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資料1

「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する
著作権分科会(平成18年6月20日)における意見の概要

1 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について

1. 基本的な考え方について
 
 地上デジタル放送の全面移行という極めて公共性の高い目的を達成するために、必要最低限の範囲で権利者の権利を制限し、かつ権利者への保障措置を講じている点で、権利の保護と利用のバランスに配慮していると言え、一定の評価をしたい。
 この問題には、ユーザーの視点と技術の発展形態という二つの視点が重要な問題となる。また、著作権法だけが関係しているわけではないので、放送法制のことも関連して考えていかなければいけない。
 この様な通信手段の進歩、或いは公共性、教育等のある一定の目的において、利用を促進するために、著作権法を変えていく場合、著作者等の意欲を失わせないような配慮が必要である。

2. IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信の取扱いについて
 
 地上デジタル放送の完全実施のためには、著作権法を改正しなくても権利の集中管理を行うことにより対応可能である。
 実演家としては送信可能化権であれば、権利の集中管理で十分対応できる。
 現状では、IPマルチキャスト放送事業者はそれほど多くはないので、捕捉が100%可能と思われるが、今後の技術の発展によって、IPマルチキャスト放送が容易になり、事業者が増加すれば、捕捉が難しくなる。その際、性善説で対応していては、権益の損失につながる。この点を考慮して議論すべき。
 報告書(案)の26ページの「有線放送事業者と同程度の公共性等が確保されるのであれば、有利な取扱いをすることは差し支えない」という表現は、「この程度やってくれればまあいいよ」とも読めるが、公共性の担保をどのような形で進めていくのか。難視聴地域の解消について、事業者からみて、都市部の解消はペイするが、僻地はビジネスにならないから切り捨てるということにならないか懸念する。
 また、難視聴地域の解消だけでなく、公共性を維持するということはどのような内容のものを伝えていくかということも大事であり、今後の議論において注視すべき。

3. 有線放送による放送の同時再送信の取扱いについて
 
 有線放送による同時再送信に、新しい権利規定として「報酬請求権」を付与したことについて、一定の評価をしたい。ただし、罰則が強化されるような現状を考えれば、報酬請求権では不十分な面もある。今後の議論の中で、もう一度、許諾権の重要性について、慎重に検討すべき。

4. IPマルチキャスト放送による「自主放送」の取扱いについて
 
 自主放送について、直ちに制度改正を行うことはせず、今後引き続き議論するという整理になっているが、良い判断だと考える。IPマルチキャスト放送は、極めて進歩の早い、流動的な技術という面がある。国際的にも、IPマルチキャスト放送に係る標準システム・方式をどのようにつくるか、最近議題として取り上げられてきている。
 自主放送について、直ちに制度改正を行うことはせず、今後引き続き議論するという整理になっているが、IPマルチキャスト技術がどのような形で進んでいくのか分からず、また他省庁の議論の進展状況も考慮しなければならないだろうが、全体のテンポは総じて急である。したがって、法制問題小委員会に対して、ある程度先を見通して、議論を進めることを要望したい。

5. 契約のあり方について
 
 報酬請求権について、報酬が一体どうなるのか、権利者への配慮、使われる著作物に対する対価が、しかるべき方法と金額によって払われる制度をつくり上げることが重要である。
 報酬請求権を、絵に描いた餅ではなく、実効性のある権利として、著作権者に報いるための仕組みが今後の課題となるだろう。著作権法を改正しても、その仕組みが実現できなければ、著作権が保護されていることにならない。
 また、この仕組みづくりにあたっては、報告書(案)にもあるとおり、文化庁は積極的に支援すべき。

6. その他
 
 有線放送とIPマルチキャスト放送について、仮に同じものであれば、著作権法上の取扱いも同じでいいと思うが、IPマルチキャスト放送において、大量のコンテンツが、デジタル情報として伝達されるという、根本的な違いがある。この違いが権利者に与える影響について、将来的に検討する必要がある。

2 罰則の強化について

   インターネット等の普及によって違法複製物等が短時間に、かつ広範囲に流通し、権利者の被害が拡大する可能性があることや、著作権侵害の抑止力を高める観点から、罰則の強化には賛成。


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