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: 参考資料であげられている最高裁判決は、カリフォルニア州裁判所の出した懲罰的損害賠償の判決について、日本では公序良俗に反するため執行を認めなかったものである。もし、日本で懲罰的損害賠償を一部でも認めると、米国で巨額の賠償を命じた判決についても、日本で執行しなければならなくなるという問題がある。
また、故意に殺害されるというような犯罪もある中、著作権にだけ懲罰的損害賠償を導入するのは日本の法制度としてバランスがよいかをもう少し検討する必要がある。
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: 著作権侵害では侵害の発見が困難な事例が多いため、権利の行使等にコストがかかる。また、キャンペーンなど侵害予防のためのコストもかかる。しかし、相当因果関係がないということで侵害予防のためのコストを侵害者から回収できない。著作権制度を維持するための手段として、懲罰的賠償のようなものを導入する必要があるのではないか。著作権の場合には、侵害行為の発見が困難で普遍的に行われてしまうという特殊性があるので、著作権制度維持のため、著作権、あるいは特許権に限定した制度として構築できるのはないか。
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: その特殊性を理由に懲罰的損害賠償を認めることはできないのではないか。深刻な、人間の将来を脅かすような犯罪行為も潜在化していると思うが、だからといって、損害賠償額をあげろという話にはなっていない。ここは、なぜ損害賠償額をあげるのか、なぜ知的財産だけなのか、制度的な枠を変えるという意識を忘れずに議論をする必要がある。
法定賠償については、最低これだけは認めるという額を出すか、商品価格の何割とか方法はいろいろあり得るが、懲罰的賠償については、日本の法制度と合わないので慎重に考える必要がある。知的財産立国という政策があるのはわかるが、法の秩序というものもある。
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: アメリカでは、特許法違反について、実質損害の3倍を認めている。これは、アメリカでは、一般の懲罰的損害賠償は青天井で、それではあまりに不当だということで、独禁法、特許法については3倍を上限と定めたものである。最高裁判決で言われているように、懲罰的損害賠償は、刑事・民事を峻別する我が国の法体系にはあわないと思う。根本的に日本の法制度を変えるということでないと難しいのではないか。ただし、今の損害賠償制度で十分かというとそうではない。立証責任を被告に転嫁するというアプローチが考えられる。例えば、初めに原告側が立証できた2倍の金額を推定し、被告側が相手の損害額はもっと低いことを立証できれば、その額まで損害賠償額を減額するというアプローチが考えられるのではないか。
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: 資料4にある「侵害の量の推定」については、3倍より遙かに多くした方が効果的ではないか。なお、米国では実損額を超える部分については課税される。
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: 損害賠償制度には日本ではまだ発達の余地があるが、今まで出たような提案は、様々な事件の特性を反映して議論が積み重ねられてくれば将来的には考えられるが、今、突然、著作権についてのみ出てくるということだと導入は難しいのではないか。ドイツなどヨーロッパでは3倍賠償は公序良俗に反するということで導入されていない。このような制度は両刃の剣とも言え、額を上げなければ日本が損をするということでもないのではないか。
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: 最高裁判所は、逸失利益の回復を「公序」と考えているのではないか。それを超えて3倍賠償を考えるのであれば、著作権固有の問題はないと思うので、知的財産権固有の問題があるかどうかという議論が必要だということだと思う。司法制度改革本部においても損害賠償について見直しの議論が行われることとなっており、その議論も踏まえる必要がある。知的財産の分野において3倍賠償を議論しているのはこの審議会だけだということも踏まえ、将来的に本当に必要なのかをもう一度議論した方がよいのではないか。
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: コンピュータソフトウェアについて、業界の意見が固まっているわいけではないが、挙証責任の転換という方法があれば、必ずしも3倍でないといけないということではないのではないか。米国の著作権法に懲罰的損害賠償の規定はあるのか。
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: 懲罰的損害賠償の規定は、米国の著作権法にはなく、一般の民事法制の領域で形成された考え方だが、条文という形ではないのではないか。
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: 著作権法だけに3倍賠償を導入するというのは難しいのではないか。例えば、特許法で3倍賠償というのはまだ受け入れやすいかもしれないが、著作権法においては受け入れられづらい、といった制度自身の「受容度」の違いがあるかもしれない。大学での状況などを考えると知的財産一般ということで整理できるかも懸念がある。特許については、大学の所属にしていこうという流れがあるが、若い研究者が自分のものだと思っている場合もあり、実際に帰属が明確でない知的財産もある。ハーバードの事件では相当重い刑が見込まれている。日本の知的財産制度が動いている風土といったものに留意しないと反対意見も出てくるのではないか。
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: 3つの提案事項はそれぞれ違う性質のものである。3倍賠償についてはいろいろ問題があるが、法定賠償については具体的な議論を進めていくことも可能ではないか。立証責任の転換については必ずしも懲罰の目的と考えなくてもよいのではないか
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: 実際の訴訟では、1件5千円などといった少額の損害額を認定するものもあるが、それでも法定額を定めて適用すべきなのか。損害額が大きいソフトウェアの訴訟などでは、法定賠償は機能しないとすれば、最も小さな事件にばかり適用されることとなるが、それでよいのか。
10万円として法定賠償額を定める場合、被告が損害は発生しなかったということを抗弁として立証したら、法定賠償であっても請求棄却という判決が出る可能性があってもいいと思う。抗弁がどうなるかということも考えて立法しないと法的安定性を欠くことになるのではないか。
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: 法定賠償について、具体的な規定の案を考えているのか。
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: 具体案はないが、法定の最低賠償額が明確になれば、権利行使が迅速にできると考えている。
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: 米国の法定賠償は抗弁を許さない制度である。損害額を立証するか、立証せずに法定賠償額で請求するかは、権利者が選択することができる。通常、一著作物当たり750ドルであり、何回侵害するかは関係ない。悪意の場合は加重できる。訴訟を起こした場合の損害賠償額の見通しを立てる材料にはなるが、最低これだけは勝ち取れるという安心材料になるという効果は全くない。そのような効果を期待するのは、100万円、200万円というように額を大きくしないと意味がないのではないか。
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: 法定賠償制度を導入するか否かという問題と、導入する場合額をどう決めるかという問題とがある。
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: 損害賠償については、もう一度議論の場を設けて欲しい。
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: 法定賠償は損害額の立証が困難という状況に対応するためのものだが、3倍賠償は立証できたものを3倍するという発想なので、両者は質的に異なる。また、侵害への抑止力ということを言うと、他の犯罪行為等との関係も問題になるため、3倍賠償よりも法定賠償の方が国民一般には理解されやすい。「損害額の立証が困難な状況への対応」ということを目的として、法定賠償は他の課題とひとくくりにした方が分かりやすいかもしれない。
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