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著作権分科会 法制問題小委員会(第7回)議事録

1. 日時
  平成18年8月17日(木曜日)14時1分〜15時12分

2. 場所
  三田共用会議所 3階 大会議室

3. 出席者
 
(委員) 市川,大渕,潮見,末吉,茶園,土肥,苗村,中山,松田,森田の各委員
野村分科会長
(文化庁) 吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,秋葉国際課長,川瀬著作物流通推進室長ほか関係者

4. 議事次第
 
1  開会
2  議事
 
(1) 文化審議会著作権分科会における意見の概要
(2) 意見募集の結果報告
(3) 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)の検討・取りまとめ
(4) 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)の検討
3  閉会

5. 配付資料一覧
 
資料1   「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する著作権分科会(平成18年6月20日)における意見の概要
資料2 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する意見募集の結果概要
資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)
資料4 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)

参考資料1   「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する意見募集の結果

6. 議事内容
 

【中山主査】 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権議分科会法制問題小委員会の第7回を開催いたします。
 本日は、御多忙の中、御出席賜りまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場をいただいております。こういう措置でよろしゅうございましょうか。

[「異議なし」の声あり]

【中山主査】 ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはこのまま傍聴をいただきたいと思います。
 それでは議事に入ります前に、まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 よろしくお願いいたします。本日の配付資料は、議事次第の1枚紙の中段以下にもございますとおり、4点ございます。
 資料の1ですが、IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係の「報告書(案)」に対する平成18年6月20日に行われました著作権分科会における意見の概要でございます。資料の2が、その「報告書(案)」に対しましての意見募集の結果の概要。資料の3が「報告書(案)」でございます。資料の4につきましては、私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果関係の報告書の案でございます。右上に資料番号を付してございますので、万一、不足等ございましたら、事務局までお知らせいただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。

【中山主査】 よろしゅうございますか。

【白鳥著作権調査官】 それでは、よろしくお願いします。

【中山主査】 それではいつものとおり、まず最初に議事の段取りを確認しておきたいと思います。
 議題といたしましては、まずIPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係につきましての「報告書(案)」の検討・取りまとめを行いたいと思います。
 この「報告書(案)」につきましては、6月7日に開催されました当小委員会において検討を行いました後に、6月20日に開催されました文化審議会著作権分科会において報告を行い、その後、6月21日から7月20日までの1ヶ月間、意見募集を行いました。
 そこで、著作権分科会において委員から出された御意見や、意見募集による御意見につきまして、まず、事務局から報告をいただきたいと思います。
 その上で、頂戴した御意見を参考にしつつ、本日はIPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係について、「報告書(案)」の検討を行い、「報告書」として取りまとめを行いたいと思います。
 次の議題といたしましては、第5回、第6回の会議において取り上げました「私的使用目的の複製の見直し」と「共有著作権に係る制度の整備」に関するこれまでの議論と、契約・利用ワーキングチーム、司法救済ワーキングチームからの検討結果報告を踏まえまして、本日は、これらの課題に関する「報告書(案)」について、検討をしていただきたいと思います。
 それではまず、6月20日に開催されました著作権分科会において、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する意見の概要につきまして、事務局の方から説明をお願いします。

【甲野著作権課長】 御説明を申し上げます。資料1をお開けください。資料1は、去る6月20日に行われました著作権分科会におけるIPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係報告書(案)についての意見の概要でございます。
 まずIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等についての意見につきまして、御紹介をいたします。
 基本的な考え方につきましては、この今回の措置につきましては、権利の保護と利用のバランスに配慮していると言え、一定の評価をしたいという意見がございました。また、この問題には、著作権法だけが関係しているわけではないので、放送法制のことも関連して考えていかなければならないという意見、あるいは一定の目的において、利用を促進するために著作権法を変えていく場合、著作者等の意欲を失わせないような配慮が必要であるといった意見も出されたところでございます。
 次に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信の取扱いについての意見でございますけれども、地上デジタル放送の完全実施のためには、著作権法を改正しなくても、権利の集中管理を行うことにより対応可能であるといった意見が出されました。
 また、報告書の中には、「公共性等が確保されているのであれば、有利な取扱いをすることは差し支えない」というふうに書いてございますが、この公共性の担保をどのような形で進めていくのかといった意見、そして、具体的には難視聴地域の解消についてということかと思いますけれども、僻地はビジネスにならないから切り捨てるということにならないか懸念するといった意見が出されました。
 また、難視聴地域の解消だけでなく、公共性を維持するということは、どのような内容のものを伝えていくかということも大事であり、今後の議論において注視すべきであるといった意見も出されたところでございます。
 続きまして3番目で、有線放送による放送の同時再送信の取扱いについてでございますが、これについても、新しい権利として「報酬請求権」を付与したことについて、一定の評価をしたいという意見が出されたところでございます。
 続きまして4番目のIPマルチキャスト放送による「自主放送」の取扱いについてでございますけれども、直ちに制度改正を行うことはせず、今後引き続き議論するという整理になっているが、良い判断だと考えるといったような意見がありました。
 しかしながら他方で、全体のテンポが総じて急であるので、法制問題小委員会に対して、ある程度先を見通して議論を進めることを要望したいといった意見も出されたところでございました。
 5の契約の在り方についてでございますけれども、著作権者に報いるための仕組みが今後の検討課題となるだろうといった御意見、そして、この仕組み作りにあたっては、「報告書(案)」にもあるとおり、文化庁は積極的に支援すべきであるといった意見も出されたところでございました。
 また、IPマルチキャスト放送においては、大量のコンテンツがデジタル情報として伝達されるということから、この違いが権利者に与える影響について、将来的に検討する必要がある、こういった意見が出されました。
 また、罰則の強化につきましては、著作権侵害の抑止力を高める観点から、賛成であるといった意見が出されたところでございます。
 以上、概要について、御説明をさせていただきました。

【中山主査】 それでは引き続きまして、同「報告書(案)」に対する国民からの意見募集の結果について、事務局から説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 資料2をお開けいただきたいと思います。資料の2は、今主査からお話がありました、国民からの意見募集の結果の概要を取りまとめたものでございます。この概要に沿いまして、主な意見を御紹介したいと思います。
 まず、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いについてでございます。基本的な考え方につきましては、報告書(案)に基本的に賛成といった意見が出されておりましたけれども、他方、放送の概念の取扱いを見直す必要性は高まっているが、このことは、IPマルチキャストによる地上デジタル放送の同時再送信の必要性の問題とは別に、十分な議論をすべきであるといった意見、最も今後期待されているのは、インターネットで送信する放送であるので、IPマルチキャストに議論を限定しては、放送・通信の融合に資する提言は出てこない、といったような意見も出されたところでございます。
 続きまして、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信の取扱いについてでございますけれども、現在の送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることには反対といった意見が関係団体から出されてきたところでございます。また、やはり許諾権による管理が必要である、権利を集中管理することで十分対応が可能であるといったような意見が同様に出されてきたところでございます。
 他方、2ページ目以降をお開けいただきたいわけでございますけれども、実演家団体においては、JASRAC(ジャスラック)と同様の集中管理システムができていない以上は、法改正はやむを得ない、将来CPRAによる集中管理体制が確立した際には、再度見直すべきであるといった意見もございました。
 また、海外のレコードの関係の権利者からは、米国のレコードも保護の対象となるようにすべきであるといった意見、また放送事業者からは、放送対象内に、地域内に限定されることを明記すべきであるといった意見が出されたところでございます。
 また、ケーブルテレビジョンの事業者の団体からは、有線放送事業者に課せられている同時性・同一性・地域限定等の再送信要件及び難視聴解消等の公共的責務がIPマルチキャスト事業者にも課せられていることが担保されない場合、有線放送事業者と同様の取扱いにすべきでないといった意見、あるいはIPマルチキャスト放送による放送の再送信を行うにあたっては、電気通信役務利用放送法の規制を受けている事業者も、有線テレビジョン放送法並みの規制、同時再送信義務などと裁定の手続きの確保が必要であり、この点についても提言すべきであるといった意見が出されたところでございました。
 3番目に、有線放送によります放送の同時再送信の取扱いでございます。これにつきましては、レコードの関係の団体からは、レコード製作者に報酬請求権を付与することとした点は高く評価という意見が出されたところでございました。しかしながら他方で、ケーブルテレビの事業者からは、新たな経済的な負担が発生することがないよう担保されることを望むといった意見などが出されているところでございます。
 そして4番目に、IPマルチキャスト放送による「自主放送」の取扱いについてでございますが、役務利用放送協議会からは、引き続き早急にこの点について検討されることを希望するといった意見が出されました。また関係団体からは、権利制限の範囲を安易に拡大することには強く反対するといった意見なども出されているところでございます。
 5番目に、契約の在り方についてでございますが、ケーブルテレビの団体からは、現契約の存在を尊重して行われるべきといったような意見が出されました。
 また、その他といたしまして、具体的な今後の手続等々につきましての御意見が出されたところでございます。
 続いて2番目に、ページといたしましては4ページでございますが、罰則の強化についての意見を御紹介したいと思います。
 著作権侵害に係る罰則の強化は、やはり著作権侵害の抑止力を高めるために必要であるといったような意見が出されましたけれども、また逆に、基本的には罰金刑の財産刑の強化によるべきであり、自由刑の引き上げについては、できる限り慎重な対応をすべきである、保護の外延が曖昧な著作権の侵害に対しては、重い法定刑が科されるおそれがあれば、かえって自由な創作活動を阻害することにもなりかねないといったような意見も出されておりました。
 続きまして3番目に、税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について、5ページでございますが、幾つかの意見を御紹介したいと思います。侵害品の輸出・通過行為についても、税関における水際規制の対象とすべきであるといった意見が出されている反面、侵害品でない物の輸出が誤って差し止められることがないように配慮すべきといった意見も出されてきたところでございます。
 以上、御紹介しましたものは全体の中の一部ではございますが、代表的と思われるものにつきまして、紹介をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。それでは、引き続きまして、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」の検討及び取りまとめを行いたいと思います。事務局より「報告書(案)」につきまして、説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 お手元の資料の3を御覧いただければと思います。
 ただいまの6月20日の著作権分科会における意見と意見募集での意見を踏まえまして、新たに「報告書(案)」として取りまとめて事務局として準備をいたしました。分科会の意見や国民からの意見募集によって頂戴しました意見を拝見をいたしますと、若干反対という意見もありますけれども、最終的には法律が制定され、またその運用が定まるという中で、関係者の方々が納得いかれるような運用にするということは不可能ではないと考えております。
 そのようなことから、「報告書(案)」につきましては、基本的な方向につきましては、前回のものを維持することといたしまして、また若干、事実の誤り等々があるところにつきまして修正を施してございます。大きな修正につきまして、幾つかの点を御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず3ページのところでございますが、「知的財産推進計画2006」につきましても関係の記述があるということで、これを注の中に加えたところでございます。
 それ以外にIPマルチキャスト放送の著作権法の取扱いにつきましては、若干「てにをは」等の修正がある他は、大きな修正というものは加えられてはいないところでございます。
 それから刑罰の強化のところにつきましては、外国の情勢につきまして、一部誤りがございましたので、修正をいたしました。43ページのところでございますが、イギリスのところで、自由刑で「最高が10年以下の禁固」となっておりましたけれども、これは誤りでございまして、これを「最高2年以下の禁固」という形に修正をしております。
 それから45ページでございますけれども、45ページの上のところ、(3)の最後の部分になりますけれども、このところでは、著作権侵害罪以外の罪につきまして、どういう対応を取るかという部分でございました。元のものは、「著作権侵害罪とのバランスと各規定の趣旨を照らし合わせながら、罰則の引き上げの必要性について判断することが適当である」ということでございましたけれども、先ほどの意見募集から出てきた意見等々を拝見いたしますと、必ずしも厳罰化をするということが適切かどうか慎重に考えた方がいいのではないかという意見も多数あったところでございます。
 そうした点も踏まえまして、表現といたしましては、「罰則の引き上げの必要性について判断する」という部分を、「罰則の引き上げを慎重に判断することが適当である」という形に修正いたしました。
 その他若干の「てにをは」がありますけれども、それにつきましての説明は省略をさせていただきたいと思います。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは、意見交換に移りたいと思います。複数の論点がございますので、論点ごとに区切って意見を頂戴いしたいと思います。
 まず最初に、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等につきまして、御意見を頂戴したいと思います。10分程度、時間を用意してございますので、何か御意見がございましたらお願いいたします。
 特に御意見はございませんでしょうか。先刻お手元に届いていると思いますので、もうお読みいただいたと思いますけれども、御意見なしということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは引き続きまして、「罰則の強化について」の御意見を伺いたいと思います。世界でもダントツの重たい刑罰になるわけですけれども、何か御意見がございましたら。

【苗村委員】 意見ではなく質問をよろしいですか。

【中山主査】 どうぞ。

【苗村委員】 先ほど、3ページの方の注で、「知的財産推進計画2006」の一部を引用されたわけですが、33ページでは、同じ「知的財産推進計画」の2005年版を引用されているのは、これは、2006には同じ趣旨の記述はないのでしょうか。

【中山主査】 推進計画では49ページ。

【苗村委員】 あるのであれば、合わせていただくと。

【中山主査】 少し読んでみますと、こういう文章があります。「知財権侵害に対する抑止効果を高めるため、2006年度も引き続き、著作権及び育成者権の侵害に係る刑罰(懲役)の上限を10年とすることについて検討し、必要に応じ制度を整備する」という、こういうものが、「知的財産推進計画2006」に載っております。

【苗村委員】 差し支えがなければ、ここは「知的財産推進計画2006」にした方が、読者にとっては分かりやすいような気もしますので。

【中山主査】 その点、ありがとうございました。検討というか、これは「知的財産推進計画2006」の方がよろしいですね。では、そう修正させていただきたいと思います。
 他に。どうぞ、市川委員。

【市川委員】 罰則の点でよろしかったですか。

【中山主査】 はい。

【市川委員】 先ほどの説明で、少し分かりにくかったのですが、あれは何かいろいろな御意見があった関係で、(*資料3の44ページの)(3)の最後のところを何か「慎重に判断する」というふうに表現を改めると、こういう趣旨だったでしょうか。
 ただ、ざっと目を通しただけなので、まだ私もよく、御意見がいろいろあるのかどうかというのはよく分からないのですが、基本的には、どうも1ですかね、(1)とか(2)で、上げること自体についての反対という趣旨ではないのでしょうか。

【甲野著作権課長】 趣旨といたしましては、全体について上げることは、やはり適切ではなく、反対であるというような御意見でございました。
 しかしながら、これまで権利侵害の罪につきましては、著作権につきましても、特許が上がると、こちらを上げる、つまりこちらが上がると、また特許の方も上がるという形でずっと立法がなされてきましたので、この部分につきましては、そのような意見はありましたけれども、やはり横並びにするということは、しなければいけないのではないかというようなことでございまして。
 それ以外の部分につきましては、そのような意見もありますので、そのまま上げるというよりは、そこは十分慎重に検討した方がいいのではないか。そういう考え方に基づきまして、権利侵害のところは上げるけれども、それ以外のところにつきましては、十分慎重にという形に修正を考えたところでございます。

【中山主査】 どうぞ。

【市川委員】 個人罰則とか法人罰則を上げれば、やはり他の(3)のところのいろいろな規定にも、これは影響してくるのは当然でして。
 ただ、どうも今までの議論は、そういうことを議論していたのかどうか。(1)について、個人罰則とか法人罰則を上げるけれども、やはり著作権は他の特許権などと違って難しい点があるので、この規定だけは上げない方がいいとか、突っ込んだ議論を、一部した記憶はありますが、あまり突っ込んだ議論をしないまま、少しこういう御意見があったから(3)のところだけ変えるというのは、我々がこれまでやってきた議論のまとめとしては、何か違和感があるという気がいたしました。

【甲野著作権課長】 これまでの議論ということで、ここに明示をするというふうに、ここで取りまとめていただくのでしたら、それはそれで取りまとめということになろうかと思います。
 ただ、著作権侵害罪以外のところの引き上げにつきましては、必然的に上げなければならないという点がもし仮に出てくれば、そこのところは上げなければいけないかもしれませんけれど、全体として、やや抑えめにというような意見がありましたので、トーンとしては、やはり「慎重に」ということを書かざるを得ないような気がいたします。実際の運用としては、そういうふうになるということを御了解といいますか、あらかじめ御認識をいただければと思うと同時に、もしそうなるのであれば、「慎重に」というように書くのがいいのではないかと事務局としては、そういうふうにしていただいた方がありがたいと思っている次第でございます。

【中山主査】 それでは、市川委員、そのあと、大渕委員、お願いします。

【市川委員】 もう1回、最後に一言だけ。その趣旨は、「慎重に」の前に「著作権侵害罪とのバランスと各規定の趣旨を照らし合わせながら」というのが、これが入っていますので、この表現で基本的に、今課長がおっしゃったこういうことは十分表現されているのではないかなという感じがいたしました。

【中山主査】 では大渕委員、お願いします。

【大渕委員】 どちら側に働くのか分からないのですが、今回の席上に配付されている資料の(3)では、「罰則の引き上げを慎重に判断することが適当である」となっていますが、以前の案では、(1)や(2)の方が「引き上げを行うことが適当である」といったように言い切っているのに対して、(3)の方は、先ほどの説明によりますと、もともと「罰則の引き上げの必要性について判断することが適当である」ということでありまして、いわば含みを持たせたような表現になっていたように思います。このように、(1)、(2)と、(3)とは、もともと表現振りがかなり違っていたのではないかと思われます。
 先ほどの御説明は、今回の(3)は、このような以前の案の(3)をさらにトーンダウンしたという感じなのでしょうか。

【中山主査】 多分、おっしゃるとおりですね、差異はあったのだけれども、その(3)をなお一層トーンダウンという、おそらくそういうことなのではないかと思うのですけれども。そういう御趣旨ですね。

【甲野著作権課長】 はい、そのような趣旨でございます。

【中山主査】 これは、市川委員がおっしゃるとおり、もともと産業財産権の方から来た話なので、当審議会としては、あまり議論をしてなかったので、その点におそらく起因する御意見だと思いますけれども。難しいところで、本来なら、今更こんなことを言ってもあれなのですけれども、本来ならばやはり、刑罰を強化すると、例えば翻案なんかについてのChilling Effects、萎縮効果が出る可能性もあるわけで、本当はその辺りは、(3)だけではなくて、慎重に議論した方がよかったのかもしれません。先ほど課長が言いましたように、向こうが10年にして著作権法だけそのまま残すというのはおかしいし、まして(3)のその他の点について、向こうとは比較するものもないわけですから、そこは慎重にという判断になったのではないかと思います。
 この点について、何か他に御意見はございますか。「必要性について」を、「慎重に」ということで、少しトーンダウンしたイメージはありますけれども、それでよろしいでしょうか。市川委員、そこは別に、文言としては、これでよろしいですか。

【市川委員】 はい。先ほどの御説明ですと、やっぱり慎重にいき過ぎたのではないかなという気がしまして。やはり、どうしても(1)、(2)を上げますと、どうしても若干影響が出てくる面があるというところで、それはあえて「慎重に」も入れなくても、何か屋上屋を重ねる感じがしただけでございますので、あえて絶対譲らないとか、そういうつもりはございませんので。

【中山主査】 分かりました。ありがとうございます。
 他に御意見がございましたら。よろしゅうございましょうか。
 それでは、3番目の「税関における水際取締りに係る著作権法の在り方」について、御意見がございましたら、お願いいたします。
 茶園委員、どうぞ。

【茶園委員】 この46ページからの税関に関するところですけれども、今気がついたのですが、47ページのところにも「知的財産推進計画2005」があります。ここも、「知的財産推進計画2006」の方に替えられるのがよろしいのではないかと思います。
 それと51ページのところなのですけれども、後ろから5行目の真ん中辺辺りに、「このため、輸出を実施行為に規定すること」と、「実施行為」という言葉が使われているのですけれども、おそらくここは著作権のことが述べられているので、「利用行為」とかの方がよろしいのではないかなと思います。
 それと、55ページに「通過」に関する検討結果が書かれているのですけれども、その前の52ページのところに、産業財産権法における「通過」に関する考え方が挙げられておりまして、これと比較しますと、52ページの産業財産権法のところでは、その通過の類型として(ア)、(イ)、(ウ)という3種類があるのに対して、55ページの著作権のところでは、12とされていまして、産業財産権法のところで挙げられている3番目の類型がありません。おそらくこれは、著作権では、改造とか仕分けとかといったものがあまりないということで、このように違って書かれているのかと思うのですけれども、そのような理解でよろしいのでしょうか。
 もう1点は、「通過」をどのように考えるかということに関する質問ですが、52ページの産業財産権法のところでは、確定的なことは言っていないようで、輸入やあるいは輸出に該当すると考えられるのだけれども、「(イ)については、陸揚げのこういった形態によっては、侵害物品の拡散には必ずしもつながらず、権利者の利益を害する蓋然性も低いと考えられる場合もあることから、個別に判断することが必要である」という、侵害になるかならないかというのは個別判断に委ねるという、そういう趣旨で書かれているのですけれども、55ページの著作権のところでは、書きぶりからすると、「輸出」として規制をかけ得ると述べているように読めます。そのため、考え方が異なっているように思われますが、異なっているのであれば、その理由をお聞かせいただきたいのですけれども。

【中山主査】 先ほどの「知的財産推進計画2006」につきましては、これは必要に応じて直させていただきます。もし、他にも何か直すべきであれば、直しておきたいと思います。
 実施行為というのは、確かにこれは、多分産業財産特許法の方の諸資料に引かれたのではないかと思います。これも、語句の修正を考えさせていただきたいと思います。
 最後の「通過」については、白鳥さん、お願いします。

【白鳥著作権調査官】 今御指摘の産業財産権法の方の分類の(ウ)のところの関係だというふうに思いますが、そういう意味で、55ページの方で、著作権法の性格のところで書きましたところでは、大きく2つ書いてあり、またその2つ目のところは、基本的に日本を仕向地としない場合としてまとめて書いてあるのですが、(ウ)のように「保税地域に置かれる場合」も含めて、「輸入」とみなされるのではないかという形の整理をさせていただいております。若干言葉が不十分なところもあったかとは思いますけれども、そのような形で御理解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。

【中山主査】 よろしいですか、それで。

【茶園委員】 分かりました。
 それと、先ほど言った、この2もそうなのですけれども、「通過」をどう考えるかということについては、「輸入」と「輸出」が両方あるから、「輸入」も「輸出」も侵害とするから、「通過」もすべて侵害だと考えるということですか。
 52ページに書かれてある産業財産権法の考え方によると、必ずしもそこまでは言わなくて、国内の権利者の利益侵害の程度なりを勘案して、形式的には「輸入」や「輸出」になるのだけれども、侵害を否定するという場合もあると、そういうように読めまして、何か含みを持たせているように思いますが、著作権に関する55ページの方は、そういう含みがないような感じがします。ですから、比較すると、何か違いがあるように見えるのですけれども。

【白鳥著作権調査官】 実質的な考え方としては、基本的には、この点についての考え方というのは、知的財産法の体系の中で、大きくは異ならないと思いますし、また特に実際上、これは税関における取締りの考え方ということで、その辺りの考え方で大きな差異というのはないのかと。
 そういう意味で、著作権法につきましても、実際の取締りが必要な場面というのを個別に見て、個別の判断が必要になってくる場合も当然あるのではないかとは考えております。

【中山主査】 産業財産権の方は、この52ページの2の(ア)ですね。これは日本の港に寄らないで領海内を船が通ったというような場合は、解釈として「セーフでしょう」ということなのですけれども、55ページの方も、下の方をよく読むと、そういうふうに読めるのではないかと思うので、意味としては両者異なるということではないと思いますが。
 ただ確かに52ページと55ページとを比べますと、文言が違うので、少し整理した方がいいかもしれないですね。そこら辺の文言は、趣旨は同じだということなので、あとで考えさせていただきたいと思います。
 他に何か御意見がございましたら。どうぞ、市川委員。

【市川委員】 参考までに教えていただきたいのですが、さっきイギリス著作権法が10年と2年と大違いのがありましたね。あれは何が原因だったのか、少し参考までに教えていただきたいのですが。

【甲野著作権課長】 参考にした文献で、そういう10年という表記があったものを、そのまま信じてしまったというのが、実際上の経緯でございまして、正確に調べたところ、2年でありましたということで、申し訳ございませんでした。

【中山主査】 主要な国で10年というのがあると、「なるほど、日本も10年も妥当かな」というイメージを与えてしまいますが、しかし正確には2年ということであったとのことですので、御勘弁をいただきたいと思います。
 他に何か御意見がございましたら。よろしいでしょうか。
 他に意見もないようでございますので、大幅な修正はないということで、あとは今頂戴いたしました御意見を参考にいたしまして、修正すべき点は修正し、その修正したものをまた各委員に送付させていただくということにしたいと思います。
 具体的な修正意見の取扱いにつきましては、私に御一任いただければと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。

[「異議なし」の声あり]

 では、修正したあと、また皆さんにお送りするということにしたいと思います。
 それでは、次の議題であります、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」の検討に移りたいと思います。
 まず、事務局より説明を頂戴いたしまして、そのあと、自由討議に移りたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 資料の4を御手元に御用意ください。
 このテーマは、私的複製、共有著作権に係る制度の整備、それから契約・利用ワーキングチーム、司法救済ワーキングチーム、それぞれの検討の状況を、これまでの議論を踏まえまして、事務局において「報告書(案)」として作成させていただいたものでございます。
 まず冒頭の1ページ目をお開けください。まず「はじめに」ということで、今申し上げたそれぞれの論点に関しまして議論、検討を行ったことと、各ワーキングチームにおきますそれぞれの課題、著作権法と契約法との関係、それからいわゆる間接侵害につきまして検討を行ったことを紹介しておりまして、検討結果としては、2ページ以降に、具体的な内容を記しております。
 それでは、2ページをお開けください。2ページ目は、まず私的使用のための複製の見直しについてということで、冒頭、「問題の所在」ということから始めております。内容につきましては冒頭に現行制度についての説明、それから問題意識について記載しております。まず複製・通信技術の発達が目覚ましく、そういった中で大量かつ広範な複製が可能になっていること、ただ、それは同時に契約や著作権保護技術を通じて、権利者の利益を確保するということも同時に可能性としてはあり得るといったような中で、改めてこの私的複製につきまして、適切な権利保護の在り方といったものに関して検討が必要になっているという問題意識を書いております。
 3ページ目につきましては、従来の私的複製に関する第30条の考え方としまして、実際、現行制度の説明の中にもありますけれども、立法措置としては、現行制度としては私的複製の範囲から除外し、あるいは補償金を課するといったような対応をしてきたところであります。
 ただ、この私的複製の範囲につきましては、一方で、先ほどの著作権保護技術等の関係もございますので、まずはこうした場面におきます契約の有効性、それから権利者が被る不利益等の関係について、整理が必要となります。そうした手順を踏んだ上で、立法措置の必要性の有無について、私的複製についての立法趣旨も踏まえながら検討することが必要であるといった検討の視点、手順について、まずここで示しております。
 3ページの2では、検討課題として、今申し上げた視点に従いまして、大きく、解釈上の検討課題、それから立法上の検討課題として整理しております。(1)の解釈上の検討課題としては、私的複製と契約との関係、いわゆるオーバーライドは有効かということと、もう1つは、契約が存在する場合などにおける私的複製の範囲はどこまでを指すのかといったこと、2つ目の課題としては、私的複製と著作権保護技術との関係について書いております。
 立法上の検討課題につきましては、先ほどの考え方にも従いまして、まず補償金による対応ということで現行制度がございます私的録音録画補償金関係について、どういった見直しの必要性があるのかといった点と、続きまして4ぺージ目に移りますが、これは補償金ではなくて、私的複製の範囲からの除外による対応として、具体的には違法複製物等の扱いについてといったことを記載してございます。
 4ページにおきましては、検討結果ということで、これまでの議論の内容を踏まえてまとめておりますが、まず解釈上の検討課題としては、私的複製と契約との関係がございますけれども、この点は、いわゆる契約による著作権法のオーバーライドという検討課題としまして、当小委員会の下に置かれました契約・利用ワーキングチームにおいて検討が行われてきたところであります。
 また、この「報告書(案)」の中に、後半の方に出ておりますけれども、そこにおける議論も踏まえまして、全体としては、ビジネス上の合理性などを総合的に見て、契約が無効とされるような場合を除いては、私的複製の範囲を制限する契約も有効であると考えられるという考え方がございます。
 それから、なお書ですけれども、一般にそういうふうに、契約として有効である場合もあります。したがって、具体的なその私的複製の範囲といったものを考えるにあたりましては、個別の場面におきます契約の可能性についても勘案する必要があると考えられるとしております。
 それからまた、「また」という段落につきましては、結局のところ、どういった場合に、私的複製の範囲があると認められるかについては、個々の契約内容に照らして個別に判断される必要があるといったことを記載しております。
 さらに、なお書のところですけれども、実際に私的複製の範囲があるとしまして、その中で、それでもその権利者の利益が害されていると言える場合があるかどうかといったことも、また別途、検討の必要がありますが、特に検討を要すると考えられます私的録音録画の分野については私的録音録画小委員会が設置されておりますので、同小委員会で検討が進められる必要があると考えられるとしております。
  2につきましては、契約ではなくて著作権保護技術との関係ですけれども、まず冒頭ですが、著作権保護技術は、それにより複製可能な範囲が制限されるわけですけれども、それでも複製可能な範囲内があるわけでございまして、まずそれについては、「30条第1項柱書に定める私的複製の枠内にあるものとして位置づけられると考えられる」というふうにしております。ただ、その上で、具体的に契約があるのではないかというようなことが問題提起されておりますので、実質的には契約との関係といったことと複合的な論点として出てまいりますので、そこは上記1に述べました議論が同様に当てはまります。そういったことから、この部分も含めて私的録音録画小委員会において検討を行う、検討が進められる必要があると考えられるとしております。
 続きまして、立法上の検討課題につきましては、先ほどの2つの論点です。私的録音録画補償金関係につきましては、まさにそれ自体について、私的録音録画小委員会において検討を進めているところです。また違法複製物等の扱いにつきましては、冒頭に、現行制度で対応可能な場合に関して御紹介しておりまして、いわゆる送信可能化に関しての権利の働き方について記述しております。
 すなわち、現行法以上に、こうした違法複製物等のダウンロードの関係で、それが私的複製であるといったような場合について、明文において、これを私的複製の範囲から除外する必要があるかどうかといったようなことが検討課題となるわけですけれども、具体的には、その際には、30条の立法趣旨であります、そもそも家庭内の行為について、規制することは困難だといったようなこととか、あるいは著作権者等の利益を不当に害するかといった観点に十分留意して検討する必要があると考えられますので、その部分を含めまして、私的録音録画小委員会において議論が進められる必要があると考えられるとしております。
 以上を踏まえまして、まとめといたしまして、私的複製の範囲の課題として、特に大きな論点として、私的録音録画の在り方に係る検討というのが出てまいるわけでありまして、なおかつ、私的録音録画の在り方といったことを検討するにあたりましては、私的録音録画の補償金の在り方とも密接に関係するといったことがございます。
 そういったことで、実際にその権利の保護と著作物等の公正な利用とのバランスを図る方策として、全体の中でいずれの部分を補償金で対応し、あるいは著作権保護技術等で対応するか、あるいはそもそも私的複製の範囲としておくことが適切なのかといった一体的な議論が必要になると考えられますので、当小委員会としては、「私的録音録画に関する私的録音・録画小委員会における検討の状況を見守り、その結論を踏まえ、必要に応じて、私的複製の在り方全般についての検討を行うことが適当である」と結んでおります。
 続きまして8ページは、共有著作権に係る制度の整備についてでございます。冒頭、同じように問題の所在を書いてございまして、現行制度として、まずは民法との対比の表を設けております。
 9ページにおきましては、まさに現行制度についての紹介をここでしております。共同著作物の定義、それから共同著作物の著作者人格権の行使、それから共有著作権の行使、それぞれに関しての現行制度を書いてございます。
 それから10ページにおきましても、現行制度でございまして、共同著作物等の権利侵害に係る規定でございます。
 10ページの下は「検討課題」として、まず著作者人格権の関係について、著作者人格権の侵害に対する損害賠償請求の扱いという論点、それから共有著作権につきましては、2から5としまして、居所不明等の場合の方策であるとか、多数決原理の導入など、それから、最後は共有者による共有著作物の「使用」の関係の論点を書いてございます。
 そうした論点があるわけですが、これまでの御議論の結果としまして、検討結果ということで11ページに書いてございますけれども、まず、この著作権法におきます共有の取扱いに関しては、基本的に民法の特例としての規定であるということを、まず書いておりまして、特に人的関係への配慮と、著作物についての共同著作物に係るその人的関係に配慮した規定であるということで、1つの特例であることを、まず確認しております。
 それから検討課題の上記の1、特にこれはまず人格権の部分でございますけれども、ここでは、もともと、著作者人格権の関係での現行の制度趣旨というのを冒頭で、ここの中で述べておりまして、もともとこれは、著作者人格権の侵害に対する損害賠償請求について、これを単独でできるのかということが、ここで検討課題としてありましたけれども、現在のこの規定の考え方としては、基本的には明文で規定せずに、個々の具体的事例に応じた裁判所の合理的判断に委ねるというような形となっているわけですけれども、それを現在において、何かしらの立法上措置、立法的な措置が必要なのかといったような事情はまだ今はないのではないかということを、まずここで書いております。
 検討課題の2から5は、共有著作権の方の関係でございますけれども、これは、その内容については、基本的に権利の行使等に関して、権利者全員の合意又は同意を要求しているといったようなことから、何かしらその他の方策がないかということで出てきている課題でございますけれども、そこで書いておりますのは、「現行法は、共同著作者の創作意図及び権利の目的物たる著作物の一体性の確保等から、民法上の共有理論をそのまま適用することは適当でないとして、その権利の行使等についても権利者全員の合意又は同意を必要としている」という趣旨をまず書いておりまして、それから、その次の段落におきましては、前回行いましたヒアリングでの検討を踏まえた記載でございますけれども、基本的にはあらかじめ契約で定めるといったような場合が多く、また契約で処理するといったようなことが、権利関係の明確化の観点からも望ましいと考えられるといったようなこと、むしろ法律でどこまで何を定めるか、逆に困難なのではないかといったような御意見も、前回の法制問題小委員会で出していただいたところでございます。
 以上の立法趣旨、それから実務における取扱いにかんがみた場合ということで、12ページに移るのですけれども、基本的には現時点で契約によって全く対応できないような問題が生じているとまでは言えず、また逆に任意規定であります現行著作権法の規定が実務の妨げになっているといったような状況でもないと考えられますので、実際問題のところ、それは契約実務上の課題として位置づけられるものではないかといったようなことから、現行制度におきまして、実際、民法の規定に基づく分割請求の活用も含めて、現行法の枠組みや、それから実際、契約で対応するのが適切であり、現時点において、緊急に著作権法上の措置を行う必要性は生じていないのではないかということを、これまでの議論を踏まえて書かせていただいております。
 13ページ以降は、ワーキングチームの状況ですけれども、これは前回、両ワーキングチームから出していただいたものを、この「報告書(案)」の方で一部抜粋するような形で書かせていただいたものです。
 契約・利用ワーキングチームにおきましては、著作権法と契約法の関係ということで、いわゆるオーバーライドの議論なのですけれども、著作権法において、権利制限規定というのが、特にオーバーライドに関する契約が無効であると言えるような権利制限規定があるのかどうか、いわゆる「強行規定」と言えるものがあるのかといったこと、それから一般的にそうした契約に関して無効と考えるべきものとしては、どういったものがあるのかといったこと、それから立法的対応が必要かどうかといったような観点から、議論を進めていただいておりました。
 特にその内容としましては、ソフトウェア契約、音楽配信契約、データベース契約、楽譜レンタル契約という4つを取り上げて検討が行われていたところでございます。
 その検討結果として出され、前回も特に大きなといいますか、異論はなかったものと思いますけれども、内容としては、ここに、特に14ページ以下に書いてございますが、今の4つの分野、ソフトウェア、音楽配信、データベース、楽譜レンタルといったような契約の関係では、一律に何か無効であるといったような場面はないのではないかといったような結論でした。ただ個別には、権利制限規定の趣旨、ビジネス上の合理性、不正競争又は不当な競争制限を防止する観点等を総合的に見て、個別に判断することが必要であると考えられるとされております。
 「また」ということで、その他の、何か個別の権利制限規定については、個別の検討は行われてはおりませんでしたけれども、ただ、オーバーライドに係るあらゆる契約が、一切無効であるとまでは言えない、そういう意味では、強行規定ではないと考えられるというふうにされております。ただし、個別の権利制限規定の趣旨等を踏まえますと、基本的には公益性の観点からの要請が強いものが個別の権利制限規定であると考えられることから、実際上、オーバーライドする契約が有効と認められるケースは限定的であると考えられるとされております。
 いずれにしても、オーバーライドの契約の有効性を判断するにあたっては、「一般的にこうだ」というところまでは言えず、個別に判断するのが適当ではないかということが書いてあります。
 なお、以上の検討を踏まえて、立法の必要性の項目でございますけれども、結局のところ、個々の実態に即して柔軟に行うことが求められるということで、「直ちに立法的対応を図る必要はないと考えられる」ということとされております。
 続きましては、15ページの司法救済ワーキングチームですけれども、これは昨年来、議論していただいておりまして、今回も裁判例からのアプローチ、外国法からのアプローチ、民法からのアプローチ、特許法等からのアプローチといったそれぞれにつきまして、基礎的な研究を深めて検討していただきました。
 検討結果についても、個々の裁判例の状況、それから比較法についての状況です。その検討にあたりましては、民事法、一般法も視野に入れた総合的な比較研究がこの検討の中で行われたということ、それから特許法におきます間接侵害規定の考え方、これも含めて検討の対象とされたということでございます。
 特にこのいわゆる間接侵害といったものの中で課題とされておりましたのは、差止請求はいかなる範囲で肯定すべきかといったようなことであることから、非常に複雑な問題、論点ではございますけれども、この検討会では、先ほどありました4つのアプローチを軸として検討作業を進められて、特に主要国の比較法研究におきましても、大幅な前進が見ることができたというような状況でございます。
 そうしたことを踏まえて、この15ページから16ページの方ですけれども、基本的な議論の方向性、検討の内容としましては、特許法の101条の第1号・3号に対応するような間接侵害を何らかの形で著作権法上も認めるという基本的な方向性は、特に異論はなかったわけですけれども、それを超えるような間接侵害の考え方については、比較法研究も含めたより徹底的な総合的研究を踏まえた上で、さらに検討を継続すべきとされております。
 なお、その他の論点として、損害賠償・不当利得等に関しても、併行して今後検討するという形とされておりますので、その旨、記載しております。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは、意見交換に移りたいと思います。複数の論点がございますので、論点ごとに区切って議論をしたいと思います。
 最初は「私的使用目的の複製の見直し」について、御意見を頂戴したいと思います。御意見がございましたら、お願いいたします。
 どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】 4ページの3.(1)1の表現の問題なのですが、趣旨は、私はこれで多分おおむね理解しているつもりなのですが、1つは「制限」という言葉が4ヶ所ぐらい使われていますが、これは権利制限の意味ではなくて、「30条による権利制限を、契約がオーバーライドする」という意味ですよね。それで、「私的複製を制限する」というような表現を使うと、非常にそのことが分かりにくいのと、ともかくこの全体の流れが、かなり読みにくい形になったような気がします。
 ただ、趣旨は私もこれが現実的だと思うのですが、確認のために質問させていただきたいのですが、「契約・利用ワーキングチームにおける検討では」という文章で始まる段落には、基本的に契約において30条の適用に関して何らかの制約あるいは、その範囲を縮減するということがあった場合にも、有効な場合があります、ということを書いているわけですね。次に2つ先の段落、1行空きの行がある次の「また」というところで、同じことを別の表現をしていて、その間に別の段落が入っているものですから、かなり何か論理の流れが分かりにくくなっているような気がします。
 いずれにしても、全体として言っていることは、契約により、その契約が当然有効な契約である限りは、オーバーライドすることがありますよと。しかしすべてオーバーライドするわけではなくて、例えば、後ろの方に出ている4ページの下の方の文章では、「例えば契約内容で明確に私的録音録画補償金を支払うことを前提にしている場合は、当然その部分について、30条が適用されます」、と言っているように読めるわけですね。
 これは当たり前の話で、問題は、契約の中で、私的録音録画補償金について全く触れていないで有料である、というような契約の場合について、どう解釈するかというのが、多分もめる話だと思うのですが、そういうことについて、この表現上、明確でなくて、「検討を要する」とも書いていないと。
 それで一方、5ページの3行目に、「この点については特に」云々として、「私的録音録画小委員会において検討を進めている」というふうに書いてあるのですが、「この点」というのがどれなのかがよく分からなくて、前の方に書いてあることまで検討しろと言っているのか、あるいはこの、特に最後の5ページ目の1行目、2行目のような場合について検討しろと言っているのかが、少し分かりにくいのです。
 もし、そういう意味であるとすれば、つまり私的録音録画小委員会では、この5ページ目の1行目、2行目について検討すべきであるということであれば、それ以外の場合については、4ページでもう少し分かりやすく整理して、多分、場合を2つか3つに分けてすっきりさせると理解しやすいような気がいたしました。以上です。

【白鳥著作権調査官】 書きぶりの点での御指摘ありがとうございました。
 5ページの「この点について」といいますのは、まさにすぐ上の「権利が侵害され、権利者の利益が害されているか」といった部分と併せて、その直前の今御指摘いただいたような、特に契約の範囲ということとの関連でも併せて、いずれにしろ個々の場面に応じた検討が必要となると考えられますので、その部分を含めた趣旨で記載しておりますが、いずれにしましても、今いただいた御指摘を踏まえた修文につきまして、主査と御相談の上、考えてみたいと思っております。

【中山主査】 では、その辺りは分かりやすく修文をしたいと思いますので。
 他に御意見がございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、「共有著作権に係る制度の整備について」、御意見があれば、積極的にお願いをしたいと思います。

【末吉委員】 はい。

【中山主査】 どうぞ、末吉委員。

【末吉委員】 今回のヒアリングをやる前は、私は、特にソフトウェアについては、この点については、立法的な手当が必要なのではないかと思っていたのでありますが、今回のヒアリングをやっていただきまして、大変実情がよく分かりまして、結果的にこの11ページから12ページの検討結果に賛同したいと思います。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございます。
 他にございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、契約・利用ワーキングチームの検討結果につきまして、御意見を頂戴したいと思います。何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、司法救済ワーキングチームの検討結果について、御意見があれば頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、時間もだいぶ余っておりますので、全般を通じて、何かまた御意見がございましたらお願いしたいと思いますけれども、何かございませんでしょうか。

【末吉委員】 よろしいですか。

【中山主査】 どうぞ、末吉委員。

【末吉委員】 もし分かったらという趣旨の質問を差し上げたいのです。
 資料1を先ほど御報告いただいたのですけれども、著作権分科会における御指摘の中で、この資料1の2枚目の4番の2つ目のまるのところの御指摘なのですが、この御指摘のとおり、私も今回、大変全体のテンポが総じて急であるというのは御指摘のとおりだと思うのですけれども、ここで最後に「ある程度先を見通して、議論を進めることを要望したい」という御指摘があるのですが、これは何か具体的な御指摘とかが、もしあったようであれば、御紹介いただければと思いまして、御質問差し上げたいと思います。

【甲野著作権課長】 2011年には、地上波デジタル放送に全部が切り替わるというようなスケジュールで、様々な議論がこれから先、通信放送行政の改革といいましょうか、そういうものが進んでいる状況でございますので、それを見た上で、いきなり、来年こういうことが必要だから、それを直ちにこれをこうやるというような形ではなくて、それを見越した上で、きちんと議論を進めることをやってほしいというような御意見を賜っておりましたので、それを書いたところでございます。

【中山主査】 よろしいですか。

【末吉委員】 はい。

【中山主査】 他に御意見がございましたら。よろしゅうございましょうか。
 それでは、苗村委員からの御指摘の点は修正するといたしまして、その他につきましては、全体として了承をしていただいたということで、よろしゅうございましょうか。

[「異議なし」の声あり]

【中山主査】 ありがとうございます。それでは、修正部分は、私にお任せ願えればと思います。先ほど申し上げましたとおり、必要な修正を加えましたら、また各委員にお送りをするということにしたいと思います。
 なお、この私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果の報告書につきましては、8月24日に開催されます著作権分科会において、私から報告をして、分科会において御審議をいただいた上で意見募集を行うということが予定されておりますので、御承知おきいただければと思います。
 それでは、予定よりかなり早くなりましたけれども、今日の議事はこのくらいにしたいと思います。
 最後に、事務局から日程等の説明がございましたら、お願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 本日はありがとうございました。
 第8回目となります次回の法制問題小委員会の日程及び議題につきましては、現在調整中でございますので、確定し次第、御周知いたします。ありがとうございました。

【中山主査】 それでは、本日はこれで、文化審議会著作権分科会の第7回法制問題小委員会を終了といたします。
 どうもありがとうございました。

(文化庁長官官房著作権課)


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