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2.1.インターネットの普及に伴う著作権法を取り巻く環境変化について

 実務家、有識者に対するヒアリング調査から、インターネットの普及に伴う著作権法を取り巻く環境変化について、以下のような意見が得られた。(以下ではヒアリング調査で得られた個々の意見を掲載しており、全体としての傾向を示したものではないことに注意。)

■誰もが著作者・利用者となりうる状況

  • 現在は、誰もが著作者・利用者となりえ、いつでもどこでも著作物のアップロードとダウンロードが可能となっている(=「ユビキタス社会」)との指摘があった。
  • インターネットは通信手段に過ぎないが、1対多の通信を多様な場面で可能にしたことにより、著作物の市場形成の方法にインパクトをもたらしたのではないかとの指摘があった。例えば、以前は、作家として市場に出るには文学賞受賞などの登竜門を経ることが必要だったが、インターネットによって、著作者の層が広がり、著作物を公表して、マーケットに出て行くチャンスが増えたと言えるのではないかとの指摘があった。

■二次創作の活発化

  • インターネット上の二次創作が盛んになっており、その要因として、1)デジタル化によって著作物を創作・改変しやすくなったこと、2)ネットワークによって情報発信・著作物の流通が容易になったこと、等が挙げられるとの指摘があった。
  • デジタル化により、「オリジナル」の概念が希薄化しているのではないかとの指摘があった。

■技術の発展による可能性の拡大と著作権法による制約

  • 技術が発展してビジネスの可能性が広がってきているのに、著作権法が障害となってビジネスを実現できないために、著作権法制に対するユーザからの風当たりが強く、本当は既得権益者を保護するためではないかと誤解されている可能性があるとの指摘があった。
  • 著作権に基づいて、権利者側が利用の自由を技術的に制約する場面が出てきたことに伴って、一般ユーザの間で著作権に対する反感が強まっている部分があるとの指摘があった。ただし、その反感の大部分は誤解によるものと考えられるとのことである。

■「プロ仕様」の著作権法の限界

  • これまでは著作者や流通の当事者が少数のプロに限られていたため、著作者も流通の当事者も著作権のルールを把握していたし、誰が権利者かわかりやすかった。しかし、著作者が増え、利用者の層も同様に拡大したことで、著作権のルールを知らないまま創作し、利用するケースが増えるとともに、著作者の特定が問題となる場面が増えてきたとの指摘があった。
  • 現行の著作権法は、限られた著作者による著作物の流通量を前提としているため、その枠組をはみ出した場合に問題が生じ、制度としていろんな面でほころびがでてきていると思われるとの指摘があった。

■一般ユーザにルールを浸透させるための仕組みの必要性

  • ルールづくりは重要であるが、一般ユーザに浸透していないことが問題である。一般ユーザにルールを浸透させるための仕組が重要であるとの指摘があった。実際、「二次創作によって自らの権利が発生する。」「私的に楽しむためにアップロードしたのになぜ削除されるのか。」といった誤解をするユーザもいるとのことである。

■通信回線容量の拡大による利用許諾契約の複雑化

  • インターネットで扱うデータは、以前は文字が中心であったが、通信回線容量の拡大により画像・音声・映像に広がってきている。映像の場合、相対的に利用許諾契約が複雑となり、利用上の障害となりやすいとの指摘があった。

■著作権法以外の法分野との領域の重複

  • プロバイダ責任制限法、通信法制(電気通信事業法、電波法等)、消費者契約法、個人情報保護法等、著作権法以外の法分野との領域の重複もあり、問題はますます複雑化しているとの指摘があった。