第6章 外国における私的複製の取扱いと私的録音録画補償金制度の現状について

第2節 ドイツ

1 沿革

 西ドイツ(当時)では、1965年の現行法制定時に、世界で初めて補償金制度を導入し、今日に至っている。
 最近の動向としては、EU理事会指令2001を受けた著作権法の改正が二段階に分けて行われており、第一次包括草案が2003年に成立した。その後、2007年7月に第二次包括草案が下院を通過し、今後、上院の審議が行われる予定である。

2 私的複製の取り扱い

 ドイツ著作権法では、私的使用のために著作物の複製物を作成することは許されることとされている(第53条(1))が、2003年の第一次包括草案の成立により、明らかに違法に作成された著作物からの複製は、許されないこととされた。

 なお、現在国会で審議されている第二次包括草案では、2003年改正を明確化するため、インターネット上で明らかに違法に提供されているものからの複製は、私的複製の範囲から除外することとしている。

3 補償金制度の対象

 対象行為は、私的録音・録画(アナログ・デジタルの区別なし)である。請求権は著作者、実演家及びレコード製作者に認められており、機器及び記録媒体の製造業者等に対し行われる(第54条(1))。

4 支払義務者

 補償金の支払義務は、製造業者、輸入業者及び販売業者が連帯して負うこととされている(第54条(1))。なお、実際には、製造業者や輸入業者が補償金を支払わない場合に販売業者から徴収することになる。

5 対象機器・記録媒体の範囲

 補償金の対象とされる機器・記録媒体は法定されており、第54d条の別表に掲げられている。
 この別表はアナログの機器・記録媒体を念頭に置いて作成され、その後別表の改訂は行われていないが、実際には、関係者の合意により、デジタル機器・記録媒体についても補償金の対象とされている。

 なお、パソコンについては、2007年7月、ドイツ特許庁が補償金の対象とすることを決定し、現在、補償金額を巡って管理団体側と製造業者側で協議が行われている。

6 補償金額の決定方法

 補償金額は、管理団体が利害関係団体から意見を聴取して定めることとされているが、特約がない限り、第54d条の別表に定める額が適用されることとされている。

 なお、現在国会で審議されている第二次包括草案では、補償金の対象とされる機器・記録媒体及び補償金額を著作権法で定めるという方法ではなく、市場調査を踏まえて管理団体側と製造業者側との協議により決定する方法に変更することが予定されている。

 また、補償金の額については、補償金の対象とする機器・記録媒体が私的複製に使われる程度、著作権保護技術の適用の程度、記録媒体の性質・性能の内容、製造業者・輸入業者の負担について配慮することとされている。

 なお、ドイツ法務省は、第二次包括草案の当初案において、補償金は録音録画機器の価格の5パーセントを上限とする規定を盛り込んでいたが、権利者団体の反対により上限は撤廃されている。

7 報酬の徴収・分配方法

 補償金請求権は、集中管理団体によってのみ行使することができると規定(第54h条(1))されており、ZPÜ(私的複製権センター)が補償金の徴収分配業務を行っている。ZPÜは、補償金の支払義務者である製造業者や輸入業者と包括的な契約を結んで補償金の支払いを求めているが、その事務の全てを音楽著作権の管理団体であるGEMAに委託している。

<徴収額の推移>

徴収額(単位:万ユーロ) 徴収額(単位:百万円)
2005 約14,700 約20,580
2004 約10,200 約14,178
2003 約7,700 約10,395

8 補償金の返還制度

 ドイツ国外へ輸出される機器・記録媒体に係る補償金については、返還制度の対象とされている。

9 共通目的事業

 ドイツでは、徴収した補償金の一部を共通目的事業へ支出することに関する法律上の義務はないが、実務上、GEMAなどの管理団体が、構成員の同意を得て社会・文化的な目的の事業に支出している。

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