3 調査結果

10.その他

 以下の事業者は、著作権等の管理業務を実施しているとは言えないが、有益な情報と考えられるため、事業者の業務の概要を記載することとする。

○映画の二次利用関係

 現行著作権法では、映画の著作物の著作権については、映画製作者に法定帰属されることとなっており、映画監督には法律上の権利は与えられていない。
 しかし、映画の二次利用の際には、実務上、映画監督に追加の報酬が支払われており、映画監督を会員とするN事業者が追加報酬の受領分配に関する業務を実施している。

【N事業者】

(1)業務の概要

 劇場用映画については、劇場上映の後、一般的に、ビデオ化、有料放送(BS、CS、CATV)として二次利用されており、その後、地上波による無料放送として二次利用されている。
 日本映画の場合、劇場用映画の二次利用については、当初(昭和30年代頃)は地上波無料放送のみであったが、その後(昭和60年代頃から)、ビデオ化や有料放送への利用が増えていった。

 映画を劇場で上映する際、映画製作会社と監督との間において、劇場上映に関する契約がなされているが、映画の二次利用については、映画監督を会員とするN事業者が、団体間の協約の締結、二次利用の際の追加報酬の受領と各監督への分配、トラブルの際の相談等の業務を行っている。
 N事業者は、映画の二次利用の際の追加報酬の受領分配業務について、各映画監督と委任契約書を交わしているわけではないが、N事業者の内部規則に基づき、N事業者の会員になった時点で、各映画監督から二次利用の追加報酬の受領分配業務に関する委任を得たことになっている。

 なお、N事業者の会員は、フリーの監督や映画制作プロダクションに所属する専属監督など様々であり、劇場用映画だけでなく、放送番組、アニメ、CM、業務用ビデオなどの映像の監督を業として行っている者が会員である。平成19年3月末現在、N事業者の会員は約600名、物故会員は約150名である。

(2)利用手続の流れと報酬等の決定方法

 映画の二次利用の際の追加報酬については、N事業者と社団法人日本映画製作者連盟との間でビデオ化、放送に係る覚書を締結しており、この覚書に従って追加報酬が支払われている。覚書では、報酬額は脚本家の使用料と同率となっている。
 また、劇場用映画とは別に、テレビ用映画のビデオ複製についても社団法人日本映画製作者連盟会員社と覚書を締結しており、この覚書はテレビ制作会社の団体である社団法人全日本テレビ番組製作者連盟との間についても準用され覚書が締結されている。

 放送等における部分利用については、N事業者とNHK及び民放各社との間で、利用手続や料金についての確認書を交わしている。

 映画の部分利用については、著作者人格権の問題が生じることを避けるため、N事業者では、全て監督本人(物故者の場合は遺族)の承諾を得た後、料金の受領分配を行っている。
 なお、会員である映画監督から著作者人格権侵害の訴えがN事業者に寄せられた場合は、利用者との間で協議の場を持ち、解決を図ることとしている。

 劇場用映画の画面を監督の承諾を得て放送用の縦横比に変更して収録し放送したが、その後、ビデオ制作会社が劇場用映画の画面を用いず、放送用のテープを使用したため、監督からクレームが付いたことがあったと聞いている。
 また、実演家が行った昔の実演については、昔の実演を二次利用されては困るだろうと配慮して監督が利用を許可しないケースがあったとのことである。

(3)利用者とのトラブルについて
1事業者の意見

 映画の部分利用に関する利用者とのトラブルは年間10件程度ある。放送局からN事業者と締結している確認書のペナルティ料金を免除してほしいと言われることがあるが、ペナルティ料金の支払いを厳格に実施することでルールの徹底を図りたいと考えているため、このような措置を講じている。

2利用者の意見

 映画の部分利用の際、N事業者への申請漏れと画面上の氏名表示を怠ったとしてペナルティ料金を要求された。

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