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資料2−2

平成17年4月28日

私的録音録画補償金の見直しについて

社団法人日本音楽著作権協会
社団法人日本芸能実演家団体協議会
社団法人日本レコード協会
社団法人日本音楽事業者協会
社団法人音楽出版社協会
社団法人音楽制作者連盟
日本音楽作家団体協議会


 ハードディスク内蔵型録音機器の急速な普及に代表されるように、私的録音補償金制度が導入された平成4年当時と比較して格段に性能の高いデジタル録音機器・記録媒体が提供され、より大量の私的録音が行われる環境が生じている注釈1。一方、これらの私的録音に用いられるデジタル方式の録音機器・記録媒体の政令指定は、平成10年の録音用CD-R/RWの指定を最後に行われていない。我々音楽関係権利者7団体は、現状に即した私的録音補償金制度となるよう以下の点について見直すべきと考えている。
注釈1 ハードディスク内蔵型の場合、例えば「最大13,000曲記録できる」、「最大5,000曲保存」(何れもメーカー発表)などの特徴が宣伝に謳われており、従来のデジタル録音機器・記録媒体と比べて、格段に大量の私的録音が可能となっている。

1 ハードディスク内蔵型録音機器等を私的録音補償金の対象とすべきである。

  昨年来、ハードディスク内蔵型録音機器(例えば、iPodやネットワーク・ウォークマン等)やフラッシュメモリ内蔵型録音機器の普及が急速に進んでいる。これらの録音機器(添付資料1号(PDF:46KB)参照)は、以下の理由により、私的録音補償金の対象とすべき製品であり、早急に政令により指定すべきである。
 
注釈2 当該製品の市場規模について、日本経済新聞(4月10日版)では、「昨年200万台程度の国内販売は今年300万台を突破するのが確実。400万台を超える可能性もある。」と報道されている。また、電波新聞(4月8日版)では、「昨年は150〜200万台と見られている。今年はさらに大幅に需要が拡大。」「国内ポータブルMDの市場規模とされる250万台から300万台が一つの目安。『条件が揃えば400万台から450万台も届くと見ている』(NHJ宇多田浩取締役)とするなど上限の見えない大きな延びが期待される。」と報道されている。なお、平成15年度の特定機器全品目の出荷台数は348万台(私的録音補償金管理協会資料)。

  (1)補償金の対象とすべき理由
 著作権法第30条第2項は、デジタル方式の録音を行う機器であって政令で定めるもの(特定機器)により、当該機器によるデジタル録音に供される記録媒体であって政令で定めるもの(特定記録媒体)に録音を行う者に対して私的録音補償金の支払義務を定めている。そして、「特定機器」及び「特定記録媒体」の要件を以下のとおり定めている。

 
[特定機器]
デジタル方式の録音の機能を有する機器であること
放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有する機器でないこと
録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音機能を有する機器でないこと
 
[特定記録媒体]
特定機器によるデジタル方式の録音の用に供される記録媒体

 
1   当該製品は、「記録媒体」を「機器」の内部に備える製品である。
ハードディスク内蔵型の場合は内部のハードディスクの磁気円盤(記録媒体)の駆動装置及び音楽データの書込み回路等を備えており、またフラッシュメモリ内蔵型の場合は内部のメモリICチップ(記録媒体)への音楽データ書込み回路等を備えている。従って、本体が指定されるべき機器にあたり、同一筐体内のハードディスクの磁気円盤またはメモリICチップが指定されるべき記録媒体にあたる。
現在政令指定されている特定記録媒体は全て特定機器と分離している製品であるが、当該製品は機器内部に記録媒体が設置されているに過ぎない。機器と記録媒体が一体となった製品の発売は、技術の進展により大容量の記録媒体が登場し、一体型でも十分な容量の録音が可能となったことによるものであり、機器と記録媒体が一体となっていることを理由に政令指定されないならば、制度導入の趣旨に反した取扱いと言わざるを得ない。
2   当該製品は、私的録音用として販売及び宣伝がなされており、ユーザーも私的録音の目的で購入しているものと考えられる。
具体的には、音楽を大量かつ容易に、高音質で録音できることを訴求する広告展開が行われており、イヤフォーン・ジャックを備え、大量に録音した楽曲の検索性を高める機能、或いは、録音した楽曲をユーザーの嗜好にあわせて自動再生する等の機能を備えている(添付資料2号参照)。また、多くの家電量販店においては、携帯オーディオ製品としてMD等と同じ売り場で陳列、販売されている。
3   当該製品の販売が拡大する一方、MD機器の販売は減少傾向にあり、ユーザーがMD機器からこれら製品へ移行しているものと推測される。
添付資料3号のとおり、ハードディスク又はフラッシュメモリを用いた携帯録音機器の出荷台数は2004年に急激に増加し、2005年は更に大きな伸びが予想されている。その一方で、MD機器の出荷台数は減少しており、「携帯機器 主役交代へ」(4月10日版日本経済新聞1面)という報道もされている。
4   当該製品の中には、録音以外の機能を備えているものがあるが、それらの機能を有することは当該製品の本来の機能が私的録音機能であることを否定するものではない。

  (2)諸外国の状況
 
  欧州の多くの国々で私的録音補償金の対象とされている(添付資料4号参照)。


2 汎用機器・記録媒体による私的録音の実態を踏まえて必要な法改正を行うべきである。

   パソコン内蔵又は外付けのハードディスクドライブ、データ用CD-R/RW等が私的録音補償金の対象となるよう必要な法改正を行うべきである。
  (1)法改正を求める理由
 
1   私的録音の機能が予め装備された汎用機器が数多く販売されている。
私的録音補償金制度が創設された平成4年当時の家庭へのパソコン普及率はわずか12.2パーセント(内閣府統計)であり、また、録音用CD-R/RWが私的録音補償金の対象として追加指定された平成10年当時においても、パソコンは、機能及び性能の面から私的録音を目的としてユーザーが購入する機器とは言えない状況にあった。しかし、普及率が63.3パーセント(平成15年同統計)に達した今日では、多くの機種で記録用CDドライブは標準搭載されており、また、音楽をパソコンのハードディスクに録音して再生したりCD-R/RW等に複製するための録音用ソフト等がプレインストールされている。
2   汎用機器・記録媒体による私的録音は、特定機器・記録媒体による私的録音の量に匹敵する実態があると推定される。
私的録音補償金管理協会が委託した株式会社野村総合研究所の私的録音実態調査(添付資料5号参照)によると、2004年の補償金対象外機器による私的録音の全体に占める割合は51パーセントに達するものと推定されている。また、私的録音に利用されたCD-R/RWの数量は年間1億6,500万枚にのぼり、これは2003年のCD-R/RWの国内需要実績である4億5,200万枚(日本記録メディア工業会統計)の36.5パーセントに相当する数量である。ちなみに、同年の補償金対象記録媒体の全品目出荷数は約1億8,100万枚(私的録音補償金管理協会資料)であった。

  (2)諸外国の状況
 
  欧州でも、汎用機器・記録媒体を私的録音補償金の対象とする国が増えている(添付資料4号参照)。

   汎用機器・記録媒体には、前記のとおり、予め私的録音の機能を備え、それを購入者への訴求点としている機器が数多くあり、かつ、現行の特定機器・特定記録媒体に匹敵する膨大な量の私的録音の実態があると推定される。このような状況を放置することは、権利者への補償に欠けるだけにとどまらず、同じ私的録音を行っているにもかかわらず、私的録音補償金の対象であるものとないものが生じている結果、私的録音補償金を負担する消費者にも不公平感が生じている。


3 対象機器・記録媒体の政令指定方式を新たな技術に迅速に対応可能な方法に変更すべきである。

   個別の技術を指定する従来の方法は以下の理由から問題があり、めざましい技術革新に対する速やかな対応が可能な方法に変更すべきである。

  (理由)
 
1   技術を指定する現行制度は、指定までの時間がかかり過ぎて権利者の補償に欠ける。
2   技術を指定する現行制度は、私的録音補償金を支払う消費者には理解できず、制度への理解を妨げる一因ともなっている。例えば、「磁気的かつ光学的方法により、44.1キロヘルツの標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた音を直径が64ミリメートルの光磁気ディスクに固定する機能を有する機器」とか、「記録層の渦巻状の溝がうねっておらず、かつ、連続していないもの」と施行令に定められており、どのような機器及び記録媒体が私的録音補償金の対象なのか、技術者以外にはわかりにくい。

   このような問題を解決するため、現行の指定方法を改め、要件を満たす技術が市場に導入されるときには、改めて政令で追加指定することなく補償金支払の対象となるような方法に変更すべきである。


4 終わりに

   平成3年当時、私的録音補償金制度の導入について検討していた著作権審議会第10小委員会は、同制度の導入の趣旨として、「技術の発展の恩恵を受けつつ、著作物等を享受することについての消費者の利益に配慮しながら、録音・録画技術の発展と著作物等の保護との間の利益調整を図る」(平成3年12月同小委員会報告書)ものと説明している。
 しかし、同制度が導入されて10年以上が経過し、前記のとおり、同制度の対象となっていない機器・記録媒体による膨大な量の私的録音が行われる事態が生じている。これについて権利者への補償措置が講じられない場合は、私的録音補償金制度を定めた著作権法第30条第2項の立法趣旨のみならず、著作権法第1条に定める「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」という立法の目的にも反し、また、かかる事態はWIPO著作権条約第10条及びWIPO実演・レコード条約第16条(2)で権利制限が許容される「著作物(実演、レコード)の通常の利用を妨げず、かつ、著作者(実演家、レコード製作者)の正当な利益を不当に害しない特別な場合」を既に超えているものと考えられる。
 私的録音行為の都度課金する技術的な手段や社会的インフラの全面的な確立が仮に将来なされるとしても、それまでには時間がかかることなどを考えると、私的録音補償金制度は、権利者と私的録音を行う利用者の間の利害を包括的に調整するための制度として現状では不可欠であり、実態に即した見直しにより同制度の有用性を保持する必要があると考える。

  以上



添付資料1号   ハードディスク内蔵型録音機器等の代表的機種の例(PDF:46KB)
添付資料2号   ハードディスク内蔵型録音機器等の宣伝に見られるキャッチ・コピー等
添付資料3号   携帯オーディオ機器の国内出荷の推移
添付資料4号   ハードディスク等を用いた録音機器又は汎用機器・記録媒体を補償金の対象とする国々
添付資料5号   デジタル私的録音機器ユーザーの私的録音等実態調査より抜粋(調査実施期日:2004年6月30日〜7月15日)

参考資料1   私的録音補償金額の推移・記録媒体の出荷数と補償金の推移・機器の出荷数と補償金の推移
参考資料2   ハードディスク内蔵型録音機器等に係わる許諾済複製と私的複製について(PDF:60KB)


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