ここからサイトの主なメニューです
著作権分科会 法制問題小委員会(第8回)議事録

1   日時   平成17年9月30日(金曜日)9時30分〜12時25分

2   場所   三田共用会議所3階 大会議室

3   出席者
(委員)
  市川,大渕,加藤,小泉,末吉,茶園,中村,中山,浜野,前田,松田,山地,山本の各委員
(文化庁)
  加茂川次長,甲野著作権課長,池原国際課長ほか関係者
(オブザーバー)
  前田(特許庁総務部技術調査課課長補佐(企画班長)),渡邊(厚生労働省医薬食品局安全対策課課長補佐),南(日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員),金原(社団法人日本書籍出版協会副理事長),中西(有限責任中間法人学術著作権協会常務理事),亀谷(社団法人私的録音補償金管理協会事務局長),高比良(社団法人私的録画補償金管理協会専務理事・事務局長),野方(社団法人日本音楽著作権協会映像部映像一課長),椎名(社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員),河野(社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会副委員長),中根(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員長)の各説明者

4   議事次第
1   開会
2   議事
(1) 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過」について
(2) 文化審議会著作権分科会における意見の概要
(3) 各論点についての再整理
(4) その他
3   閉会

5   配付資料
資料1−1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過
(※諮問・答申へリンク)
資料1−2   「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過」における前回からの修正箇所
資料2   著作権分科会(平成17年9月8日)における意見の概要(権利制限・私的録音録画補償金関係)
資料3   権利制限に関する論点整理(特許審査手続・薬事行政関係)
資料4−1   ハードディスク内蔵型機器等の指定に関する論点整理
資料4−2   ハードディスク内蔵型録音機器等による私的録音から著作権者・著作隣接権者が受ける経済的な影響(社団法人日本音楽著作権協会等作成資料)

参考資料1   「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」に対する意見募集について
(※パブリックコメント等へリンク)
参考資料2   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事録
(※第7回議事録へリンク)
参考資料3   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定

6   議事内容

(中山主査) それでは時間でございますので、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第8回を開催いたします。本日は御多忙中御出席賜りまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の議事の公開についてですけれども、いつもと同様に予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開には及ばないと思われますので、すでに傍聴者の方々には御入場していただいているところでございますけれども、この点、異議ございませんでしょうか。

〔異議なしの声あり〕

 それでは本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をしていただくということにしたいと思います。
 それでは、議事に入ります。まず、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

(白鳥著作権調査官) はい、よろしくお願いいたします。お手元の配付資料のうち、議事次第の中段以下に配付資料の一覧がありますので、併せて御覧ください。資料の1−1ですが、法制問題小委員会の「審議の経過」、資料の1−2が前回からの「審議の経過」における、「審議の経過」についての前回からの修正個所、資料の2が、9月8日に開催されました著作権分科会における、権利制限・私的録音録画補償金関係に関する意見の概要でございます。資料の3が、権利制限に関する論点整理、資料の4−1が、ハードディスク内蔵型機器等の指定に関する論点整理、資料の4−2が、社団法人日本音楽著作権協会等によります、ハードディスク内蔵型録音機器等による私的録音から著作権者等が受ける経済的な影響に関しての資料でございます。
 なお、参考資料といたしまして、1つ目が今回の「審議の経過」に対しましての意見募集に関する資料です。参考資料の2が前回の法制問題小委員会の議事録、資料の3が法制問題小委員会の審議予定のペーパーでございます。御確認の上、万が一不足等ございましたら御連絡いただきますようお願いいたします。

(中山主査) よろしいでしょうか。それでは本日も3時間の長丁場になりますので、初めに議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。
 本小委員会におきましては、前回、これまでの議論を踏まえて、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過」を取りまとめました。したがいまして、まず最初に前回の法制問題小委員会の議論を踏まえて、修正した部分を中心に「審議の経過」について簡単に説明を行います。
 また、「審議の経過」につきましては、本日は9月8日の著作権分科会において、私から報告をし、分科会において御審議を頂戴いたしましたので、いただいた御意見につきまして、事務局から報告をお願いしたいと思います。
 なお、現在「審議の経過」につきましては、9月8日から10月7日まで意見募集を行っているところでございますが、前回までの法制問題小委員会において特に議論になりました「権利制限における特許審査手続・薬事行政関係」と私的録音録画補償金における「ハードディスク内蔵型録音機器等の指定」に関しまして、本日は論点の整理をそれぞれ行いたいと思います。
 まず、「審議の経過」につきましてですけれども、これにつきましては前回終わった後、皆様から御意見を頂戴して修正をいたしまして、その修正したものはすでに皆様にお配りしてございますので、ここで詳しいことは説明申し上げませんけれども、資料1がその修正した結果の「審議の経過」でございます。資料1−2は各委員のお申し出におきまして、修正した個所を摘出した記載しております。もう皆さんお手元にすでにお持ちのことと思いますので、これ以上の説明は省略をいたします。
 続きまして、9月8日の著作権分科会において頂戴した意見につきまして、事務局から報告をお願いいたします。

(甲野著作権課長) それでは事務局より、御説明を申し上げます。参考資料2として配付してあるものを御覧いただければと思います。9月8日の著作権分科会において出された意見の概要でございますが、権利制限・私的録音録画補償金関係のものにつきまして、まとめさせていただきました。
 まず、権利制限の見直しについてでございますが、特許審査手続・薬事関係の権利制限につきましては、1にあるような意見が出されたところでございます。権利制限をするにしても、仮に著作権者の利益を害する恐れがあるのであれば、どうすればそのような恐れが払拭できるのか、これも検討してほしいとか、あるいは特許を取得したいという企業がコストを負担するのが筋ではないか、薬品についてもそうであって、著作権者に負担を転嫁するのは筋違いである、というような意見もございました。
 また、通常の利益を妨げる要素が大きいであろうという意見もございました。通常の利用を妨げず、著作権者の正当な利益を不当に害しないためには、これは条約上の条文と同様の表現ですけれども、具体的には何か手段を考えているのか。こうした議論もございました。
 また、教育関係につきましては、教育といっても非常に様々なものがあって、線引きというものも検討してほしいという御意見、また、教育分野では実用品も有償なのに、著作物だとなぜ無償でよくなるのか、こうしたような指摘もございました。いずれにいたしましても、継続検討とされている事項についてもバランスを考慮して、速やかに結論を出す必要があるという御意見がございました。
 また、次のページの私的録音録画補償金の見直しについてでございますが、追加指定に反対する立場からもいくつかの意見が出されました。例えばダウンロードする時にお金を払い、また機器を買った時にも補償金を払うということは二重課金ではないか、というような御指摘もございました。
 また、政令による指定というのは機動性に欠けるので、いずれにしても個々のサービスごとに課金ということが世の中の動きにも対応できるのではないか、という御意見もございました。また、制度自体が消費者に知られておらず、また必ずしも私的複製に使用されていない場合も一律に薄く広く課金されるというような問題をはらんでいて、そういうような議論なくして対象範囲を広げるというのはよくないという御指摘もございました。また、違法コピーに対する技術は進んでいるので、DRMで1対1に個別課金するというような技術、こうしたことについては応援すべきであるというような御意見、またデジタルといってもいろいろな態様があり、現実に即したものにする必要があるのではないか、というような御意見がございました。
 また、追加指定に賛成の立場からは、以下のような意見が出されました。
 DRMに期待するという意見もあるけれども、まだこれはイメージに留まっているのではないか、また、個別課金ということは消費者にとって大変不便であり、消費者の意見も交えながら議論しなければならないのではないか、という御意見もございました。
 また、この制度はそもそもアナログの時代から、私的複製はベルヌ条約9条2項の範囲を超えるのではないかというような議論があったというような御指摘、そして議論の下に一定のコンセンサスを得て制度が提言されて、補償金制度が導入されたということ。また、MDがハードディスク内蔵型に転化して変わっていくのは目に見えている、というような御指摘もございました。
 また、二重課金については、これはやはり誤解ではないかというような御指摘、権利者側での調査中の実態調査も参考にして議論をしてほしいというような御要請もございました。
 また、汎用というだけで対象外とするのはおかしい。実際に私的録音をされているのではないか、というような御意見。また、消費者に対する認識不足というものは、各団体にも周知責任があるという御意見。また、とにかく緊急に対応すべき措置は先延ばししてはならない、という意見がございました。
 また、それ以外にも結論はいずれにせよ先送りしないでほしい、継続的に議論するところは議論してほしい、著作権者の権利の保護を守り、文化の発展に寄与するという著作権法の目的、これを念頭に置いていただきたい。また、多様な方々を含めた検討の場が必要である。デジタル化の中で著作権がどういうふうに生かされているのか、議論してほしい。このような意見もあったところでございました。
 そして、このような議論を踏まえ、文化庁では、国民の声一般を聞くということで、「審議の経過」について意見募集を行ったところでございます。この9月8日から10月7日までということで募集を行っているところでございまして、これは参考資料1を御覧になっていただければと思います。
 そして、意見の対象となるものにつきましては、分科会でかかりました他の小委員会の事柄も含むわけでございますが、現在、この法制問題小委員会の関係で寄せられた意見、どういうものがあったのかにつきまして、ここでまだ途中ではございますが、御披露させていただきたいと思います。
 若干重複等も含むわけでございますが、寄せられた意見につきましては166件ほどございました。まだ分析途中でございますので、数字は全部足し算をすると重複がありますのでこの総数より多くなりますけれども、権利制限の見直しにつきましては概ね23件ほど意見が寄せられました。
 このうち基本的な考え方として、公益目的であっても権利制限は慎重にすべきというような考え方も1件ございました。特許審査手続に係る権利制限につきましても2件ほどありまして、やはり慎重に検討すべきではないか、あるいは公共の利益に資するが、明文化することが必要というような意見もございました。薬事行政に係る権利制限につきましては9件ほどございましたけれども、いろいろな各項目、それぞれありますが、概ね権利制限については小業種に大きな影響を与える、一概に公共目的とはいえないということで、反対の意見でございました。
 図書館関係につきましては8件ほどございましたが、それぞれ各項目につきまして権利制限は賛成というものが大多数でございましたが、相互貸借に伴う複製につきましては1件反対の意見がございました。
 障害者につきましては権利制限は賛成である、学校教育につきましては慎重に検討すべきということでございました。また、フェア・ユースの創設を検討すべきという意見もありましたところでございます。
 私的録音録画補償金の見直しにつきましては、若干重複いたしますが、167件ほどになりますけれども、非常に多くの意見が寄せられました。現行制度自体につきましては、現行制度は制度の周知も図られていないし、補償金の分配等も不透明であるとの否定的なものが16件ございました。
 また、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきましては、追加指定すべきというものが17件、追加指定すべきでないというものが80件ございました。追加指定すべきというものは、MDとの公平性、あるいは個別課金はユーザーの経済的負担がかえって増加する、完全なDRMは存在しないというような意見でございました。追加指定すべきでない80件の内訳といたしましては、二重課金に当たるのではないか、ハードディスク内蔵型は汎用機器である、DRMによる個別課金にすべきという意見のほか、ハードディスク内蔵型はコンピュータにコピーできないように実際なっているのではないか、こうした意見もございました。
 汎用機器記録媒体の取扱いにつきましては、補償金の対象すべきというものは2件、補償金の対象とすべきでないというものは14件ほどございました。
 また、一般的に政令による個別指定に関する検討項目につきましては、現行では制度の技術の進展に対応できないので見直しに賛成であるというような意見が2件、それは問題であるというような意見が1件ございました。
 その他、制度全般の課題につきましては、制度を存置すべきという意見が2件、制度には非常に問題があるという意見が6件あるのと同時に、制度を廃止、または大幅に縮小すべきという意見は27件ほどあったところでございます。
 その他、デジタル対応、司法救済、裁定制度につきましても若干意見があったところでございます。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。続きまして、前回までの法制問題小委員会において、特に議論になりました「特許審査手続・薬事行政関係」と「ハードディスク内蔵型録音機器等の指定」に関しまして、論点の整理を行っていきたいと思います。
 なお、本日は当該論点に関係の深い方々にオブザーバーとして御出席をいただいておりますので、委員からの質問がありました場合には適宜御発言・御回答をお願いしたいと思います。
 初めに「特許審査手続・薬事行政関係」における論点の整理を行いたいと思います。事務局にこの論点についての整理を行っていただきましたので、説明をお願いいたします。

(甲野著作権課長) それでは資料3に基づきまして、権利制限、特許薬事関係についての論点整理につきまして、御説明をいたします。
 これまでこれらの問題につきましては、管理の部分というものがどれほどあるのか、カバー率がどれほどなのか、その辺の実態につきましてデータの数字ですとか、そこが様々な議論の対象になっておりました。したがいまして、ここの論点整理のところでは、その辺の管理の状況がどうなっているのか、それについてはどういう評価があるのか、これにつきまして事務局として関係の方々からいただいたデータにつきまして分析したものを、ここに載せさせていただいているところでございます。
 また、権利制限ということになりますと、いわゆるスリー・ステップ・テスト、こうしたことについての留意が必要になってくるかと思われますので、その観点からどういうことを今後留意して考えなければいけないのか。必ずしもそれを検討するためのデータ、材料がすべてここではまだ出ているわけではございませんけれども、そうした観点もまとめたものをここでは付けているところでございます。
 まず最初に管理のところにつきまして、御説明をさせていただきます。文献の複写につきましての管理団体は、この1ページ目にあるとおり、日本複写権センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム、この3つがございます。最初の2つが管理事業法上の管理事業者でございまして、文化庁に届け出られた使用料規程に基づいて、利用の申請があった時には基本的には許諾をしなければならない。こうした形で管理をしているものでございます。
 これに対しまして最後の1件につきましては、権利者側の指値によりまして権利行使をしていくものでございます。
 この3つのうち最初の部分、日本複写権センターにつきましては、主として内部利用、企業等の内部利用の目的の複写を対象にしておりますので、今回のように出願人が行政庁に出す等のものにつきましては後者2つ、学術著作権協会及び日本著作出版権管理システムが対象になるわけでございます。
 そしてこの2つにつきましては、役割分担でございますけれども、対象著作物のところを御覧になっていただきたいのですが、国内の著作物につきましては学術著作権協会、これは学会の学術誌等が中心のものでございまして、後者の部分につきましては、著作出版権管理システムにつきましては、出版社によります商業出版物、これか中心でございます。
 また、海外のものにつきましては、学術著作権協会はアメリカの管理団体であり、欧米の非常に多くのものを管理しているCCCの管理著作物のうちElsevierの管理著作物を除いた部分、そしてJCLSの方はElsevierの管理著作物を対象としておりまして、それぞれ国内のもの、海外のものも整然と区別されているという状況で管理が行われているところでございます。
 しかしながら、これらの管理のあり方、または権利制限をした時にどうなるかにつきましては、様々な意見が出されてきたところでございます。まず、これらの学術出版物の発行ということは、それぞれ今後の学術研究の情報の流通ということで重要であるということがあるので、そこのところの収入減ということは非常に問題ではないかというような意見もありますけれども、特許と薬事だけの部分の複写ということだったら、それは非常に少ないのではないかということも指摘がありました。
 また、最後の部分、日本著作出版権管理システムは権利者の指値による権利行使でございますけれども、これが円滑に行われていないのではないかというような意見がありました。しかしながら、これに対しては指値の採用というのは、これによってできるだけ多くの委託というものが得られるので、それは非常に意義があるという意見もございました。
 また、いずれにいたしましてもこの3団体が複写について権利行使を行っているということは、窓口も別々で利用者にとっては煩雑極まりないのが実態であるという御意見がございました。したがいまして、3団体が1本化されることが望ましいということで、それぞれ提携を始める努力をしているということでございました。
 また、これは3つともそうでありますが、著作権者の所在が不明確という意見もございました。原著作権というものはそれぞれ論文を書いた研究者にもともとあるわけでございますが、それが学会や出版社の方に移転をされるという形になっているわけでございますが、そこの部分が非常に曖昧なのではないかというような御指摘でございましたけれども、これについてはきちんとやっているから問題はないという考え方もございました。
 そしてこれらの管理団体がどれほどの文献をカバーしているのか、これについて数字が若干いろいろなものがあったわけでございますが、これについての御説明を2ページのところからさせていただきますが、特許につきましては、実はきちんとしたデータがまだ見つからないのが実情でございます。特許庁に伺いましたところ、庁内での複写件数につきましては、ここにあるような形でありましたけれども、これらについてどこがどういうふうになっているのか、それにつきましての調査はまだしていないところでございます。
 薬事関係でございますが、これにつきましては学術著作権協会及び日本著作出版権管理システム、いわゆる権利者側からのデータが12でございます。学会、協会、学協会の学術雑誌、学術著作権協会が出されたデータでは69パーセントとなっておりますが、これの試算でございますけれども、これはわが国の自然科学系の学術団体が概ね1100ほどございます。それぞれの団体がそれぞれの分野についての学会誌を出しているわけでございますけれども、学術著作権協会では760団体と提携を結んでいるわけでございまして、概ね団体数とそれから学会誌の数とは一致するということで割り算をしたところ、69パーセントということでございました。
 また、学会以外の出版社が行うものにつきましては、出版年鑑が2005年度のものでいうと466点、これが医学衛生分野の雑誌の発行点数でございました。そして日本著作出版権管理システムは361点を管理しているということでございますので、これを割り算をいたしますと77.5パーセントが出てきたところでございます。
 これに対しまして製薬団体連合会から出されてきた資料につきましては、分母の部分が科学技術振興機構(JST)の国内の医学関連雑誌についてのJMEDプラスデータベース、これを分母にしております。このデータベースには9168誌が登録をされているところでございまして、この9168という数字は、その1、2に見ました1100団体でありますとか、あるいは466、こうしたものに比べますと非常に多い数になっているところでございます。そうしたことから、学術著作権協会につきましては管理率が7.2パーセント、そして管理システムの場合には3.3パーセントとなっているわけでございます。
 では、この9168と、それから上の方にあります1100、あるいは466と違いはどういうところにあるのかでございますけれども、データベースの方につきましては非常に多くのデータが入っておりまして、よく読んでみますと、その中には例えば獣医の関係ですとか、必ずしも医薬品の関係とは直接つながらないかもしれないというものも含まれていたわけでございました。いずれにいたしましても、JSTがきちんとした網羅的なデータベースを作ろうという目的で非常に多く集めたということなので、これだけのものが入っているという、そういうところにあるかと思います。
 しかしながら、この7.2パーセント、3.3パーセントにつきましては、学術著作権協会、日本著作出版権管理システムからは、もう少し自分たちはやっている、管理しているのだというデータもございました。これを注のところに書かせていただいてありますけれども、これは御参照いただければと思います。これをベースにいたしますと、もう少しJSTのデータベースを分母にしても上がるということになるわけでございます。
 それから医学中央雑誌データベースに基づく管理率につきましても、製薬団体連合会から出されていたものでございますが、これは医学中央雑誌に採択されているもののうち、ISSN番号が付されている3415を分母とするものでございます。これをもとにしますと13.9パーセント、10.7パーセントという形になるわけでございますけれども、これにつきましても若干実際には通常複写対象になるのは200誌程度ではないか等々の反論もあったところでございました。
 そして最後に5番目でございますけれども、副作用感染症の報告について、それから全国の病院の先生方に薬の情報を与えるという面につきまして、サンプリング調査を製薬団体連合会が行ったところでございますが、これの調査がこの5番のところでございます。副作用の報告制度につきましては、学術著作権協会についてはある一定の期間、1か月の期間コピーをしたところ、そのコピーをした文献のうち21パーセントはカバーできていた。日本著作出版権管理システムについては11.7パーセントだった。海外文献でヒットしたものについてはすべてカバーできたということでございましたが、これらの複製をしたものというのは、分析評価をするための情報収集用の複写というのがほとんどでございまして、行政当局に提出するというものはこのうちのさらに2パーセントから3パーセントであるというふうな報告を受けております。
 そして医者に提供するというデータにつきましては、同様に大手から中堅の新薬の4社のうちの1か月のデータをもとに算出したところ、ここにありますような国内文献については9.2パーセント、31パーセント、海外においては67.9パーセント、2.9パーセントというデータが出たところでございます。
 以上がいろいろな数字が出ておりましたけれども、それらについての分析といいますか、御説明ということでございました。
 外国のこの関係の規定がどうかということにつきましても、この際、事務局で調べさせていただきました。特許関係につきましては、出願人に送付するための審査官による複製につきましては、米国、英国、ドイツ、中国ともにそれぞれ直接、そういう文言はないにいたしましても、例えば米国においてフェア・ユースに該当するというような形でこれが認められているという状況がございます。
 審査官からの提出の求めに応じるための非特許文献の出願人による複製、これにつきましてもそれぞれの国につきましてやはり規定はございました。ただ、特に規定の内容につきまして、それを確定的にさせるような判例等々は見つかってはおりません。
 また、先行技術文献、この提供につきましても、それぞれ関係の条文というものはございます。ただ、これについて明確化するような判例というものは見つかっていないというのが実情でございます。
 電子的に特許庁内に複製するということにつきましては、特にこれらの国々で該当条文はございませんでした。
 また、薬事関係でございますが、これは厚生労働省及び日本製薬団体連合会から情報をいただいたものでございますけれども、欧米いずれの国におきましても、副作用に関する情報につきましては行政官庁への提出義務を課しているというふうに聞いております。
 なお、ここのところで「薬品の誤使用による影響等についての」というふうにございましたが、これはちょっと誤りでございましたので削除をしていただければと思っております。
 そして提出の義務以外にさらに著作権の権利の制限ということについてでございますが、ドイツにおいては権利制限の範疇としてとらえられているということでございます。また、スペインについても許諾は不要である。イタリアにおいても、著作権の適用外であるというふうに解されているということでございます。また、米国では「フェア・ユース」の範疇でとらえることができるかということでありますけれども、法や規則によって強制的に文献コピーを提出することを義務付けているというような場合には、一般論でございますが、著作権の侵害にならないとした判例があるということでございます。
 このような状況でございまして、それぞれ関係の国々の条文をここのところで引用させていただきました。
 なお、医者に対して薬品のメーカーがデータを提供するという部分につきましては、それはどの国も文献提供を明確には義務付けていないというところでございます。
 以上が管理の状況、外国の状況でございました。そして少し長くなりますが、8ページ以下を御覧いただければと思います。
 権利制限を認める場合にどういうことに留意をして考えなければいけないかにつきまして、まとめさせていただきました。
 権利制限を認める場合には、ベルヌ条約に留意する必要がございます。この9条において権利制限が認められる要件というのは3つございます。特別の場合、当該著作物の通常の利用を妨げない、正当な利益を不当に害しないことということでございます。
 これらについていったいどういう意味なのだというようなことがいろいろなところで議論されていますけれども、齊藤博先生の本によれば、次のように説明をされています。
 特別の場合ということは、具体的に何か定められている場合には、もうそれでいいということでございます。したがいまして、特許にしましても薬事にしましても、この条約との関連ではもうここのところは問題がないということになろうかと思います。
 2番目の通常の流通を妨げずというところの解釈でございますが、「市場においても流通の経路ができているところへ、権利制限の結果として、無許諾で利用されたものが競合的に介入しているか否か」ということで、権利の制限がそういう利用の妨げになるというようなことがあった場合には、流通を妨げるということになるわけでございます。ここのところが、権利制限を認めた場合にどの程度妨げるというふうにいえる状況になるのかということが問題になろうかと思います。
 また、正当な利益を不当に害しないことということでございますが、権利制限があれば一定程度不利益といいますか、影響が与えることは必然であっても、受忍しなければならない程度、それを超えるのかどうか、それが不当に害されることになるのかどうか、というような説明がなされているわけでございます。
 こうしたことを踏まえまして、わが国、今回どういうことを考えなければならないかでございますけれども、特別の場合につきましては、先ほど申し上げましたように、目的が定まっていればそれで大丈夫であるわけでございますが、ただわが国において法改正をする場合には、では何でそれがいま必要なのか、他の行政目的と比べてそれが何で必要なのか、そして今、なぜ緊急にやらなければならないか、そういうことをきちんと明確にすることが必要ではないかというふうに考えられます。
 そして通常の利用を妨げずでございますけれども、既存の許諾システム、これが著作物の流通にどういうような影響が与えられるかということでございます。
 不当に害しないことということにつきましては、経済的損失が果たしてどのくらいあるのか、得べかりし利益がどれくらい失われるのか、そういうことが考えなければならないということになるわけでございます。
 そしてさらにどのような条件付けを行えば、例えば条約に適合することになるのか。あるいは適合するということも必要になってくるかと思います。
 そうした観点から、特許と薬事法につきまして個別具体に論点を書かせていただいたものが、9ページと10ページでございます。
 9ページが特許審査にかかる権利制限の部分でございますけれども、権利制限の必要性・緊急性については、対立の利益としてはここにあるようなことでございますけれども、本当に緊急性があるのかどうかというところでございます。
 既存のシステムでございますけれども、既存の利用の許諾システムでは本当に対応ができないのか。あるいは現行法の解釈で、例えば図書館における複製などもありますけれども、そうしたことでは対処できない場合があるのかということ。あるいは既存の出版に影響が与えるところがあるのではないか。この辺を吟味しなければならないということがあるかと思います。
 また、経済的損失がいったいどの程度あるのかということ。あるいは権利制限を認める場合には全面的にやらなければいけないのか。あるいは複製の範囲等、あるいは損失の補填措置というものを講じる必要があるのか。こうした事柄が十分吟味されなければなりませんし、意匠や実用新案等につきましてもそれぞれそうした事柄が必要になってくると思います。
 それから最後に10ページでございますけれども、薬事行政の部分につきましても同様でございます。やはり必要性、緊急性、それから既存の許諾システム、あるいは流通に与える影響、この辺を考えるとともに、経済的な損失が本当にないのかどうか。仮に権利制限を認めるとしても、これをどういうような形でやらなければいけないのか、損失の補填措置が必要なのか。こうしたような事柄を検討していかなければならないというふうに考えているところでございます。
 以上、権利制限についての論点整理ということで、資料を作成したものについて御説明をさせていただきました。どうか御検討方、よろしくお願いします。

(中山主査) ありがとうございました。それでは、意見交換に移りたいと思います。50分程度時間をとってございますので、御意見のある方は積極的にお願いいたします。また、オブザーバーの方に質問のある場合も遠慮なくお願いいたします。
 それでは何か御意見、あるいは御質問がございましたら。はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 2点意見を申し上げます。第1点、資料2の1ページ目の1番について、権利制限の内、特許と薬事に関しては、権利制限を積極的にするべきだという積極論も非常に多かったと思います。特に例えば松田先生も積極論を展開されておりましたし、特許・薬事以外にもあるのではないか。もしそういうのがあるのであれば、同時に検討してはどうかという積極論もあったと思いますが、この4つの黒丸にはそれが含まれておりません。ぜひ多数の積極論があったわけですから、それを加えていただきたいと思います。
 2点目は資料3についてですが、2ページ目というか、1ページ目の一番下の丸のところですが、窓口の一本化の話があります。2ページ目の一番上に、「一本化されることが望ましく」とあります。私もまったくそう思います。望ましいのです。しかしながら、窓口を一本化すればそれで解決するわけではありません。それは次の例えば3ページの1から5までを見ても分かりますように、例えば5を見ても、国内文献について最初の丸を足せば32.7ですし、2つ目の丸のところですと40.2パーセントです。したがって、やはりカバー率は依然としてそれほど高くはないわけで、改善はされるけれども一本化したら解決するわけではないと思いますので、そこのところの表現を工夫いただければと思います。以上です。

(甲野著作権課長) 今後、報告書をまとめる素材を我々事務局が作らなければならない時には、今の意見を十分認識した上でまとめたいと思います。

(中山主査) よろしゅうございますか。

(山地委員) 私が、そういうことを申し上げた理由は、例えばこういう資料が外へ出ますと、例えば自民党の著作権ワーキングチームなどに出ると、「そんなに積極論がないのだったらやらなくてもいいじゃないか」というような議論につながることを私は非常に懸念しております。

(甲野著作権課長) 今後はそこのところはよく留意して資料を作りたいと思います。

(中山主査) 他に御意見や御質問がございましたら。はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 資料の3の8ページ、9ページのスリー・ステップ・テストについて、事務局の御感触を伺いたいのですが。と申しますのは、資料1−1の審議経過の中では、スリー・ステップ・テストに対する明示の言及は少ないのですけれども、各要件の中で、審議経過の中ではあまり十分検討されていなくて、この点については特にこれから検討してほしいというところを絞っていただくと、時間の効率化につながるのではないかと思うのですが。

(甲野著作権課長) ここのところは事前の説明が不十分だったのかもしれませんが、スリー・ステップ・テストということを認識した上でここで御議論をいただくということがとても重要ということで、例えばここのところはどうなのだろうかという形で課題を書かせていただきました。実はそれぞれについて、ではここのところでどういうことを材料にして、どういう方向でどこの部分が足りないから検討してほしいという部分につきましては、実は必ずしも私ども十分整理をした上でここで持ち出してはなかったのが実情でございます。
 そうしたことから誠に恐縮ながら、先生方の方でここのところについてはこう思うという部分について、それぞれ御意見を出していただければ大変ありがたいと思っております。

(中山主査) 他に御意見、あるいは御質問ございましたら。はい、どうぞ、山本委員。

(山本委員) 資料の1−1の38ページのところなのですが、上の方から(6)というところがございます。2行目のところで(6)のところですが、「国際条約上、補償を必要とするのは権利者の正当な利益が不当に害される場合であるが、この場合にはそもそも個別課金が可能である以上、その部分については、通常の利用による権利者の正当な利益が不当に害されていないので」とありまして、これは私が提案したところですが、これがこういうふうに変更されているのですが、ちょっとここでは誤解が発生しますので、直していただければと思いまして。
 まず、これではどう違うのかということを御説明申し上げますと、この補償金についてはまず権利者に許諾権が与えられて、それを権利制限したことによって発生する利益の制限が不当かどうかという点が問題になるのですが、この補償金制度の定める場合というのは、そもそも許諾権を与えたとしても、使用許諾料の徴収がコスト面では困難であって、だから結局、許諾権を与えたとしても、それによって得られる使用許諾料というのは存在しない。つまり、権利によって発生する保護される正当な利益はそもそも存在しないのだという場合の話ですので、この個別課金が可能であるかどうかというよりは、個別課金が可能であるというのはDRMの提供が可能な場合なだけの話なのですけれども、そういう場合になっても、そもそもこの補償金が与えられる場合についてはこの問題が発生しますので、ここのところ、2行目の「あるが」の後のところは、簡単に申し上げますと、例えばこのように、「そもそも許諾権の付与によって保護される正当な利益が存在しない。したがって」というふうにしていただいて、3行目からつなげていただくような形の方が正確なのではないかなというふうに思います。

(中山主査) 実はこの個所は山本委員のおっしゃったような文章になっていたのを、前回退席された後、市場の失敗がないからそもそも利益がないのだという、そこのところはおかしいという意見があって、それでこう直して、その後、訂正については御覧になっていなかったわけですね。分かりました。これはどちらにせよ最終報告ではないので、最終報告にまたいろいろ議論を重ねていくことになると思いますが、今のように御意見があったということで、これは経過としてはどうなのでしょうか。今から直すということは。

(甲野著作権課長) もう経過として決めてしまいましたので、これは誠に恐縮ながら、最終の段階で先生の今おっしゃられたことを踏まえた形で、表現をよく注意したいと思います。

(中山主査) すみません。そういうわけで、ちょっと御退席された後、いろいろあったものですから。とにかくこれは経過ですから、これが別に最終ということではなくて、今の御意見も伺っておくということにしたいと思います。
 他に何か御意見、あるいは御質問がございましたら。はい、どうぞ、大渕委員。

(大渕委員) 今、議論の対象になっています権利制限関係で、先ほども話題に出ておりましたベルヌ条約のスリー・ステップ・テストの関係であります。資料で申しますと資料3の8ページ、9ページ辺りになりますけれども、この点は抽象的に議論するのもなかなか困難なので、その関係で少しお伺いしたいことがあります。例えば、今回議論になっています特許審査関係について、このスリー・ステップ・テストを考える際には、特許審査だけで独立して考えるのも必ずしも容易でない面がありますので、類似するものを対比するというのが一つのやりやすい現実的なアプローチの仕方ではないかと思います。そこで、現行法を見ますと、法42条に裁判手続のために必要と認められる場合というのがありますが、法40条で裁判手続というのは行政庁の行う審判、その他裁判に準ずる手続を含むということであります。そして、特許審査が何に近いかというと、当然特許審判というものが出てくるわけです。現行法においては法42条、40条の関係で特許審判が権利制限の対象になっているということについて異論はあまりないと思いますが、そうすると、現行法としては、当然特許審判に関してはベルヌ条約上のスリー・ステップ・テストは満たしているという前提であるという理解でよろしいのでしょうか。この点を確認しますと、それを基準にして特許審査はどうかということが考えやすくなるものですから、その点をまず確認させていただければと思うのですが。

(甲野著作権課長) 少なくともこの法律が制定された時には、準司法的な手続のもの、特許審判につきましてはここに入るという解釈でございましたので、スリー・ステップ・テストを満たしているものという理解があったものと推測することが可能かと思います。

(中山主査) 恐らくそれについての異論は内外で聞いたことがないので、多分その点は問題はないのではないかと私も思いますが。

(大渕委員) 私もそう思いますが、そうであれば、特許審査について独立に考えるよりは、少なくとも、特許審査に近い特許審判については、ベルヌ条約上のスリー・ステップ・テストを満たしているという前提で現行法があるという点を基準として、特許審査についても考えるという視点が、この点の検討の際には非常に有益となるのではないかと思う次第であります。

(中山主査) その点、いかがでしょうか。別に関連なくても結構です。

(松田委員) 今、審判手続と審査手続等の関係でどう考えるべきかということでしょうけれども、著作権法は一つの考え方として明確な公共の制度に基づいて、その中で使用されるものについては制限を設けている。それは各条項でやっているわけです。そのある意味で最大のものは、行政機関における立法資料等を作る場合の複製、これも許されているわけで、次はボリュームとしたらもしかしたら裁判手続も多いかもしれませんね。
 これは一種の官としての発想が、私はここにはあるのだろうと思います。官がやるのであれば間違いがない。それから目的が限定される。そして、その目的は国民の同意を得られているという前提だろうと思います。しかし、このボリュームはかなりのものがあるのではないかと、私は思います。スリー・ステップ・テストは実はボリュームが大きくても、目的の関係で許されるものがあるのだろうというふうに、私は思います。
 今度薬事や特許の手続で民が出すべき資料についての問題ですが、これ、官と民とをそのように分けていいのだろうかという発想が、私自身の中には、頭の中にあるわけです。やはり同じような目的で、同じ目的で複製が要求される時に、官庁の中でやるものと、しかしそれが申請手続が民がやってそれを官に出す場合と、それほど価値において差がないのではないか。そういう発想が私は基本的にはあるのです。そういう視点で著作権法を見直すことも必要なのではないかな、と思っております。

(中山主査) はい。どうぞ、大渕委員。

(大渕委員) ただいま松田委員の方から御指摘のあった点は、私も賛成でありまして、主体が官か民かという点よりはむしろ、何の目的かという点が一番重要でありまして、これが公益という形で議論されているものです。例えば特許の関係で申しますと、4点ほど出ておりまして、「審議の経過」の3ページの問題の所在、1234という形で今までこの小委員会の中では議論されてきたところでありますが、まず1の「非特許文献を出願人に送付するための審査官による複製」というものは、これは主体が官だということで一番分かりやすいものなのですが、次の2になりますと、今度は、審査官からの書類の提出の求めに応じて出願人が行う複製についてですから、これは主体が民の方になるかと思いますし、それから次の3は情報提供のために何人も、ということだったと思いますので、これも主体は民であります。
 松田委員が今言われた点は大変重要な点だと思うのですが、主体が官か民かというのは、ここの議論にとっては決定的な重要性を持つわけではなくて、何の目的のためにやっているかということが最も重要なポイントではないかと思います。
 その意味では、結局は、123を通じまして、これも何度も申し上げてまた繰り返しになって恐縮なのですが、知的財産法の2本の柱とも言うべき、著作権法と特許法のうち、特許法におきましては、何といってもやはり特許要件を満たしたものにしか特許を与えないという極めて強い公益的な要請がありまして、そのために特許庁という機関を設けて、審査官による専門的な観点からの審査がなされているわけなのです。そして、これは少し言葉を選ばなければいけませんが、例えば23というのは、最終的にはある意味では審査官という審査の担当官が行うべきものともいえるわけでありまして、例えば、3のような情報提供というものがなくても、極論すれば、ある意味で最終的には審査官がすべてのものを自分で調べ尽くすなどして、やるべき仕事ともいえるわけなのですが、そのような形で官である審査官が全部しょいこんで、私人の方は協力しないというシステムはあまり好ましいものとはいえません。
 先ほど申しましたように、特許要件を満たさないために、本来独占を認めてはいけないような特許を付与してはならないという公益的観点からしますと、できるだけ情報は幅広く提供してもらった方が、そういう不当な特許を付与しないという観点から適切なので、そういう意味ではこの3で行っている情報提供というのは、本来審査官が行うべきものを民間の方でサポートしているというものでありますので、主体が官か民かという点が非常に重要なポイントであると思う次第であります。

(中山主査) 確かに正確な特許というのは極めて重要で、特許権というのは第三者の行為を止めることができる強い権限というだけではなくて、侵害すると犯罪にもなるということですから、これは正確を期すという目的は公益に帰することは間違いないわけですけれども、特許庁の方にお伺いしたいのですけれども、よくある議論は、自分の利益のために特許権を取るので、そのために特許庁に出すコピー、だからその費用は自分で負担しろという意見があるのですけれども、私の感じでは、むしろ特許権を潰すとか、成立しないようにするための資料の方が多いのではないかと思うのですけれども、その点はどちらなのでしょうか。

(前田特許庁総務部技術調査課課長補佐) 特許庁でございます。先生御指摘のように、非特許文献の提出につきましては、当然引用例として使われることを目的として出される場合が多うございます。したがいまして、権利を潰すであるとか、あるいはその権利の幅を小さくするという方向で、よく非特許文献が出されているケースが多いように思います。

(中山主査) ということになると、出願者の利益のためだから出願者が自分で払えという理屈はなかなか成り立たないということになるかと思うのですが、その点も含めて、はい。

(大渕委員) 今、中山主査が言われた点は非常に重要な特許の本質に関わる点をつかれていると思います。まったく釈迦に説法で何でまたそんなことを言うのだといわれる方もおられるかもしれませんが、要するに特許の審査の基本的な構造というのは、出願があったら、それに対して審査官の方で拒絶理由を発見できれば拒絶をする。発見できなければ特許を付与するという、その意味では非常にネガティヴなプロセスでありまして、出願されたものに対して、例えば新規性あるいは進歩性がないという拒絶理由を発見したら拒絶理由を通知して、最終的には拒絶をするということなのです。
 出願人の方は権利を求めて、特許を付与してくださいということを言ってくるのですが、審査官の方が行っているのは、普通は要件の充足といいますけれども、手続的に見ますと、むしろ拒絶できる理由が発見できるかということが法律上の審査官の職責になっているわけであります。このような意味において、ここで問題となっている非特許文献に係る123の行為というのは、権利を付与する方向というよりは、むしろ、拒絶理由を発見して本来特許を付与してはいけないようなものには特許を付与しないという方向で、非常に公益的な観点からなされるものだと思います。したがって、その観点からも、先ほど中山主査が御指摘になったように、自分の私権を得るのだから自分で複製の対価を払いなさいという議論とは、むしろ方向が逆なのであって、基本的には非特許文献というのは特許出願を拒絶する方向に使われるものなので、議論の視点がずれているのではないかなという気がいたします。

(中山主査) はい、他に何か。はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 先ほど質問しましたスリー・ステップ・テストと「審議の経過」との関係について、見直してみるとどの辺りが問題になり得るか、という点についてコメントさせていただきたいと思います。
 特許の関係でいいますと、「審議の経過」の6ページ、7ページに審議状況の要約があります。これを、今日いただいた資料の3の8ページのスリー・ステップ・テストの4つの要件に照らし合わせて、審議が十分であったかという観点から見ますと、今御議論がありましたとおり、第1番目の必要性、緊急性、特別の場合に当たるかという点につきましては、「審議の経過」の6ページの審議状況の文章の1行目に書かれておりますとおり、的確・迅速な審査手続の確保の観点というのが必要なのだということについて、あまり大きな異論はなかったような印象がありますので、ここは改めてもう多言を要しないのではないかという気がいたします。
 他方、2番目の通常の利用を妨げずということに照らしますと、既存の許諾システムに影響があるかという点について、本日配っていただきました資料3の2ページでは、特許関係についてはカバー率についての資料が出ておりません。通常の利用を妨げないと言えるかどうかについては、少しまだ検討が必要なのかなという気がいたします。
 それから3番目の正当な利益を不当に害しないかという点につきましては、「審議の経過」の7ページの2つ目の段落の中に文献については入手困難であるとか、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であるとか、正当な利益を害しないということで意見が書かれておりますので、恐らくパスするだろうと思います。
 条件付けについては、確かにまだ詳しくは議論されていないなという印象がありますので、スリー・ステップ・テストに照らして新たに検討するとすれば、2番目の既存の許諾システムとの関係及び条件付け、要件の細かい設定ということになると思うのですけれども、ここがさらに審議すべき点なのかなという印象を持っております。
 他方、薬事行政に関しましては、「審議の経過」の10ページに書かれておりますとおり、国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという形で、これはやはり特別の場合に当たるということについて、大きな異論はなかったような気がいたします。
 2番目の既存の許諾システムへの影響ですけれども、正直いいまして、今日いただいた資料で、影響がどうなるのか、これから伸びていくべき萌芽的なシステムを権利制限を設けることによって潰してしまうのではないかという懸念は、私、以前申したことがあるのですけれども、判断つきかねます。この辺は相当専門的な検討がいるかなという気がいたします。
 あと4番目の条件付けについても、恐らく特許の場合よりもさらに細かい要件の絞りというものが必要なのではないか。非常に雑駁ですけれども、そういう印象を持っております。

(中山主査) はい、どうぞ、末吉委員。

(末吉委員) 今日、この資料3の中で一番私が参考になったのは、3ページ以下の諸外国の例のところでございます。分かりやすくおまとめいただきまして、理解が足りないところを含めて特許関係及び薬事関係、非常に論点というか、諸外国の例が要領よくまとめられているのではないかと思います。
 特許関係あるいは薬事関係を考えるに当たって、権利制限を考えるに当たって、私が思いますには、いわゆる諸外国に、欧米を中心とした諸外国と並んでいくということが1つニーズとしてまずあるのかなと。御案内のとおり、知的財産、知財立国ということを言われていますけれども、諸外国と競争していくためには武器の対等といいますか、制度の同等性ということがやはりどうしても必要でございましょうし、薬の開発をめぐっても御案内のとおり、恐らく国際的な大変激しい競争の中にある。
 そういうニーズの面からもそうでございましょうし、スリー・ステップ・テストという観点からも、どうもおまとめを拝見すると、全部の論点ではございませんが、かなり多くの論点にわたって基本的には諸外国も権利制限として考えておられるところが多いと思います。
 細かいことはもちろん検討しなくてはいけないのですけれども、一番大事なのは、やはりいろいろ先生方が御指摘されているこの制度の趣旨であるとか、そういうところでございましょうし、恐らく実務界のニーズということでいうと、やはり国際競争という点が一番大切なのではないかなと。スリー・ステップ・テストの観点を考えるに当たっても、やはりこの点はぜひ重要というか、最も重大なポイントとして考えていく必要があるのではないか、というふうに私は思います。以上です。

(中山主査) はい、どうぞ、大渕委員。

(大渕委員) ただいま末吉委員が言われた点に関連して、少しお伺いしたい点があります。今御指摘のあった資料3の3ページ以下にある諸外国の特許関係の例なのですが、これを拝見いたしますと、123のいずれについても、アメリカ、英国、ドイツなどの諸外国でまるだと認めているということになっているのであります。これらの国も当然ベルヌ条約の義務がかかっているわけなのですが、これらの国で123の権利制限をかけていることについて、ベルヌ条約上、スリー・ステップ・テストに違反しているという反対があったけど乗り越えて立法したとか、あるいは立法後、そういうようなことで批判があるとか、何かそういう議論があるかどうかというのは、把握しておられれば教えていただければと思います。

(甲野著作権課長) 私どもの方ではちょっとそこまで把握しておりませんが、特許庁の方で何か。

(前田特許庁総務部技術調査課課長補佐) 特許庁も、実はその点についてはちょっと把握はしてございません。問題になったということも聞いてはおりません。

(大渕委員) 今の回答というのは予想できたところでありまして、当然、公益性の強さとも関係してきますけれども、ボリュームといいましてもかなり限られた範囲ですので、我々の感覚からいうと、この123がスリー・ステップ・テストに抵触するとはあまり思えません。ただそれだけを言っても見解の問題になりますので、そのような意味では、先ほど申し上げたように、特許審判との比較など既存のものと比較するというのは非常に有益なアプローチの仕方ではないかと思います。特許審判の方はわが国としてもスリー・ステップ・テストは当然満たしているということで入っています。そして、特許審査関係については、諸外国でも、当然スリー・ステップ・テストは考慮しているわけなのでしょうけれども、特に問題になるということを、私もいろいろなところで論文等見ますけれども、あまり聞いたこともないところをみますと、諸外国でもスリー・ステップ・テストを念頭に置いて、それは当然満たしているということで特許審査関係についてはこのような対応をしているのではないかと思います。特許審査関係につき抽象的に議論するという方法もあるのですが、すでに各々プラクティスを積み重ねている主要国においても、そういう対応をしているという点は、わが国で考えていく場合にも非常に有益になるのではないかと思う次第であります。

(中山主査) 若干乱暴な議論になるかもしれませんけれども、日本の法律家というのは往々にして国内法と条約との解釈を同じような方法論で解釈して、ぎりぎり詰めていくという習性があるわけですが、エンフォースメントという観点から考えますと、当然条約と国内法の解釈の態度というのは違ってくるわけで、アメリカなんかを見ていれば、それは明らかです。むしろ大きな利害関係を中心に条約の方はとらえている方向にあるわけで、それを証拠にこのスリー・ステップ・テストも日本の条文としてぎりぎり読むと非常に面倒くさい問題が起きますけれども、多分国際的にはそうではない。もし違反しても、ではエンフォースメントはどうかとか、そういうエンフォースメントされた場合の国益はどうかとか、多分そちらの方を考慮していろいろ立法していくのだろうと思います。条約の条文が大事であることは間違いないのですが、あまり条約の条文を国内法的にぎりぎりと解釈していくと、かえってわが国の国益を失う場合もあるのではないかと思います。仮にこれがスリー・ステップに反するとしても、世界中がみんな反していれば、これは国際条約としてはちっとも怖くないわけですね。国内法の場合、非常に困るのですけれども、そこはだいぶ国内法と国際法、条約とでは違う。むしろ条約は法と言えないということを言う人すらいるくらいですから。どうぞ。

(松田委員) 主査の国益の点ですが、今の特許状況を少し皆さん方の御理解もあると思いますので。やはり特許で争うのは日本国内だけではありませんで、これから起こるのは通信業務とかソフトウェアの部分で、アメリカが日本の企業を訴える。それから、日本もアメリカで訴える。こういう薬事などでは、ドイツと日本との関係が出てくる。それから、特にIT関係の、インターネット関係の通信技術では、イスラエルがもうかなり大きな特許を持っていて、アメリカで日本で訴える。
 こういうことになるわけですが、その時に、争う時に、その前に実はアメリカでどんな訴訟が起こっているのか、日本でどんな訴訟が起こっているのかって、相互見ているわけですね。そして、アメリカでは情報提供等の手続で自由に民の方から資料が提出できるのに、日本の方は情報提供したくても、もしこれができないというのであるならばどうするかといったら、引用文献一覧を作って特許庁に出さなきゃいけないわけですね。それでも特許庁がそれを審査しなきゃならない。ないしは資料として重要だと思われるものは調べなければならない。
 どうするかといったら、それでぎりぎりやろうとしたら、特許庁内に行政の目的のために必要なコピーだからということで、その手だてを全部特許庁の中でやらなければいけなくなる。そういうことをこれから先、やはり特許庁の審査を早める。それから国際レベルも同じような武器を持つという点では、こんなところで差を設けるべきでは私はないというふうに思っています。結局、特許庁の負担が大きくなるだけであると思います。

(中山主査) はい、大渕委員。

(大渕委員) 私が先ほど申し上げた趣旨は、国益云々といった大げさなことを申し上げているつもりはなくて、以下のような条約の解釈資料に関する法的な点を述べるものであります。条約上のものとしてこのスリー・ステップ・テストがあるわけですけれども、条約の解釈においても、国際的な裁判所の判決や国際法の権威ある論文など、条約の解釈に有益な資料はあるわけですが、それと並んで条約の加盟国が国内でどのようなプラクティスをしているかということも重要な解釈資料となるということであります。各国の国内プラクティスとしては、もちろん極限的な場合には条約に違反しているということもないわけではないのですが、少なくとも多数の主要国でそれが条約に合致し是とされて行われているというのは、反面この条約の解釈に当たっても非常に有益な資料になるわけであります。先ほどの主要国においては123の程度のものはスリー・ステップ・テストに抵触しないと解釈しているからこそこれらのことを行っているという意味で、国益云々といった次元の話ではなく、純粋に法的問題としての条約解釈にとってこの点は重要な資料になるという趣旨で申し上げた次第であります。

(中山主査) 他に何か。はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) 特に非特許文献に関しては、学術論文だけではなくて、カタログとか広告のような類のものも提出の必要があるというふうに何回か前に御説明があったのかと思いますので、そういういろいろな著作物が対象になり得るということからすると、著作権等管理事業者がカバーできる範囲もおのずと限度があるのではないかと思います。
 そういう観点からすると、先ほど小泉先生から御指摘がありましたけれども、特に特許のこの問題に関しては権利制限を認めても、著作物の通常の利用を妨げるということではならないと思います。
 あとは量の問題で、量が膨大であれば権利制限しても補償金を与える必要があるのではないかということが、次で問題になってくるだろうと思います。補償金請求権ということも考えられなくはないと思うのですけれども、特許に関しては提出先や利用目的がかなり明確に限定されていて、量が無限定に拡大していくということでもないというふうに思われますので、この問題に関しては補償金も与えなくても正当な利益を不当に害するということにはならないのではないかと思いますので、特許関係については権利制限を認めるのがいいのではないかと思います。

(中山主査) ありがとうございます。医薬の方はどうでしょうか。はい、どうぞ、茶園委員。

(茶園委員) まず、先ほどの主として特許に関する議論で、スリー・ステップ・テストを満たす場合には、当然に権利制限を認めるべきだということにはならなくて、一定の必要性なりがなければなりません。特許の場合も薬事の場合もそうですが、公益的な目的があるということで、ここで整理されていますように、公益的な目的があり、そして条約上の義務であるスリー・ステップ・テストを満たす場合に権利制限を認めるということなのですけれども、一方、公益的な目的というものは、恐らくWTOのパネル決定にもあったと思うのですけれども、スリー・ステップ・テストの2番目のステップに関わってくるものと思います。
 特許もそうですし、薬事もそうなのですけれども、ここで問題となる公益的な目的というのは、目的そのものが公益的なものであることに留まらずに、いずれの場合も迅速に行わなければいけないということがあります。例えば権利者が分からないから、一定程度の期間探してみるとか、あるいは権利者が分かってもそこで交渉するということになると、当然、一定の期間が必要だということになります。
 しかし、この特許にしても、あるいは薬事にしても、恐らく極めて迅速な対応が必要であるということになります。ですから、何らかの現行のシステムでも、あるいは対応可能であるとか、一定の時間さえあれば対応可能であるという場合でも、この場面では迅速な対応のためには権利制限を認める必要があるという場合もあると思いますし、それが先ほど言いましたけれども、そのことがスリー・ステップ・テストにも関わってくるのだろうと思います。
 恐らく特許もそうですし、薬事もそうだと思うのですけれども、このように考えますと、ここでは一番重要な問題は3番目の著作権者の利益を不当に害しないというところにあるというように思いまして、先ほど前田委員がおっしゃったように、量の問題非常に大きいのだろうと思います。調べていただきましたカバー率が重要になるでしょうが、それとともにどれくらいの量が実際に複製にされることになるのかも重要になると思います。
 私の理解では、あるいは間違っているのかもしれませんけれども、特許の場合は極めて少数のものしか、1つの文献については1部くらいしか行われないのではないか。ただ、それがどれくらいの量で、どれくらいの件数があるかどうかというのが問題になると思います。薬事についても薬事の5ページから書いてある12については、恐らくこれもある文献についての複製の数というのはそれほど大きくないのではないか。ですから、今度は複製される文献の数が問題になると思います。
 どれくらいの文献が複製されるかというのが重要で、3については複製される文献の文献の数と、1つの文献に対してどれくらいの数が行われるかというのが重要で、これらの点は今までもそれぞれ利用者側と権利者側から情報があったと思いますが、ちょっとそこの点を整理していただければ議論がしやすいかなと思います。以上です。

(中山主査) 今の最後の点はどうでしょうか。全体の部数ではなくて、ある文献ならある文献が医薬関係でどのくらいコピーされているかという点について。

(甲野著作権課長) 医師等に対してその関係の文献をコピーして渡すということにつきましては、製薬会社の協会の方々がサンプル調査をされておられます。それを参考までに披露させていただきますと、これはある大手から中堅の製薬メーカーのうちの4社のある1か月分のデータ、それをサンプル調査をされたようですけれども、それを12倍をすると年間ということになりますが、そのデータでございますけれども、合計で国内文献と海外文献と合わせてページ数として150万ページ余りというデータを私ども頂戴をしているところでございますが、それについて補足があったらお願いします。

(中西学術著作権協会常務理事) 学術著作権協会の中西でございます。特許については私どもはあまりはっきりした数字を持っておりませんが、薬事関連で申し上げると、今課長が言われました件数より、薬事関係の複写数ははるかに多いように思います。
 それから金額的に申し上げると、全部で学著協が受けている使用料は5億6000万円ですが、それの50〜60パーセントは薬事関係の複写でございます。量的にはそういうことでございます。

(中山主査) 薬事関係の複写というのは、薬事法で書いてある薬の副作用等のために、医師に出すものも含めて、それだけですか。

(中西学術著作権協会常務理事) そうです。副作用も含めます。

(中山主査) つまり、今問題になっている、この複写だけで。

(中西学術著作権協会常務理事) それだけではありません。副作用だけではありません。

(中山主査) 今問題になっているのは、だいたいどれくらいなのでしょうか。ここで問題にしている複写については、どのくらいですか。

(中西学術著作権協会常務理事) 今の問題でいいますと、課長が言われました百何十万件というのはどれに当たりますでしょうか。

(中山主査) 150万件というのは1社で、さっきの薬事関係のこの問題で1か月に150万ですか。

(甲野著作権課長) はい、特に医者に文献を提供するという場面で、というように聞いております。

(中山主査) はい、どうぞ。

(南日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員) 日本製薬団体連合会の、このデータをお出しさせていただいたものでございます。甲野課長からも御説明がありましたように、これはあくまで4社のみのデータでありまして、全体でこれだけということではありません。中堅から大手の4社の1か月、1か月が調査できる限度でございまして、ある調査の時に集めたデータを1か月分しかどうしても出せませんでしたので、著作権課の方で12倍して1年分という形で提出されたデータです。ですから、4社分でだいたい1か月間で約13万ページ、件数にして約2万2000件程度の複写になります。
 それから、先ほど茶園先生の方からも御質問ございましたが、1つの文献に対して何部かというのは、これは基本的に1部です。実際の個々のデータでも、だぶっていたのは2万2000件のうち数件です。そのうち、また2〜3件は明らかにデータ処理上の重複というふうなこともございますので、まったく1件ずつということではございませんが、基本的には該当は1件につき、1部という形になっております。そういうのが2万何千件あって、ページ数として1か月で4社で13万ページくらいあった。年間に直しますと150万ページになると、4社分として、というデータでございます。これは事実のデータでございます。

(中山主査) 1件の物件に1部ということですね。

(南日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員) そうです。

(中山主査) いろいろな病院とか医師に出すということはないのですか。

(南日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員) はい。そういうのはもともと逆に我々のプロモーション、いわゆる宣伝に用いるために用意するものでございますから、そういうものにつきましては基本的にはパンフレットとしていろいろな文献をまとめたもの、それに当然引用させていただくことは著作権等の処理をさせていただいておりますし、たまたま1文献そのものを利用するとき、多くの先生方に見ていただくという場合には別刷り等を購入したり、どうしても別刷りが入手できないものにつきましては、別途個別処理をいたしております。

(中山主査) その点について。はい、では前田委員、どうぞ。

(前田委員) 今回の薬事行政関係での検討項目には3つあろうかと思います。「審議の経過」の8ページにある問題の所在の123の3つであり、1は新薬等の承認とか、再審査とか、再評価の場合に文献を国等に提出する場合で、2が副作用報告等に関して国等に報告する場合で、3が医療関係者へ必要な情報を配付、提供する場合という、3つの場合があったかと思います。
 私が従前考えておりましたのは、12に関しては権利制限規定を認めていいのではないか、といいますのも、提出先が国等に限定されておりますし、複製物も著しく拡大するということもないかと思いますので、12については権利制限規定を認めるべきである。これに対し3については配付先が多数であり、全国の病院にばらまくということも起こり得るので、もし緊急性のために権利制限を認めるとしたら、補償金の付与が必要になってくるのではないかというふうに思っておりましたが、先ほどのページ数というのは、この123のどれに関わるものですか。

(甲野著作権課長)  3でございます。しかも、全部の製薬会社ということではなくて、4社についての合計でございましたので、全製薬会社を含めるとしかるべき多くなるということだと思います。

(前田委員) もしそうしますと、先ほど中山主査から御質問がありましたように、3というのは医療関係者に配付、提供することが前提となっておりますので、1文献について1コピーというのがちょっと私はよく理解できないのですが。

(南日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員) 補足させていただきます。すみません。先ほどの説明でちょっと分かりにくかったかと思いますが、今おっしゃったように、こちらの意志でもって1つの文献が、これがいいからといって見つかったものを不特定多数の病院さんに配付するというのは、これは協約上で我々の自主規制として禁止しております。そういうものにはきちっとしたパンフレットを使うべきという形で禁止しております。
 ですから、この件数はあくまで我々の趣旨ではなくて、MRという担当者としてお伺いしたりしているものが、直接患者さんの治療のために先生方の方から、また薬剤師さんの方から、医療現場で、こういう状況に関する文献がないか、情報がないかというふうな形で御依頼を受けたものに対して、その御依頼者に対してのみ提供するということで各1部になるということでございます。各社多いところ1000人以上のMRが全国を回っておりますので、そこでの各医療現場から様々な御依頼を受けて提供させていただいているという現状でございます。

(中山主査) もう1度確認いたしますけれども、今の4社で150万という数字は、これは薬事法の77条の3に基づいた情報提供義務を果たすために複写をしているのが150万ということですか。

(南日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム委員) そうでございます。現在は、それしか逆にできないという形になっております。

(中山主査) はい、分かりました。何か御意見、御質問ございましたら。よろしいでしょうか。それではちょうど時間でございますので、今の特許と薬品関係は一応これでオフといたしまして、続きまして次の「ハードディスク内蔵型機器等の指定」に入る前に、ここでちょっと休憩を入れたいと思います。7〜8分くらい休みまして、11時から再開をしたいと思います。では、若干休憩をしたいと思います。

〔休憩〕

(中山主査) それでは時間でございますので、再開をしたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは次の項目であります「ハードディスク内蔵型録音機器等の指定」につきまして、議論を行いたいと思います。事務局からこの論点についての整理を頂戴しておりますので、まず説明をお願いいたします。

(甲野著作権課長) はい。それでは、資料の4−1及び4−2を御覧いただけれはと思います。
 4−1でございますが、ハードディスク内蔵型機器等の指定に関する論点整理ということで、これまで何回か議論をいただいたものを若干整理をいたしまして、あと様々なデータ等を加えまして、これから先、報告書に取りまとめがなされなければいけないわけでございますけれども、その内容も念頭に置きながらまとめさせていただいたものとして、たたき台として作ったものでございます。
 1ページ目から簡単に御説明をさせていただきます。まず、このハードディスク内蔵型機器等の指定、現在の補償金制度の導入がどうして行われたかでございますけれども、これにつきましては分科会でも御発言があったところでございますけれども、第10小委員会というところで導入すべしという報告が出ましたけれども、その内容につきましてここのところで示させていただきました。
 かいつまんで申し上げますと、法律第30条、私的録音録画が自由であるというふうに規定したのは、現在の著作権法が昭和45年に制定されましたけれども、その当時私的録音録画は大変零細だということであったわけでございました。しかしながら、この制度導入が検討されている時には、私的録音録画は広範かつ大量に行われていた。また、デジタル技術の普及発達、これによりまして同質のものが多数作成し得る状況ということであったということで、認識がございました。
 そして、そうした状況というのは著作権者等の利益を害している状態に至っていると。デジタル化の進展によりましては、通常の利用に影響を与えるような状況も予想されるという認識でございました。
 そして、先進諸国では当時どうかといいますと、何らかの補償措置をとるということが大きな流れになっているということでございました。平成3年当時の各国の導入状況は以下のとおりでございました。
 そして、こういうような状況というのは、当時の第10小委員会の認識としては、ベルヌ条約との関係でも何らかの対応策が必要であるということをこれらが示しているのであるということで、制度的措置をとる必要があるという形で、現在の補償金制度が提案をされ、制度化されたということでございました。
 そして、現在の制度でございますが、制度の概要として1ページの下からこれを紹介しておりますけれども、これにつきましてはこれまでもいろいろなところで御説明をさせていただきましたので、省略をさせていただきます。徴収の流れ、補償金の額、それから補償金の分配、そして徴収額の推移、共通目的事業、このような形で現在の制度が制度として、あるいは運用としてなされているというところでございます。
 そして、5ページ以下を御覧いただければと思います。そうした状況で、では現在どういうことが問題になっているかということでございますが、ハードディスク内蔵型録音機器等の指定をすべきかどうかというところでございますが、まずこの内蔵型の機器が大変急速に普及をしているという状況があるというのが、問題の所在として大きくあるわけでございます。
 ハードディスク内蔵型機器等はつい最近のオンラインの音楽事業との連携もありまして、急速に売上げが増加をしているところでございます。この図を御覧いただければと思いますけれども、点々で書かれているところ、これがポータブルMDプレーヤーでございまして、2001年から2004年ほどはほぼ横ばい状態であろうかと思いますけれども、2005年の予測で大変少なくなってございます。そして一番上の棒グラフのある部分が携帯デジタルオーディオプレーヤー、いわゆるここでいう内蔵型機器でございますけれども、2002年に市場に投入されて以降、急速に売上げを伸ばしているということでございまして、出荷台数を見る限り、市場においてMDに変わりつつあるというふうに考えても、考えることができるかと思います。
 下のところの表は、これはオンライン音楽配信事業の売上げでございますが、近年急速に伸びている状況がございます。
 そして、これらに対しまして著作権者、著作隣接権者がどういう経済的な影響を受けるかでございますけれども、資料4−2を御覧いただければと思います。これは著作権分科会でも権利者の方々が調査をされるというふうに言及があったものの、その調査でございますけれども、日本音楽著作権協会、芸能実演家団体協議会、レコード協会、この三者がこれを行ったところでございます。
 これによりますと、この3ページ目を御覧いただければと思いますけれども、経済的な影響として以下のような算出をしているところでございます。まず、使用料規程でいいますと、1局当たり8.1円であるということ。そして、ハードディスク内蔵型の機器保有者は平均260局ほど私的録音をしているということでございます。そこにさらに出荷累計の台数が535万台あるということでございます。それに消費税相当額を掛け合わせると、118億円ということでございます。
 また、隣接権者等々についても同様の算出をいたしますと、次の4ページになりますけれども、経済的な影響というものは485億円になるという試算がございます。
 なお、この調査につきましては、その後5ページ以下、30条2項の適用を受ける場合の試算として、これは補償金がかからなかった、仮にかかったとしたならば得たであろう利益がないということで算出をしたものもございますが、これにつきましては18億円という試算もございます。
 また、これではいろいろ調査をどのような形でしたのか等々記載されておりますので、御参照いただければと思います。これはこれら3団体が、とりあえず今回に間に合わせるという形で速報版という形で取りまとめたものというふうに、私ども承知をしているところでございます。いずれにしても、そのような算出で経済利益があったのではないかということが、調査から伺われるところでございます。
 そして、元の資料に戻っていただきまして6ページでございますが、諸外国の状況でございます。諸外国におきましては、現在25か国において補償金制度がある国がございますけれども、それぞれ9か国、12か国、機器やあるいはフラッシュメモリー、ハードディスク等々かかっているところがございます。これはサーラから頂戴をした資料を元に作成をしているものでございます。なお、カナダにおきましては、つい最近、ここは媒体が対象となっていたところでございますが、iPodが媒体に当たるというような形で制度化をしたところ、これは裁判でそれは適用するのは適切でないという形の判例があったところでございます。
 そして、状況といたしまして、補償金の制度とiPodの指定、こうしたものの関連といたしましては、DRMがどれほど普及しているかということが大きな関連の事項かと思われますけれども、録音録画の専用機の部分では、例えばCDからMDに移る場合の孫コピーの禁止、DVDのDVD‐Rへの基本的にこれもコピーの禁止、地上波デジタルにつきましてはB‐CASカードなどの導入によりましてコピーワンス、このような形の一定のシステムが導入をされておりますけれども、音楽配信事業におきましては、サービスはいずれにおいても何らかのシステムが導入されておりますけれども、複製の制限の程度というものはそのサービス自体、あるいは同じサービスの中でも提供される楽曲により異なっているところでございます。これに対しましてCDがCD‐Rに例えばパソコンでコピーをするというところにつきましては、コピーガードはかかっていないのが現状でございます。
 そして、補償金制度でございますけれども、平成4年に導入されて以来、これがどのように認知されたのかということが論点としてございました。サーラによる平成13年の調査では、補償金制度について知っているというふうに答えた人の割合は9.8パーセントでございます。また、つい最近、ビジネスソフトウェアアライアンスが6月でございますが調査をしたところ、内容をよく知っているという者が2パーセント、ある程度知っているという者が15パーセント、名前だけ知っているが19.4、まったく知らない者、これが63.4パーセントでございました。
 このような状況の下で、内蔵型の機器につきましてこれまで御議論いただいたわけでございますが、これまでの御議論を私どもの方で整理をさせていただいたものが、次の3の「これまでの議論の整理」以下の部分でございます。
 まず、これまで議論といたしましては、やはり補償金制度というものについてはそもそも問題があるのではないかという御議論があったわけでございますので、最初にこれを書かせていただきました。
 現在の補償金制度が抱える問題点としては、やはり実際に私的録音録画をしない者も購入する際には負担することになる。これを解決するための返還金の制度もあるけれども、それについても返還金がそもそも少額であるということから実効性のある制度とすることが難しいのではないか。そもそも人に対して捕捉というものが困難だということがあろうかと思います。
 また、2番目といたしましては、汎用的な複製に使われるパソコン、あるいはデータ用CD‐Rで実態としては非常に多くの複製も行われているわけでございますけれども、これを複製、指定をしてしまうと、音楽録音に使用しない者にも負担をかけるということで指定は困難と考えられるわけでございますが、逆に指定を困難にしてしまうと、今のように実際に行われているものも捕捉できないというような形でありまして、正確に対象をピンポイントでやるということが難しいということがございます。
 また、権利者への分配でございますけれども、これは既存の音楽の使用データを推計して行っているわけでございますけれども、やはり緻密に計算をしましても、なかなか実際の複製に完全に対応した形では分配をするのが難しゅうございまして、受けることができない権利者も生じ得るというような問題もございます。
 こうしたような制度が本来的に抱えるというような問題点の他に、運用上の問題も指摘をされているところでございました。まず、消費者が知らないという問題でございます。それから、これはそもそも少額だから本質的ではないかという御議論もありますけれども、返還制度が機能していないという部分もございます。また、共通目的事業、これについても内容が十分知られていないし、使い道につきましても本来国の予算でやるような事業もあるのではないか、というような御指摘がございました。
 そして、さらに3番目といたしまして、こうした問題点というよりも、補償金制度の前提となる状況の変化についても御指摘があったところでございます。最初に申しましたように、私的録音録画が零細で、その捕捉が事実上困難であるということを前提とした制度、補償金制度はそういうものであったかと思いますけれども、DRM等の技術の普及により、捕捉というものが徐々に可能になりつつあるわけでございます。したがいまして、機器や媒体の購入の際にすべての消費者が補償金を支払わなければならない。これが補償金の現在の制度でございますけれども、その制度を正当化するという根拠が揺らいでいるということがいえるかと思います。
 ただ、捕捉実現のためのこうした技術の導入を仮にした場合に、社会全体の負担コストが非常に大きくなった場合には、やはりそれは無理だということになりますので、なお正当性の根拠はあろうかと思いますけれども、そうした状況の変化がございます。
 あと、それからこれまでの議論として二重徴収の問題がやはり大きく取り扱われてきたところでございました。特にサービスについての配信事業が拡大しているということから、サービスについての配信の課金、それから私的録音に対する補償金、これが二重徴収されているのではないかというような御指摘があったわけでございます。
 これに対しましては、配信サービスの対価というのは消費者への音源の配信、あるいはその際に行われるダウンロードの複製についての対価であって、その後の私的複製というものは対価としては含まれていないのではないかという反論もございました。
 また、それから音楽配信への対価ということになりますと、音源が消費者に渡るものでございますが、それはCDを購入したりレンタルする場合でも同じではないかということになりますと、全体としてそこだけ切り取って議論するのはおかしいのではないかというような議論がありました。
 しかしながら、これに対しましては、配信サービスの内容というものは音源を提供する側はよく認識をしているはずで、どの程度コピーされるということはもう認識した上で提供しているのではないか。そういうことからすれば、その料金には事実上、複製対価が含まれると考えるのがやはり適切で、補償金との二重徴収になるのではないかというような議論もございました。
 これにつきましては、実は反論に対してはまた再反論という形が非常に際限なく続くところでございまして、なかなか分かりにくい点がございます。最後の事柄にいたしましても、例えば作詞家、作曲家の場合でしたら、定められた使用料に基づいて、申し出があった場合にはもうそれを自動的に許諾してお金を徴収しなければならないというシステムになっているので、それを前提とした場合には認識するも認識しないもない。そもそも二重取りとか、そういうことはもう全然意識していないのだというような議論もございます。
 いずれにいたしましても、二重取りというものは大きな論点としてこれまで議論されたところでございまして、このペーパーではこのような形で整理をさせていただきました。
 そして御議論でございますけれども、そうした制度的な問題点等々御議論をいただきましたのと併せまして、今後補償金というのはどういう形であるべきかということにつきましても、御議論があったかと思いますし、今後検討していかなければならない事柄ではないかと思うわけでございます。
 そして、ここで案という形でこちらで考えさせていただいたものを御説明させていただきたいと思います。
 今後補償金制度のあり方、そのあり方全体、それから指定するかどうかを含めて両方でございますけれども、基本的な考え方といたしましては、この制度が平成4年に導入されたわけでございますけれども、その際、国際条約との関連に大きな留意が払われているわけでございます。そして、今後の検討に当たっては、やはり国際条約と国内法との関係はどうかというのは先ほど御議論もあったわけでございますけれども、やはり踏まえている必要があるのではないかと思われるわけでございます。
 そして、わが国の保護の現状というものは、そうした状況から見てどうなのかということでございますが、ここに1から4までを書かせていただきました。こうしたような事情を考えると、他の現在の補償金制度がやはり一定の機能を果たしているわけでございますけれども、そうした補償金制度があることによりまして、他の先進諸国に比べてここが不十分だというようなそしりは受けずに済んでいるものというふうに考えることができる、というふうに思われるわけでございます。
 この1から4ということは現状であるわけでございますが、私的録音録画は基本的に自由ということ。ただし、最近の改正によりまして、技術的保護手段の回避、これによる複製は自由ではございませんけれども、基本的に自由ということがございます。そして、デジタルの録音、録画が広範に行われている。レンタルCDからの複製の実態があるということがございます。DRMはどうかといいますと、他のメディアはかなり浸透しているところがございますけれども、CDについてはまだ限定的という状況がございます。
 そうしたことから、現在の補償金制度がさらにプラスで一定の機能を果たしていることによりまして、保護が不十分というようなそしりを受けるということはないのではないかということでございます。
 こうした前提を考えますと、今後この制度をどうするのか、指定をどうするのかを考えるに当たりましては、やはりわが国が国際社会において名誉ある地位を占めるというような事柄でもございますので、国際的な地位、果たすべき役割も考えまして、やはり補償金制度の見直しを図りながら機能させていくのか、あるいは補償金制度に代わる実効的な何らかの措置を導入して保護を十分にしていくのか、いずれかの対応が必要かと思います。
 そして、新たなもの補償的措置をもし仮に行うという場合には、その行うまでの期間、非常に長い期間何も補償的な措置がないというような状況があったら、これはやはりまずいかと思いますので、補償金制度が一定程度機能するようにするとか、あるいは違う何かの対応というものが必要になってくるのではないかと思います。
 なお、この補償的な措置というような言い方をさせていただいたわけでございますけれども、これは特にお金が動くということのみを前提としているわけではございませんでして、技術的な保護手段が課されて、事実上なかなかコピーが自由でなくなるということになった場合でも、これは当てはまりますし、それはお金の動きと両方組み合わせるということもあろうかと思います。
 それから国際条約との関連も先ほど申し上げましたけれども、国際条約の状況、これは平成3年度頃と現在の状況では若干違う要素がございます。それはどういうことかといいますと、現在の状況では平成3年の頃に比べますと、技術的保護手段というものがその後明確化されたという事柄もございますし、また技術的保護手段というものがある場合には補償金制度の方も少し考慮すべきだということが、例えばEUの指令等にもございます。条約ということではございませんけれども、国際情勢にはそうした変化もあるということは認識をする必要があろうかと思います。
 いずれにしましても、そうした事柄はありながらも、やはり現在の補償金制度を機能させていくのか、あるいは違ったものを取り入れて機能させるか、そういうことが何らかの形が必要ではないかということを基本的な考え方で据えるべきではないかというのが、ここに示させていただいた案でございます。
 では、今後具体的な施策をどういうふうに行っていったらいいのかでございますけれども、当面の課題といたしまして、このハードディスク内蔵型録音機器等をどう指定するかがございます。これにつきましては事務局の方で案の1から4という形で整理をさせていただいたところでございます。ここでの議論でのたたき台という意味でございます。
 案の1と案の2というものは、これは指定をするということを前提の議論でございますけれども、案の1は、今後やはり必要な機器というものが市場に投入されれば、必要なものは指定していくべきであるという案でございます。
 案の2というものは、この後の抜本的な見直しにも連動するわけでございますけれども、制度に若干問題があって見直しをするということがあるのであれば、やはり現在の指定されている機器や記録媒体に取って代わるようなものがあれば、やはり実情の変化に対応するものとして、そういうものは追加すべきであろうという考え方でございます。
 これに対しまして3でございますが、制度の問題を補償金制度は抱えているので追加指定は行うべきではないというものでございます。
 4番につきましては、これは若干先送り的なものになってしまうわけでございますが、抜本的な見直しというものを今後図っていく必要がある、その中でこの指定につきましても検討すべきということでございます。
 なお、案の1と案の2は指定をするということが前提であるわけでございますが、もし仮にこの案をとった場合には、以下の2点のところが検討課題として出てくるものと考えられます。
 まず、1つが内蔵型の中には汎用的な使い方ができるものというものもある。そういうことから、やはり汎用的なものであるのだったら指定すべきではないのではないかという議論でございます。
 確かに一部機種は写真その他のデータを保存できるというものもございますし、そういうものをセールスのポイントとして強調しているものもございます。しかしながら、全体としてみた場合には、音楽の録音を最大のセールスポイントとして販売され、購入されているものが概ね実態であろうかと思います。したがいまして、例えば主として音楽の録音に用いられるものというようなことを要件にすれば、指定の対象として差し支えないのではないかというふうに考えられる、という形でまとめさせていただきました。
 また、ハードディスク内蔵型録音機器等、これは著作権法が想定している機器であるかどうかということも問題になるわけでございます。これは30条2項が機器、それから記録媒体、これを分離して規定をしているわけでございます。そういうことからしますと、一体になっているものは現在のところは直接は読めるものではございません。ここを柔軟に解釈して指定できるのかどうかということでございますけれども、そういう法制的な問題でございますので、私ども事務方といたしましては、政府部内でもいろいろ調整をいたしまして、ここのところを検討したわけでございますけれども、やはり機器や媒体の指定というものは国民の権利・利益に関する事柄であるということからしますと、条文の解釈としてはやはり厳格に解釈する必要があろうということでございました。したがいまして、現在の条文で想定されていない内蔵型の指定のためには、それが指定に可能となるような法律上の手当てをした上で指定ということが必要になろう、というふうに考えるところでございます。
 以上が制度の指定について、ハードディスク内蔵型録音機器等の指定についてでございました。
 そして、次に私的録音録画についての抜本的な見直しということでございます。補償金制度が様々な問題を抱えているという御指摘に対応するということで、これを抜本的に見直す場合に、やはり私的録音録画全体のあり方、これを念頭に置いた上で、それを検討の中でこれを検討しなければならないかと考えられるわけでございます。
 そして、その際どういう検討をするかといいますと、やはり複製がどういうふうに行われているのか、配信事業が今後どういうふうに推移していくのか、消費者としてどういうふうなお立場で考えていらっしゃるのか、こういうことをやはり考えていくという必要があるのと、それから現在の補償金制度ありきということではなくて、縮小や廃止という場合には代替的な何かの措置、これはより優れたものである必要があろうかと思いますけれども、そうしたものの採用ということももちろん可能性といいますか、視野に入れなければならないというふうに考えます。
 なお、より優れた代替措置と申し上げましたけれども、この代替措置というのは複製に対する補償といいますか、そうしたような措置でございますので、私的録音録画により得られることのなかった、あるいは失われた権利者の利益をどういう形で担保するのか、そういうような損害が起こらないようにするにはどうしたらいいかという措置というふうに、理解をする必要があろうかと思います。
 それにはこの、もしこれは仮にでございますけれども、代替措置というものはどんなものであるべきかでございますけれども、これまでの委員の先生方の御発言等々まとめますと、以下のようなものになるのではないかという形で書かせていただきました。
 やはりDRM+契約というものが将来の姿ではないかという御意見がありましたので、やはりこのDRMと契約によりまして、私的複製行為というものが具体的にどのくらい行われているのかということを把握して、実際に複製を行う者、これが受益者になるかと思いますが、そうした者のみが複製の対価を支払うというイメージかと思います。
 また、二重徴収かどうかというような御議論もありましたので、やはり配信サービスの対価と複製の対価というものが明確にある程度整理をできる、消費者にとっても納得のいく価格の内容であるということが必要ではないかと思います。
 また、DRMの技術で具体的にどんな楽曲がコピーをされるか、され得るのかということが分かるわけでございますので、そうしたものに応じまして権利者に対価が分配できるシステムであることが必要であるかと思います。
 また、実際にDRM、あるいは新しいシステム導入というのが現実的なのかというような御議論もございました。そうした措置を導入するため、あるいは維持するためのコストというものが十分考慮されなければならないかと思います。そうしたようなコストが全体としてそれほど大きくないものであることが必要かと思いますし、またそのコストの負担が消費者を含む社会全体にとってどこが負担するのか、公平であるということも重要であろうかと思います。
 こうしたようなものが代替措置としてはこれまでの御議論を延長していくとあるのではないかと思うわけでございますけれども、そうしたものも踏まえた上で抜本的な見直しというものが図られるのではないか、というふうに思われるわけでございます。
 そして、あと今後対応すべき点としては、現在の制度上の運用の改善というものがございます。返還制度を実効的なものにする、あるいは消費者への理解に努める、あるいは共通目的事業の理念の見直し等々でございます。こうした事柄の検討が必要になってくるのではないかと思うわけでございます。
 以上、大変長くなりまして誠に申し訳ございませんでしたが、この論点整理のペーパーにつきまして御説明をさせていただきました。よろしく御検討をお願いいたします。

(中山主査) はい、ありがとうございました。それでは、早速意見の交換に移りたいと思います。御意見あるいは御質問のある方は遠慮なくお願いいたします。はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 資料4−2で経済的な影響の御説明がありましたけれども、内容が納得できませんので、その件について意見を申し述べます。
 携帯音楽プレーヤーについてですが、主な音源を考えると3種類あります。まず、第1は買ってきた音楽CDであります。資料でいいますと、資料4−1の8ページの真ん中辺、1234とありますが、多分2が対応するのだと思います。CDを買ってきてデジタルの録音をする。その録音先がiPodなどの携帯音楽プレーヤーになります。
 ところで、そこでコピーが、このくらい行われているので、掛け算して何百億円という御説明がありましたけれども、それでは携帯音楽プレーヤーがなかったら、もう1枚余計に売れたのでしょうか。例えば、何か音楽を買ってきたとして、携帯音楽プレーヤーにコピーして聴く。では携帯音楽プレーヤーがなかったら、もう1枚買うのでしょうか。同じものを買うバカはないですよね。携帯音楽プレーヤーがなかったらどうなるかというと、電車で聴いたりジョギングしながら聴くという音楽の利用の仕方ができなくなるだけなのです。だから、新たにCDが売れるわけではないと思います。
 したがって、権利者に経済的ダメージを与えているという理由が分かりません。
 2番目の音源がレンタルCDです。今のところの下の3です。他国では見られないレンタルCDからの複製の実態がある。複製の実態はあるのです。レンタル制度を決める時に、個人はレンタルしたらそれを複製する、そういうことを承知の上で議論して決めたはずです。そのためにレンタル制度で貸与権の使用料というのを決めて、複製することを前提にして制度を作って、料金も作っているのです。
 参考までにいいますと、日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合、CDVJというところがありまして、前から本件について意見を言っていますが、CDVJによりますと、各権利者はユーザー及びレンタル店の双方からそのコピーに関する補償金を受け取っていることになります、という話が出ております。これに関連しては国会でも議論されているはずであります。
 したがって、資料4−1の7ページの下ですが、下から2行目のところ、「CDの購入又はレンタルについてはそもそも二重徴収の問題は生じていない」と書いてありますが、これは誤りだと思います。現行の制度でいくと、明らかに二重取りである、二重徴収であるというふうに私は考えております。つまり、貸与権の使用料を取った上で、さらに複製の私的録音録画の補償金を取るということでありますので、二重徴収ということになります。
 第3番目の音源はオンラインミュージックストアから買う、ダウンロードで音楽を買う点であります。これは今までも議論されましたように、資料でいいますと4−1の8ページの一番上に反論がありまして、二重徴収であるというふうにいっています。2行目から3行目にかけてですが、「配信サービスによっては、消費者に一定の限度複製が認められている場合がある」と書いてありますが、パソコン経由で購入するものは、すべて携帯音楽プレーヤーにコピーすることを前提にしていると理解しております。
 ただ、これからは携帯電話が出てきますので、携帯電話の場合には若干そうでないケースも出てくるのかもしれません。それは将来の話だといたしまして、現在、この審議会で話題になっているiPodなどの携帯音楽プレーヤーなどについていいますと、すべてのケースで携帯音楽プレーヤーにコピーすることを前提としてできております。iPod、アップルさんも3年も前からアメリカでやっていて、iPodに音楽をコピーして聴いてくださいと、それをセールストークにしてやってきたのです。どこだってみんなそういうふうにやっているじゃないですか。
 ですから、権利者も当然そのことを承知の上で交渉して、料率を決めてやっているはずだと私は思っております。したがって、そこはもう複製するという前提で料金とか配分率の議論がされているはずであります。
 したがって、その3つの音源のいずれをとっても、だから経済的利益、影響を権利者に与えているということにはならないというふうに、私は考えております。
 したがって、資料4−1の9ページの中ほど、2の2つ目の黒丸の2行目のところに、「より優れた代替措置(私的録音録画により失われる権利者の利益の補償等)」と書いてあるのですが、ここで「失われる権利者の利益」というのは何か。どういうケースにどの程度権利が失われて、経済的利益が失われているのかという説明が、私はないと思っています。したがって、補償すべき失われた利益はないというのが、私の意見であります。

(中山主査) はい、ありがとうございます。手短にお願いします。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 権利者の提出いたしました経済的な影響について、これが実際の被害と違うのではないかという御指摘について、簡単に申し上げます。
 論点整理、資料4−1の7ページを御覧いただきたいのですが、そこの【1】の(1)、現在の補償金制度が抱える問題点というところの2ポツのところでございますが、「汎用的な複製に用いられる機器(パソコン)や記録媒体は私的録音録画に用いられる実態があるが、仮に指定すると音楽録音等に使用しない者にも負担を強いることになり、指定は困難」、この後括弧で(しかし、指定されないことにより、現実に行われている多くの複製が捕捉されない結果となっている)ということが指摘してございますが、要は私的録音の実態で先般権利者が提出いたしましたように、約50パーセントを超える私的録音がパソコンで行われている実態の中で、パソコンというのは制度上の問題から補償金の対象に指定をされてこなかったわけです。
 即ち、何を申し上げたいかといいますと、私的録音に使用されているか否かということと、補償金の対象になるということはリンクしていない制度の中で、対象機器というのが決まってきております。そのことに関する問題提起は、権利者側からも制度上の問題として何回も提起をしてきておりますが、現在、このiPod等ハードディスク内蔵型録音機器等を指定していただきたいということの最大の理由は、MDからハードディスク内蔵型録音機器等に使用実態が遷移しつつある中で、それらを指定しないと補償金の金額が数年後にゼロになるというような状況の中で、この利害調整を本来のファンクションとしておりますこの制度が機能してこなくなるということを理由に、この指定をお願いしているわけでございます。
 したがいまして、今回の権利者が提出しました経済的な影響という資料というものは、iPodによる逸失利益を算定したものではございません。iPodが指定されなかった場合に、著作権法30条1項の適用がなくなった状況の中で録音使用料がいかほどになるのかということを算定したものでございまして、そこは逸失利益を正確に表現していないという御批判は当たっておりません。

(中山主査) はい、では、山地委員、どうぞ。

(山地委員) 私の疑問にお答えいただいているとは思いません。つまり、MDにしろ、iPodにしろ、それがなかったら買うのですかと。同じ音楽CDをもう1枚、コンシューマーは買ってくれるのでしょうか。それが疑問なのです。それはMDにしろ、iPodにしろ、同じことだと思っております。

(中山主査) では、山本委員、どうぞ。

(山本委員) 何点かコメントがあるのですが、まず第1点は今の山地委員から御指摘のありました、こういうものに利用した場合にCDの販売機会が喪失することはない、だから権利者にとって損失はないのだというような御意見だと思うのですが、その点についてちょっと違うのではないのかな。
 権利者の側は複製する権利があるからといって、それをCDでだけ販売するという権利を持っているわけではなくて、その音源だったら音源を利用すること、鑑賞することに対して、鑑賞するために複製する権利を持っているわけですから、CDというのはそれをユーザーに伝えるための媒体でしかない。ですから、CDの販売機会が減らなくても、そのCDを媒介にしてであろうと、他の方法であろうと、複製が伝達された音源が他の媒体に複製されるということに対してそもそも権利者は権利を持っているわけで、そこでの許諾権限、許諾に対する利益は侵害されているわけですから、そこでの損失はあるということになると思います。
 つまり、CDの販売機会が減っていないから権利者の損失はないという議論にはならないと思います。というのが第1点。
 それから、この論点整理について気がついたことを申し上げさせていただきますが、6ページ目の一番下のところに、補償金制度の認知度の議論がありまして、これはいろいろな方から認知度が低いから問題なのだという御指摘があって整理していただいているのだと思うのですが、これについての私の意見を一言言わせていただきますと、認知度が高いか低いかというのは根本的には関係ないのではないのかと思います。例えば我々はスーパーでキャベツを100円で買う時に、その中の原価の構成で運送費が30円あるとか40円あるとか、その原価構成が何であるのかということを知っておく必要は別にないわけで、知っておかなければ原価構成がアンフェアだとか、そういう議論にはならないわけです。
 ですから、この問題は認知度ではなく、そういう補償金を徴収することに正当性があるかどうかだけの問題であって、認知度は関係ないのではないかというふうに思っております。
 第3点目ですが、8ページのところで真ん中より少し上のところですが、「わが国の保護の現状は、以下のとおりであり、現在の補償金制度が一定の機能を果たしていることによって、他の先進国に比して保護が不十分とのそしりを受けずにすんでいる」。間違いはないとは思いますが、コメントをさせていただきますと、他の先進国といった場合でも、少なくともこういうハードディスクタイプであるとか、フラッシュメモリータイプの問題については、その6ページの表にあるように、先進諸国の代表でありますイギリスやアメリカ、あるいは先ほどお話がありましたカナダは入っていない。入っているのはフランスやドイツという別の先進国だけであって、こういう補償金制度を維持することが先進国一般にならったことになるということにはならない。あくまでも大陸諸国の一部の問題だという、そういう認識は必要なのではないのかというふうに思います。以上です。

(中山主査) はい、どうぞ、松田委員。

(松田委員) まだよく整理されていないのですけれども、山地委員が言われたCD市場における影響がないのではないかという御指摘についてです。iPod、MDが売れたとしても、そのCDの売上げは減少しないのではないかという問題提起ですね。私も結論的には、その部分だけ見たら売上げは減少しないのではないかと思います。でも、その部分だけとらえていいのでしょうかという問題提起を私はしたいのです。
 音楽はメディアがない時代でも作曲され、歌われ、演奏されていました。演奏しかない部分のところでは、それはそのところで対価を取得せざるを得なかった。むしろ、知的財産権という保護の仕方ではなくて、やはりパトロンがそれを保護するという方法しか実はなかった。ところが、音楽が市場に流れるようになった。それは何かといったら、はっきり言ったらレコードではないでしょうか。次は放送ではないでしょうか。
 その時の議論として、レコードが販売されたらば演奏の機会は減らないでしょう、ないしは音楽の今までの市場は変わらないでしょうと言われたって、これは困りますよね。山本委員が言われたのは、結局は音楽が使われる機会の部分がどうなのか、そこを考えなければいけないのではないかというふうに、私はその点について本当に賛同いたします。
 結局、音楽が最終的に利用される、利用というのはちょっと著作権法の概念ですからあれですけれども、情報が伝達されるというのは、結局自然人が聞くことでしょう。どういう立場であっても聴くことでしょう。その聴く機会は確かに新しいメディアや技術によって拡大してきたと思います。その新しいメディアが拡大してきた時に、その部分で新しい機会を音楽家も得たのだと思います。そこを捕捉していくという作業を、長い歴史の間に知的財産権として音楽を保護する時に適宜やってきたのだろうと私は思います。
 今度がその機会なのかどうかということを、やはり考えてあげなければいけないのではないかと思います。私はiPodを購入した人が、自らのCDをそこに入れる、CDの音源を入れる。そのことによってどういう機会が増えたかというと、家庭の中でオーディオ機器で聴く以外に持ち歩いてどこでも音楽が聞けるという、自然人が音楽に接する機会を拡大したのだと思います。それはiPod、MD、ウォークマンの大きな文化に対する寄与だと思います。
 だからといって、その機会が増えたからといってCDが売れなくなるわけではないでしょうという議論は、これは長い歴史を見た時に議論としてはおかしいのではないかというふうに思います。問題提起だけさせていただきます。

(中山主査) はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 山本委員のおっしゃった第1点目の点と、それから松田委員が今おっしゃったことについて意見を申し述べますが、現行法の30条がなかったとすれば、まさにそういう議論はあり得ると思います。つまり、この30条がないわけですから、コピー、複製することについて許諾権が働くので、それに対して権利者に補償しなければいけないのではないかということは、それは確かです。
 しかし、現状は30条があるという前提で、この議論はされているわけです。だから、松田さんがおっしゃったのは、立法の議論をしているのだから30条の廃止を含めて議論をしようではないかという御趣旨であれば、それは理屈としてはよく分かります。しかし、私が申し上げたのは、4−2で権利者が言われている経済的な影響というのは、現行30条があるという、その上で我々は議論してきて、そうだとするとおかしいのではないですかということを私は申し上げています。

(中山主査) はい、前田委員。

(前田委員) 私の考えでは、もしiPodの普及によってCDの売上げに直接的な影響があるのだったら、それはスリー・ステップ・テストで言えば、通常の利用を妨げているのだと思います。補償金の問題というのは、スリー・ステップ・テストでいえば、通常の利用を妨げないという第2ステップはクリアした、でも、それでも権利者の正当な利益を不当に害する場合がある。発生する複製の量によっては、権利者の正当な利益を害する場合があって、その場合は補償金で埋め合わせをして、スリー・ステップ・テストの第3段階から逸脱している部分を治癒する必要があるというのが、スリー・ステップ・テストの考え方だと思います。
 したがって、CDの売上げに直接的な影響があるということになるのであれば、そもそもそれは通常の利用を妨げているのであって、それは本来おかしい。もしCDの売上げに直接影響するような、その売上げを直接妨げるような複製も30条の中で許されているのだとすれば、むしろ30条の見直しが必要だということになると思う。補償金制度というのは通常の利用を妨げないという範囲での利害の調整であると思います。
 したがって、私は山本委員がおっしゃったように、CDの売上げが減少しているかどうかうということではなくて、もし、著作物の享受が行われているのだとすれば、その著作物を創作してこの世に生み出して享受できるようにした人に対して、何らかの埋め合わせ措置が必要なのではないか、それが補償金の問題なのではないかと思います。

(中山主査) はい、どうぞ、松田委員。

(松田委員) 私の意見に対して30条の指摘がありましたが、私も30条についてはむしろ反論があるだろうと思います。30条2項は、どういう経済的場面でこういう要請が生まれたのでしょうか。少し時代を遡ってみましょう。
 ラジオ放送ができた時に、ラジオ放送にやはり何らかの権利を、著作者の権利を与えて、放送に対する何らかの対価を取得させる制度が必要になりました。
 今度は一般の個々の国民が、まったくレコード会社が作る音源と同じものを小型のメディアに入れて、四六時中持って歩けるという市場ができたわけです。家庭の中でラジオのスイッチをひねる時の市場が生まれたのと同じように、新しい市場が生まれたのです。その時にどういう法制をとるかというのはいろいろな法制の仕方があるかもしれませんけれども、日本法は30条2項を設けて、そして補償金制度を設けて、そこに1つの音楽市場の人が接する場面で、これがある意味では音楽の消費だと思います、最終的な。その消費の場面が広がった。そのところの蛇口を設けた。これが私的録音補償金制度だと私は考えます。
 だから、30条があるからというのは、実は私は2項に関する限りは山地委員の議論は当たらないと思っております。

(中山主査) 他に御意見ございますでしょうか。はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 今日配っていただきました資料4−1の論点整理の8ページ以降について、私の意見を申し上げます。
 今後の補償金のあり方について、非常に重要な事項が指摘されています。9ページの四角の2つ目で、内蔵型を指定するためには法改正が必要だという。これは法制的な詰めを経た断言的な書き方になってますので、これは非常に大きな要件、我々の検討にとって与件と考えられます。これまでいろいろな機会に申し上げてまいりましたとおり、現行制度にはいろいろ問題があります。DRMも今日現在、いまだ「イメージ」にすぎないのか、現に機能しているのかという認識には相違があり、もう少し様子を見る必要があるだろうと思っております。今の段階で一度法律に書いてしまうと事実上動かしがたいものになると思います。法律事項という条件があるならば、今までの意見がなおさら一層私は強くなるという気がしております。
 8ページの基本的な考え方については、基本的に同意というか、賛成したいと思います。国際条約について、確かに抽象的な要件が多くて、詰めようと思ってもなかなか詰めがたい点はありますけれども、一応の検討はしておく必要が当然あると思います。
 2ポツもそのとおりで、委員の中にはもしかしますとMDに関する現行の制度もすべて全廃するべきだという意見もあり得るかもしれませんけれども、私はそれを採るつもりはなくて、この2ポツの指摘に賛成したいと思います。
 (2)の今後の施策につきましては、34というのもなかなか微妙な感じはいたしますが、あえていえば案の4に賛成したいと思います。
 それから2の抜本的な見直しについてですが、これも何度か申し上げましたけれども、これが著作権者の利益還元の代替的なあり方だということを法律に書いて固定するということ自体が、もう時代遅れなのではないか。マーケットに委ねるべきだろうというのが私の意見でして、無理にこの代替措置なるものを法定する、税金で填補するならまた全然別な話になりますけれども、こうマーケットはあるべきだということを法律に書くというのは賛成しがたい気がいたしますので、動向を見守るというような書き方でよろしいのではないかと思っております。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございます。はい、どうぞ、中村委員。

(中村委員) 今、小泉委員の御指摘なさった9ページの2つ目の四角のところを、ちょっと私も唐突な印象がしておりまして、ハードディスク内蔵型録音機器等を指定する場合には法改正が必要であるというところの理由をもう少しお教えいただければと思います。
 私の問題意識は、こうした政令に委任されている事項の意思決定のメカニズムといいますか。誰が決定権者で責任があるのかというところをずっとこだわっておりまして、仮にこれを指定しようという意思が政府にあったとして、政令では不可能だということをおっしゃっているのか。つまり、立法すれば明確だということはよく分かるのですが、政府としては無理だということであれば、そのテクニカルな理由をもう少しお教えいただきたいということと、あるいは政府としてこれは不適当だということでおっしゃっているのであれば、行政府として指定すべきだと思っても、その判断を立法府に委ねるというような姿勢なのか、その辺りをお聞かせいただければと思います。

(甲野著作権課長) 法改正が必要となるということの論拠でございますけれども、これは条文を厳格に読むということから来るものでございます。著作権法の30条2項でございますけれども、機器と媒体を分離して規定をしているところでございます。お手元に法令集を置いておりますので、誠に恐縮ながら条文を御覧になっていただきいたいのですけれども、35ページのところでございます。
 35ページのところに30条の2項がございます。ここのところを読みますと、「私的使用を目的として」とありますけれども、その後、デジタル方式云々とありまして、「機器」というふうにございます。機器の後に括弧が非常に長く続いていて、次の次の行まであるのですけれども、「機器であって政令で定めるものにより」というふうにありまして、そしてまたいろいろ云々云々とありまして、「記録媒体であって政令で定めるものに録音録画を行う者は補償金を支払うべき」ということでありまして、政令で定められた機器で政令で定められた媒体に録音録画する者が払うという構造になっておりまして、機器とそれから記録媒体、これが分離して書かれているところでございます。
 したがいまして、これに基づいて政令の方も、機器はこうであって媒体はこうであるという書き方をしているのが、現在の指定の方式でございます。これは結局、法律の方で機器とそれから媒体というのは分けて書いてあるということでございますので、一体になっているようなもの、機器プラス媒体というものは想定をされていないということになるわけでございます。
 したがいまして、柔軟に解釈をして、例えば媒体がついているような機器であるというような書き方でこの内蔵型をとらえるとか、あるいは再生するような装置、再生といいますか、録音するような装置がある媒体としてとらえるかというような形で、無理やりそれを政令で指定するというようなことも、もしかしたらあり得るのかもしれませんけれども、ただそういうふうに柔軟に解釈するということにつきましては、これが補償金の対象になるということになります。国民の利益あるいはそうしたものに関連するということになりますので、そういうふうな柔軟な解釈をして権利義務に関するような政令指定をするのは、これは適切ではないという、そういう考え方でございます。
 したがいまして、ここのところで法律の規定の改正が必要になるということでございます。そして、これは法律の規定が改正になるという、必要になるということを述べたまででございまして、だから行政府としてどうこうとか、そういうことを特にここでは表示をしているものではございません。

(中山主査) よろしいですか。イメージとしては、ごく大雑把にいうと、もう1条か1項か設けて、ハードディスク内蔵型録音機器等も同様であると規定して、政令でiPod等についての細かい技術的な指定を行うと、こういうことになるわけですか。

(甲野著作権課長) イメージはよく分かりませんが、それも1つの方策かとは思いますけれども。

(中山主査) 他に何か御意見、はい、どうぞ、浜野委員。

(浜野委員) ユーザーの点から発言したいのですけれども、国際レコード産業連盟(IFPI)が、毎年出している「海賊版レポート(Piracy Report)」を見ると、多くの国で出回っている録音音楽の大半が海賊版で占められているのに、アジアでは日本とシンガポールだけが海賊版率が10パーセント以下報告されています。
 レコード協会などの関係団体の御努力の成果だと思うのですが、日本のユーザーは世界的に見れば、かなりフェアなかたちで音楽を享受したのではないかと思います。録音音楽のデータをそのまま音楽配信に適用できないかもしれませんが、そのデータを援用すれば、相対的には正直なユーザーではないかと思うのです。ユーザー側からすると補償金制度は、そういった正直なユーザーが馬鹿をみる制度になっているのではないかという疑念は拭いきれないのです。
 この制度は補償金制度という短縮名称で言われてしまって、何のための誰の補償金だというのがユーザーにとって分からないために、理解が進んでいないと思います。もしこの制度を存続するとしても、私的録音録画とか私的複製対価システムとか対価制度とか、私的録画をした時に払うべきお金を取っているということを明確にしたら、返還要求のシステムも生きてきて、返還要求の意識も高まると思います。補償金と、短縮名称で語られてしまうことに問題があるのではないかという気がします。以上です。

(中山主査) はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 私も補償という言葉を使うことについては、浜野委員と同じでありまして、問題があるというふうに思っています。特に松田先生がおっしゃったことも考え方、哲学としては理解できるのですけれども、そういう議論があるのだとすれば、4−2のような議論とはまったく違う議論でありまして、経済的影響ですね。考え方がもう違うわけなのですよ。ですから、補償というような問題ではなくて、制度としてこういうシステムにしたらどうですかと、そういう何か哲学的な考えを打ち出すのは、それはそれで意味があると思います。

(中山主査) 他に御意見ございますでしょうか。はい、どうぞ、加藤委員。

(加藤委員) 私はこの法制小委員会の5回目か6回目のところでも、30条の2項については質問させていただいたかと思います。法律については素人でございますけれども、やはり機器と媒体をそれぞれ別に規定している現行法のところで、今問題になっている内蔵型への課金についてどう読み解くのかということについては質問をさせていただきましたけれども、やっぱり今でも納得ができません。その法律があるにもかかわらずですね。それが一つでございます。
 それから、論点整理の9ページ目の2抜本的な見直しの中で、2つ目の黒ポツですが、「現行補償金制度の縮小・廃止と、より優れた代替措置」というふうに書かれておりますが、私の受ける印象とすれば、やっぱり代替措置というのは現在の私的録音録画補償金制度を維持継続してしまうような、そういうイメージをこの代替措置という言葉から受け取ります、という印象を持っております。
 それから、前後して申し訳ございません。7ページですけれども、山地委員からも冒頭お話がございました二重徴収の問題について、それぞれ権利者、メーカー、消費者、それぞれの立場、視点から見ると、やはりいろいろな考え方があるのだろうと思います。私はこの二重徴収の問題につきましては、先般、著作権分科会でも別な方から二重徴収の問題の御指摘がございましたけれども、私はかねてから考えておりますのは、消費者の視点から見ますと、パソコンを経由して内蔵型機器までダウンロードするという前提で消費者は配信事業者にお金を払っているつもりです。配信事業者もそのつもりで配信をしてらっしゃるはずです。
 消費者はお金をすべて支払ってダウンロードしていて、さらに補償金が課金されるということになれば、消費者の立場からすれば、どうしてもそこは二重課金というふうに受け止めざるを得ないわけでございます。権利者がパソコンまでしか配信事業者に許諾していないとおっしゃるならば、その両者の契約関係、配信事業者と権利者の間での契約関係として、私はその問題は解決すべき問題であるというふうに理解しています。
 配信事業者が内蔵型機器までを許諾の対象として権利者と契約すれば、私的録音にはならないのかなというふうにも考えております。だから、私的な契約の問題を法律による課金で処理しようという、こういう議論には私はとても抵抗感を覚えます。
 それから最後でございますが、8ページ目の(2)今後の具体的な施策の方向(案)についてでございますが、1の「内蔵型」の指定について、私はこの案1と案2の違いがあまりよく分かりません。私はこの案1から案4までの間でどれを支持するかともし問われれば、案3もしくは案4を支持したいと思います。
 今後のことでございますが、万が一案の1または案の2でまとまりそうな場合には、問題を抱える現行制度に追加指定をするということであるならば、追加のための法律改正の際に現行制度をいつまでに廃止するということをきちんと明記していただきたいというふうに考えております。以上でございます。

(中山主査) 他に何か。どうぞ、大渕委員。

(大渕委員) 意見というのではなくて、資料についての事務局へのお願いです。資料4−1の6ページのところに諸外国の状況というので資料をつけていただいているのですけれども、先ほどもこの補償金の関係は私的複製とも絡んでいるのではないかという話がありましたが、どこの国まで対象にするかは別として、私的複製が各国でどういう制度になっているのかというような点を加えていただくと、総合的に把握がしやすくなると思います。また、これも先ほど出ていた点ですが、私的録音録画補償金といっても多分各国ごとに内容なども違い得るのではないかと思いますので、お忙しいところ御負担をおかけするつもりはないのですが、そもそもどの程度わが国と違っているのかという点についても一覧性があるような資料を作っていただくとよろしいのではないかと思います。

(中山主査) はい。それはもしできましたらお願いいたします。他に、はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 1点質問なのですけれども、資料4―1の9ページの下のところ、「現在の制度の運用上の改善」とありまして、その一番最初に「『返還制度』を実効あるものにする」とあります。私もこれができると大変素晴らしいなと思っているのですが、感覚的には極めて難しいそうだと思っております。何か例えばこんなイメージの案があり得るかなというようなことでもございましたら、御紹介いただければと思います。

(甲野著作権課長) 実はイメージが必ずしもあるわけではございませんでして、やはり問題点として返還制度が実効的でないということでしたので、運用上の改善として、これは課題として挙げなければいけないと思ったところでございます。少額のものでございますので、例えば支払い部分につきましては、支払いだけ取り出せば、例えばネット上のやりとりですとか、そういうことはあるのかもしれませんけれども、ただ使っていないという証拠を集めるという意味で、そこのところにコストがかかってしまうので、そういうわけにもいかないかなと思っておりまして、イメージはまだこれはというものはございません。

(中山主査) 他に何か。はい、どうぞ、茶園委員。

(茶園委員) 先ほど山地委員がおっしゃったことなのですけれども、内蔵型をどのように取り扱うかというのは、一方では配信サービスがあって、そこでいわばもう十分に権利者は利益を得られるのではないかということで、二重徴収ということが問題にされていると思うのですけれども。ここでもありますように、配信サービスはパソコンまでだ、だからそれ以後の複製は違うのだというのは、それは形式的にはそうだということができるでしょうが、結局のところ、先ほど山地委員がおっしゃったように、配信サービスのところで複製のことまで考えてちゃんと取得するようにすればいいのではないかという反論が成り立ち得ると思うのですね。
 さらに山地委員がおっしゃったように、貸与権についても、普通CDを借りて、それを1回なり聞いて、それで返す人は普通いなくて、コピーをする。権利者も当然それを前提にして貸与を許諾している。ですから、貸与権の料金には複製が行われるということを前提にして料金設定がされているのではないかと私は思うのですけれども、それが現在のところされていないのか、されていないのだとしたら、それはなぜなのか。あるいはされていないのだったら、なぜできないのか。
 例えば分かりませんけれども、1つはCDで例えば今までのようなMDで聴くのと、あるいはiPodのようなもので聴くのと、かなり実は権利者側が考えている料金というのは実は違うのだけれども、利用者がどうするか区別できないから、だから低い方の価格で決められていて、高い方でも取りたいのだけれども取れないという、そういう事情があるのか。
 私は、もしそういう配信サービスなり、あるいは貸与権のところで、私的複製のところについても、それを見据えた上でちゃんと料金が取れるのであれば、その部分に関しては私的複製について補償金を取る必要性もなくなるのではないかと思うのですけれども、そういうことが現実にされていないのか。されていなければ、現実にできないものなのかというのをお聞かせいただきたいと思います。

(中山主査) はい、どうぞ。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) JASRAC(ジャスラック)の野方と申します。実際のところ、貸レコードの利用者や配信事業者の利用者と権利者との間の許諾契約では、貸レコードの事業者の方には貸与権に基づく、つまりレンタルをする行為についての対価として使用料をいただいておりますし、音楽配信に関しては、これも従前から申し上げておりますとおり、ダウンロードした受信先の機器への複製までを含めて、そこまでの利用許諾の対価として使用料をいただいております。
 音楽配信とJASRAC(ジャスラック)の使用料規程の関係で考えていただきますと、パソコンにダウンロードされる場合、権利者はハードディスク内蔵型録音機器等のような外部への複製まで許諾しているというお話が先ほどから出ておりますが、携帯電話のように複製が許されていない受信装置に同じ音楽配信でダウンロードされる場合も、JASRAC(ジャスラック)の使用料規程としては同じ規程を適用していて、同じ額、即ち音楽配信の価格に対する7.7パーセントの使用料をいただいているという関係があることからもお分かりいただけるように、これまでの権利者と利用者の許諾契約においては、私的複製というものまでが含めて考えられていることはございません。
 レンタルに関しては、通常レンタルしたCDを録音する先というのがMDであって、そこは補償金でカバーされる、つまり私的複製が補償金でカバーされているという実態がございましたから、これと同様、音楽配信の複製先については、MDと同じ位置付けに当たるので補償金で解決すべきということを、こちらは主張しているのだ、という理解をしていただければと思います。

(中山主査) よろしいですか。他に何かございましたら。はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) 論点整理の9ページの代替措置のとる場合のイメージの、そのイメージの内容についてなのですが、ここでお書きいただいているものを拝見いたしますと、私的複製行為を個別具体的に把握できるということを前提とした代替措置のイメージだと思うのですが、私的複製行為を個別具体的に1件1件把握できるという状態にDRMか進展していったとすれば、複製行為ができないように技術的に制限するのか、あるいは契約に基づいて1回の複製に対していくら下さいという個別の許諾契約が成立するのか、いずれかになって、現状のようなサーラとかサーブのような、こういう団体が存在してお金を徴収するというイメージにはつながらないように思うのです。
 ここで言っている代替措置のイメージというのが、個別具体的な私的複製行為、1回1回の行為を把握できるのだけれども、何らかの団体が存在して、そこでお金を徴収するということのイメージで書いておられるとすると、少し分かりにくいという気がいたしました。

(甲野著作権課長) すみません。この代替措置のとる場合のイメージでございますけれども、あくまでもイメージとして書かせていただいておりまして、これまで御指摘のあったようなDRMと契約でやるべきではないか、あるいはDRMでここの把握は可能であろうと、そういうような意見がございましたので、そういうようなイメージというものとしてここに挙げさせていただきました。また、逆にコストの問題もございましたので、そういうものはコストが非常に大きな負担になってはならないということを書きまして、もしかするとなかなかこれ全部の解を満たすようなものというものはすぐにはできないのかもしれませんけれども、そういうものを目指すのかなということでございまして、その前のステップのちょっと大まかな部分というのも、もしかしたらあるのかもしれません。
 ただ、それはもし今の補償金制度と同じほどの大まかなものでありましたら、それは補償金制度と同じではないかということになりますので、そういうものをやるということは、恐らく代替措置としてとるべきではないのだろうとは思いますけれども、そうした漠然としたものを考えてここに書かせていただいたという趣旨でございます。

(中山主査) この文章から、間に入る団体があるとかないとかということは読み取れないわけですね。

(甲野著作権課長) そこのところは特にニュートラルといいますか、そういうことでございます。

(中山主査) 他に何かありませんでしょうか。私から質問させていただきたいのですけれども、MD等が売上げが減っているというのは事実だし、それに伴ってサーラの入ってくる補償金も減っているわけですけれども、iPod等の場合は配信業者がいるわけで、そこから権利者側に何らかの金が流れているわけですね。したがいまして、総計上、プラスマイナスよく分かりませんけれども、仮にサーラが困っても、権利者としては十分入っているという状態があれば問題がないわけですけれども、この点はどうなのでしょうか。
 つまり、仮にサーラの予算だけを見ると減っていて、だんだん死に体のようになっていくかもしれないけれども、権利者としては困らないという状態があれば、著作権法としては問題ないわけですね。データを見ていると、どうもサーラの収入とか、そればかり減っているとこういうふうに見えるのですけれども、著作権システム全体としては本当に歪んでいるのかどうかという点がこのデータからでは読み取れないのではないですかという、そういう質問なのですけれども。それはどなたにお伺いすればよろしいか。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) データがないのでお答えできないというのが正直なところなのですが、実際その配信事業は配信事業で、例えばその楽曲の原盤権を持っている者が、それを何らかのライセンスをしてダウンロードさせるというようなビジネススキームの中で、それの権利者としてあがっているのが必ずしもいわゆる私的録音補償金の権利者となっている人すべてではないという事情があります。
 したがって、例えばそれは主に契約上の問題なのですが、要するに原盤権としていま集約的に持っている権利を許諾するという形で配信が行われていて、それはそれで文句を言っている人もいるし、いろいろなまだこれからのビジネスですので、整備がされていく過程で公平なシェアというものが出てくるかと思うのですが、現在のところではこの私的録音補償金制度に代替し得るものとして、そこら辺のビジネスフローがある形にはなっていないと思います。具体的な資料がないので観念的なお答えになってしまうのですが。

(中山主査) はい、松田委員、どうぞ。

(松田委員) 今日配付されました資料の4−2ですね。それの11ページを見ますと、その報告書を作成された段階におけるハードディスク内蔵型録音機器等への録音した曲の入手先の比較なのですね。これは私、大変興味があるのですけれども、現在のところ、音楽配信サービスからのダウンロードは6.5パーセントなのです。この6.5パーセントが出ているとすれば、そこでダウンロードされたところの対価が、音楽各権利者の方にどれくらいいったかというのは、ある程度想定できるのではないでしょうか。それがサーラに減少した金額との差を見ることはできるのではないかなと私、思うのです。
 少なくともこれを大雑把に見た限りにおいては、実はiPod等の内蔵型に録音される入手先というのは、圧倒的に自己CD、レンタルが多くて、それからある意味ではファイル交換なども含めますと、90パーセント以上が今までのMDの入手、MDに音源を入れる場合の入手先と変わらないのですね。多分、私はサーラに入った金額の減少部分は、この6.5パーセントではカバーできていないというふうに推測はできますけれども、ぜひそういうものを出してもらいたいと思います。そうするともっと説得力が出るのではないかと思います。

(中山主査) ただ、恐らくこれからこの6.5パーセントはだいぶ変わるでしょうね。今は激動の時代で、新しくビジネススタイルが起きたばかりですから。
 はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) 先ほどの中山主査からの御指摘と今の松田委員からのお話は、サーラに入ってくる収入の減少と、権利者が音楽配信から得る収入の増加が代替的なものであるという前提だと思うのですけれども、そうなのでしょうか。
 音楽配信から、あるいはレンタルCDからMDに複製されている場合を想定いたしますと、MDからの補償金収入減少と音楽配信からの得る収入が、こっちが減ればこっちが増えるというこの関係にはないのではないか。つまり、補償金が減少した分は音楽配信から得られているという関係にはならないのではないかと思うのですが。

(中山主査) はい、どうぞ。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 先ほど御説明いたしましたように、権利者が音楽配信の事業者に許諾をしている範囲は、音楽配信事業者がサーバーに送信可能化し、利用者に対して公衆送信し、その受信先、つまりダウンロードした装置で複製されるまでであり、その対価として著作物使用料をいただいております。そして議論になっている補償金は先ほども許諾契約上も含んでいないというお話をしておりますところですから、配信から得られる著作物使用料とそれが複製された時に発生する補償金とは比較対象にはならないのではないか、イコールにならないのではないかと思います。

(中山主査) 細かい点は別として、私が言いたいことは、著作権制度で最も大切なことは、要するに著作物を利用した人から権利者に金がうまく流れるという、そのシステムをどう構築するか、という点だということです。それが補償金という名前で取ろうが、何で取ろうがいいのですけれども、結果として著作権者がしかるべき対価を得るという、そういうシステムになっているかどうかということを問題にしたかったわけです。それが恐らく著作権法の問題で、それは補償金としようが何しようが、それは関係ないのだろうと思います。最終的にやはり著作権者がしかるべき利益を得るというシステムではないかと思ったものですから。
 では時間も迫っておりますので、手短にお願いします。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) そういう意味から申し上げますと、ちょっと極論になるのですが、この代償措置というふうなことが書いてありますよね。DRMと契約の融合で代償的な措置をとる。この代償措置というのは、必ずしもお金の手当てを意味していないと思うのですね。
 例えばの話、DRMを装着した専用機器があり、それでの録音ということを前提とした私的録音補償金制度があった中で、汎用機器でCDがコピーできるようなものを売り続けてきたのはメーカーなわけです。だから、汎用機器を通じたCDのコピーができなければ、補償金なんか一銭も必要なくなってくると思います。その汎用機器に関わるね。
 その汎用機器に関わる経済的な影響が問題であるからiPodに話が及んでいるのであって、代償的措置ということでちょっとここで突飛な発言をしますが、パソコンを通じた音楽録音はできなくしていただければ、それもまた代償的措置になるのではないかというふうに思います。

(河野電子情報技術産業協会著作権専門委員会副委員長) 電子情報技術産業協会の者でございます。先ほどJASRAC(ジャスラック)の方から使用料規定の考え方について御説明をいただきましたので、私ども端末、パソコンを介したオンライン配信サービス、あるいは携帯電話直接の音楽配信サービスの受けの端末を作っているメーカーの者としての理解を述べさせていただきたいと思います。
 パソコン経由の端末の場合も携帯電話の場合も、基本的に私どもはサービス事業者様が御指定くださる仕様に基づいて機器を設計しております。なので、そこについてはどちらについても許諾済み複製という点で何ら違いがありません。サービス事業者さんの意図に沿った形でしか配信コンテンツの利用はできませんし、また、お客様もそこまでの利用を前提として対価をお支払いくださっているものと考えております。
 それから、今日速報ベースということで資料4−2を実はこの会場で初めて拝見させていただいたので、この中身について発言させていただくことがちょっとできないのですけれども、その点で私ども協会としての意見というのは、この速報ではなく、実態調査に基づく試算と分析の本体の方をぜひ1度きちんと精査させていただいた後に、必要があれば意見を述べさせていただきたいと思っております。
 その前提に基づいて、一見しただけの私の完全な私見になってしまいますけれども、先ほどから問題になっているように、サービス事業者さんあるいはレンタル事業者さん等とお客様との間にある契約、そこで授受される対価、それと大もとである著作権管理団体の方とサービス事業者あるいはレンタル事業者との間の関係ですね。言い方を変えれば、サービスを受ける対価、コンテンツ利用の対価としてお客様が払ってくださっているものと、その中に含まれる複製権の許諾対価との関係がどうなっているのか。また、それと私的複製の関係について、かなりまだ御議論があるのではないかというふうに今日の意見を拝聴していて感じましたので、そこの整理をされた上で、今回お示しいただいている資料4−2の(2)のところの試算については、もう1度その数字を見直してみる必要があるのではないかというふうに感じております。
 また(1)のところでございますけれども、これはいみじくも30条1項の適用がない場合と書いておられますように、30条1項の位置付けが、1つでも複製ができたらそれは何らかの対価を支払う必要があるのだという前提であれば、ここにある数字は意味を持つ数字なのだと思います。そもそも30条1項の位置付けが何だったのかということを御議論いただいた上で、この(1)の方の数字についても改めて見させていただければというふうに考えております。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございました。だいぶ時間も迫ってきているというか、オーバーしてきましたけれども、何か最後に御意見ございましたら。はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 意見というよりも要望ですけれども、先ほどから主査はじめ諸先生から御意見出ておりますが、とりわけ3ページの1(1)、個人的複製をすべて把握して全部お金取った場合にこれだけ経済的影響を受けるというような、ちょっとありそうもない前提でできている資料という印象です。少なくとも課金のコストを加味していただくとか、「通常の利用」といえるのかどうかとか、もう少し御検討いただければと思います。
 もう1点目は、主査がおっしゃった配信サービスによる利益というものも、経済的影響というのが大きく括られるのであれば、含めるのがフェアなプレゼンテーションだと思います。以上です。

(中山主査) 他に何か御意見ございましたら。このJASRAC(ジャスラック)等の調査は、これはどこが調査をしたわけですか。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 野村総研です。

(中山主査) 野村総研ですね。はい、分かりました。他に何か御意見ございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは少し予定時間をオーバーいたしましたけれども、本日いただきました御意見を踏まえまして、次回以降、さらに議論をしていただきますように報告書(案)の検討を行っていきたいと思います。
 なお今後の予定といたしましては、次回は10月末または11月初旬に本委員会を開催いたしまして、現在実施しております意見募集の結果を報告するとともに、この報告書(案)の検討を行うということを予定しております。
 最後に事務局から、連絡事項がございましたらお願いいたします。

(白鳥著作権調査官) 本日も長時間、活発な御議論をどうもありがとうございました。第9回目となります次回の法制問題小委員会の日程につきましては、各委員の日程等を調整させていただいた上で改めてお知らせいたしますので、よろしく御承知おきいただきますようお願いします。

(中山主査) はい。それではこれをもちまして、文化審議会著作権分科会第8回法制問題小委員会を終了したいと思います。本日は長時間ありがとうございました。

(文化庁長官官房著作権課)

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ