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著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録

1. 日時
  平成18年7月31日(月曜日)10時〜12時10分

2. 場所
  如水会館 2階 オリオンルーム

3. 出席者
 
(委員)
  青山,市川,大渕,末吉,道垣内,土肥,苗村,中山,松田,村上,森田の各委員,野村分科会長
(文化庁)
  加茂川次長,吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,川瀬著作物流通推進室長ほか関係者
(ヒアリング出席者)
  倉永日本知的財産協会副理事長,森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長,村下村下法律特許事務所弁護士

4. 議事次第
 
1   開会
2 議事
 
(1) 共有著作権に係る制度の整備について
(2) 各ワーキングチームからの検討結果の報告
(3) 私的使用目的の複製の見直しについて
(4) その他
3 閉会

5. 配付資料一覧
 
資料1   共有著作権に係る制度の整備について
資料2 ソフトウェア著作権の共有に係る実務上の課題(日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会作成資料)(PDF:347KB)
資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約・利用ワーキングチーム検討結果報告
資料4 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会司法救済ワーキングチーム検討結果報告
資料5 私的使用目的の複製の見直しについて

参考資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事録(※(第4回)議事録へリンク)
参考資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)議事録(※(第5回)議事録へリンク)

6. 議事内容
 

【中山主査】 それでは時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」の第6回を開催いたします。
 本日は、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきまして予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開には及ばないと考えられますので、既に傍聴者の方々には入場していただいておりますけれども、特にご異議はございませんでしょうか。

〔異議なしの声〕

【中山主査】 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事も公開ということで、傍聴者の方々には、そのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 なお本日は、現在、政府全体で「ノーネクタイ、ノー上着」を励行しているということもございまして、この会議でも軽装で差し支えないということになっておりますので、御了解願いたいと思います。
 議事に入ります前に、事務局に異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 7月11日付けで文化庁長官官房審議官に異動がございましたので、御紹介いたします。前任の辰野裕一が文部科学省大臣官房審議官(高等教育局担当)に異動となりまして、新たに文部科学省大臣官房人事課長でありました吉田大輔が着任しております。

【吉田審議官】 御紹介いただきました吉田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは、まず事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 本日お配りいたしております議事次第の1枚紙の中段以下に配付資料の一覧がございます。本日配付させていただいております資料は5点ございます。
 資料の1ですが、「共有著作権に係る制度の整備について」の資料。資料の2は、日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会の作成による資料でございます。資料の3が契約・利用ワーキングチームの検討結果報告、資料の4が司法救済ワーキングチームの検討結果報告、そして、資料の5が「私的使用目的の複製の見直しについて」の資料でございます。
 なお参考資料として、第4回、第5回の議事録を配付させていただいておりますので、御確認いただきまして、万一不足等がございましたら、事務局までお知らせいただきますようお願いします。

【中山主査】 よろしいでしょうか。
 それでは本日も長丁場となると思われますので、初めに議事の段取りについて、確認をしておきたいと思います。
 まず、前回から新たに御検討いただいております、議題1の「共有著作権に係る制度の整備について」から始めたいと思います。事務局より5分程度で説明をしていただきまして、続いて各関係者からの意見の聴取を5分ずつ予定しております。その後20分程度の時間を取りまして、意見交換を行いたいと思います。
 次に、本来の順序でしたら、「私的使用目的の複製の見直しについて」を議論するところでございますけれども、この課題は著作権法と契約の関係の論点が絡んだ問題となっておりますので、契約・利用ワーキングチームの検討結果報告を踏まえて検討したいと思います。そこで議題2として、「各ワーキングチームからの検討結果の報告」を行いたいと思います。各ワーキングチームにおける検討結果について、座長より10分程度でご報告をいただき、その報告を踏まえて、質疑応答時間を各20分程度取りたいと考えております。
 最後に、議題3の「私的使用目的の複製の見直しについて」の検討を行います。事務局による5分程度の説明のあと、20分程度の意見交換を行う、こういう予定を考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 それではまず最初に、「共有著作権に係る制度の整備について」、配付資料に沿いまして、事務局から説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 それでは資料の1を御覧いただければと思いますが、共有著作権に係る制度の整備に関して、前回の法制問題小委員会におきまして、検討課題について御議論をいただいたところでございますが、その議論におきましては、「共有に関する著作権法の規定はデフォルトルールであるから、契約で決めておけばよい」といった御意見が強く出されていたものと認識しております。もっとも実務上の課題といたしまして、「ソフトウェアの開発における著作権の共有の扱いにおいて、不都合がある」という声もあるといった御指摘もいただきました。
 そこで本日は、そのような業界における実態などにつきまして、関係者からヒアリングを行うことを予定しておりますけれども、それに先立ちまして、前回御議論をいただきました内容を踏まえて、資料を作成いたしましたので、御覧いただきたいと思います。
 資料の1でございますけれども、内容の多くは、前回、事務局より提出いたしました資料と重複しておりますので、説明は簡単にいたしたいと思いますけれども、まず1ページ目におきまして、著作権法における共有に関する規定の全体像と、あと民法の規定との対比を示しております。著作権法の共有に関する規定は、基本的に民法の規定の特例措置として位置づけられまして、規定がないものについては、民法の共有に関する規定が準用されることになります。
 2ページ目と3ページ目は、著作権法上の共有に関する規定の確認でございます。なお、前回の委員会におきまして、共同著作物の成立に関する規定の成立範囲につきまして、若干議論が出されましたので、共同著作物の成立要件についても記述をしているところでございます。
 共同著作物の著作者人格権の権利行使につきましては、全員の合意が必要でございますけれども、信義に反して、その合意の成立を妨げることができないということが、第64条で定められております。このことは、第65条において定めておりますとおり、共有著作権の権利行使についても同様ですし、また持分又は質権の設定についても全員の同意が必要とされておりまして、この同意は正当な理由がない限り、拒むことはできないとされているところでございます。
 また第117条ですが、共同著作物等の権利侵害に対して、各権利者が差止請求を行えるといったことを、いわば確認的に規定しているところでございます。
 現行制度の概要は、以上のとおりでございますが、続きまして4ページ目では、検討課題を掲げております。前回の資料からの変更点としては、前回における御指摘を踏まえまして、共同著作物の著作者人格権の侵害に対する損害賠償請求の扱いについても検討課題として加えております。
 なお、検討課題のいちばん最後の共有者による共有著作物の「使用」の論点の関係につきまして、このあと、日本知的財産協会様からのヒアリングを予定してございます。
 4ページの中段以下は、前回の御議論などを踏まえまして、各検討課題についての考え方について記載させていただきました。
 まず共同著作物の著作者人格権について、現行法の立法趣旨を確認しております。検討課題の1についてということでございますが、結局その内容というのは、具体的事例に応じた裁判所の合理的判断に委ねるといったことを内容としておりますけれども、現在そのような立法趣旨を見直して一律に規定するといった特別な事情の変化が果たして生じているのかどうかといったことにつきまして、問題提起をさせていただきました。
 続きまして、共有著作権に関する各検討課題25についてといったことについてですが、全員の合意などが必要とされているといった場合でも、現行法では正当な理由がない限り、合意等の成立を妨げることができないとされているところでございますけれども、前回の議論の状況を踏まえまして、現行規定や契約による対応以上に、立法趣旨がもはや実態に適合していないとして、現行の立法を見直すべき事情が果たしてあるのかどうかといったことについて、問題提起をさせていただきました。
 以上のとおり、検討を行うべき論点など、それから考え方の案についてお示ししたところでございますが、本日、その実務上の扱いについてのヒアリングなどを踏まえまして、これらの点について御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。
 続きまして、意見聴取に移りたいと思います。
 本日は、前回議論になりましたソフトウェアの開発に関する問題と、製作委員会方式における契約実務について、関係者から御意見を頂戴したいと思います。
 まずソフトウェアの開発に関する問題につきまして、倉永宏日本知的財産協会副理事長と森谷栄一日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長から説明をお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。

【森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長】 日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会の森谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ではございますけれども、資料の2に基づきまして、ソフトウェア著作権の共有に係る実務上の課題を御紹介させていただきます。
 表紙をめくっていただきまして、まず最初のスライドにありますように、著作権の行使のスタイルというものにつきましては、権利者自らが利用する場合と、他人に利用許諾する場合の2つがあるかと存じます。小説あるいは音楽などのような一般的な著作物にとっての利用といいますのは、他人に読んだり聞いてもらったりする、他人の使用を目的とするケースが中心でございまして、その必然性というのも高いと考えられます。
 したがいまして、共有著作権行使の合意要件といいますのは、この図でいうところの実線の矢印で示した他人の使用を最終的な目的としている状況に対して効果を発揮しているといえます。ただ、権利者自らが読んだり聞いたりするために複製等を行うような必然性というのは、あまりありませんで、合意要件も事実上はあまり影響を及ぼしていないのではないかと感じております。
 一方、ソフトウェアについてですが、権利者自身が使いたいという場面が多くなります。そのための利用行為の必然性というのも非常に高くなっているというような状況でございます。
 ところが、一般の著作物の場合は、あまり影響がなかった権利行使の合意要件といいますのが、こちらの方ではかなり効いてきますので、結果的にソフトの活用にブレーキがかかっているというような格好になっております。
 今、ソフトウェアにとっての利用の必然性とは何かという点について、少しお話をしましたけれども、次のスライドに、若干書かせていただいております。
 ここの具体的な対応というところの1は使用行為ということで、特に問題はないと思いますが、23になりますと、ソフトウェアを活用するためには、非常にニーズが高い領域でございまして、内部的、閉鎖的な範囲であれば、共有者間の一体的な利用に悪影響を及ぼす懸念も低いと思われますので、円滑に利用できるような姿が望ましいのではないかと考えている次第です。
 ただ45になってきますと、立場の差による問題などが起きやすいというふうに言えることもありますので、公平性を維持する観点に立つと、現行制度のようなものが、やはり意義があるのではないかと考えております。
 このような課題を持つ共有著作権なのですが、実務的には、次のスライドのように、共同著作物を作り上げていくというような場合と、契約での合意によって共有が生まれるというような場合がありまして、特に後者のような機会が、実際には非常に多く出現しております。
 これを、事例ベースで少し考えていきたいと思うのですけれども、さらにめくっていただきまして、事例の1は、ソフトウェアの開発委託の場面を挙げております。この開発委託のところで、著作権帰属の交渉が共有で決着するという対応がなされているようなところでございます。
 これは、双方がソフトウェアを活用できるようにしたいというような理由によるものなのですが、その背後には、複製、変更というのが必然的に伴いがちであるため、個別的に利用できて当然というような固定観念みたいなものができあがっているような状況でございます。その結果、著作権制度との乖離が大きくなっているというような問題が起きているようなことになっております。
 これに対しましては、弁護士の先生の方々、あるいは企業のリーガル部門が確認して、本来の権利処理に努めようとしているところなのですけれども、この実務的な通念といいますか、固定観念との乖離というのは、なかなか埋め切れていないというのが、実情になっております。
 続きまして、事例2なのですが、こちらは共同研究開発を舞台にしたものです。研究開発では、成果にかかる知的財産権の取扱いが鍵となり、中でもやはり特許の扱いが大きな焦点となってまいります。契約条文なども特許を軸に作られていくのですが、そこでの実施の扱いは特許法の原則どおりとすることが、割合スタンダードな対応かと思います。
 ここで、著作権も同じような扱いにしたいということになるわけなのですけれども、特許の自己実施というのを著作権制度に置き換えようとした場合の適当な概念というのが確立していないような状況です。
 さらに事例1と同じように、「権利があれば、利用できて当然だろう」というような認識が強くなっているということとあいまって、きちんとした契約がなかなかしづらいというのが、ソフトウェアの関係では、起きがちな問題となっているのではないかと思います。
 続いて事例3番なのですが、こちらは、大学等との共同研究開発にまつわるものでございます。
 契約自体は、もちろん企業と大学間で結ぶことになるわけなのですが、大学側の研究者の方々、教職員の方々だと思いますけれども、こういった方々が作成したソフトウェアは法人著作になるとも言い切れず、一応学内ルールで機関帰属となるようなケースも用意はしていただいているのですけれども、実際には、研究者個人の方々に留保されたままであるということも多く存在しております。
 企業としては、研究者個人の方々と契約して整備しましょうということで考えるわけなのですけれども、どうしても個人レベルで書面契約に応じるということについては、抵抗感を覚えられる方もいらっしゃいまして、結果的に宙に浮いたままになる、要するに法律どおりの状態になるというようなことも珍しくないというような状況です。
 その結果、企業側も大学側もソフトを円滑に利用できず、せっかくそこで生み出した成果を次に生かしていくことがやりづらいというような事態が起きているのが現状になっております。
 以上、駆け足でございますが、ソフトウェアの特殊事情に起因する課題を御紹介させていただきました。議論の参考としていただければと思います。よろしくお願いします。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは製作委員会方式における契約実務につきまして、村下法律特許事務所の村下憲司弁護士から説明をお願いしたいと思います。

【村下弁護士】 今、御紹介をいただきました村下です。座ったままで失礼させていただきます。
 まず、映画製作の共同企業体方式というのは、かれこれ15年ぐらい前からだんだん普及し始めてきていると思うのですけれども、当初は原作者、要するに映画の場合は、おおむね原作となる小説あるいは原作となる漫画などがある場合が多いものですから、一般的には出版者と映画製作者、これが共同製作者として契約を締結して、出版者の方が原作者関係の権利処理に当たり、権利処理を全部済ませてから、映画製作会社ですね、そこが映画製作を行うという、いわば古典的な形だったのですけれども。
 最近、ここ数年はかなりいろいろな分化をしておりまして、例えばアニメーション、映画でも、ビデオグラム用だけという場合があります。ビデオグラム用だけの映画、映像の製作というときには、その原作者の権利処理、原作関係とか、音楽とかの権利処理をやる出版社と、それからビデオグラム用の映画、実写映画、あるいはアニメーションを作る映画製作会社と、それから、ビデオグラムにするというところで、例えばDVDの製造メーカーが、その製作、共同製作の中に加わってきて3者になるということが多くなっているようです。さらに、かなり大規模な、スケールの大きい実写映画ですと、多いもので20社、30社が共同製作者になるものもあります。
 20社、30社になってきたときに、いわば共同製作者の中にも、まず例えば自分の持っているメディアを使って商売、事業をすると、例えば放送局、それから先ほど言いましたビデオグラムの製作会社、製造会社は映画を作って、最初に劇場公開をやって、そのあとテレビ放送、あるいはテレビ放送会社であれば、テレビ放送という部分で自分の事業と結びつける。それからビデオグラム化するということであれば、ビデオグラムの製造メーカーが、そこで自分の事業と結びつける。
 その他に、例えば公益的な性格のある団体あるいは宗教団体、そういったところはまさに広報目的で共同製作者に加わってくる場合があります。
 それから、例えばアニメーションですと、マーチャンダイジング、要するに登場するキャラクターなどのおもちゃや、商品に使っていくという、そういう方向でのおもちゃ関係の会社などが、要するにマーチャンダイジングという部分で加わってくることがあります。
 それから、広告代理店。広告代理店が加わるといいますのは、どうも映画を一種の広告宣伝材料として利用するということになるのでしょうけれども、そういう目標を持って加わってくる皆さんもいらっしゃる。
 それから投資目的での参加というのも増えてきつつある。ただ、投資目的としての参加という部分につきましては、日本の場合は、原作者の二次的著作物に対して認められている権利はかなり強いものを持っているものですから、映画の二次的利用、映画を劇場公開したあとの二次的利用の部分について規制を受けることがあって、なかなか投資目的での参加を呼びかけて集めるというのが難しい状況になっている。
 多種多彩な共同製作者が現れるということは、映画の場合は御存知のように、著作者と著作権者が分かれる法制度になっているために、著作者人格権についても複雑な問題を抱えることになります。例えば映画製作をやる映画製作会社はもちろん、氏名表示権、公表権はもちろんですけれども、同一性保持権についても非常に重要な関心を持っている。
 ところが、先ほど言いましたような広告宣伝材料、あるいは自分のところの宣伝、広告宣伝目的、こういうところについては、氏名表示権と公表権については非常に強い関心を持っているけれども、同一性保持権については、ほとんど興味はないと。おもちゃなどのマーチャンダイジング関連で、共同製作に加わってくる皆さんもそうですけれども、むしろ自由に改変できるようにした方がありがたいという方向の共同製作者もいらっしゃる。
 こういう非常に雑多な共同著作者が一体どんな権利や人格権を持っているのか、共同製作契約でどのように約定していったらいいのかというのは、現行の著作権法上では、ちょっと分からない状況になっている。
 それから共有著作権の行使につきましては、原作者の権利処理をやらなくてはいけない会社が必要で、そこがおおむね幹事会社になっている。幹事会社がそのまま共同著作権行使の代表者になってくる。結局は共同著作権行使の代表者となった幹事会社、これはおおむね出版社もしくは、映画製作者、映画製作会社ですね、ここがなることが多いように思いますけれども、ここが代表者として対外的な契約ですとか、そういったものを行うことになる。
 先ほど言いましたように、映画やアニメでは様々な事業が行われますので、共同製作者間でいろんな役割分担をしていかなければいけない。先ほど言いましたように、自由に改変したいという共同製作者もいれば、かなり忠実な複製使用だけに限りたいという、そういう共同製作者もいる。
 結局は、製作契約締結段階の議論の中で、役割分担を決めることになる。その議論を通して、最初に結構細かく担当事業の中身が決められることが多いのですけれども、例えば最初に地上波をやりましょうと、それから衛星をやりましょう、それから有料放送をやりましょう、その他に、最近は航空機での上映ですとか、船舶での上映などもかなり大きな権利になってきておりますので、こういうことをいつ、どういうタイミングからやるか。それと、ビデオグラムの発売時期、これとの兼ね合いで、放送の期間ですとか、回数ですとかについて、共同製作者自身の事業上の利害がからみますので、かなり立ち入った議論をされることがしばしばあります。
 アニメーションなどではマーチャンダイジング、とりわけおもちゃという分野について、ご存知のように、完全に複製する、例えばガレージキットのような、あるいはプラモデルのような完全複製する物も作れるのですけれども、デフォルメ、少し面白おかしくしたものですとか、少しさらに幼児向けに改変したり、あるいは大人向けに改変したりと結構動かしたい部分があるようでして、そこのどういう枠組みを作っていくかというところで、かなり契約の中でもバリエーションが出てくるということになってきます。
 それで、最近裁判所の中でも、争点になって議論されることがあるのですけれども、結局は権利自体ということではなくて窓口権という、要するに権利は共同製作者全員にあるのかもしれないけれども、例えば劇場公開、劇場配給についての窓口権は、例えば映画製作会社、それから、テレビ放送関係の窓口権は、例えばテレビ放送局というような形で、窓口権を契約書の中で、それぞれの共同製作者に分配し、窓口権の行使の範囲というものを、さらに契約の中で枠組みを作っていくような動きになってきていると思います。
 著作権法上はこの窓口権については、条文が全くない空白の分野ですから、ここの部分については、以前の議論の議事に、デフォルトルールという御指摘を拝見したのですけれども、やはりその辺りの手当てというのは必要になってくる可能性があるのかなというような感じを持っております。
 それから、契約の終了の部分なのですけれども、例えば10億円の映画を製作するときに、A社は3億円出しますよと、B社は2億円ですよ、C社は1億円ですよと、D社以下は5,000万円ですよというような、こういう拠出割合を決めて、それがイコール出来上がった映画の共有持分になっていく。
 このときに、例えばある会社が拠出金を出さないということになってきますと、結局は、当初予定していた映画製作費、製作予算が集まらないということになってくるわけであります。このときに、それでは契約解除をして物事が進むかといいますと、共同製作の契約にハンコをつきながら、お金を出してない人に、「あなたについては契約解除だよ」と、「もう関係ありませんよ」と言ってみたところで、お金が集まるわけでもない。
 それから例えば共同製作者の中にビデオグラムの製造会社が入っていたとしまして、ビデオグラム会社が、平成18年の12月発売日の約束であったのに、平成18年の9月から売り出してしまった。これも契約違反で解除の問題になるのですけれども、仮にここで解除したら、一体どういうことになるのか。
 既にビデオグラム用の原版が作られて、むしろ製造に着手し始めている。ここでビデオグラム会社についての契約関係を解消して、新たにビデオグラムの会社を募集できるか。
 これはお気づきのとおり、ある会社がそういう不始末をして契約解除されたからといって、別の会社が手を挙げてくれるかというと、これはもうほとんど期待できない。契約を解除するというのは、ビデオグラム事業を諦めるということと同じ意味になってしまう。
 古典的な共同製作契約では、確かに解除の条項はありました。でも解除の条項を入れたとしても、果たして解除は一体何になるの、という議論がかなり進みまして、最近の契約では、解除条項というのはほとんどない状態になってきている。
 それから例の破産とか民事再生ですとか、通常の契約では、よく無催告解除原因になるという規定になっている契約が多いですけれども、例えば破産して、その会社とは解除ですよと、民事再生手続に入ったから解除ですよ。これもまた非常に、段階によって全く様子が違ってきていまして、まだ全く製作が完成まではほど遠い状況の下であれば、じゃあ破産したのだから抜けてくださいね、でいいのですけれども、もう完成して動き出して、お金を生み出し始めているようなときに破産しました、破産したら、じゃあ解除でその配分金は1銭もなしですよ。これは破産管財人が絶対に許さない。要するに、破産管財人も民事再生手続の再生委員会の方でも、絶対に許してくれない。要するに条項を設けたとしても、解除で処理できるものというのが、実を言うと共同製作契約だと非常に少ないということが、だんだん明らかになってきている。
 やはり今一番多いケースが、吸収合併。要するに、企業統合で会社の組織が移っていくと。今は映画製作会社を映画製作会社が吸収合併するという時代ではないですから、例えば金融関係の会社が吸収合併したときなど、エンターテインメント産業あるいはこういう著作物を創作する活動ということに関わってない会社が吸収合併したときに、映画製作会社として担っていた役割を続けさせていいのだろうかと。
 他のやはりテレビ関係の、テレビ関係のメディアを使おうということで共同製作に入ってきた会社や、ビデオグラム関係で入ってきた会社などから、非常にいろんな異論が出ることがある。
 こういった状況の下で、契約でどうして処理するかということになりますと、まず第1段階で、結局は協議です。それから第2段階で、その人の持分の買取権を、他の共有者に認める。
 ところがこの買取権が、また非常に厄介でして、これは、完成前に買取権行使の問題になったときに、この完成前の映画の経済的評価はどうするか。条項の中では公認会計士に鑑定評価をさせるという条項を設けているのですけれども、じゃあ完成前の鑑定評価ってどうするのか。
 それからもちろん、事業の真っ盛り、劇場上映も大成功に終わりました。ビデオグラムの発売も、非常に好評を博しています。こういうところでの評価はものすごい、きっと高額なものになる可能性がある。
 一方で、そうはいっても映画というのは、やっぱり鮮度が非常に重要でして、3年から5年ぐらいでおおむねその事業としての、最初に予定していた事業というものが終わってしまう。それが終わったあとで、もう全然収益を生まなくなってきてしまっているというところで、果たしてお金を出して、その持分を買い取る人がいるのかという話になってきてしまう。
 幸いのことですけれども、最近は、昔の白黒映画をDVD化するというときに、いわゆるその資金を調達するために、そこでも共同製作の契約を結ぶことが行われております。このときは、結局は白黒のフィルムをまずデジタル化して、それにデジタルの操作で色を付けていくと。これで全く、見た目は違った映画、もう非常に雰囲気の違う映画を作っていくということが行われるようになってきております。こういうことがあれば、いったんその事業目的を終えた映画も復活して、また新しい命を持ってビデオグラム、あるいは劇場上映ということで活用されることもあるのですけれども、なかなかそういうことを、この契約締結段階、さあ製作しましょうというところで経済的に評価するわけにもいかないし、その事業が終わったところで、そういうことも踏まえた鑑定評価ということも非常にしにくいしということで、実際のところは、買取権というのは、交渉の材料というような意味合いぐらいにしかなってない。めったに行使されることがないというところだと思います。
 それからやはり、最近の映像技術の進歩から、続編ですとか、先ほど言いましたようなリニューアルですとかというものが増えてきている。このときに、やはり共有者全員の同意、少なくとも共有者全員に声をかけないといけない。
 先ほど言いましたように、20社、30社がまとまって共同製作契約を結んでいるというときに、大きな続編であればそれだけの値打ちがあるのでしょうけれども、ほんとに簡単な続編、あるいは先ほど言いましたように、DVD化して色を付けるという程度のところで、20社、30社全員に声をかけるのか、そんな手間をかけるのか、という、ここがまた非常に悩ましいところです。
 通常の契約、こういう共同製作契約の通常の有効期間といいますのは、実を言いますと、共同製作者間では、やはりその作品の著作権保護期間とイコールにしていることが多いのです。ところが、実際のところは、原作者の原作使用許諾の部分で期間的な限定が入ってしまうということになってしまうのですけれども、やはりそういう長い関係が続くところで、いろいろな、権利の利用や消滅する部分については非常に難しい問題、課題がまだまだ残っているというところです。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは、先ほどの事務局の説明と、ただ今の参考人の御意見につきまして、積極的に御発言をお願いしたいと思いますけれども、何か質問あるいは御意見はございませんでしょうか。どうぞ、松田委員。

【松田委員】 知財協の方の資料でございますけれども、資料2の事例1というところをお願いします。
 このソフトウェア開発委託契約において共有関係が成立していて、そして第65条2項の主旨に乖離するような状態が生じるということは、前回の当小委員会でも少し話題になったところなのです。
 それで、その下に、契約実務上の限界というのが書いてありますね。これは、ある委員からは、開発委託契約に乖離があったとしてもきちんと処理することが行われれば問題は起きないのではないかと。むしろ、これは弁護士の怠慢であるというふうに御指摘を受けたところなのです。これはいかがなものでしょうか。どうしてそういう乖離が生じて、契約上、処理ができないのでしょうか。

【森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長】 案件の種類にもかなり程度があり得ると思うのですけれども、やはりソフトウェアの関連ですと、非常にスピード感が速いということもございまして、もちろんすべての案件に対して弁護士の先生のチェック、あるいは法務部門のチェックというのが行き届ければよいのですが、どうしても現場のところで進めていかなければならないというような事態も、往々にして起こりがちでございます。
 その場合、当然、ある程度の基本的な契約知識を持っている営業部門の人間が携わるわけなのですけれども、なかなかこの辺りの著作権の細かい条文のところまで読み込みきれていないというところがありまして、結果的に当事者間での契約のところで、うまくここまで作り込めないで結んでしまうというケースが発生しております。

【中山主査】 ありがとうございました。どうぞ、村上委員。

【村上委員】 それで、私は村下先生にまとめてお聞きしたいのですが、いわゆる代表行使者といったり、それから窓口権というものの実務関係の話ですけれども、私がたまたま知っているものでは、例えば放送番組製作委託契約は必ず放送会社と製作委託会社の共有にして、放送番組著作権というのは共有にして、放送会社が基本的に代表行使者に指定されていて、一事業についての許諾権を持つというふうにして配分比率を定めるという、そういう実務慣行になっているわけなのですが、質問として、3つばかりお伺いしたい。
 そういう場合で、映画の幹事会社もやっぱりそういう言葉を使って、いろいろ契約を結んでいるという話でしたけれども、第1に、「窓口権」とか「代表行使者」という名前を使った場合に、それは、著作権法は第64条の3項、4項に、著作人格者を代表して行使する者を定めることができる、この条項のいわゆる代表行使者という意味なのかどうかというのが第1点目の質問。
 それから第2点目が、基本的に代表行使者とか窓口権者に対する、今度は民法での体系との比較では、それに相当するものは何なのかというか、むしろ民法上の体系として、それに当てはまるものはどういう法律概念があるのかどうか、そういうのはうまく当てはまるのかどうか。
 最後は3番目で、そういう窓口権者とか代表行使者という名前を使った場合に、そういう人間が、どういう実際に権限を持っているか。それについての、今度は法律を離れて、実務慣行として大体そういうものを使ったらこういう権限を持っているという、そういうものが確立したそういう実務慣行みたいなのがあるのかどうかその3点をまとめて。

【村下弁護士】 この窓口権といいますのは、契約上では、この第64条3項、4項に関係するものであるのか、あるいは製作者全体からの単純な使用許諾契約、内部的な使用許諾契約に基づくものであるのかというのは、実を言いますと、はっきりしておりません。
 共同製作の段階では、共同製作委員会という、それがいわば民法上の組合にあたるのでしょうけれども、そこが、とりあえずは権利者であるという概念でとらえられておりまして、その共同製作委員会が、とにもかくにも単純に共同製作者の中にテレビ放送局があったとしても、変な話ですけれども、それ以外のテレビ放送局にライセンスするということも、あながち否定されているわけではないわけなのです。
 だから、共同製作契約の中ではっきりと、そのテレビ局にそのテレビ放送に関する窓口権を与えますよということを許諾、規定したときには、第64条の代表者という立場を認めたものであろうという解釈になることが多いかと思います。せいぜいその程度のところです。
 先ほどの民法上の位置づけということになりますと、結局は法律的な共同製作の仕組みの問題になってしまうのですけれども、共同製作委員会というものを考えたときには、それぞれのその窓口権というのは、先ほど言いましたように、使用許諾、映画の使用許諾契約という位置づけになるのか、もう1つは、民法上の業務委託契約という位置づけになるのか。
 ご存知のように、使用許諾契約の中で、さらに第三者への再許諾を含むという形の使用許諾契約も、かなり多く存在しておりまして、実際のところは第三者への再許諾を含むときには、その第三者に対する監督ですとか、許諾料の徴収ですとか、もちろん作ったものの監修ですとか、かなり、単なる使用許諾という枠を超えて、製作委員会から、そこの部分についての業務委託を受けているというとらえ方をした方が正しいようなケースが非常に多くあります。
 ですから、ここの部分も実をいうと、はっきり申し上げにくいところでして、強いて言えば、業務委託、共同製作委員会からの、映画製作委員会からの業務委託というような構成になるのかなと。自分自身が使用するというときには、使用許諾と。
 ですから、先ほどの今度は窓口権の方に戻りますと、その窓口権というのは、自分自身で行使する権限、それから第三者に許諾する権限、それから第三者に許諾したときには、その第三者の使用に対しての指導監督、作ったものに対しての監修、それから許諾料の徴収という、かなり業務的な部分が含まれたものになってくると。
 実際の実務慣行というところからしますと、この権利は動かさずに、窓口権を動かすというケースは、非常に増えております。例えば漫画の原作者がいて、その漫画を少年雑誌やなんかに出版している出版社がいて、その漫画をアニメーションにしているアニメーション製作会社がいると。このときに、アニメーションの著作権はアニメーション製作会社があり、これはもう全く動かさずに、でもそのアニメーションに基づいた映像ではないマーチャンダイジング、映像以外、要するに複製使用以外の使用の部分については、出版社にまかせてよと。要するに権利はアニメーションに帰属しているけれども、その原作を使用許諾した出版社が窓口権を持つというようなケースも非常に増えてきております。
 これはまさに共同製作契約の中であれば、窓口権といってもどうせ内輪の話なのではないの、ということにはなるのですけれども、だんだんそれなりの法的性格を認めていかないといけないのかなと。ここを単純な業務委託と割り切って良いのか。業務委託だと、委任に関する規定は準用されてしまうと。委任に関する規定が準用されれば、いつでも解除できると。そういったところで果たして良いのだろうかというような気はしております。
 ただ、実際には、そういう動き方が本当に多くなってきて、だんだん慣行化しつつあるという気がしております。

【中山主査】 ありがとうございました。他に何か。はい、どうぞ、道垣内委員。

【道垣内委員】 2点あります。関係するのですが、ソフトウェアにせよ、映画にせよ、その国際化の程度はどれくらいなのかということなのですが。
 外国に相手方、第三者がいるような場合には、外国の著作権法が適用され、いくらそういう日本の著作権法を手当てしてもそこはどうにもならないわけで、そこが相当に進んでいるのであれば、当然契約でやっぱり縛らなければどうしようもない。この法律をどうするかという話がどうなろうとも、そこはまた別に必要なのではないかと思うのですね。
 その際、それで2番目の話になるのですけれども、なぜ、その法律の手当てが必要かという話で、先ほども契約実務がどうも完璧ではない、あるいはあいまいなところがいっぱい出てきているので、デフォルトルールを作ってほしいというのは、あんまり説得力がないと思うのですね。
 現行法では何か妨げになっている部分があって、そこは要するに強行法規性か何かがあって、そこをやめてほしいというのであれば、すごくその意味があるのですが、それは多分ないのだろうと思うのですね。
 そうすると、もう1つの可能性は、第三者効を何か法律に書いてほしいと。その契約当事者間でこう決めておけば、第三者にも対抗できると。そうであれば法律事項ということになると思うのですが。
 そうであれば、最初の話に戻りますけれども、WIPO条約か何かで作ってもらわないと、国際的にはやはり対応できないので、この話は、単に著作権法の改正だけではないのではないかと思うのですが、そこまでのことがあるのかどうか、そこを少しお伺いしたいと思うのです。

【中山主査】 その点は、いかがでしょうか。

【倉永日本知的財産協会副理事長】 ソフトウェアの話からさせていただきますと、確かに契約実務で何とかなるのではないかという話はあるかもしれません。ただ、どうしても企業の実務から言いますと、ソフトウェアというものを見たときに、そのソフトウェアの権利という前提で見ているわけですね。だから、本来特許法、著作権法、不正競争防止法、商標法とかがいろいろ絡んでくるので、それぞれ個別に対応しなければいけないのだと思います。ただ、現実問題としては、出てきた成果、いわゆる知的財産は共有にしますというような規定が非常に多くなっています。
 プログラムというのは、やはりやや特殊なところがあって、おそらく、そもそもプログラムを著作権で保護するときに、プログラムというのは、やっぱり使用することで価値が出るということで、今利用する側についての例外規定というのは非常にいろいろ規定されているのだと思いますね。
 それは単独権利ということを想定して、それは多分できてきたのだろうと思いますけれども、実際その単独権利で利用者ができたものが共有著作権になったときに、共有著作権というのは、そもそも単独権利者はもともと自由に利用できるわけですよね。権利者なので。共有著作権になった途端に、お互い著作権者でありながら、自らが利用できなくなるケースが出てくるというのは、プログラムという性格を考えると、やっぱりちょっとアンバランスではないかなという気はしていまして。
 本来のデフォルトはどっちなのかといったときに、その共有著作権の扱いというのは、プログラムを著作権で保護する、ほんとにそこまで検討されてたのかなという気がしていまして、こういう提案をさせていただいています。

【中山主査】 少々追加的にお伺いしたいのですが、どういう法改正を要求されているのですか。

【倉永日本知的財産協会副理事長】 なかなか、これは難しいと。

【中山主査】 プログラムだけの改正なのでしょう。

【倉永日本知的財産協会副理事長】 そういう意味では知財協としては、今プログラムだけのということです。

【中山主査】 プログラムの特例を作ってほしいという話ですね。

【松田委員】 映画の方なのですけれども、窓口権についての不明確さがあるから、これを何だか著作権法上の対処が必要だという趣旨の発言があったと思うのですけれども、今道垣内委員からの質問に答えて、説明者の方からは、委託契約かサプライセンス権付のライセンス契約というのがあって、それが窓口権の実態ではないかと言われておりました。私もそういう形態は十分あると思っているのですけれども、もう1つは、民法上の組合の執行組合員の権限、これで組合契約に決めてしまうと、言ってみれば民法上の組合契約の中の処理ということも考えられる。おおよそこの3つの契約で処理されているのではないかと私は思っているのです。
 むしろ、問題は、組合契約は大抵、製作委員会契約だと、5年か10年で解消することになっていて、そのあと組合員の共有関係になってしまう。そのあとのルールが確立されていないというところに、もしかしたら、先ほどの資料2の事例1みたいな状態が起こるのかもしれない。そういうことなのではありませんでしょうか。

【村下弁護士】 御指摘のとおりだと思います。実際のところ、民法上の製作委員会という組合の中で、そういう執行役員という位置づけも十分にあり得るところだろうと思います。
 先ほどの、この民法上の組合がおおむね5年ぐらいで解消して、そのあと著作権保護期間の有効期間中、空白状態になっていくと。おそらく今まで、5年の組合存続期間終了後の、例えばテレビ放送あるいはマーチャンダイジングについての許諾権限がどうなっていくのかということについては、ほとんど触れられていないところだろうと思います。
 実際のところは、例えばテレビ局でブロードバンド放送は今後はできそうだよという話が来ると、もう1回製作委員会を招集して、議論をするというようなことが、たまには行われているようですけれども、実際のところはそういうケースと、あるいはもうそのままテレビ放送局の方で、自分の権限に基づいて、ブロードバンド放送、新しい放送メディアへの許諾をしているという、今のところは、まさに空白の状態に陥っているのかなという気がしております。

【中山主査】 先ほどの道垣内委員の質問は、日米合作などがどんどん増えてくれば、日本で法律を作ったところで、仕方がないのではないかという質問なのですけれども、そういう傾向はあるのでしょうか。

【村下弁護士】 日米合作映画というのも、非常に増えております。アニメーションの世界でも、実写の世界でも増えてきております。
 そのときに、もう非常に難しい問題が起きておりまして、原作者が例えば日本人であるというときに、原作者とその原作の著作権を処理する、映画への使用許諾を受ける側との交渉をしたときの準拠法が、おおむね原作者側の、例えば原作者が日本人であるとすると、日本法をとられることが非常に多いと。
 一方で、そうやって権利処理をした日本の会社とアメリカの会社とが共同製作をするというときに今度は、その準拠法の議論の中で、アメリカ法、カリフォルニア州法ですとか、ニューヨーク州法ですとかをとられてしまうことが多い。ここの綱引きが契約交渉の中で難航することがとても多いのですけれども。
 だから、日本の会社側からすると、原作者については日本法で縛られながら、共同製作者間ではアメリカ法によって縛られるという状況がありまして、ではここを製作契約の中ですべて埋めていけるかということになると、ちょっとどうにもこうにも法律構成しにくい部分などもたくさんあって、なかなか難しい。契約の中ですべてを、将来起きる事態をすべて網羅するような契約条項を起こしていくというのは、非常に難しい状況になっているというところだと思います。

【中山主査】 それはもちろん難しいのでしょうけれども、その場合、法律で何かできますかという、こういう質問だと思うのですけれども。

【村下弁護士】 確かに立法によっては難しい。

【中山主査】 立法の方が、契約よりもっと難しいのではないでしょうか。

【村下弁護士】 はい、著作権法の全世界統一を要しそうなことですから、難しい面があるかと思いますね。

【中山主査】 他に。どうぞ、苗村委員。

【苗村委員】 ソフトウェアの方で、先ほどの道垣内先生の質問の延長の確認なのですが、資料の3ページ問題の所在(2)というところで、1から5までの具体的対応があるというふうに説明をされて、この中で2と3、23の部分について、現行制度上問題があるので改正をしてほしいという趣旨だと、先ほど伺ったわけですが、2、3確認をしたいのですが、1つは、3の部分というのは、これは、共有権者それぞれが正当な複製物を持っているはずですから、第47条の2で大半は対応できるのではないかと思うので、あえてここについて、法改正を必要とするほどのことが起きているのかなというのが素朴な疑問で、多分3は、それほど重要な、法改正をするにしてもあまり重要なものではなく、主に2ではないかということを確認したいのが1つと、それから45に関して、ここでは何も言っておられなかったのですが、先ほどの御質問にもあったように、例えば外国の企業との共有権の場合などについて、むしろ4なり5が問題にならないのか。その辺りを少し確認をさせていただきたい質問です。

【森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長】  3の部分についてなのですけれども、今第47条の2のお話をいただきましたけれども、あちらの権利制限のお話が、やはりかなり限定的な形で用意されているということもありまして、こちらの3のところで触れておりますのは、もう少し広いところに来るのかなと思っております。
 ですからバックアップのための複製というようなところを超えて、やはりもう少し開発を進めてより良いものにして、細かいバグ取りというようなものを超えてカスタマイズをしたい、機能追加をしたいということになると、なかなかそこの権利制限でカバーできるのかどうかが分からなくなってくる。
 あるいは社員が使用するコンピューターのインストールというものに加えて、自社が運営するサービス、例えばホームページか何かを立ち上げて公開している会社さんは多いと思うのですけれども、ああいったホームページサービスを運営するためのマシンに共有となっているソフトウェアを入れて、稼動させて使用するということが、そういった第47条の2の範囲でできるかどうかというのは、少し不安な部分もありますので、3のところについても、こういった中での活用ということであれば、利用ができるようになればいいかなというふうに考えているところでございます。
 それから45についてなのですけれども、ここは、かなりソフトウェアの事業者の規模等々によっても考え方が若干分かれてくると思います。大手といいますか、かなりパワーの強い者については、45の部分についても、自分が権利を持って、自分で動けるようにしておきたいというようなウィルが働きがちだとは思うのですけれども、やはりソフトウェアの分野ですと、当然新進気鋭のベンチャーみたいな新しく小さな会社もありますので、そういったところと、どうしても力関係のところで、有利不利というような問題も起きやすいというような事象もございますから、そこはなるべく慎重というような形を取りまして、45のところについては、今回の対象から外してもいいのかなというようなところで考えております。

【中山主査】 知財協の要望を、もう一度確認したいのですけれども、コンピュータープログラムに関しては、特許法と同じような規定にしてほしいということでしょうか。

【森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長】 ここも若干、立場によっていろいろあると思うのですが、特許法と同じということになりますと、おそらくこの4のところも、セーフになるということになってくるかと思います。
 ここの部分について、やはり少し議論が分かれているというところもございますので、だとすれば、そういった意見も尊重する必要がありますので、23のところを対象とすることが程よい対応なのではないかというふうに感じている次第です。

【中山主査】 人格権の方は、どういう御希望でしょうか。

【森谷日本知的財産協会デジタルコンテンツ委員会副委員長】 人格権の方につきましては、実際、プログラムのところの契約の処理としては、確かに不行使特約などを実務としては対応している次第なのですが、実際人格権が傷つけられてというところで、本当の真のトラブル、紛争が起きるかというと、なかなか起きにくいのではないかというような考えに立ちまして、そこの部分については、特に要望という形では挙げておりません。

【中山主査】 はい、分かりました。
 他に何か、御質問がございましたら。時間も押していますので、よろしゅうございましょうか。
 それではどうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、「各ワーキングチームからの検討結果の報告」に移りたいと思います。
 本年4月27日に開催されました第3回法制問題小委員会におきまして、各ワーキングチーム座長から検討事項を報告していただきましたが、本日は契約・利用ワーキングチームと司法救済ワーキングチームから検討結果のご報告をいただけると伺っておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず契約・利用ワーキングチームの検討結果報告を、土肥座長よりお願いいたします。

【土肥委員】 それでは、契約・利用ワーキングチームの検討結果を御報告いたします。
 今期前半の契約・利用ワーキングチームでは、昨年度からの継続事項になっておりました契約によるオーバーライドの問題の検討を行いました。
 契約によるオーバーライドの問題と申しますのは、著作権法第30条以下の権利制限規定が定めております自由利用の対応や範囲を契約により引っ繰り返す、つまりオーバーライドすること、これが可能かどうかと、こういう議論でございます。
 昨年度の検討では、この問題については、これから申し上げます3つの観点から、さらなる検討を行う、こういうことが必要であると結論づけていたところでございます。
 1ページ目にありますように、1つ目としましては、著作権法において、どのような場合にあっても、それをオーバーライドする契約が無効であると言えるような権利制限規定、いわゆる強行規定が存在するかどうかという点です。
 第2には、権利制限規定も契約の無効を判断する要素の1つとしつつ、いくつかの要素から判断して、一般的に無効となると考えるべき契約として、どういうものがあるか。また、権利制限規定以外の判断要素としては、どういうものが考えられるかという点です。
 それから第3に、以上の諸要素を確定させた上で、契約の有効性に関する判断について、立法的対応が必要かどうか、こういう点でございます。
 今回は、この結論を踏まえ、検討を行ったわけでございます。2ページ以下に検討方法が出ておりまして、検討方法といたしましては、まずオーバーライドの実例を取り上げ、個々の条項が、著作権法との関係でどう問題となり得るか、また、これらの事項、条項に係る契約の有効性を判断する要素として、何が考えられるかについての議論を行いました。
 次に、これらの結果を踏まえまして、ただ今申し上げた3つの観点について、一般論として何が言えるかと、これを検討する、こうした手順を踏んでおります。
 契約の事例としましては、具体的には、オーバーライドの実例が見られるソフトウェア、音楽配信、データベース、楽譜レンタル、この4つを取り上げたわけであります。また、オーバーライドという言葉を広い意味で捉えまして、第30条以下の権利制限規定をオーバーライドするもの、これももちろんでございますけれども、そもそも著作権により保護されないものの利用を契約により制限することなども含め、検討いたしました。
 それから、報告書の2ページから3ページにかけまして、関連法制を挙げております。契約の有効性を規定する関連法制として、民法第90条と消費者契約法第10条を解説しております。これは、仮に権利制限規定が強行規定と解釈される場合には、当該規定に反するということだけで契約は無効になるわけでありますけれども、そうではない場合、実際には、これは一般法を受け皿として、契約の有効性が判断される。取締規制、強行規定違反の理由の他に民法第90条で判断されると、こういうことがございますので、このことの確認という趣旨でございます。
 それから4ページ以降に、ソフトウェア、音楽配信、データベース、楽譜レンタルの4つの分野につきまして、実際の契約を参考に、契約条項例を設定し、これらの有効性について検討をしております。
 1つ目のソフトウェアの事例、4ページでございますけれども、ソフトウェアを使用するハードの台数やバックアップコピーの部数、リバースエンジニアリング等を制限するような条項について、第30条の私的使用のための複製や、第47条の2のプログラム著作物の複製物の所有者による複製との関係、リバースエンジニアリング等の制限の可否を議論したわけでございます。
 2つ目の音楽配信の事例では、楽曲の利用を購入者本人の私的使用に限定する条項や、楽曲の複製回数を制限する条項について、私的使用のための複製との関係や、著作物の利用の目的を制限することの可否を議論いたしました。
 それから3つ目のデータベースの事例では、法令や事実情報など、著作権の対象ではない個々のデータベースについて、その複製や公衆送信を制限するような条項が見られますことから、そもそも著作権の対象ではないものについて、あたかも著作権があるかのように利用を制限することが認められるかどうかも検討いたしました。
 それから最後に楽譜レンタルの事例については、権利制限規定で認められるような行為を含め、あらゆる対応の複製を制限することや、著作権の保護期間を過ぎた著作物の複製を制限することが認められるかどうかを議論しております。
 個別条項の検討結果は、4ページから8ページまでに記載しておりますので、御参照いただきたいと存じます。ここでは時間の都合もございますので、その御紹介は省略いたします。
 それから9ページから、検討結果として、著作権法と契約との関係をどう考えたらよいのか、また立法による対応の必要性がどうなのかと。これを、ワーキングチームとしての、この点についてのスタンスを述べております。
 まず契約法と、契約と著作権法との関係でございますけれども、この部分は、まず初めに申しました3つの観点のうち、はじめの2つに対応しております。今回の検討の対象とした4つの分野に見られる契約条項と権利制限規定の関係について申しますと、著作権法の権利制限規定に定められた行為であるという理由だけをもって、これらの行為を制限する契約は一切無効であると主張することはできず、第30条、第47条の2などの権利制限規定は、いわゆる強行規定とは言えないのではないかと考えております。
 したがいまして、これらをオーバーライドする契約につきましては、契約自由の原則に基づき、原則としては、有効であろうと。ただ、実際には、それぞれの権利制限規定の趣旨やビジネス上の合理性、不正競争、不当な競争制限を防止する観点等を総合的に見まして、個別に判断されることになろうと考えられます。
 また今回は、個別の権利制限規定についての具体的な検討は行いませんでしたけれども、例えば第32条の引用規定、第42条の裁判手続等における複製の規定につきましても、こうしたこれらの規定をオーバーライドする契約が、例外なく一切無効であるとまでは断定できず、その意味での強行規定ではないのではないかと考えたわけです。
 ただし、これらの規定は公益性の観点からの要請が非常に大きく、オーバーライドする契約が有効と認められるケースは、極めて限定的であると考えられます。
 このように、強行規定ではないと考えられる規定をオーバーライドする契約が有効かどうか判断するに当たりましては、ビジネスの実態全体を見て、制限の程度、対応やその合理性、関連する法令の趣旨等を考慮する必要があるため、いくつかの要素をあらかじめ特定して、ある類型について、一般的にその有効性を判断することは困難ではないかと考えられます。
 最後に、立法の必要性でございます。著作権法をオーバーライドするような契約条項の有効性の判断に当たりましては、一律の基準によるのではなく、個々の実態に即し、柔軟に行うことが求められますことから、現行著作権法上において直ちに立法的対応を図る必要はないのではないか。この問題につきましては、当面は、議論の蓄積を待つことが適当ではないかと。このように結論づけておるところでございます。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 引き続きまして、司法救済ワーキングチームの大渕座長より、検討結果の報告をお願いいたします。

【大渕委員】 それでは、お手元に、資料4として「司法救済ワーキングチーム検討結果報告」という報告書がおありかと思いますが、これに沿って報告をさせていただきます。非常に大部のため詳細に説明しますと何時間かかるか分かりませんが、15分程度いただいておりますので、要点に絞ってご説明できればと思っております。
 まず最初に、128ページ、129ページに検討経過というものがございまして、これが昨年7月以降の検討の履歴を示すものであります。これをご覧いただくとおわかりのように、前提としての比較法の作業が非常に大変でありまして、以前から申し上げていたとおり今まであまり先行研究がなかった理由が改めて痛感された次第です。そのため、膨大な時間をかけて比較法的な基礎調査を行いましたが、作業のスピードアップの観点から、ここに名前を挙げさせていただいている先生方にも、協力者として御協力いただいて、各専門の方の御意見もお聞きしつつ、より客観性の高い検討を行うべく努力した次第でございます。
 この場をお借りしまして、御協力いただいた先生方には深く感謝をいたしたいと思います。
 早速内容でございますが、昨年もご報告いたしておりますので、昨年からの変更箇所を中心に、ご説明したいと思います。
 まず、「はじめに」の部分は、実質上変わっておりませんので、飛ばすことにいたします。それから「裁判例からのアプローチ」という部分も、3点ほど加えた以外は、昨年から特に変更はございません。
 6ページから7ページのところに、いわゆる録画ネット事件についての知財高裁の保全抗告審決定が出ておりますので、これを付け加えております。これは、理論構成につき若干はっきりしないところがありますが、多分、この報告書でも説明しておりますカラオケ法理に依拠するものではないかと推察されようかと思います。
 それから、9ページ以下で、選撮見録事件という大阪地裁の判決を追加しておりまして、これは内容的には皆様ご存知かと思います。10ページにもありますとおり、要するに著作権法第112条1項の適用自体は否定しつつも、その類推適用を認めるという法律構成に立つものであります。
 それから最後に、12ページから13ページのあたりだと思いますが、スターデジオ事件について付け加えました。これは、カラオケ法理等とは異なりまして、いわゆる手足理論という、著作権法に特有なものではない、一般的な法理が問題になったものであります。
 次に、14ページ以下の「外国法からのアプローチ」という、ここが今回大幅に作業を行って、記載が分厚くなっているところでございます。
 ここでは、昨年同様、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスという主要4法制について検討を加えました。「間接侵害」の論点として中心となるのは差止請求の相手方の範囲という点なのですが、これにつきましては、この4法制をいろいろと検討しました結果、結論的には、差止請求の相手方について、この4法制におきましては、いわゆる直接侵害者に限定するということはないという点が結果として得られているところかと思います。
 以下、要点に絞ってご説明させていただきます。
 まず14ページ以下にございますドイツ法ということであります。フランス法、アメリカ法、イギリス法は、かなり法制自体が違っておりますので、そのような意味では、このドイツ法がいちばん我が国に法制が近くて、比較法的には最も参考にする価値が高いかと思われますので、このドイツ法に時間を割いてご説明できればと思います。
 まず最初に著作権法第97条という重要条文でありますが、この条文自体は、108ページに参照条文として引用しております。その内容といたしましては、若干読みにくい条文ではありますけれども、第97条の1項によりますと、著作者の権利その他の著作権法上の権利を違法に侵害された者が――これについては14ページも併せて見ていただくと分かりやすいかと思いますが――「違法に侵害する者に対して」――ここが相手方に関する条文の重要な部分です――侵害の排除、それから反復のおそれがあるときは停止を請求することができるとともに、加害者に故意又は過失があるときは、損害賠償を請求できるというふうに、差止めと損害賠償が併せて規定されているような形になっております。
 この第97条で著作権法上の権利侵害について責任を負う者はどのような者かということについては、この14ページの3つ目のパラグラフ、「そして」というところから始まっているところでありますが、結論的には、権利侵害を自ら行う者、あるいは、これに関与する者で、その行為と権利侵害との間に相当因果関係が存在するものが著作権法上の権利侵害について責任を負う者、したがいまして、差止めの相手方になり得る者ということであります。
 ただ、これだけだと拡大しすぎるということで、その次のパラグラフにありますとおり、一定の義務違反があったことが前提とされているということで、そのような絞り込みはなされているわけなのですが、前提といたしましては、差止請求の対象になり得るのは、権利侵害を自ら行う者、あるいは、これに関与する者で、その行為と権利侵害との間に相当因果関係が存在するものということが言えようかと思います。
 その説明といたしましては、16ページを御覧いただきますと、また同じことが、「そして」と始まるパラグラフのところに書いてありまして、その例として挙げられているのは、その次のパラグラフの「例えば」で始まっているところでありますが、著者が剽窃作品を出版社に送り、その出版社が印刷所にこれを印刷させた場合には、責任を負うのは、出版者と印刷者と著者の三者であるとされておりますし、それからまた、公演について、組織的・財政的に責任を負う主催者が権利団体から必要な許諾を得ることを怠った場合も侵害者とされております。
 その次にも判例で2つほど例を挙げていますが、これは時間の関係で飛ばします。
 16ページのいちばん下の「このように」で始まるところが、まとめ的なところでありますけれども、ドイツ著作権法第97条の責任を負う者の範囲は広く、停止及び除去請求に関しましては、単なる妨害者(Störer)、すなわち、何らかの方法で意図的にかつ相当因果関係をもって、著作権法上の権利侵害に関与し、その防止に法的な可能性を有している者という、そういう妨害者(Störer)も、この第97条の責任を負う者の範囲に含まれているということであります。
 その次のパラグラフが、先ほど言いました絞り込みの関係でありまして、過度に広がり過ぎないように、調査義務に違反した場合ということで、絞り込みがされているということでありますが、入口のところとしては、先ほどのように非常に広く、少なくとも直接侵害者に限定されているということはないということであります。
 その次に、前提としてドイツ民法がどうなっているかという点が非常に重要になってくるのですが、この点についての記載が19ページ以下のところであります。参照条文で言いますと、114ページにドイツ民法(BGB)第1004条がありますが、所有権について規定されておりまして、これとの関係が民法の一般論として問題となるわけであります。
 これにつきましては、20ページに内容について記載がありまして、妨害者(Störer)というのが請求の相手方になるのですが、これについては、ここにありますように、行為妨害者と状態妨害者の両方が含まれます。その次の「このうち」で始まるパラグラフでありますが、前者の行為妨害者につきましては、直接妨害者のみならず間接妨害者も含まれるということで、間接妨害者も差止請求の相手方に民法上なり得るということでありまして、例としては、テニスコートの例や広告の例などが挙がっておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 以上のように、民法としても、直接妨害者に限定されてはおりません。
 少し時間をかけてドイツ法に焦点を当てさせていただきましたが、反面、他の三法は、15分という時間の関係で、簡潔に触れるにとどめます。
 22ページ以下のフランス法から始めます。フランス法は、事例を見ると、一定の場合に、いわゆる直接侵害者以外の者に対して差止請求が肯定されており、その結論は分かるのですが、どのような理論構成によるのかというあたりが、いくら調べてもよく分からない面がありまして、人によっては、もう当然と思われているので、あまりそんなところは議論してないのではないかという話もあるのですが、いずれにしましても、時間の関係で、エッセンスだけをご説明いたします。
 25ページのところの著作権侵害に対する救済については、刑事上の制裁を受ける侵害行為ということで、刑事制裁を中心に検討しつつ、民事の方も考えるということで、刑事制裁が、フランス法上は非常に重要な役割を果たしているようであります。
 次に直接侵害に対する民事上の制裁ということで、26ページにございますが、ここはお読みいただくことにしたいと思います。メインは、28ページ以下にあります間接侵害に対する民事上の制裁ということで、民事上の制裁の中には、損害賠償と差止めの両方が入っているわけでありますが、これについては時間の関係で、省略します。
 要約的な部分といたしましては、33ページの総括にございますとおり、差止請求が認められる理論的な根拠自体が必ずしも判然としない面はあるのですが、差止請求については、権利の物権的性格からすべての者に権利を対抗することができて、帰責性(faute)が問題とならないということで、侵害行為の停止は当然に認められるというように解されているようであります。
 それでその次が重要でありますが、ここは漠然と、差止めの対象となる者は、侵害行為に関与しているすべての者と捉えられており、先ほど言いましたように、何ゆえかというところが必ずしもよく分からないのですが、判例等を見ていると、原則としてはこのような形で捉えられていると窺われるところと言えようかと思います。
 次に、アメリカ法でありまして、36ページを御覧いただきたいと思います。これは昨年ご説明したところと重複いたしますので、要点だけ述べますと、36ページのア.の第2パラグラフのところにありますように、要するに著作権侵害というのは非常に重要な概念なのですが、これは著作権法上の規定はないのですけれども、判例法上は、直接侵害は当然入るとして、それ以外に寄与侵害と代位侵害も入るとされております。
 それで、その次にございますとおり、著作権侵害というものを根拠として、差止めと損害賠償が認められるという形になっておりまして、損害賠償はコモン・ロー上の救済、差止めはエクイティ上の救済ということで、根元は1つの著作権侵害なのですが、これについては、このように2種類の救済が認められているということになっております。
 先ほど言いました寄与侵害について、39ページ以下でありまして、これは昨年と同様ですので、説明は省略いたしますが、この寄与侵害につきましても、損害賠償と差止めが認められるということであります。
 それからその次に代位侵害についても昨年と同様ですので説明を省略いたしますが、これについても、差止めと損害賠償が認められるということになっております。
 それから、次に、イギリス法であります。これについては、アメリカ法と似ているかと思うと、かなり違うところがあります。66ページにございますとおり、一次侵害、二次侵害という形で規定され、一次侵害も二次侵害も、法的効果として、侵害に対しては損害賠償と差止めが救済措置として認められている点では同様なのですが、認識の要否の点で差異があります。
 一次侵害の方は時間の関係で、一言だけ申し上げますと、67ページにありますとおり、一般的な意味で我々が一次侵害と把握しているもの以外に、許諾(authorization)責任というものが重要な一次侵害の内容になっておりまして、その意味では一次侵害といっても、かなり広いものを含んでいるということがいえようかと思います。
 それから、二次侵害については、74ページにございますとおり条文上列挙されております。これらのうち、我が国の「間接侵害」を論ずる際に重要と考えられるのは、345であります。先ほど言いましたように、一次侵害との違いは75ページの上の方にありますとおり、主観的要件が必要だということでありまして、それには現実の認識と擬制的認識の両方が含まれるということであります。
 時間の関係で省略いたしますが、81ページの3にありますとおり、先ほどのような著作権法上の侵害責任たる一次侵害、二次侵害以外に、一般民事上の法理に基づく侵害責任というのもあるということになっており、非常に複雑な形になっております。
 そして、侵害の効果としては、損害賠償のほかに、差止めが認められています。
 このように、イギリスにおきましても、差止めの相手方として、直接侵害者に限定されるということはないわけであります。
 86ページ以下の「民法からのアプローチ」と、92ページ以下の「特許法のアプローチ」は、時間の関係で説明を省略いたしまして、いよいよ103ページにある「検討結果」のところであります。
 今回は非常に時間をかけまして、比較法の調査も行って、基礎は次第に固まりつつあります。これについてはいろいろ皆さんからの御批判をいただきまして、今後更に詰めていきたいと思いますが、かなり地盤はできてきたかなということであります。今後はこれを踏まえて、どのような形に持っていくかというところが一番の中心になるわけであります。内容としては、昨年の報告書と、表現ぶりは別といたしまして、さほどは変わっておりませんで、特許法第101条1号・3号に対応するような、「のみ」品的な間接侵害を、何らかの形で著作権法上も認めるという基本的方向性については、特に異論はなかったのですが、それを超えるような間接侵害をどこまで認めるべきか、認めるべきではないか、というのは、本年度の調査結果も踏まえつつ、今後検討を継続すべきものというふうにされました。
 それから本ワーキングチームのテーマといたしましては、間接侵害以外に、損害賠償、不当利得等というのもあるわけですが、これについても、間接侵害の検討として併行して、今後検討することとされました。以上です。

【中山主査】 ありがとうございました。予定ではここで休憩が入るのですけれども、だいぶ時間も押しておりますので、今日は休憩なしということで進めさせていただきたいと思います。
 それでは早速、意見交換に移ります。はじめに、契約・利用ワーキングチームの報告につきまして、御意見がございましたらお願いいたします。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 著作権の制限規定の中で、第30条に代表されるような権利者と、それから特に末端の利用者との利益の調整に関するような条項と、第38条も多分そんなふうになるのだろうと思うのですが、訴訟法上、資料として使えるとか、それから新聞の論説に使えるとか、それから教育、教科書に使えるとか、こういう種類のものについては、かなり公益性が強くて、もう当然に、その利用については、著作権法上の審議の時に、私的なものと違って、公益性が読み込まれているというふうに考えるべきではないかなと思うのです。
 そうすると、これは純粋に強行法規としての性質があるのではないかなというふうに思うのですが、そういう議論はいかがだったでしょうか。第30条以下でも、大きく分ければ2種類に、私はなるのではないかなというふうに思っているのですが。

【中山主査】 土肥委員、お願いします。

【土肥委員】 委員の御質問に的確にお答えできるのかどうか、分からないのですけれども、第30条以下の個々の規定それぞれが、その1つ1つの規定が強行規定であるのかどうかという、そういう検討の仕方は実はしてないのですね。つまり、実際にある実例、契約で使われているであろう、そういうものを基に、これはどうかという検討の仕方をしております。
 ただ、その報告の中でいくつか、おっしゃるように公益性の非常に高い、そういう規定も中にはあるわけでありますけれども、例えば、それが絶対にそういう規定をオーバーライドするようなことが一切許されないのかというと、そこまでは踏み込めないというのが、報告の中に出ているところなのです。委員がおっしゃるように、第30条のような規定から、裁判上の利用とか、そういう論説における複製とか、様々な規定があることは重々承知をしているのですけれども、ではその規定の内容をいささかでも変えるような契約が直ちにそのことだけで無効になるかというと、もっと総合的に様々な事情を考慮しなければならないのではないかということなのですけれども。
 もし、私の理解が十分でない場合には、森田委員もおいでになりますので、場合によっては議論の経過として、私はそういうふうに了解しておるんですけれども、何かあれば補足していただければと思いますけれども。森田さん、いかがですか。

【森田委員】 よろしいです。

【中山主査】 教科書に載せるというのは、非常に公益的な色彩が強いように思うのですけれども、現実的にはどうなるかということを考えると、既に世の中に出回っている漱石、おう外、その他そういう教科書に載っているようなものは、これは個別的な契約で掲載を禁止するということはありえない。実際はデジタル化して暗号化して、個別的に頒布する、例えばウィンドウズのような、ああいう部類の著作物になると思うのですけれども、そういうものについて、例えばウィンドウズを解析してプログラムを教科書に載せて良いかという、こういうふうになるかと思います。つまり、契約できるということはかなり問題が限定的ですね、これは。
 ですから、一般論として、教科書は公益的だといえば、それはそうなのですけれども、なかなか、そこは詰めていくといろいろ細かい問題が出てくるのではないかという気はします。裁判で使う場合と、教科書で使う場合とも違うかもしれません。最終的には、各条文ごとの検討というのはしない予定ですか。

【土肥委員】 ご質問の趣旨は、今後、検討の経過の中で、個々の規定1つ1つを洗い出すということでしょうか。

【中山主査】 はい。

【土肥委員】 契約・利用ワーキングチームのテーマはこれだけでないものですから、これはチーム全体で諮ってみないと分かりませんけれども、今後はこの次の検討項目である「利用権」問題を考えております。

【中山主査】 確かに世界的に見ても、まだこの問題は煮詰まってないし、今すぐ立法というのは、難しいのかもしれませんけれども。
 他に何かご質問がございましたら。はい、どうぞ、道垣内委員。

【道垣内委員】 知らないから聞くだけなのですが、楽譜は、販売はしないでレンタルだけというのが、ビジネスのスタイルなのかもしれないのですが、これでこういう条項も有効ですというお墨付きをもらいますと、今まで売っていたものもレンタルにしていくということが、そのビジネスとしてはあり得るわけですが。もう既にソフトウェアなんかはそうしていると思いますけれども。それがどんどん広がることは別に、それはそれで、そういう契約形態を取ること自体が不当だということはないという御判断なのでしょうか。

【土肥委員】 楽譜レンタルではなくて、楽譜の売買をしているビジネスはあるのだろうと思うのですけれども、我々が取り上げたのは、その楽譜レンタルのもので、もう少しここに紹介している8ページにある例は、1つの条項だけが紹介されておりますけれども、もっといくつかの条項があるものを検討したわけです。
 しばしば楽譜のレンタルの場合には、著作権が切れているものが多うございまして、『第九』とかですね、ああいうようなものについてのレンタルがなされているわけですけれども、仮に、そういうものを契約で複製はしないということで、そういうビジネスの枠組みの中でこれが成立しているはずのところではないか。1つを貸したあと、全部、コーラスグループの方全員にコピーされてしまうと、それでは、こういうビジネスはおそらく成立しないのだろうということなのですね。
 そういうビジネスが許されないのかどうかということが、まず考慮すべき重要な要素ではないかということから、こういう結論になりました。今、委員のおっしゃった、もし売買のものがレンタルの方に来るということが仮にあったとしても、そこは影響を考えてないのですけれども、あったとしても、それは営業の自由といいますか、許されていることではないかなと、個人的には思っていますけれども。

【中山主査】 よろしいですか。
 他にご質問がございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に移りたいと思いますけれども、司法救済ワーキングチームの報告につきまして、御意見を頂戴したいと思います。御自由に御意見をお願いいたします。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 103ページの検討結果で、のみ性を有するツールについては、第101条1号、3号に対応したような間接侵害規定を設けるべきだというのは、私はこれは大賛成であります。この部分について言ってみますと、何とか解決しようとして、裁判所がいろんな解決方法を昭和39年のカラオケ事件以来、ずっと取ってきたのだと、私は思っています。これでかなりの部分は解決できるかもしれませんが、次は、いろんな形で幇助形態をどこまで認めるかということは非常に重要だと思います。
 特許と違いまして、ツールではなくて、「何々をする方法」とかいうものを言論で出す場合もありまして、そういうコピーツールに代わるような技術的な説明などが、ネットや何らかの論文で発表されるようなこと、こういうことを差止められていいわけがないわけで、この価値観はおそらくみんな同じだろうと思うわけですが、そういうところの住み分けがどうできるかというのは、実は幇助という概念は全部民法に頼っているわけですから、外縁があいまいになると思います。その点をどうするかというのは、最大の問題かもしれません。一応、103頁の条101条1号・3号、相当の導入自体についてには賛成の意を表明しておいて、これに限定される立法を取るべきでないことと、幇助という外延の問題があることを示しておきたいと思います。

【中山主査】 はい、どうぞ。市川委員。

【市川委員】 今回、いろいろイギリスなど、いろいろな材料を出していただきまして、読ませていただいて、何かかなり頭の整理ができてきたのかなという気がいたします。今後の作業をどうされるのかというのを少しお伺いしたいということがございまして、具体的な日本の裁判例、アメリカ、イギリスなど、いろいろな裁判例を前提に、これは日本でもオーケー、セーフ、これはアウトというような形で、具体的にこれから議論されるのか、場合によっては既にされているのか。
 私がいちばん関心を持っていますのは、例えばイギリス法のところで出てきました、ホールか何かを貸す時に、やはり何を演ずるかというのが分かっている以上は、ちゃんとそれについて著作権処理がされているかどうか、何か確認する義務があるみたいな、そういうようなイギリス法の説明があったのですが、この辺もひとつ、境界的にせめぎあいになるのかなと。日本では、そこまで認める必要がないという意見と、日本でも認めるべきだという意見、これはやっぱりカラオケの機械を貸すのと同じと見るか、やっぱり違うと見るのかですね。今後どうされるのか、場合によっては今既に議論されている点で、どの辺まで議論が進んでいるのかというのがございましたら教えていただきたいなというふうに思っております。

【中山主査】 それでは、大渕委員。

【大渕委員】 先ほど申し上げたとおり、1年間かけてようやく比較法的な基礎作業ができてきたところでありますが、これはあくまで素材にしかすぎませんから、これを踏まえた上で、どのように検討を進めて方向性を示していくかというのが今後の課題だと思います。
 ただ、当然イギリスの判例などを検討する際にも、日本ではどうかということを念頭に置いて比較しながら考えてはいますけれども、それを踏まえつつ、今後、今市川委員が言われた点を含めてどのような形で処理していくのが良いのかについて鋭意検討していく予定です。

【中山主査】 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 今回の報告は、基礎作業として外国法の調査をされたということで、その知見を最初にまとめられたわけですが、そのまとめとしては、外国法の中で特にドイツが我が国にとっては参考になるということで、詳しく御紹介いただいたのですけれども、このドイツの著作権法の規定というのは、別に直接侵害と間接侵害とを分けず、侵害一般について、差止請求と損害賠償請求に共通の「侵害」ということでくくっていて、その一般規定の解釈としてどこまでが入ってくるかという問題として扱われているということであったかと思います。また、他の国についても、イギリスについては若干特殊性があるかもしれませんけれども、フランス等についても、侵害とは何かという一般規定の中でこの問題の解決が図られているということで、そういう外国法の状況についての知見を明らかにしたというのが、今日の御報告の主眼であったと思います。
 日本法においても、それと同じ方向で考えていくべきかどうかというのは、次の問題でありますが、日本法については、従来、損害賠償請求については民法の共同不法行為に関する規定で受けることができるので、問題は差止請求であるが、差止請求については、著作権法に特別な規定を置かない限りは認められないという前提が一般にとられてきたように思います。しかし、ドイツ法のような解釈が可能だということになりますと、第112条の一般規定にいう「侵害」とは何かという中に、これは別に直接侵害に限るという趣旨ではなくて、間接侵害についても一定のものは入ってくるという解釈が十分に成り立つことになります。そこは、ドイツ法的に言うと、違法性であるとか、相当因果関係といったような一般的な道具概念を用いてケースごとに考えていけば良いということになりますので、このような方向がありうることが示唆されたように思います。
 そうしますと、従来は、間接侵害の問題は、著作権法に特別な規定を置かなければ差止請求の対象にできないというふうに、日本では一般に信じられてきたようなところがあるかと思いますけれども、今日の御報告は、そういう考え方については再考を促すというインプリケーションがあったのでしょうか。最後の結論として、今後の我が国でも何か特別にこういう場合に間接侵害に当たるというような規定を置く方向で検討を進められるのかどうかという点については、その辺りはまだオープンなのかもしれませんけれども、今日の御報告の直接の主眼であるところの比較法の検討から得られたインプリケーションという点は、先ほど申し上げたように私には聞こえたのですけれども、そのように理解してよろしいかどうかという点を御確認したいと思います。

【大渕委員】 今言われた点は、基本的にそのとおりだと思います。例えば、ドイツ法の場合には、条文上は「侵害する者」と規定されているのですが、「直接侵害する者」というように限定はせず解されておりまして、間接侵害的なものも含むと解されています。ただし、間接侵害がすべて含まれると解されているわけではなくて、絞り込まれておりまして、直接侵害者に限定してはいないけれども、間接侵害者ないし幇助者が全て入るというのでなく、その中間のようなところを狙っているのかなというところは出ているのではないかと思います。
 ただ、それを踏まえて、我が国で今後どう検討していくかというのは、現行法ですと、例えば第113条のみなし侵害があるための反対解釈であるとか、解釈論ではいろいろあり得るわけですが、本ワーキングチームではむしろ解釈論というよりは立法論的な点の検討を行っていますので、先ほどの点も踏まえて、どちらの方向に持っていくのが良いのかというところを検討していきたいと思っております。

【中山主査】 他に何かございませんでしょうか。よろしければ、このテーマはこのくらいにしたいと思いますけれども、非常に大変な大作をどうも御苦労様でした。単に外国の条文がこうなっているとか、判例がこうなっているという、それを調べるだけでも大変ですけれども、特に判例の方が大変なのですけれども、知的財産権というのは、民法の上に立脚しているわけで、その民法との関連も詳しく調べておりまして、これは学術論文としてあるいは基礎的な作業として、非常に価値があると思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次の項目であります「私的使用目的の複製の見直しについて」の議論に移りたいと思います。
 まず事務局から、資料5の説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 それでは、御説明いたします。この私的使用目的の複製の見直し、いわば私的複製の見直しにつきましては、私的録音録画における複製の範囲ということが大きな論点として位置づけられますけれども、私的録音録画補償金について議論を進めております私的録音録画小委員会における議論では、契約と私的複製との関係についての整理が前提として必要になるのではないかとして、当小委員会の契約・利用ワーキングにおけるいわゆるオーバーライドに関しての検討がその解決の前提となるのではないかといったような御意見も見られました。
 もっとも私的録音録画補償金制度は、そもそも私的利用域における複製、特に録音、録画に関して補償金を課している制度でございますので、私的領域の範囲についての具体的な検討は、具体的にどのような録音録画について、補償金を課すべきかといったことと一体的に考えなければならない課題と考えられます。
 この私的録音録画に関しましては、現在、私的録音録画小委員会において、検討が進められているところですので、議論に混乱をきたさず、かつまた議論を円滑に進めるために、ここで法制問題小委員会としての検討の方向性について、整理をしておく必要があると考えられますので、そのような観点も含め、資料を準備いたしました。
 資料の5を御覧いただければと思います。
 資料では、まず「問題の所在」としまして、第30条の現状について紹介しております。第30条は、私的複製については複製権の制限として位置づけつつ、技術革新などを踏まえて、これまで私的複製の範囲を制限したり、補償金を課すなどして、権利の保護と公正な利用とのバランスを図ってきました。
 現在、デジタル化、ネットワーク化等の技術革新がさらに急速に進展している中で、私的複製に関する適切な権利保護の在り方をどのように考えるべきかについて、検討が必要になってまいります。
 その検討としては、最終的には立法措置として、補償金の付与など、これまでの第30条におけるような対応の是非が検討対象となりえますけれども、技術革新は個別の契約や著作権保護技術を通じて、私的複製の範囲を事実上制限するといったことも可能になし得るものであることから、そうした立法措置の検討を行う前に、まずそのような場面における契約の有効性や、権利者が被る不利益の有無との関係について、整理が必要になると考えられます。
 このため、検討課題としては、2ページ目におきまして、まずは解釈上の検討課題として、私的複製と契約との関係について位置づけております。その内容としては、私的複製の範囲を制限する契約、いわゆるオーバーライドは有効なのかといったこと、そして契約が存在する場合や、契約可能な分野における私的複製の範囲はどこまでを指すのかといったことが課題として考えられます。
 また、この課題と併せて、著作権保護技術が適用されている場合の私的複製の範囲についての考え方、こちらについても議論等がされているところですので、ここで取り上げております。
 なお、契約と技術的保護手段等、一体混戦として論じる向きもございますけれども、両者は、それ自体は性格が異なるものですので、論点としては別に分けております。
 続いての立法上の検討課題は、こうした解釈上の検討課題についての検討を前提として、あるいは内容によってはそれと一体となって、検討されるべきものと考えられますけれども、ここで最も大きい論点として考えられるのが、現行の私的録音録画補償金制度の在り方についてでございます。
 著作権保護技術の進展、それからそれを前提とする契約の存在等を踏まえたとき、現在の私的録音録画補償金制度が対象とする範囲などについて、見直しの必要はあるかどうかといったことが課題になると考えられます。
 併せまして3ページに記載の違法複製物等の扱いについてということも立法上の検討課題として位置づけられ得るものと考えます。違法複製物等につきまして、大量かつ広範な複製の可能性が考えられますので、著作権者等の利益の保護の観点から、どのように考えるかといったことが課題となります。
 そこでこれらの検討課題につきまして、当小委員会として、どの範囲でどのような方向性を示すべきかといったことにつきまして問題提起を行っておりますのが、その次に書いてございます、各検討課題の考え方等についてでございます。
 まず解釈上の検討課題についてですが、まず私的複製と契約との関係ということについては、本日、オーバーライドの議論として、契約・利用ワーキングチームにおける検討状況につきまして、本日御報告をいただいたところでございます。こうした議論も踏まえまして、いわゆるオーバーライドの議論について、記述をしております。
 なお、このように私的複製をオーバーライドする契約が有効であれば、私的複製の範囲についての立法的必要性の検討に当たっては、そのような検討が求められる分野における契約の可能性や状況といったことも勘案する必要があると考えられますので、そのことを記載しております。
 また契約が存在する場合には、すべて契約の範囲内の複製であって、私的領域というのはなくなるのかといったようなことについては、結局それは個々の契約内容に照らして個別に判断されるべきと考えられますので、そのような観点からの問題提起をしております。
 ただし、そのように契約によって私的複製の範囲が狭まる、あるいは狭まりつつあるといったような状況がある場合に、そうした私的複製の範囲について、補償金をかける必要があるかといったことについては、別途そのような私的複製の実態に即して具体的に検討することが必要となってまいります。
 この点について、特に検討を要する分野は私的録音録画の分野でございますので、以上の観点も踏まえて、私的録音録画小委員会において、検討を進める必要があるのではないかといったことを記載してございます。
 次に著作権保護技術との関係でございますが、著作権保護技術が適用されることによりまして、複製が物理的に不可能になっているといったような場合であれば、そもそも私的複製というのは、あり得ないわけですけれども、複製可能な範囲がある場合には、その範囲については、私的複製として位置づけられるということを、まずここで確認しております。
 もっとも、そのような技術的保護手段を前提とした契約が存在するといった場合については、別途の考慮が必要になりますので、この場合は、契約と私的複製の議論といった上記で述べたような議論がそのまま妥当すると考えられますので、いずれにしましても、私的録音録画小委員会においては、このような視点にも留意した上で、検討を進める必要があるのではないかといったことを記載してございます。
 そして立法上の検討課題についてですけれども、私的録音録画補償金については、以上のように留意すべき事項が考えられますので、そうした点も含めて検討を進めることが適切であるという問題意識を記載しております。
 また、違法複製物等の扱いについてですけれども、これは5ページに記載しておりますとおり、現行制度上、既に一定程度対応可能となっております。それ以上に違法複製物の範囲から除外する必要があるのかどうかといったことにつきましては、私的録音録画の補償金の在り方と密接に関係することから、私的録音録画小委員会において、この点にも留意した検討が進められる必要があるのではないかという問題意識を記載しております。
 最後のまとめにも記載しておりますとおり、結局、私的複製の範囲についての議論としては、契約と私的複製の範囲、それから著作権保護技術と私的複製の範囲といった両者の関係についての一般的な整理、これについては、契約・利用ワーキングチームの検討も踏まえまして、このたび、こうして法制問題小委員会の方でお示しするという形といたしまして、そのことを踏まえて、具体的にどのような私的複製の範囲について補償金で対応すべきかどうかといった、私的録音録画の範囲についての議論は、私的録音録画小委員会において一体的な議論が必要になると考えられます。
 したがいまして、法制問題小委員会としては、私的録音録画に関する私的録音録画小委員会における検討の状況を見守りまして、その検討を踏まえて、必要に応じて私的複製のあり方について、その全般について、検討を行うといったことが適当ではないかという問題提起をさせていただいたところです。
 以上の内容及び方向性につきまして、この法制問題小委員会において、御議論いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。
 その個別具体的な問題は私的録音録画小委員会の方に任せるということですけれども、ここでは検討課題の考え方について、議論をしていただきたいと思います。何か御意見がございましたらお願いいたします。
 では、私から1つよろしいですか。第30条の存在理由として、零細な複製であっては権利者に被害を与えることは少ない、と書いてありますけれども、この記述は当然ですが、それにプラスして、あるいはそれを凌駕するかもしれませんけれども、トランザクションコスト、交渉コストの問題があり、この問題は世界的にそれは認められていると思います。第30条の理屈づけとしてはむしろ今までは、トランザクションコストの方を重視するという傾向にあるのではないかと思うのですね。したがって、そのことも少しどこかで書いておいた方がよいように思います。つまり家庭内で複製する場合、いちいち権利者と交渉するということは、莫大な手数、費用が掛かり現実的ではない。したがって、そんなものは自由にした方がいいということになります。ローアンドエコノミクス的な観点から言えば、そうなると思うのですけれども、その交渉コストが急速に変わりつつあるので、そこのところをどうするかという観点も重要ではないかと思います。
 他に何か御意見がございましたら。どうぞ、森田委員。

【森田委員】 大きな方向としては、私的録音録画補償金の小委員会での議論いかんによって左右されるものについてはそちらで集中してやっていくということで、それはよろしいかと思います。
 1つ御質問なのですが、3ページに私的複製と契約との関係、つまり私的複製というのをどういうふうにとらえるかというときに、今の中山先生のお話とも関係しますけれども、DRMというのは、許容される私的な複製の範囲を個別に契約で処理するものであるととらえますと、この私的複製というのは、ある意味では、デフォルトルールであって、トランザクションコストがかかるから、法律で特別な合意がない場合の合理的な契約内容を定めたものであって、こういう私的複製に制限をかけましょう、場合によっては、私的複製に対して、補償金の形で対価も支払うことを義務づけましょうというように、法律が個別の契約に代わるルールを用意しておくというような性格づけになるのだと思います。そうしますと、その私的複製と契約との関係というのも、截然と分かれるものではなくて、その境界が非常に流動的になってくるということになるのだと思います。
 この3ページの一番下のところで、「契約があるからといって、それだけで「私的複製」は存在しえなくなるものではないと考えられるがどうか」とあって、そのあと「例えば」とありますけれども、この「制限された回数内の複製について私的録音録画補償金を支払うことを前提にしている場合」には、そのような私的複製は、第30条第1項柱書に定める「私的複製」としての位置づけが可能であると書かれています。
 これは、裏返しますと、契約によって制限された回数内の複製については、私的録音録画補償金ではなくて、それとは別にDRMによって課金するのだという趣旨の場合には、第30条第1項でいう「私的複製」ではなくなる。つまり契約によって、「私的複製」かどうかというのが左右される場合もあるということを裏から肯定していることになるのではないでしょうか。つまり契約があるからといって、「私的複製」の概念が直ちに変わるわけではないけれども、変わる場合もあるということを認めているというふうに読んでよろしいわけでしょうか。

【中山主査】 どうぞ。

【白鳥著作権調査官】 契約内容が、私的録音録画補償金を支払うことを前提としたものであれば、第30条に定める私的複製としての位置づけとなると考えられますが、契約において、一定範囲の複製について許諾をしている場合には、その許諾の範囲内の複製として位置づけられる場合もあるのではないかと考えられます。
 結局このことは、複製の位置づけについての個々の契約の内容によることから、そのようなことを、一般的にここで述べさせていただいたものでございます。

【中山主査】 私的使用目的の複製かどうかは、ある意味では言葉の問題もあって、それは私的使用目的の複製ではないのだと言うか、あるいは私的使用目的の複製だけども、契約で金を取ってもよいと言うか、どちらでもいいような気がしますが、いずれにしろ、とにかく金を取れるかどうかという話ですね。
 他に何かございましたら。これは、著作権法の根幹にも関わる重要な問題だと思うのですけれども、どうぞ、忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 今の第30条の関係と、先ほどの大渕委員の方の御報告とで、第101条との関係なのですが。特許法の第101条をそのまま著作権法にパラレルに移行した場合に、業として、業という概念は著作権法上入れなくてもいいですが、複製ないしは翻案、改変機器を作って業者に提供する場合と、それからそういうツールを一般の私人に多数販売する場合と、この場合を著作権法上は取り込むのか取り込まないのかという問題が、第30条とのリンクで出てくると思うのですが、大渕委員の方の御意見はどうなりますでしょうか。第101条、103ページの関係では、どういう議論をなさってらっしゃるのでしょうか。

【大渕委員】 今の点は、特許法第101条の議論においてしばしば問題となる・独立説・従属説の対立の論点に関わる問題でありまして、直接侵害者に当たる者が、例えば家庭内で実施しており、「業として」の実施に当たらない場合に、間接侵害が成立するのかという一般的な議論がありますが、これと同様の論点は、著作権法において、特許法101条1号・3号と基本的に対応するような規定を導入するのであれば、当然に検討が必要となってまいります。
 その関係で、若干参考になると思いますが、13ページの注24に、その辺のことが書いてあります。特許法の方では、最近は、すべての場合において従属説と独立説とのいずれかで一律に考えるのではなくて、問題となる個別の規定ごとに、その規定の趣旨に沿って判断していくという考え方が有力になってきているように見受けられます。
 そうなってくると、「業として」でない実施行為が、どのような趣旨ないし理由によって、特許権の侵害とならず、したがって、差止めや損害賠償の対象になっていないかという点に帰着することになってきます。特許法の場合、「業として」でない実施行為が侵害とされていない趣旨ないし理由については、「業として」でない家庭内等の実施行為は規模が零細であるから、そのようなものは不問に付しても権利者の利益をさほど損なうものではないとか、実際上そのような行為を捕捉するのは大変だからという捕捉の困難性、あるいは、そのようなものを捕捉しようとしだすと、個人のプライバシーの侵害等の弊害が生ずるといった点が論じられていると思いますが、このような趣旨ないし理由からすると、先ほどのような「業として」ではない実施のための「のみ」品の提供行為については、「業として」ではない個別の実施自体は些末なものといえても、これらを集めると些末とは言えない、あるいは、差止等の対象は個別の家庭内等ではなくて、それに対する提供行為であれば、その捕捉の困難性、あるいはプライバシーの侵害等という点も、家庭内等の実施行為自体に対するものとは大きく異なるというような実質的な判断をしだすと、先ほど言いましたような最近の学説の潮流のような、個別の規定の趣旨ごとに考えていくという形で実質的に考えていくことが可能となるように思われます。そして、このように特許法で考えることができるのであれば、著作権法の場合も、このような議論の応用問題ということで処理することが可能となってくるように思われます。今の段階で、あまり最終的なことを申し上げるのもいかがかと思いますが、基本的には今申し上げたような考え方の応用問題として処理可能なように思われます。
 先ほどの13ページの注24に掲げた製パン器事件という、特許の間接侵害の論点についての重要判例について、多分裁判官が書いたのではないかと推察される判例タイムズの匿名コメントに、先ほどの考え方を窺わせるような議論が載っていましたので、13ページの注24に少しだけ引用しておきました。
 以上です。

【中山主査】 よろしいですか。
 他に御意見ございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。重大な問題なので、大いに御意見を頂戴したいところなのですけれども。よろしいでしょうか。
 それでは、意見も出尽くしたようでございますので、本日の会議はこのくらいにしたいと思います。
 本日議論いたしました「共有者著作権に係る制度の整備」、「私的使用目的の複製の見直し」、「各ワーキングチームからの検討結果報告」につきましては、前回の議論も踏まえまして、法制問題小委員会の報告書(案)としてまとめることを予定しております。
 なお最後に、事務局から日程等についての連絡事項がありましたら、お願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 本日は、長時間どうもありがとうございました。
 第7回目となります次回の法制問題小委員会は、正式には近日中にホームページに掲載予定でございますが、事務的には8月の17日木曜日、14時から16時に、三田共用会議所にて開催を予定してございます。
 議題は、本日ご議論いただきました議題に関しての報告書の案と、意見募集をしておりましたIPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係の報告書の案につきまして、ご審議をいただく予定としております。

【中山主査】 どうもありがとうございました。
 休憩時間もなくして飛ばしたのですけど、結果的には予定時間どおり終わりまして、御協力ありがとうございました。次回は三田会議所ですので、お間違えないように。間違えた場合、向こうまで行くのは大変時間がかかりますので、是非お間違えのないようにお願いいたします。
 本日はこれで文化審議会著作権分科会の第6回法制問題小委員会を終了させていただきます。
 ありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

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