、または、技術的保護手段がどれぐらいの割合かかっているかということで何か指数とかパーセンテージをかけて補償金額を決定をするということでしょうか。そして、それはどうやって調査するのでしょうか。もし分かっていればお願いします。

【森下管理係長】 実はスペインにつきまして資料の2ページ目に7項目にわたる基準を考慮に入れて決定をするということを書いておりまして、その7項目なのですが、例えば技術的保護手段の利用の可能性だとか、応用程度、効果、あるいは複製の保存期間だとか、複製の品質だとか、そういったことを考慮に入れて補償金額を決定するということでございまして、実際にはこれは徴収団体と製造業者の団体が実際にその機器につきましてどれだけの複製の品質なのかだとか、あるいは技術的な保護手段がどういったものかということをまずは調査をするのだということを言っておりまして、その結果、スペインの文化省にそれが報告がなされると。報告がなされた結果、両者の意見が違っているのであればスペイン文化省がみずから費用を負担してその調査を実施するというような報告がなされておりまして、それ以外の情報は提供を受けておりません。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。

【松田委員】 まだ、これは調査途中ですからあれですけれども、スペインについてのみ2005年度の徴収額が記載されておりまして、これは日本の徴収額の2.5倍ぐらいには多分なるだろうというふうに私は計算しておりますけれども、ほかの国はどれくらいの徴収額になるのだろうかということもぜひ取りまとめていただけないかと思います。多分スペインと日本でありますれば、人口の点、経済力の点、機器の普及の点などから考えますと、圧倒的に日本の方が大きいだろうと考えられますが、その他の国についてもこの辺を対比することによって、国際的なバランスということを考えられるのではないかと思うからであります。若干の意見です。

【中山主査】 ほかに何か意見ございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。次は課題に関する検討について、前回に引き続いて議論をしていただきたいと思います。その前に資料につきまして事務局から説明をお願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】 それでは御説明をします。資料2と資料3と資料4を説明をさせていただきます。
 まず資料2でございますけれども、資料2は今回初めてこの委員会に御提出する資料でございます。それから、資料3と4でございますが、これは前回、私どもの事務局のほうで作成し提出をし議論をしていただいたものを、前回の御議論、その後事務局に寄せられた御意見等を踏まえまして改訂をしたものでございます。
 まず資料2でございますけれども、資料2につきましては著作権法の第30条についてということで、そもそも30条の問題に帰って検討する。それから、委員会の中で30条そのものの取り扱いについて幾つか御意見も出ておりましたので、そういうものについて整理をしたということでございます。
 まず1の30条の変遷及び制定趣旨等でございまして、これは昭和45年、この30条が初めて創設されたときから平成11年までの技術的保護手段の回避の禁止措置について、その制度の内容と制定趣旨について規定をしたものでございます。簡単に御説明しますと、昭和45年の全面改正については御承知のとおり私的使用の目的、使用する者が複製を要件として無許諾かつ無償の複製を認めたわけでございまして、その理由としては零細な利用、閉鎖的な範囲の利用ということでございます。
 なお、参考に見られますように、その45年全面改正のもとになりました著作権制度審議会答申においても、その私的使用の複製につきましては将来の複製手段の発達等に基づいて再検討の必要があろうというような見解が出されております。
 昭和59年の改正につきましては、これは高速ダビング業者等のもとで行う私的使用を目的とした複製について適用外にしたということでございまして、これは本来私的領域の外で行われるコピーについて、私的使用の複製に含まれないということを明確化したという趣旨でございます。
 平成4年の改正につきましては、これはいわゆる私的録音録画補償金制度の導入でございまして。1枚めくっていただきますと、制定の趣旨としてはその録音録画の実態の「総体としてその量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定されていたような実態を超えて著作者等の利益を害しているという状況に至っている」という認識のもとに立って行われたものでございます。これは著作権審議会の第5小委員会、昭和56年に報告書を出しております。それを踏まえた上で関係者間の懇談会、それから第10小委員会、これは平成3年に報告書を出しておりますけれども、この長い議論を踏まえた結果の改正でございます。
 参考を見てもらいますと、平成4年の補償金制度の導入と技術的保護手段の関係でございますけれども、今録音の特に専用機などに使われていますSCMS方式、それから録画の専用機に使われていますようなCGMS方式でございますけれども、これ以降さまざまな著作権保護技術が導入されているわけでございますが、例えばSCMS方式については平成4年法律ができた当時、その導入を前提に制度設計がされておりまして、特に補償金制度の運用に影響を与えなかったという事実が認められます。また、CGMS方式をその後導入したときに、その時期と同じくして私的録画の補償金制度が実際に運用されたわけでございますけれども、その際は映画業界がパッケージからのコピーは禁止という選択をしたため、事実上放送録画の制度として運用されたという事実がございます。
 それから、平成11年の改正については、これは技術的保護手段の回避をして行う複製について、回避の事実を知っていた場合には30条1項の適用としないことにしたということです。制定趣旨としましては、これは著作権審議会のマルチメディア小委員会ワーキンググループの報告書を抜粋をしておりますけれども、その下線部分、これは事務で引きましたけれども、技術的保護手段の施されている著作物等については、その技術的保護手段により制限されている複製が不可能であるという前提で著作権者等が市場に提供しているものであり、技術的保護手段を回避することによりこのような前提が否定され、著作権者等が予期しない複製が自由に、かつ社会全体として大量に行われることを可能にするためには、著作権者等の経済的利益を著しく害するおそれがあると考えられたためということでございます。
 1枚めくっていただきまして3ページでございますけれども、これが前回の委員会で指摘された幾つかの点について問題点を整理したものでございます。1つは30条第1項の範囲のの見直しの必要性でございまして、前回の資料ではいきなりその見直しにあたっては幾つかの要件を踏まえてということになっていましたけれども、その必要性について30条の規定に戻って議論をしたほうがいいというような御意見もございましたので、そこのところについて私どものほうで整理をさせていただきました。
 最初の丸でございますけれども、著作権制限規定のあり方につきましては、利用実態の変化に照らしましてスリー・ステップ・テストの基準等に照らして検証し、必要に応じて見直しを行うことが制度としては求められているわけでございます。平成4年の改正につきましては、著作者等の利益が害されている状況を補償金制度により補うと。制限規定の基準に権利制限の基準に適合させることを意図したものであるということでございます。なお、この当時においては例えばインターネットによる著作物の提供等の問題、つまり録音録画の源(ゲン)の問題は顕在化してなかったということもございまして、こういう制度設計になったわけでございます。
 その後、事情の変化がありまして、それを4月にまとめております。1つはデジタル複製の主流となり複製手段も多様化、高性能化したという複製の質及び量の変化でございます。もう1つは、著作権保護技術と契約を組み合わせることによりまして、家庭内における複製を一定の場合については管理することができると。これは著作権保護と利用の円滑化の調整手段の確保、それが今までなかったわけですけれども、それができつつあるという事情。それから、インターネットを利用した配信サービスとかファイル交換が普及して録音録画源が多様化したということで、新しい録画源が出現してきた。ファイル交換などを活用した違法複製物などの複製などが社会問題になっているということで、一度も権利者に還元されないような複製が出現したと。権利者被害の深刻化という点でございます。
 そういうような平成4年改正以後の事情の変化を踏まえて、私的録音録画により音楽、映像等を楽しむという社会現象の定着状況には、これは留意しなければならないわけですけれども、著作者等の利益を害する状況がより深刻な分野とか、著作権保護技術と契約によって別の利用秩序が形成され得るというような場合については、30条1項の適用について見直しを行うことが適当であると考えられるというふうに整理をしております。
 なお、具体的要件については資料3、前回の資料1でございますが、そこで見直しにあたっての考慮事項については整理をさせていただきます。説明は後でさせていただきます。
 次に技術的保護手段の回避禁止措置の見直しでございまして、これも前回御意見が出たところでございますので、少し整理をさせていただきました。平成11年の改正によりまして技術的保護手段の回避の禁止の措置が導入されました。技術的保護手段を回避して、私的使用目的で複製するのを30条1項の適用がないということにしまして、すなわち、そういった複製については権利者の許諾が必要だということにしたわけでございますけれども、その際、その技術的保護手段について法令上特定の使用に限定するということはしておりません。例えばコピーネバーと。一切コピーを禁止するということも禁止するとか、こういう特定の保護技術をつけなければならないとか、そういう限定はしていないということでございます。
 現在用いられている回避禁止措置というのは、回数制限とか世代制限は一般的でございますけれども、その著作権保護技術の使い方によりましては、複製を一切禁止するということも可能でございます。そうしますと、これは当然のことながら事実上30条に基づく私的録音録画はできないということになるわけでございます。先ほど海外の報告もありましたように、このことについて消費者の利益等を考慮し、技術的保護手段のあり方について法的に一定の制限を課すという法制が、例えばアメリカとかフランスに見られるところでございます。
 別添の資料を見ていただきますと、5ページでございますけれども。
 5ページのこれはアメリカ法でございまして、1201条、DMCA法の一部でございますが、その中で家庭内での複製を妨害し、または制限するために自動制御コピーコントロール技術、またはカラーストライプコピーコントロール技術を使用してはならないということで、その下のA・B・C・Dがその例外ということになっております。つまり、そのA・B・C・D以外の場合にはそういう措置をしてはいけないということでして、大きく言いますとAが配信事業、Bが有料チャンネル、Cがいわゆる映画などの視聴覚著作物、Dがその少しバリエーションの問題ですけれども、そういうもの以外については一定の制限があるということでございます。
 1枚めくっていただきまして6ページですけれども、フランス法でございますが、フランスにつきましては法律が成立したばっかりで、ちょっと補償金管理協会のほうで仮に訳していただいたものを資料として添付しておりまして、内容について詳細に吟味したわけではございませんけれども、とりあえずということで御承知おきください。そこで下線部分については私どもで引いたわけでございまして、まず最初のところの線でございますけれども、「技術措置は、本法典が定める権利並びに権利所有者が許可する権利の範囲内における、作品あるいは保護対象物の自由な利用に対抗することができない」というような新たな規範が設けられている。
 次のラインですけれども、「技術的措置規制機関」という第三者機関を設けることになっているようでございますが、「技術的な保護措置を実施することで以下に列挙する条項に定める例外措置を受益者から奪うことがないよう監視する」ということです。実はその1行下の同条の2号、つまり第Lの122の5条の2号なんですけれども、これが日本でいいますと30条に相当する私的使用の複製のための規定でございまして、その私的使用の例外措置を受益者から奪うことがないように技術的措置機関が監視をするということでございます。以下、そういう技術的監視機関がどういう審査をしてどうするのかというようなことについて、関係と思われるところについて下線を引いております。
 もとに戻っていただきまして3ページでございますが、その一番下なんですけれども。ただ、そういう法制も見られますが、例えばドイツのように複製を一切禁止する措置を法的に制限措置は設けておりませんけれども、これも海外報告で幾つかの国についても同じような調整措置を講じているという報告がございましたように、技術的保護手段の影響を、補償金の額で調整することを可能にするため、補償金を法定方式から実態調査に基づく関係者間による協議方式に改める法案が現在審議中だということでございます。
 この問題点につきましては、私的録音録画に関する制度設計上重要な要素だと認識をしております。ただ、回避禁止措置の取り扱いにつきましては諸外国の例に見られますように、さまざまな選択肢があるということでございます。ので、その制度設計の構成要素の1つとして重要だということを踏まえつつ、補償措置のあり方も含めた全体のパッケージの中で検討していくということが適切であろうと考えられます。つまり、このことについて結論を得なければ、次の補償措置の問題について進めないということではないのではないかと。補償措置のあり方も含めた30条全体の見直しの中で、その重要な構成要素として考えていくことが適切ではないかという考えでございます。
 それから資料3と資料4でございますが、これは変えましたところについて簡単に御説明をしております。
 まず資料3でございます。下線部分が事務局で線を引きまして直したところでございます。まず1につきましては、これは30条の制定趣旨を踏まえた上でというところを追加しました。それから、2の12でございますけれども、実は前回の資料では123というものがありまして、3は制度改正の結果、違法状態が放置されるおそれがないことというのを要件として書いていたわけでございますけれども、これについてはその23が要件がダブっているのではないかというような御指摘もございましたので、この3の要件につきましては2の中に織り込んだ形で整理をさせていただいております。
 まず1でございますけれども、1につきましては、文章をわかりやすくするために例示を入れたと。それから文章を追加したというのと、最後の「この場合」というところですけれども、これは考慮事項についてメディアの特性、例えばCDは原則複製が可能だというようなこと。例えば著作権保護技術の関係も十分考慮するということを追加しました。
  2につきましては、前回までの御議論でいろいろな委員から意見を頂戴しましたので、それについて最大限考慮事項として記入するようにしました。
 まず特定の利用について第30条の適用をなくする場合には、それによる複製の抑止効果、この会議ではアナウンス効果というふうに説明はされていますけれども、そういう効果。それから、先ほど言いました前回の資料では3の部分ですが、実効性確保の見通し、それから権利者に深刻な被害を与えている私的録音録画の実態、例えば違法サイトからのダウンロードとか。それから仮に30条を改正して許諾を得るものとしたとしても、その許諾書に関する費用負担の問題がございまして、そういう問題。それから、オーバーライド契約に関する有効性。これは法制問題小委員会のほうでオーバーライド契約については問題点が整理されたわけでございますけれども、その中でも指摘されていますように、必ずしもすべてのオーバーライド契約が有効かどうかというわけではなくて、それは契約の内容等に照らして判断されるということがありますから、その要件というものを追加しております。それから指摘領域における法の介入等について十分考慮することということでございます。そういうものを考慮した上で、権利保護と利用の円滑化の調和をどこに求めるかの観点から整理することでどうかということでございます。
 3は、前回は1制度改正は困難、2が制度改正は可能ということで、ある程度断定的に記述しておりましたところを、いろいろ問題点が指摘されましたので、1制度改正には課題が多いと。それから2として制度改正には課題が少ないということで、少し断定的な考え方から柔軟性を持った考え方に整理をし直しました。
 2ページの最後のほうの(注)でございますけれども、これは委員会では特に大きな議論になりませんでしたが、その30条の1項の外に出すことによって、そういった違法サイトとか違法複製物の視聴もできなくなるのかというような御指摘もあったわけでして、それを念のために、その複製を伴わないような利用について制限するというものではないということを書いているわけでございます。
 それから、3ページでございますけれども。これは前回の議論ではなかったのですが、その後さまざまなところからその私的使用の複製、つまり30条1項を外した場合に、ファイル交換でダウンロードすれば、罰則の適用があるのではないかというような御指摘もございましたところですので、それについて少し問題点を整理しております。
 罰則の適用については、現行法では例えば技術的保護手段の回避による複製は、原則として30条第1項の適用がないというふうにしておりますけれども。その複製はあくまでも私的使用を目的としたもので行われるものですから、違法複製を行ったものに罰則の適用がないというのが現行法のルールでございます。仮に30条の範囲を縮小するとしても、その考え方を踏襲すべきと考えるがどうか、ということで、我が国の著作権法の取り扱いの並びからいうと、やはり罰則の適用はないということでよろしいでしょうかということでございます。
 1枚めくっていただいますと参照条文がございますけれども、一番上が30条の1項でございまして、その1号、2号がその30条の1項の範囲に入らないものでございます。それで119条の1号を見ていただきますと、これは罰則の適用でございまして、著作権を侵害した者は現行法では5年以下の懲役または500万円以下の罰金になるわけですけれども、その括弧書きを見ていただきますと、括弧の線が30条の第1項も線を引いていただきたいのですけれども、30条第1項に定める私的使用の目的を持ってみずから著作物もしくは実演等の複製を行った者については、一番最後を見てもらいますと、を除くというふうになっていますので、現行法でも罰則がないということになっていますので、その取り扱いでいいのかどうかということでございます。
 それから、資料4でございますけれども、資料4につきましては少し前文のところを書き加えました。まず私的録音録画についてはつぎのような現状、これは1と2と3でございます。それから補償金制度に関するこれまでの経緯というのは、先ほど少し説明しました昭和56年の第5小委員会の報告書、それから、その後に行われた関係者間の懇談会の報告、平成3年の第10小委員会の報告書、それから法案成立までのさまざまな御議論というような経緯も踏まえてと。総合的に勘案すると、30条の範囲について仮に資料3の3の2というのは、これは資料3でその課題が少ないと整理しました、例えば違法サイトからの複製とか、有料配信のものについて、その範囲を30条から適用除外したとして、残りの部分について見たとしても、現在の複製の実態が続くとすればということですけれども。これは特別なものを除きまして、著作権保護技術の適用が現在ではあるものが多いわけですけれども、一般的には消費者の私的複製を認めた上で、認めるという方向で著作権の保護技術が現状では使われているわけでございますが、そういう現状が続くとすればという意味でございます。
 それから、ずっと少し文言を変えた部分がございまして、最後の3ページを見ていただきますと、3ページの(2)の2のアでございますけれども、アにつきましては、特別な理由というものの例示として著作物の性質上繰り返し視聴する必要性が少ないとか、ごく少数の複製であっても権利者に大きな被害が生じる可能性があるなどという文言を追加をしております。その他用語を補っております。
 イにつきましては、これは保護技術が必要な私的録音録画を認めつつ、高品質の複製物が私的領域以外に流出するのを抑制するという意味が強いというところの説明なのですが、文章がわかりにくいというような御指摘もございましたので、現行法でも複製物を使用しないものの複製は、これは禁止されております。それから、私的複製により作製した複製物を他人に譲渡する等の行為を目的外使用として取り扱っておりまして、実効性の問題は別として、私的領域外の複製物の流出を原則禁止としているわけでございまして、著作権保護技術はその30条の考え方を技術的に担保するというとらえ方が可能であると。それから、補償金制度はあくまでも私的領域内の複製を対象にしたものであり、その点から著作権保護技術と補償措置は矛盾しないというふうに文章をつなげております。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの説明を踏まえまして審議に入りたいと思います。まず最初に資料2について議論をしていただきたいと思いますけれども、御意見ございましたらお願いいたします。今期最後ですので、ぜひ忌憚のない御意見をお願いいたします。どうぞ、大渕委員。

【大渕委員】 資料2の関係では、30条の変遷や制定趣旨等につき整理していただいたことは大変に結構だと思います。この中で1つポイントとなるのは、最後の3ページから4ページにかけての(2)の技術的保護手段の回避措置の見直しという論点と、私的録音録画に関する補償措置につきどのような制度設計とすべきかという論点との関係についてどのように考えるのかという点であります。
 この2つの論点の関係については、いろいろな考え方があり得て、あくまで技術的保護手段の点が議論の前提となるべきであって、技術的保護手段の点が解決しなければ私的録音録画についての補償に関する論点に入らないという考え方もあり得るところだとは思うのですが、これらの2点は実際上相互に密接に関連していますので、どちらか一方を決め切った上でないと他方が議論できないとすると、結局はどちらが先かということになってしまってどちらも決められなくなってしまいます。この点についても、若干別の観点から前回も申し上げましたが、結局は、トータルな問題として総合的観点から権利者と利用者の利益をどのように調整していくべきかという大きな枠組みの中で考えるべき点だと思います。その意味では、ここでは制度設計の構成要素の1つということで整理されていますが、要するに、これらの2つの論点は相互に密接に関連していますので、先に一方を固めなければ他方が進まないという形ではなくて、相互に他方も視野に入れつつ両者につき並行的に検討していくという観点から議論を進めるというのでよろしいのではないかと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかに御意見ございませんでしょうか。どうぞ、井田委員。

【井田委員】 同じくその技術的保護手段のところなのですが、これは確認ですけれども、丸の1つ目に経緯が書いてあって、この技術的保護手段で許容された範囲内における複製が適法な複製として私的録音録画補償金の対象となっていると。この補償金の対象になるかならないかというのは今まさに議論している内容だと思うのですが、これは実際現実には補償金が払われているという実態があるという意味で書いてあるのでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 そういうことでございます。理論的に何か整合性があるとかではなくて、現実には11年の改正によってその保護手段の回避措置が導入されたわけですけれども、この点について検討をしてほしいという御要望の趣旨としては、一方で回避措置を回避したものが禁止になって、それを突き詰めていけばコピーネバーということで一切コピーができなくなると。一方で私的使用の複製が認められているその趣旨・意味というのが多分昭和45年当時とは変わってきているのだろうというようなところの関係で、その法的な整合性がもう少し別の整合性があるのではないかという御主張なわけですけれども。ここで言いたいのはそういうことで、平成11年の改正はしたけれども補償金制度は併存して現在まで動いていますよと、そういう事実を述べているだけなのです。

【中山主査】 ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】 今のポイントなのですが、この3ページの(2)の最初の段落の文章が一人歩きすると誤解を招きそうなので。この資料そのものは私的録音録画補償金制度そのものについては直接的には議論してないわけですね。30条1項の対象かどうかという範囲内かどうか。ですから、この2行目の私的録音録画補償金の対象というところを、30条1項の範囲内となっていると書いても趣旨は全く変わらないと思いますし、誤解が少ないのではないかと思うのですが。つまり、その範囲の中でも当然媒体によってはi Podなどでは対象となっていないわけですから、この文章だけが一人歩きしてないか誤解を招くのを避けるためにはさっきのように書き替えても、多分この論理、流れは全然変わらないような気がしますがいかがでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 そこは工夫をさせていただきます。ただ、これは報告書の案というわけではなくて、この委員会の資料でございますので、先生おっしゃるように、何か今まで御意見があった別の意味を含めて書いているわけではございませんので、あとは表現だけの問題ですので、そこは資料としては工夫をさせていただきたいと思います。

【中山主査】 ほかに何かございませんでしょうか。それでは次に移りますけれども、またもし時間があれば後に御意見を頂戴できればと思います。
 次に資料3、4について御意見を頂戴したいと思います。御自由にお願いいたします。どうぞ、津田委員。

【津田委員】 資料3の1番の補償措置の必要性を考えるというところで、適用対象外とすべき利用形態というところ。「見直し」というのは僕はちょっと驚いたのは、ここの今日上がってきた資料のほうでわりと見直しすることが前提というところで話が進んでいるところにちょっと驚きがあるというか。
 というのも、前回までの議論で、この見直しというところで松田委員と生野委員がおそらくそういった2番の1項のところの、私的複製の範囲外とすべき利用形態のところを、ちょっと形態を変えてやることを多分強く主張されていたと思うのですが、僕自身はそれに対して実効性がないのかということも申し上げたと思いますし、同じような趣旨の意見というのは椎名委員やおそらく小六委員なども言われていたと思うのですが、ちょっと僕、そこのところでの議論がまだし尽くされていない状況で、この見直しが前提として進んでいくというのは強い抵抗を覚える部分がありまして。逆に委員の中でもまだその見直しをする必要があるのか、それとも必要がないのかというところが結論が出ていない状況で前提として進めるのではなく、逆にほかの委員の方の意見も伺いながら、これに関してもう一回根本的なお話ができれば思うのですが、それはいかがですか。

【中山主査】 この文章、これはその範囲の見直しを行いというのはもう前提で決まっているという趣旨なのか、範囲の見直しもこれから検討するということなのか、どちらで読んだらよろしいのでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 資料3の関係と資料4の関係を申し上げますと、資料2の3ページの2の委員会の指摘事項の(1)のところなのですが、そこで前回もそういうような御指摘がございましたのでまとめたのですけれども、ここで言わんとすることは、30条の1項の範囲というのは実は59年の改正、それから11年の改正によって範囲の見直しは実は行われているわけでございます。その30条の1項、つまり45年当時できた30条のこの範囲というのは、その範囲を見直すことについては、これは法制度としてその制定当時の状況が変わればある意味では見直しは当然のことだというふうに思っているわけでございます。
 それで、この資料2の3ページのところを見てもらいますと、それでは平成4年のときに補償金制度ができたわけですが、それからいろいろな事情の変化が行われております。その変化を考えるとその範囲についてもやはり見直すということは必要ではないだろうかと。ただ、どの部分をどういうふうに見直すかということで、実は前回にその制度の改正が困難と可能ということで事務局なりに分けてみたのですけれども、それについては異論がございました。したがって、今回の整理としては課題が多いと課題が少ないということで分けております。
 つまり、どういうことかというと、これは言葉の遊びと言われればそれまでなのですけれども、今のまだ道半ばのこの委員会のこの時点で見直しについて一定の結論というか、ここは見直す、ここは見直さないということではなくて、まずは今までの整理をして、課題が多い場合もいろいろな追加の情報の提供とか議論によって見直せるということであれば、見直しのところに入ってもいいのだろうというような意味で課題が多い少ないというふうに考えております。したがって、私どもの意見としては著作権法制度の原則に戻ってある行為について許諾が必要なものとするということは可能なのだというふうに思っているわけです。これは法律を見直す前提としてはそれは可能だと思っています。ただし、その見直しについてはいろいろな諸条件がございますので、何でもかんでも元に戻すということではないと。それについていろいろな要件とか考慮事項とかを書いているということでございます。
 そして、やはり現状では制度の見直しも必要だろうと。その制度を見直して仮にその範囲を縮小したとしても、その残りの部分を考えてもやはり補償措置が必要なのかどうかというのが今度は資料4に移っていくわけですね。そういうような論理の整理を私どもとしてはしているということなのです。したがって、仮にこれから議論が進む中で、それでは一切見直しはする必要がないという結論になれば、つまり、そういう結論になればそれはそれで結構だと思いますけれども、とりあえず今の段階ではやはり見直しもあり得ると。それから、見直しにあたってはいろいろな諸条件を検討すると課題が多いもの、課題が少ないものと。それで補償措置の考え方を整理するにあたっては、仮に課題が少ないものを30条の外に外したとしても、残りの部分だけでもやはり補償措置は必要かどうかというところで今期最後の議論を整理できればというふうに思っております。

【津田委員】 当然、時代背景は変わっていて制度が変わることに、時代背景に合わせて趣旨を変えていく、範囲を見直すということを議論すること自体は肯定するのですけれども、ちょっとその資料3のほうで2ページ以降の細かい議論というのがかなり僕から見るとミクロな議論になっているような気がして、ここのところを話し出すと本当に細かい、じゃあ、これはやろう、これはやらないみたいな話をして議論がいつまでたっても終わらないのではないかというのが、今後の会議の方向性としての懸念として僕は1個思っていて。
 結局これもあと1年あるとしても、かなり時間を限られた中でやっていくので、そういう細かい各論をやっていくということだけではないわけですから、当然その私的録音補償金をどうするかという問題を含めると、こっちのほうの議論に行ってしまいがちというのが少しあるというのが1点と、その前にもうちょっとこの私的録音の範囲の見直しというのが本当に補償金の議論をする上で重要なことなのかというのは、僕は各委員の方によってかなり意見がばらばらなような気がしているので、それを逆に今ここで確認できればいいのかなという気がするんですけれども。

【中山主査】 どうぞ、大渕委員。

【大渕委員】 要するに私的録音録画に関する補償措置の必要性について考えるにあたっては、資料3のような30条の適用範囲という点が前提として必要になってくるので、この点を検討した上で資料4のような補償措置の必要性という点に進むということかと思います。そして、先ほども注意深く言われたところですが、2ページなどを見ると、制度改正には課題が多いか少ないかということで整理されておりまして、必ずしも見直しをすると決め切った上で議論しているというよりは、強いて言えば見直しをするかどうかを検討するような感じで書かれているかと思いますので、表現ぶりをもう少し工夫して、見直しをするということで決め切っているというよりは、制度改正には課題が多いか少ないかという点で区別しつつ見直しにつき具体的に検討していくということにすれば、ここは特に問題がないのではないかと思います。
 やはり30条の適用範囲を見直す際には、先ほどのような細かな各論的な点の検討を積み上げて初めてその具体的な適用範囲が決まってくると思いますから、そのような各論的な検討も避けられないのでありますが、先ほどの点については、若干の表現上の工夫をすればこれでよいのではないかと思います。

【中山主査】 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】 ここでの議論の大前提として、補償金制度を考えるときに30条1項の範囲というものをもう一回明確化して、そこの30条1項の範囲のボリュームが決まると、イコール補償措置のボリュームが決まるというようなことを暗にというか明示的に出たのかもしれないのですけれども、それを前提に語られているというふうに思うのですが。結局、その制度改正に課題が多いと思われるものというのは、仮に30条1項の範囲から外しても実効性がないとか、エンフォースメントがないとかということになると、結局補償措置のボリュームのほうにかかっていくと思うのですね。だから、その30条1項の範囲を観念的に議論していっても、補償措置のボリュームを決めることにはならないのではないかと思うのですがいかがでしょう。

【川瀬著作物流通推進室長】 ちょっとすみません。質問の意図が私理解が不十分かもしれませんけれども。制度設計を具体的に考える場合には、その土台について、何を土台にしているのかというのはやはり整理しないと制度設計が難しいと私は思います。そのために先ほどから言っていますように、平成4年からの状況の変化を踏まえると、やはり平成4年の改正というのはその30条の範囲は変更せずに、その上に補償金制度というのを乗っけたわけですね。それはいろいろな考え方がありますけれども、その変更するすべがなかったということなのだろうと思うのです。つまり私的領域の中にそういった契約を持ち込めないし、権利者がどこまで入るかは別にしまして、そういう管理もできなかったと。
 でも、平成4年から現在に至ってさまざまな技術の開発もされ利用も多様化されて、そういう諸般の状況を考えると30条の範囲の見直しも可能になってきたのではないかというのが1つあると思うのです。もし可能になってきたのであれば、それをやはり避けて今の30条の1項の範囲を変えずに、その土台は変えずにその上のところの議論だけをしてはやはり問題ではないかと。つまり、ここで何をどうするかというのは結論は出してないと私ども思っているのですけれども、考え方としてはまず土台の部分のついてそういう技術の問題、状況の変化に基づいて変えられるのであればそこはきちっと議論をして、まずは土台を固めた上でその上の制度について考えましょうということだと思うのです。
 ただ、先ほどの禁止措置の見直しで大渕委員もおっしゃっていましたように、論理としては1つずつ決めていくほうがわかりやすいのですけれども、実はやはり制度全体の全体像のアウトラインがきちっとわからないと、すべて決められないというところもありますので、そこは考え方はきちっと整理した上で、まずはその次の段階に進んで、それで必要に応じてその関連の問題についても考えて、一番最後のところでそれをすべて組み立てて1つの論理が通った制度を考えようというのが私どもの提案なんですね。

【中山主査】 いかがでしょう。どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】 それはよくわかりました。例えば、その有料配信などに関しては技術的な徴収システムでやれるからということで範囲が変わってくるというのは理解できたのですが、例えば友達から借りたとかCDレンタルとかという話というのは、それを行為規範として定めるとみんな法律を守ってくれるよという話と、守りやしないよという話が、もうこれは水掛け論だと思うのですね。有料配信のことはすごくよくわかったのですが、その部分は必ずしも補償措置のボリュームを決める議論にはならないというところから、僕はここをずっと議論していても水掛け論なのではないかなと思ったのでそういうふうに申し上げました。

【中山主査】 どうぞ、大渕委員。

【大渕委員】 まず、この資料3の論点と資料4の論点という2つの論点の関係については、先ほどのように、30条の適用範囲の論点の方を先に決めてしまうかどうかという点が議論になっていますが、先ほども申し上げましたとおり、これらの2つの論点は並行的に考えていく必要があると思います。例えば、場合によっては資料4の論点の方の帰結が資料3の論点での検討についてフィードバックされてくるなどいろいろなことがあり得ると思いますので、やはり、両者を並行的に議論していくべきものと思います。
 次に、これも前回の議論が思い出されるところですが、友人から借りたものを複製する場合につき、30条1項の適用範囲外とするかについて、適用範囲外としたほうが結局は皆が遵守するから権利侵害は少なくなるとかという議論がありましたが、その点自体の議論の中身は別として、このように、30条1項の適用範囲外とした方が権利者の権利の侵害が減るかどうかの点は、仮に議論するとすれば、資料3の論点の前提としてだけではなく、資料4の論点の前提としての権利侵害の量等との関係でもそれを30条1項の適用範囲外とするかどうかは前提としてかかわってくる点かと思います。要するに、資料3の論点も踏まえて資料4の論点を考えるということですが、幸いにもこれらの2つの論点は分断せずに並行して資料3の論点と資料4の論点として議論できますので、そこは相互の関連も考えて検討すれば特に問題ないのではないかと思います。

【中山主査】 ほかにこの点につきまして。土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】 30条1項の範囲を見直すかどうかということに関しましてですが、確かにおっしゃるように本来これは零細な利用であって、あるいは、そのマーケットが存在しない、取引コストがかかる、そういうような理由からかつては45年あたりではそういう理解がされていたのだろうと思います。したがいまして、平成18年、19年になってそういう状況が変わっているのではないかという点はまさにその通りだろうと思いますので、具体的にどうするということは別にして、その基本的な考えとして1項の範囲を見直すというのは筋だろうと思います。
 その話と補償金のボリューム、あるいはそのパイの大きさがどうなるか。それに連動するのか、あるいは補償金の額を定めるときの考慮要素として30条1項で許された範囲だけの話になってくるのかというと、それは別の話だと思いますので、その点さえ確認があれば私はこれで結構だと思っています。

【中山主査】 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 御意見をお伺いしていて不安になってきましたので2点御確認したいと思いますけれども。
 まず、この整理ということで何が整理されたのかということですけれども、この見直しにあたってはというのは見直しをするということではなくて、見直しをするかどうかの検討をするにあたってはという意味であるということでよいかと。そうしますと、この3の12で課題が多いか少ないかというのは、課題が多いものについてはこれは今後の検討からいくと原則としてはここは手をつけないという方向で検討が進むと。それに対して2の課題が少ない方は、ここは検討の可能性があるので、こちらに集中して検討していくと。つまり12というのは、他人から借りたCD等について外すかどうかという議論は、今後はそれは考えない方向でいきましょうと。これに対して2の方は、こちらはまだ見直すかどうかは結論は得られていないけれども、今後はこちらに絞って検討していきましょうと、そういう意味なのかどうかという。もしそれが全部同じように可能性があるということだとすると、何が整理されたのかというのがよくわからなくなってしまいますので、その点が1つ目の確認であります。
 それから、今30条1項の範囲と補償金が連動するかしないかという中に、例えばこの2で違法複製物や違法サイトからの私的録音というのは、これは範囲外にするから、これは今後は違法になったと。しかし、それは実効性がないので、それによる被害というのが深刻ではないかと。そのことを考えて補償金の額を定めるということになりますと、これはその30条1項の範囲の問題と補償金というのが理論的には連動しなくて、30条の範囲外のものであっても補償措置を講じますよ、ということをおっしゃっているように聞こえる意見もあるように感じましたものですから。
 そういうことではなくて、除いたものは補償金の、つまり、この違法複製物や適法配信について30条1項の範囲から除くという場合には、それに伴う複製というのは補償金の額にはおよそ理論的には影響しないと。ただ、それ以外の部分については補償金の額をどう定めるかについては、これはさまざまな要素を考慮するということはもちろんあり得ていいと思うのですが、この連動するかしないかという点が動いてしまいますと、これは今までの委員会でも私は確認してきたつもりですけれども、検討の方向がまた大きく変わってくると思いますので、その点だけ確認させていただきたいと思います。

【川瀬著作物流通推進室長】 まず第1の御質問ですけれども、これは資料2の3ページの2の(1)の最後の下線が引いてある部分ですが、ここにありますように、その30条の1項の適用について見直しを行うことが適当であると考えるということですから、見直しをするかどうかではなくて見直しというのは、もちろんこれは制度というのは見直すものなのですけれども、見直しが必要だと。それについてはいろいろな諸条件が変わったからということで、そこはこの整理ペーパーにありますようなスタンスで考えております。
 見直しするにあたってはどういう要件があるのかという整理をした上で、課題が少ない、課題が多いというものに仕分けしましたけれども、それについては見直しの方向性が出て見直しの要件が出ていますから、事務局としてはほぼ見直しの方向というものを今回で見据えたいと思っています。
 ただ、最後の結論、本当にそうするのかどうかというのは、多分この小委員会として最後にまとめるときに、ほかの制度の問題等も踏まえた上ですべて結論が出るのではないかなと思っております。それはこの委員会の指摘事項の(2)の問題もそういうことになるのではないかなというふうに思っております。したがって、方向性としては先生がご心配されているような方向ではなくて、ただ最後の結論だけは、やはり最後の最後のすべての問題が一応整理終わった上での結論にしようという趣旨でこういう書き方をしているわけで、少し最後の結論のところは甘いかもしれませんけれども、それはあえてそういう意味を残しているということでございます。
 それから、2番目の点については、これは再三再四森田委員のほうから御確認があったとおりでございまして、そこについて一切方向転換をしたということはございません。

【中山主査】 松田委員、どうぞ。

【松田委員】 事務局が苦労をなさってこういう整理をしてくだったのは、実を言いますと私の意見をどう整理するかということもあったのだろうと思います。私は現段階でこういう整理をされたことで話が進んでいくのも次のステップのために必要だと思っていますので、一応これでいいということにしたいと思います。
 確かに全体の委員会の様子を見てみますと、2ページの2については割合すんなりなのだろうと思うのですが、2ページの1の課題が多いということで整理されたア・イ・ウというのは、特にアについては議論がなされ、そしてはっきり委員によって分かれているということはそのとおりだろうと思います。したがって、課題が多いというふうに整理をされてもやむを得ないとは思います。
 しかし、これは最後の報告のところでどう扱うかということについても、事務局の方は今の御発言で多分考えているのだろうと思いますけれども、アとイとウというのは実を言うと議論したボリュームは圧倒的に違いまして、アは一生懸命議論しましたけれども、イとウはほとんど議論されてないというのは皆さん方共通だろうと思います。アについては立場は違っても賛同する方々は少なくとも少数意見ではあったのですから、イとウとの違いは、最後は報告書では何とかそれを表現していただきたいと私は考えております。
 といいますのは、アとイとウの課題の大きさというのは全然違うのです。例えばレンタル店のことを考えますと、この理由の中にありますように大きな秩序の変化というものを来してしまいますけれども、アについてはこういう今あるビジネスモデルを崩壊するようなことは起こらないわけです。それから、アについて最大の問題だというふうにご指摘いただいたのははっきり言ってエンフォースメントなわけです。エンフォースメントについては今ここでは議論いたしませんが、しかし、エンフォースメントの問題は、例えば(2)のアでも同じ問題は抱えているわけです、私的な問題というのは。そうすると、アの問題が課題が多いというふうに整理されて現段階はいいとしましても、イとウと全く性質の違うものであること、これは御認識願いたいと思います。そういう前提のもとでこのペーパーで議論して整理していただくのはいいのではないかというように現在は考えています。

【椎名委員】 法整備の話とコンテンツ保護ルールの話ということでちょっと性格が違うのですが、コピーワンスの見直しという議論がありまして、昨日もこの部屋で議論がされまして、コピーワンスと称して実はハードディスクにはコピーネバーでしか記録ができない、というような現行のルールに対して、3年間もかけて情報通信審議会の方でEPN、つまりコピーフリーにしようというふうな議論があって、結局は、EPNもオーバークオリティーだということで、それらの中間的な、本当の意味でのコピーワンジェネレーションの運用ができないかみたいなことを検討委員会の方では見つけて今年は終わったというところです。
 やはり法制度にせよ、そのコンテンツ保護ルールにせよ、あまり今までの使い勝手を変えていくようなことを強制的にしたときに、やはり世の中はそれを受け入れないということがすごくあって、それを権利者という立場から考えても、コンテンツがある種よどみなく流れていくことによって…「文化」というとおこがましいのですけれども…いろいろな著作物を楽しむ楽しみ方とか、そのことを共有していく社会的な慣習みたいなものが崩れていくという方向でそのコンテンツ保護ルールや法整備をするべきではないと思うのですね。実効性があるか、あるいは法律を守るか守らないという議論があることの、さらに前の段階として、そういうふうに事務局のまとめにもありますけれども、今までの習慣を大きく変えないようなという視点からこの問題を捉えていかないと、ある意味で大げさに言うと文化の破壊につながるのではないかなと、権利者の立場からもそういうふうに思えてならないということだけ申し上げます。

【中山主査】 ありがとうございます。それでは亀井委員、次に大渕委員。

【亀井委員】 松田委員は一応これでよいとおっしゃいまして、各論のところは松田委員の御意見に賛成なのですが、その見直しにあたってはという今のところの観点として、先般大分御指摘のありました行為規範性として30条はどうあるべきかということであるとか、それから、この私的録音録画の問題、補償金も含めて利用者、消費者が非常に今注目をしているということがありますので、今まで慣れ親しんだ習慣を壊す可能性ということも含めますと、国民にいかにわかりやすく制度を作るかという見直しの観点としてはきちっとやはり書いておくべきではないかという点が1つでございます。
 それから、前回もあまり資料4については議論されるお時間がなかったのではないかと思うのですが、この資料4のタイトルで「補償措置の必要性について」というタイトルではございますけれども、順番からいたしますと、おそらく補償制度の存続意義といいましょうか、存続の必要性というのもがまずあって、その後で個々の対応において補償措置がいるのかいらないのか、どういった補償がいるのかといった議論が続くのではないかと考えます。
 平成4年の今の現行法というものの前提でもちろん議論がされているということではございますけれども、例えばタイムシフトであるとか、購入したCDのプレイスシフトといったことを考えますと、平成4年の現行法で、それが補償の対象であるということ自体に、利用者・消費者の納得性がないままきたという事実があるわけでございます。それがそういう補償金を払っていると思わずに習慣化しているということを考えますと、そもそもタイムシフトであるとかそういったプレイスシフトがどうして補償がいるのかというあたりがきちっと説明がされないと、これはこれ以上議論してもおそらくまた納得が得られないままいってしまうのではないかという気がいたします。この委員会の場でも佐野委員が大分何度か御主張されたと思いますが、購入したCDを自分のために複製することは無償であるべきだという御意見もあるわけでございますので、その点もどう今後の議論の中で反映するかということを、きちっと資料としては残していただいたらどうかと思います。

【中山主査】 それでは、大渕委員。

【大渕委員】 少し細かい話になって恐縮なのですが、資料3の最後の3ページの「4 罰則の適用について」というところで、これは要するに現行法30条1項2号との横並びもあって罰則の適用対象にしないということでありますが、これは、もちろん、あまり刑罰を過度に用いるのは好ましくないという刑罰の謙抑性の観点からも大変よろしいのではないかと思います。現行法でも、例えば、技術的保護手段の回避による複製は、民事責任の対象にはなっても刑事罰の対象からは外してありますので、この点とのバランスからしても、罰則の適用対象にしないという点は大変に結構だと思います。
 また、責任につき限定的に考えるという点では同様の面がありますが、資料3の2ページの2アの違法複製物、違法サイトの関係の点であります。これは30条1項の対象外にする方向に関して課題が少ないということで挙げられているのですが、理由の*の2番目のところには、「ただし、利用者保護の立場から複製物等が違法に作成されたものであることを知っていた場合に限る等の限定が必要と考えられる。」と書かれています。違法サイトと知らなくても、違法だということになりますと、利用者の観点から見ると「知らずにやってしまっても全部違法なのか」という疑問が生ずることになってしまいます。その観点から現行法を見ますと、30条1項2号においては、技術的保護手段の回避による複製につき「その事実を知りながら行う場合」という形で絞り込んであり、利用者の利益を害さないように配慮されています。違法複製物、違法サイトの関係でも、これと同様に、違法化とする範囲を過度に広汎にはしないという観点からは、一定の絞り込みを適切に行って、利用者の利益を害さないように配慮するという点で、先ほどの絞り込みは適切なものだと思います。それから、この違法複製物、違法サイトからの私的録音録画の点につき、資料3の2ページの一番下の(注)のところで、複製行為を対象とするものであるから、複製を伴わないストリーム配信での試聴については対象にしないとしている点もよいと思います。
 次に、少し違う観点なのですが、資料3の3ページの適法配信からの私的録音録画というものがあります。これも30条1項の対象外にするということで、前回のお話では要するに、今後、私的使用としての権利制限の対象とはせずに、むしろ、DRM等と組み合わされたものなのでしょうけれども、契約のスキームに移していくということでありました。そこで、心配しすぎかもしれませんが、少し気になりますのが、次の点であります。
 今までは、ダウンロード自体までは契約で許諾されているが、そこから先の複製はその契約による許諾の対象に含まれているのか含まれていないのかは必ずしもよく分からない場合であっても、要するに私的使用の範囲であれば、契約による許諾でカバーされているかどうかとは関係なく、30条1項の権利制限により違法でないことになったのですが、法改正により適法配信からの私的録音録画を30条1項の権利制限の対象外とすると、次の点はどのようになるのでしょうか。すなわち、将来、適法配信からのダウンロード等の許諾の契約が、ダウンロード自体以降の一定範囲の複製まで許諾するという契約プラクティスになっていくことが予測されるということでしたので、このような契約プラクティスになった場合には、30条1項の対象外としても、上記のような契約プラクティスによる許諾により、複製等が適法になるでしょうが、このような契約プラクティスができるまでの間は、どうなるのかという点が問題となってきます。しかし、以前お聞きした話ですと、現在の契約プラクティスでは、配信からのダウンロード等の許諾の契約においては、ダウンロード以降の複製についても許諾がなされているかについて曖昧なものも多いということだったと思います。先ほどのように、現行法では、この点の許諾が曖昧であっても、30条1項の権利制限により、複製が適法化されますので、このような現行法の下での契約プラクティスにおいて、この点が曖昧であるのも当然かもしれないのですが、このような契約プラクティスから先ほどのような新たな契約プラクティスに切り替わるまでの間の過渡期においては、従前のままの契約プラクティスであれば、もしかすると従前どおりの曖昧な契約のまま、黙示のものを含めて許諾が立証できないとなると、新法の下では、その部分については、その限りでは、違法であるということに理論的にはなるということなのでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 理論的にはそういうことでございます、もちろん当然のことながら。ただ、その見直しにあたっては、もともと30条が認められたのは閉鎖的な領域で行われると、零細な利用であるというようなところでございますけれども、それを原則に戻すというときには、それ以外にいろいろな考慮要件があるのだと思いますし、実は前回までのこの委員会での御議論もそういうことでございました。例えばそういった法の介入の問題とかトランザクションコストの問題とかそういった問題もあって、そのときにやはり考えなければならないのは、これはここのペーパーにも書いていますけれども、昭和45年に私的使用の複製が認められてから、アナログかデジタルかは別にして、やっぱり個人でコピーをして著作物を楽しむということは、長い間国民の間に定着した事実でございますから、そこを利便性というものを無視して、権利者に被害を与えているからといって元に戻すというわけではないと思うのです。
 したがって、適法配信などの場合も、やはり戻し得るような前提条件が、現在の技術とか契約で出てきたということで1つの課題が少ないということで成立させていただきましたけれども、本当にそこを戻すかどうかについては、もう少し事務局の方でもいろいろな配信業者の方から御意見も伺ったりしながら、制度の具体的な設計と並行してやっていきたいと。最終的にどうするかというのはこの委員会で御判断でございますけれども、必要に応じてそういったところも検証していきたいと思っております。

【中山主査】 それから、先ほど亀井委員からの御意見の、そもそも補償措置の必要性を議論すべきじゃないかという、その点はいかがでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 まず亀井委員の御指摘の第1点の「国民の分かりやすい」というのは、これは当然のことだと思います、制度を考える場合に。先ほど私も言いましたように、やはり現実に私的録音録画によって著作物を楽しむということは、それは国民の権利かどうかというのは、そこまで権利だとおっしゃる方もおられます。そこはいろいろな議論のあるところでしょうけれども、現実にはそういう現象が定着していることは事実でございますので、それをむりやり法的ルールを変えてということについては、やはり問題があろうかと。そのルールを変える場合にはそれなりの理由が必要なんだということだと思います。それについては当然のことながら、国民にわかりやすいというのは当然のことなので、いわば当たり前のことというふうに私どもは考えておりますので、今、亀井委員からの御指摘の点については、さらに十分踏まえながら今後いろいろな議論をしていきたいと思っております。
 もう1点の件でございますけれども、補償制度の存続の必要そのものの議論についての議論ということでございますが。私どもは、これは先ほどから説明しましたように、補償金の制度の問題というのは今ここ2、3年の間に出てきた問題ではございません。これは皆さん御承知のとおりでございます。我が国でいうと昭和53年から検討が始まりまして、著作権審議会の第5小委員会で一定の結論が出て、それを踏まえた上で関係の権利者、メーカー、消費者、学識経験者で構成した懇談会で検討が加えられ、さらに著作権審議会の第10小委員会で関係者が集まった委員会で検討が行われ、一定の結論が出て今日に至っているわけでございます。したがって、その補償措置のそもそも論については15年近く議論が行われていまして、そこで積み上げられた成果というのがあるというのは、これは事実としてあるわけでございます。
 一方、その検討の結果の帰結の平成4年度の改正というものがあるわけでございますが、それから今日までいろいろな事情の変化があるというふうに思っておりまして、実は前回の法政問題小委員会でその制度の見直しについて提言がされている。それはそういったいろいろな事情の変化を踏まえた上でということだと思っております。したがって、この委員会でも、例えば前回の法政問題小委員会で御指摘された二重取りの議論とか、著作権保護技術との関係の整理もしていただきました。そういうことで今回このように考えているわけでございます。したがって、今までの議論の積み重ねの成果がすべてゼロにして最初から検討し直すということで私はないと思うのです。法政問題小委員会の御議論もそういうことではないと思うのですけれども、新しい現状を踏まえた上で抜本的に見直しをするということでございます。
 ただ、これからいろいろな制度の問題について次の段階に進んでいく上において、当然のことながらタイムシフティングとかプレイスシフティングの問題についても話し合いがされると思います。また、必要に応じて国民にわかりやすくということでございますと、以前どういう議論が行われてどういう整理をされたかというものについいては、必要に応じて私どものほうで資料も提出しながら、事実上といいますか、御議論もしていただければと思っておりますので、できる限り委員の御希望には沿うような形で議論は進めさせていただきたいと思っております。

【中山主査】 どうぞ、小六委員。

【小六委員】 今日の御説明、まとめといいますか、8回ですのである程度大枠がわかりやすいようにまとめていただけると思っております。先ほどからお話にありますような見直しにあたってはというのは、見直しの検討にあたってはというような意味合いですとか非常に微妙な問題だとは思いますけれども。やはり私たち権利者の立場から申し上げますと、今伺いましたように継続的な時代の流れの中において、いかに我々の権利を守っていただけるかというところに立脚していると思います。この議論が多分この後、まだ説明はありませんが、資料4の補償措置の必要性についてというところにできれば収斂していくような形で前に一歩議論を進めていただいて、もちろん細かい問題はたくさんあると思いますが、先ほどもずっと感じたのですが、どちらを先に解決するかということを言い始めますとなかなか難しいと。やはり並列をしてその次にあるような制度設計だと思われるようなもの、これに関して議論を進めていっていただけるようになればうれしいと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。では、河野委員。

【河野委員】 補償の必要性についてのお話なのですが、資料4の3の2つ目の丸のところですね。「著作権保護技術の範囲内の録音録画を関係権利者は許容したとして」とありその許容された複製と補償措置が併存できるのか、という論点で書かれていますけれども、許容のあるなしということとは別の観点、資料3で事務局におまとめいただいているような、権利保護と利用の円滑化の調和という観点で、補償措置が必要な部分がどこなのかということも、論点の1つとしてあるのではないかと思います。
 もっと具体的に申し上げれば、資料4の1の実態のところで「複製の総体」という言葉が使われていますけれども、デジタルでの複製であればそれはすべて補償措置の対象と考えるのかどうか。資料があちこちに行って恐縮ですけど、資料2の2ページ目で、平成11年の改正のまさに下線を引いていただいているところ、技術的保護手段を回避することによる複製は権利者の方たちの経済的利益を著しく害するおそれがあるというふうにまとめておられます。ということは、裏を返せば、技術的保護手段が施されている著作物を、その保護手段が前提とする範囲で複製するであれば、それは著作権者等の経済的利益を著しく害さないとも考えられると思います。「補償措置の対象となる複製というのがいかなるものなのか」ということを補償措置の必要性ということを議論する場合にはまずそこをしっかり議論をすべきではないかと思いますし、そういう「複製の総体」が社会全体としてどうなっているのかということを見て皆さんで議論をしていくというのがよろしいのではないかと思います。
 最後に1つつけ加えますと、この補償措置の対象となるべき複製というのが社会全体としてどうなのか、ということを見るような実態調査には、ここでお示しいただいている調査はなってないのではないかと思います。もちろん、複数ある実態調査の中の1つとしてこれは参考にできるものだと思いますけれども、論点を絞った上で実態をきちんと評価するということが必要だというふうに考えます。ありがとうございます。

【中山主査】 ちょっと時間がオーバーしますけれども、若干の延長をお許し願えればと思います。では、椎名委員どうぞ。

【椎名委員】 簡単に。やはりデジタルの技術が進んでいろいろな手軽に複製ができるようになったとしても、個々の利用者の複製をする規模というのはそんなに増えたわけではないけれども、やはりそれに使われる機器とか媒体とかソフトウエアというのがさまざまに開発されてそれが世の中に出回った結果、その総体が大きくなっているということはやはり議論がないのだと思います。そこで1つだけ指摘しておきたいのですが、権利者の利益を守るというのは筋道として考える上では当然の考え方なのですけれども、補償金制度というのが権利者のためにあるのと同時に、実はユーザーの利便性を確保するという意味もあると思うのですね。自由に使える環境を担保するための補償金制度だという議論もしていただきたいなと思っています。

【中山主査】 ありがとうございます。では、生野委員どうぞ。

【生野委員】 30条の範囲の議論にあたりましては、いろいろ津田委員らから御意見がございました。制度改正に課題が多い少ないという寄せ方のところに関しては異論がありますが、今後のさらなる検討にあたっての整理の仕方としては事務局で整理されたもので私はよかろうと思います。
 その中で課題が少ないという項目で侵害物からの複製、これを30条から除外することにつきましては、特に今後の音楽配信の健全な成長のためには非常に大きな要素となる事項であります。実態調査を行ったところ、ファイル交換、インターネット上におきましては適法なダウンロードに比べて違法のものが10倍近くあるということ、それから、これまでセキュリティが高いと言われてきた携帯におきましても、適法なダウンロードと比較して、違法なサイトからそれに近いものがダウンロードされているということが推定されます。非常に重要な事項が侵害物からの複製、これは30条から除外するということだと思います。
 それと、先ほど大渕委員から罰則の適用に関して御意見がございましたが、私もこれにつきましては30条1項1号、2号との整合からして民事責任の追及というところで罰則の適用に関しましては、事務局のこれまでどおり踏襲するという考え方に賛成でございます。
 それと、これも大渕委員のほうからございました、ダウンロードにおいて情を知っているというその要件云々、これも多分事務局のほうで30条1項2号ですか、事実を知りながらというところの見合いで書かれたと思うのですが、そういった限定も必要なのではないかなと考えます。以上です。

【井田委員】 資料4の実態ということで、ここの実態の評価に基づいて補償措置が必要だという前提として語られていると思うのですが、先ほどから出ておりますように、複製の総体としてものすごく大きくなっているということが、ここには書いてあるということですね。個々には増えていないけれども総体は増えているということですが。
 この録音とか録画のところに書いてある内容を見ますと、実際に増えているというのはプレイスシフト、タイムシフトが増えていると、同一コンテンツから多数の複製物が作成されるという実態は少ないというふうに書かれています。確かにいろいろな機器の使いやすさとか、そういう発展で、個人の方が非常に簡便にそういうことができるようになったんだろうなという実態はあると思うのですけれども、この総体が増えているというプレイスシフト、タイムシフトが果たしてこの補償の対象になるのかどうかというのはやはり一番重要なポイントだと思いますので、これについては十分議論した上でやるべきだなということを申し上げておきたいと思います。
 もう1点言わせてもらいますと、資料3の方で課題が多いという中で、松田委員のほうからアとイとウとは全然違いますねと。アの問題について随分検討されたということですが、逆に言うとイとかウについては検討されないままにここに書かれているというのがあります。前も申し上げましたけれども、この適法配信からのものを外すという議論があるのであれば、例えばレンタル店とか放送とか、こういったところも許諾複製という形で外れるという可能性もあるのではないかなというのもありますので、そういった議論が十分まだされてないなという認識をしています。これは今から後半検討する中で触れていかれるかもしれませんけれども、そういった議論もしながら進めていただきたいなと考えております。

【中山主査】 ありがとうございます。どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】 資料3の3ページのイ、適法配信からの私的録音録画と書かれているところと、資料4の2ページの3項、著作権保護技術とその範囲内の云々というところとの関係について質問なのですが、資料3の3ページのイの趣旨は、著作権保護技術を含む契約等による適法配信で得たコンテンツを、利用者が私的使用するために録音録画することについては、30条1項の対象外にしようという趣旨で、もしこれが比較的問題が少ないということで改正をされたとすれば、ほぼ自動的にその録音録画については補償金の対象外になるというふうに私は読んでいたのですが。この資料4の参考を見ると、そういう場合でもなお併存できると考えられるという趣旨のことが書いてあったのですが、これは現状を書いておられるので、もし資料3の3ページのイが30条から外されれば、この資料4の3項の議論というのはほぼなくなると理解してよろしいでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 今の現行法ができた平成4年当時は、コピーというのは基本的にはパッケージソフトからのコピーと、プラスαとして放送からのコピー。例えば放送でいえばFMとかそういったところのコピーがありましたけれども、今はインターネットの発達によってネットでダウンロードするということで、そういう意味では録音録画源というのは多様化しているわけでございます。そうするとこれは各種の実態調査でもありますように、やはりパッケージからのコピーというのが今のCD媒体、特に20年前の技術で作られたCD媒体については、一時期そのCCCDとかそういったものでやりましたけれども、現行はいろいろな諸問題もあり消費者の反発もあってコピーが可能だというのがあると。それプラス、その配信の部分があります。
 適法配信については、この資料でも示されていますように、著作権保護技術と契約によって30条の外れたとしても、例えば消費者が配信からのコピーが一切できなくなるというのではなくて、それはビジネスモデルの一環として許諾をベースにして消費者がお困りにならずに従来どおりコピーができるじゃないかと。それでは30条でわざわざ権利制限する必要はなくて外しても可能なのではないかということになるわけです。
 そうすると、その部分を取ってまた違法サイトからのダウンロードも30条から外しますと、これは元の平成4年当時のパッケージソフトからのコピーと現実には、あとは放送からのコピーが残ってくると。ということで、それでは新しい録音録画源のものが30条から外れたとしても、パッケージソフトからのコピー、放送等からのコピーについてはやはりまだ補償措置が必要なのではないかなというのがこの資料の3と4との関係というふうに私どもとしては整理しているのです。

【椎名委員】 適法配信に関して、これは何度も指摘させていただいているのですが。ビジネスモデルによっては事実上DRMが何もかかっていなくて、配信からハードディスクに蓄えてそれを焼いたものが、結局それがCDと同じ振る舞いをするようなケースというのをどこで線引きをするか。30条1項の範囲からはずす適法な有料配信と称するものが一体どこまでなのか。ビジネスモデルがどこまでになっているのかということを明確にしていく必要があるという点を再度指摘したいのと思います。それと契約によって権利を行使することが可能であると書いてありますけれども、ちょっと以前生野さんと議論になってしまった件ですが、実演家にとっては、少なくとも補償金制度があることを前提にDRM等の採用不採用の可否には関与してないという現実がありますので、そこが私的複製の範囲から外れてライセンスドコピーであるという定義がなされたときに、そこの契約の整備ということもきっと必要になってくると思うんですね。だから一概に、権利行使が可能であるというふうに書かれてしまうと、今後の課題は結構あるのかなと思います。

【石井委員】 先ほどの井田委員の発言でもし誤解があるといけませんので確認しておきますが、放送からの私的録音録画に関して、これ、今コピーワンスと伺っていますけれども、この範囲を放送事業者が許容したとかそういうことではなくて、あくまでも30条を前提として運用していると。許容する・しないの問題ではないと。そのことは資料4の3ページのところに、その30条の考え方を前提にしているというような趣旨のことが書いてありますけれども、その範囲のものであるということを改めて申し添えさせていただきます。

【中山主査】 ありがとうございます。それでは華頂委員。

【華頂委員】 先ほどからタイムシフトの話がいろいろ出ているのですけれども、映画業界の立場からちょっとお話しさせていただくと、資料2の2ページの(参考)のところの一番最後の行ですが。「映画業界がパッケージからのコピーは禁止の選択をしたため、事実上放送録画の制度として運用された」とあります。補償金制度のことなのですけれども、映画業界は非常に単純です。パッケージはコピー禁止にしたので補償金はいりませんと。ただ、放送録画の場合は、本当はコピーネバーにしたいのですけれども、タイムシフトという視聴形態があるので、これは補償金制度の運用ということでバランスをとって、何とか許容しましょうということです。そういう考えは今も変わっておりませんので、それだけは申し上げておきます。

【中山主査】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。かなり時間も過ぎてしまって申しわけありません。津田委員はじめ、かなり根本的な議論を頂戴いたしましたけれども、この問題は所詮全体の中でパッケージで捉えざるを得ないと思いますので、次年度以降も根本的なものも含めて議論することになろうかと思います。したがって、大体この事務局の方向でいくけれども、先ほどいろいろな委員から頂戴いたしましたような意見も、今後も頂戴しながら進めていくということでいかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、基本的にはこの方向については大きな異論がないということにしたいと思います。
 なお、来年の1月30日に著作権分科会の開催が予定されておりますので、本小委員会のこれまでの審議の経過につきましては、私から分科会で報告をするということにしたいと思います。
 大分時間が超過いたしまして申しわけございませんけれども、最後に今期の私的録音録画小委員会は今日で終わりでございますので、事務局から挨拶をお願いしたいと思います。

【吉田審議官】 今期のこの私的録音録画小委員会を終えるにあたりまして、これまでの委員の皆様の御協力に厚く感謝申し上げたいと思います。今、主査の方でおまとめいただきましたように、一応これまでの整理をもとにして、来期におきましてもこの方向をさらに深めていくという形で議論させていただくということになりました。来期が一応この小委員会としては期限といいましょうか、来期で結論を得たいと私どもの方では考えておりますので、また引き続き御協力をお願いいたします。今期はどうもありがとうございました。

【中山主査】 難しい問題につきまして議論を頂戴してありがとうございました。この問題は著作権法の中の一部のように見えますけれども、30条という大きな根本的な問題にもかかわっていますし、それは情報化あるいはデジタル化という大きな波の中の1コマでございますので、議論が錯綜するのはむしろ当然だろうと思います。次年以降、何とかまとめていかなければなりませんので、よろしく御協力をお願いしたいと思います。
 以上をもちまして、文化審議会著作権分科会、第8回私的録音録画小委員会を終了させていただきます。本日は長時間ありがとうございました。

〔了〕

(文化庁著作権課)


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