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文化審議会

2002/11/06議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨

1   日  時 平成14年11月6日(水)10:30〜13:00

場  所 文部科学省分館2階201・202特別会議室

出席者 (委員)
金原、児玉、齋藤、清水、菅原、土屋、中山、生野、福田、松田、三田、山際、山口、山地、の各委員
(文化庁)
銭谷次長、丸山長官官房審議官、岡本著作権課長、堀野著作権調査官ほか関係者

配付資料  
 
資料1     文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)議事要旨
資料2 私的録音録画補償金制度の見直しについて
資料3 私的録音補償金の見直しについて(菅原委員、生野委員、増山委員提出資料)
資料4 私的録音・録画補償金制度に対する意見(山地委員提出資料)
資料5 関係省庁からの著作権法改正要望事項について
資料6 著作権法改正要望について(文部科学省初等中等教育局提出))

 概要
(1) 「私的録音・録画補償金制度の見直し」について事務局から説明がなされた後、菅原委員、生野委員から「私的録音補償金の見直しについて」、山地委員から「私的録音・録画補償金制度に対する意見」の説明がされた。そして各委員から以下のような意見交換が行われた。
 (以下 委員:○、事務局:△)

○: 中古市場に関して言うと、新品CD販売店あるいは中古店で購入したCDをCD−Rでデジタル・コピーして売却するという事態が生じている。このような新品の購入に完全に代替できるクローンが出現したことによって、現在の中古店の隆盛が今後ますます増大することが、レコード会社など、権利者にとっての懸念である。これに関する対応として、新しいセキュアなメディアの開発を進めていくことも必要であるが、実際にこれだけ汎用機・汎用媒体で音楽がコピーをされている現状を解決する、1つの方法として補償金の適用が考えられるということで提案させてもらっている。
   
○: 映像製作者においては、補償金制度の機能に関していうと、録画も録音も同じだと思うので汎用機器及び録画媒体についても是非とも実態に合わせた検討をお願いしたいと思う。
   
○: 映像ソフトについては、技術的保護手段が標準化され、ハードウェアもそれに対応しているので、いわゆるパッケージの出荷に関して補償金は取っていない。そもそも平成7年に私的録画補償金制度そのものを作る段階において、映像ソフト協会でそういう方針を決めていたので、ハードウェアに課せられている補償金の額の中においても、ビデオパッケージのものについては考慮されていないと理解している。ただこの補償金制度は必ずしも万全ではないので、いろいろな意味で見直しを検討をする必要がある。
   
○: 私的録音録画の事情を考えると、教育とか学習の場でかなり使われている。契約によって、その都度お金を支払うことになると、学習者の立場としては学習の促進を阻害するような気がする。ただし、汎用機器でのコピーは大きな問題なので、いわゆるコンピュータでできることは補償金の対象としつつ、そこで払っている意識は基本的に教育する必要はある。
   
○: 大学図書館の実態からすると、今この段階でCD−R/RWを研究して新たな制度を作ることが本当に適切かどうかいうことについては疑問を感じる。なぜならこの数年の変化によって、4、5年前は主流であったCD−ROMによる本のデリバリーが、現在では極めて効率が悪く、管理も面倒なことから減少しており、むしろオンラインデリバリーが一般的になったからである。従って、オンラインデリバリーを考慮した将来的な技術の展望を充分予測することが、ある程度耐久性のある法制度を作るためには重要である。またペイ・パー・コピー(pay per copy)とかペイ・パー・ヴュー(pay per view)に関して言うと、この契約はその都度お金が発生してしまいお金が払いにくいので実際あまり使われていない。 例えば年間契約、ある程度の量を示したダウンロード契約がむしろ一般的である。
   
○: 学習の場では、ペイ・パー・コピーについては、コピーした瞬間に支払うのは難しいとの意見があったが、それは私的録音録画補償金制度に限ったことではないと思う。コピーのたびに払うのが困難であれば、半年あるいは四半期ごとに支払えばよいのではないか。ただ、どのくらいコピーされるのかわからないと、特に地方自治体では予算の立案が難しいので、重量制ではなく一定額にしてほしいとの議論があって、こういった固定額を認めてほしいとの要望も強くあるが、智恵をしぼれば様々な制度設計が議論できると思う。
   
○: 技術的保護手段の出現や正確な対価徴収の可能性についての報告は確かに中長期的な観点からすれば異論はない。ただ、実態として補償金の対象になっていないCD−R/RWが、MDより多く音楽のコピーに供されているので、当面の手当てとして補償金制度の対象とすべきである。また当面の手当てとして補償金制度を拡充することが、権利者の新たな技術的保護手段の開発のインセンティブをなくすことになるとの意見があったが、そのような事は断じてないと言える。また媒体が技術の進歩によって、変わってくる可能性があるとの意見に関しては、媒体の違うメディアが登場した場合には、それをカバーする制度を作ればよいのであって、今後の議論の中で充分詰めていくことは可能だと思う。
   
○: 媒体が変化していくことについてだが、オンラインデリバリーは媒体、つまり物が動くことを伴わずに、情報が生産者から利用者・消費者に直接動くわけで、それを視野に入れておくことが大事であると述べたかったのであり、我々が知り得る限りの流通形態を考慮して考えていくべきである。
   
○: 現在のCCCDの普及率について、1500万枚のうち250タイトルとの報告があったが、これは時間が経てばCCCDのシステムが全部あるいは大部分普及するということだと思うが、今現在普及していない最大の理由は何か。
   
○: CCCDが登場して半年がたち、現状をどう評価するかということだが、日本でエイベックス社が3月に発売を始めてから、9月には販売枚数のトータルが1500万枚に至っている。年末までに8社が発売する予定であり、決して普及のスピードが遅いとは考えていない。また各社においても技術にかかるコストを踏まえて、複数の技術がある中でどの技術を採用したらユーザーフレンドリーな商品を供給できるのかを検討しているのであり、CCCDが普及が進んでいないとは考えていない。
   
○: デジタル技術、PC、インターネットは優れた技術なので、可能な限り活用するのはよいと思う。そしてその実態に合わせた制度の運用・設計が求められてくる。今回の私的録音録画補償金について、著作権法の104条の2を使っている現段階ではかなり大まかな運用になっている。仮に30条2項がそのまま使える段階になれば、ラフな状況ではなくなってくる。補償金制度は、過渡的な制度であると説明がされているが、最終的に、正確な対価徴収の可能性という方向は、重要であると考えている。そして重要なことは、権利者対メーカー・利用者の対立という話ではなく、むしろ両者で好ましい仕組みを考えていく時代になっていくべきである。可能な限り実態に制度を実態に合わせることは必要であり、並行して正確な対価徴収の可能性についても検討することも必要ではないかと思う。ただ緊急を要する問題なので、当事者間の協議の場を設けて、詳細な検討を行っていただきたい。
   
○: 他の立法例では、メーカーは固有の義務を負うが、日本では協力的義務となっている。そのため、関係者が協議する際、誰が主役なのか難しい面はある。
   
○: ユーザーの立場から言うと、仮にパソコン等から補償金を取るとした場合、ソフトにコピーガードがかかっていると、補償金を支払っているのに、コピーができないという事態が発生すると考えられる。そこをどうするのかという疑問がある。
   
○: 出版の立場からすると、やはり電子的な配信によって、個別の契約、サイトライセンス方式で行くべきであると思う。長期的には、正確な対価徴収が行われると思うが、短期的に見ると私的録音録画補償金による対応が必要だと思う。従って、その方向で検討していただきたいが、並行して個別利用の適正な使用料が、電子的な方法によって徴収できるようなシステムを考えていく必要がある。
   
○: 補償金制度は対立的な話ではないようなので、当面緊急措置として、どういう対処措置を考えるか、緊急措置は早めに決めて、並行して中長期的に、新しい仕組みを考えるということとしたい。
   
△: 今回の議題は、何人かの委員の方々の発言にあるように、どういうタイムスパンで考えるのか大きなポイントとしてある。従って、短期・中長期とそれぞれ考えなくてはいけない問題があるので、技術の開発・普及の予測等を含めて関係者にお集まりいただき、詳細についてタイムスパンごとに考えていくことを緊急にする必要があると思う。

(2) 「関係省庁からの著作権法改正要望事項について」について、事務局から説明がなされた後、各委員から以下のような意見交換が行われた。

○: 拡大教科書について、普通に教科書をルーペで拡大して読むというのは理解度の点で、非常にハンディを持つとの研究結果がある。そのため拡大教科書は、教育的な効果があると思う。さらに普通の教科書については、既に著作権処理がなくてもできるのであれば、同様に拡大して使うことに対しても、教科書協会などの団体からも概ね了解を得られるとのことなので、早急な法改正が望まれる。社会的にも非常に意味のある改正と考えられるので、是非お願いしたい。
   
○: では是非条文を作って、実現の方向に持って行っていただきたい。またハンディがある人に対して、「官」だけがするのではなく、「民間」も含めて国民全体が何らかの負担をしなければならない時代に来ていると思う。この点は是非とも早急に取り組んでいただきたい。
   
○: 権利者の立場としては、基本的に権利制限はなるべく縮小の方向に行くべきと思う。ただし著作権法が、非常に細かくなっていくことにも反対である。しかしながら、障害者のための手書きの教科書が早急に実現することは是非必要なので、例外的に拡大教科書についての法改正に賛成する。
   
○: 障害者に関しては、決して今回の議題の部分だけではなく図書館の関係でも話題になるが、障害者の話については、やはり検討の場を設ける方向が必要ではないか。
   
○: 例外的に賛成と言ったのは、なし崩し的に権利制限の拡大の要求が出てくるという懸念があるからである。現在、文芸関係では、権利者を集めて契約するという形で対応できるような方向に準備を進めているので、なるべく権利制限の拡大という方向ではなくて、話合いで対応する方向に持っていく努力をしている。そのため、今後とも図書館と話合いを続けていきたいと思う。
   
○: 今回の議題の内容については、法改正という方向性でよいと思う。また概ね了解をいただいた団体の中に、書籍出版協会が入っていないので、利用者あるいは文部科学省の方から話をいただけるのであれば、書籍出版協会としても検討をしたい。書籍出版協会としては、了解の方向で検討したいと思うが、実は教育の方でも障害者に対する権利制限の拡大ということを検討している部分もあるが、そのこととは別の問題として検討はしたいと思う。

 閉会
 事務局より、次回は11月27日に開催することが説明され、閉会した


(文化庁著作権課)

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