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文化審議会

2002/11/27 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事要旨


1   日  時    平成14年11月27日(水)10:30〜13:00

場  所    文部科学省分館2階201・202特別会議室

出席者   (委員)
石井、上原、児玉、齋藤、清水、瀬尾、土屋、中山、野村、生野、福田、増山、松田、山際、山口、山地、の各委員
(文化庁)
銭谷次長、丸山長官官房審議官、岡本著作権課長、堀野著作権調査官ほか関係者

配付資料

資料1     文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨
資料2 「映画の著作物」の「非営利・無料の上映」に関する考え方
資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議経過の概要(案)

5 概要

(1) 非営利・無料の上映の制限の見直しについて、事務局から説明がされた。そして各委員から以下のような意見交換が行われた。
 (以下 委員:○、事務局:△)

○: 非営利・無料の上映会は、実際に近隣の映画館において、映画の配給・興業に影響をきたしている。そのため、「案の1」にある現行38条の例外的な取扱いを原則廃止とする考えについて、積極的に協力をお願いしたい。
   
○: 例外的な取扱いを原則廃止とするというのは、「公に上映」というように「公に」がつくのか。マイクロフィッシュ等を図書館のブースなどで利用する場合はどうなるのか。また、外国のビデオを利用して図書館内で上映する場合、許諾の取りようがないのではないか。さらに図書館で学生に自由に見せる部分が、教育の目的かどうかは、授業との関係をどう定義するかで、微妙なところがある。
   
△: 著作権の対象となる「上映」は「公に上映」する場合のみである。マイクロフィッシュなどの静止画は「映画の著作物」ではない。外国の著作物を差別的に取り扱うことは内国民待遇違反となる。教育の目的となる条件は、第35条と同様のものを考えている。図書館が既に所有しているビデオ等については、経過措置が必要と考える。
   
○: 図書館のビデオ上映については、日本図書館協会と映像ソフト協会との間で上映利用の協議を重ねて、合意事項として、法律とは別に契約のような形で取り交わしている。ただ商業利用の過程にあるビデオ作品についての許諾のため、それ以外のビデオは、日本図書館協会との協定の中で、今の38条1項の範囲内で上映することができるようにする。ブースでの上映については、従来どおり視聴できるように考えている。
   
○: 例えば語学などを勉強させるために、日本では入手できないビデオを揃えて、学生に自由に見せた場合の利用も許諾が必要か。
   
△: 「教育目的の利用」は、現行の35条における条件を基本に考えているので、「授業」であれば上映できる。
   
○: 大学の場合、授業でなくても学生が自分で勉強するということも多々あるので、その場合は、図書館は許諾を取っておくことが必要ということか。
   
△: 「授業」という位置付けであれば無許諾で利用させることができる。何を「授業」とするのかは、単位認定や大学設置基準との関係で、各大学の責任で明確になっているはずである。各大学が「授業」と位置付ければよい。
   
○: 外国のビデオについては、38条1項を適用するかどうかの問題でなく、いわゆる商業利用のされていないビデオの範疇で、日本図書館協会と同様の協定を大学図書館側で結んでおけば、個々に許諾を取らなくてもよいと理解している。
   
○: 今回の議論においては、許諾の対象である場合でも、1つの窓口で簡易に許諾が得られるようにすることと、35条と同様に権利制限規定を設けることと2つの指摘が出てきている。
   
○: 非営利・無料であれば上映できるということだが、映画の著作物は、コンピュータ上の動画のように、今後のメディアの動向を考えた場合に予測もできないケースが出てくる。従って、その都度ルールを作っていくのではなく、教育、図書館等の例外については限定的に残しておくとしても、原則的に例外的な取扱いを廃止しておかないと、今後大きな問題になるような気がする。
   
○: 外国のビデオを利用して図書館内で上映する場合について、許諾の取りようがないとの意見があったが、最近はどこの誰が作ったのかは、比較的にいろいろな場所で記録されているので、窓口を一本化すべく映像ソフト協会や映画製作者連盟が努力する問題である。また劇映画に関しては、監督協会が情報をつかんでいるため、どこに対して許諾を求めたらよいかわからないという主張をいれてほしくない。また、なるべく例外は減らした方が良いと思うので、例外的な取扱いを廃止とする考えに賛成する。図書館が、普通では見ることが出来ないビデオや買いにくい、或いは売っていない作品を上映するというのは、歓迎する面もあるが、本来フィルムアーカイブが、きちんとしていれば、図書館との事務分担ができるのではないかと認識している。
   
○: 原則例外を廃止する考えを採用しても、福祉施設や弱者への対応を簡易に許諾を得られる窓口を設ける制度で解決しようと考えているようだが、市販のビデオをどの範囲内で上映してよいかを考える際に、福祉とか弱者への配慮がどうして必要なのかは理解できない。
   
○: 確認したいが、原則例外を廃止する考えについて、ベルヌ条約との関係をうかがいたい。次に、「上映を禁止する旨の表示がある場合」について、39条1項との関係はどのようになるのか。最後に今回の議論の対象は、著作権法でいうところの映画の著作物ということでよいか。
   
△: 1点目について、現行法を作る際にも議論されていると思うが、司法・立法・行政、学校での授業目的、これらの範囲内であれば、小留保という説明が可能であろうということである。3点目については、「映画の著作物」である。2点目については、第39条の場合は、権利制限の前提ではない。権利制限されている場合について、さらにその例外を規定をしているので、趣旨が異なる。
   
○: 窓口の問題について、既に日本図書館協会とは上映を許諾する場合の窓口に、図書館専門の納入業者を経由して権利者に問い合わせるという仕組みがある。そのため、今後他の団体との協約、ルールを作る場合には、それに準じた方向にしていきたい。
   
○: 国際条約との関係、国民に対して法律をわかりやすくするために、例外的な取扱いを原則廃止する考えで行くべきだと思う。権利制限規定については、行政・司法・立法、学校の教育目的等に限定し、後は図書館との契約で処理すべきだと思う。
   
○: 大体は例外的な取扱いを原則廃止する考えで理解が得られたとの感触があるが、運用面で、権利者側の窓口については、きちんとした窓口が必要かと思う。
   
○: 日本図書館協会と映像ソフト協会は、許諾を扱うということになるということか。
   
△: 「上映を禁止する旨の表示」という方法をとった場合でも、権利者は多くの場合上映禁止の表示をつけると思われるので、いずれにしろ許諾である。
   
○: 映画の著作物について、CD−ROMの上に載っている動画を図書館ブースで視聴する場合、映像ソフト協会ではどういう扱いになるのか。
   
○: 図書館ブースでの視聴については、当事者間の協約などで対応していきたい。
   
○: 映像ソフト協会としては、上映してもらうビデオを供給していこうという姿勢で、権利者の方を指導している。上映できるカタログのリストアップに努めているので、例外的な取扱いを原則廃止する形で、法改正を進めてもらいたい。
   

(2) 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議経過の概要(案)について、事務局から説明がされた。そして各委員から以下のような意見交換が行われた。

○: 図書館関係の訂正について2)は実際に映像ソフト協会と日本図書館協会の方で合意が形成されてきた実績があると思うので、その点を入れていただきたい。もう1つは、括弧内の「(インターネットを通じて入手した画像など)」ではわかりにくいので、具体的にマイクロフィッシュとかリアルなものを入れておいていただきたい。また「著作者の利益に対する損害が大きくなっていることがあげられている」と書いてあるが、この認識については議論のあるところである。5)は、図書館だけにかかわる問題ではないという趣旨を入れていただきたい。7)は、継続的に協議することになっているが、少なくとも図書館側と権利者側との間で合意がされているので、その内容を報告書の方にも盛り込んでいただきたい。10)については、引き続き検討ではなく、簡便な許諾システム、意思表示システムで対応することにしたと思うが、確認をお願いしたい。
   
△: 指摘された事項については、適切に修正する。ただし、7)のことについては、昨年の著作権分科会で検討事項を詰めて、そこでに宿題として、検討会を設けて議論した流れの中で、検討会でも宿題以外のことで議論された事項である。そのため、本来審議会の流れとは、関係のない事項であるが、なお書きなどの形で書き込む工夫をしたい。
   
○: 教育関係の2)について、「リアルタイム送信」が入っているが、実際に授業を行うと、事前にオンデマンドで送信したり、授業が終わってから送信するとかがあるので、生徒向けに限定するのであれば、リアルタイムという言葉は取っていただくことは可能か。
   
△: 蓄積も可能とすると、教育目的と言えば、様々なサイトから何でも送信自由となってしまうことがありえるので、関係者間の協議では、授業を行っている過程でコピーを配っているのと同じようにリアルタイム送信する、というところまで合意が得られている。
   
○: 9ページの「情報リテラシー」という用語は、わかりにくい気がするので、何か日本語を考えた方がよいのではないか。初中教育では「情報活用能力」が使われている。
   
△: そのように修正する。
   
○: 9ページの「学習者自身が教育活動の一環として自ら複製を行うことが必要とされる」とあるが、学習者自身が教育活動をすると聞こえてしまうので、修正をした方がよいと思う。
   
△: ご指摘を踏まえて修正する。
   
○: 13ページの「ビデオ・DVD等の普及により」とあるが、これは市販ビデオについては現実に問題が出てきているが、市販ビデオ等でないものについては、現実に問題として出てきていないのでないかという議論もあり得るか、その辺はどう考えているのか。
   
△: ベルヌ条約に戻って、極めて例外的な場合のみ権利制限をするという考え方と、現在の38条1項を前提にして見直す考え方の2つがある。ここでは、そもそも現行の規定がベルヌ条約との関係で問題があるという見解も踏まえ、前者の考え方を採っている。
   
○: そのような趣旨であれば、市販ビデオのみが対象だと誤解されないよう、何か入れた方がよいと思う。
   
○: 2ぺージの検討事項の項目と、検討する等の内容の項目の対比がわかりやすくなるよう「個別の権利の在り方に関する事項」の下に「権利制限の見直し」についての項目を入れた方がよいのではないか。
   
△: ご指摘を踏まえて修正したい。
   

6   閉  会

事務局より、次回は12月11日に開催することが説明され、閉会した。


(文化庁著作権課)

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