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文化審議会

2003年12月8日 議事録
文化審議会著作権分科会(第11回)議事要旨


文化審議会著作権分科会(第11回)議事要旨


1    日   時 平成15年12月8日(月)午前10時30分〜午後1時

場   所 東海大学校友会館「望星の間」

出席者 (委員)
石田,市川,入江,岡田,小熊,角川,金原,後藤,齊藤,酒井,迫本,清水,瀬尾,関根,大楽,辻本,常世田,土肥,中山,野村,松田,三田,紋谷,山口,依田の各委員
(文化庁)
素川次長,森口長官官房審議官,吉川著作権課長,吉尾国際課長ほか関係者

配付資料
1      文化審議会著作権分科会(第10回)議事要旨
  文化審議会著作権分科会運営規則(案)
3−1   法制問題小委員会報告書
−2   契約・流通小委員会報告書
-3   国際小委員会報告書
-4   著作権教育小委員会報告書
-5   司法救済制度小委員会報告書
  文化審議会著作権分科会報告書(案)

5     概   要
(1) 文化審議会著作権分科会運営規則の改訂について分科会長から説明の後,原案のとおり了承された。

(2) 各小委員会の報告書について各小委員会主査から報告され,その後,次のような意見交換が行われた。

(以下委員○,事務局△)

法制問題小委員会の報告書の「日本販売禁止レコードの還流防止措置」について,消費者の間から,安いものを私たちは買いたいという話があるが,安ければいいという消費者の論点より,著作権保護という意味で国として対応してもらいたい。レコード会社の利益が少なくなっていけば,継承していかなくてはいけない伝統文化,三味線やお琴などあまり売れないものを制作して販売する力がなくなってしまう。日本文化に力をつけるためにも「日本販売禁止レコード」の還流防止措置について,法律を早急に整備してほしい。

司法救済制度小委員会の報告書について,消費者の立場からも弁護士報酬の敗訴者負担の問題は,大変重要な関心を持っており,多くの団体がこの制度の導入に反対している。この審議の中で,どんな意見があったか紹介してほしい。

この問題の重要な視点は,敗訴者負担制度が導入されることにより,裁判を実質的に受けられるということの障害にならないかという点です。例えば著作権事件で,個人間の小事件についてや,人格的な意味の訴訟において,そのようなことが危惧されるという意見。また,企業間の訴訟であっても,場合によっては訴訟を差し控えるという状況が考えられる点も指摘された。これは,著作権侵害訴訟は必ずしも権利の範囲や,侵害行為の有無が即座にわかるものばかりではなく,例えば,ソフトウエアの訴訟において,コードは似ているが,侵害になるかどうかは裁判所において微妙な争点になる。更に,侵害としては認められるが,そもそも著作物としての表現形式がどこまで保護されるべきかという議論も訴訟の争点になる場合がある。このように微妙な事件では,訴訟提起が差し控えられるということも考えられるという意見があった。この問題については,訴訟の提起に障害にならないように制度改革をしようというふうに司法改革の議論が進んでいることを踏まえ,司法全般の横断的事項として検討すべきという結論に達した。

(3) 法制問題小委員会主査から提案のあった,「文化審議会著作権分科会報告書(案)」を公表し,広く国民から意見募集を行うことについて了承された。その際,次のような意見があった。

消費者団体の皆様方に説明会を行いまして,私どもは「日本販売禁止レコードの還流防止措置」について詳細を説明して,いわゆる国際展開,日本国家戦略としての海外展開等を含めて論じ,一物二価,三価が起こるような状態の中で,非常に緊急かつ重要な問題なのでご理解賜りたいというように申し上げましたが,テレビの報道番組では,その辺のところはほとんど報道されずにおりまして,そういう状況の中で広く意見を求めることになりますので,本当はもう少し我々の情報を報道してほしかったと思っている。そういう状況があることを皆様にご理解いただきたい。

(4) 「文化審議会著作権分科会報告書(案)」について事務局から説明があり,その後,次のような意見交換が行われた。

私の意見は本日,資料として配布しており,詳しくはそちらをご覧頂きたい。いわゆるレコード輸入権の問題については,知的財産推進計画で,「関係者間協議の結論を得て,消費者利益等の観点を含めて総合的に検討を行い」と記載されているが,法制問題小委員会には,消費者利益を代表するものが参加していない。そうしたことから,文化庁からの協力要請により,私が消費者の立場から意見を述べたが,残念ながら基本的な主張について理解を頂けていない。それは,この小委員会の構成が,著作権の権利者にかかわる方々が多数を占めているということが,大きく影響していると感じている。このままの状態で結論として報告書にすることについては,現時点では同意できない。先週,消費者団体とレコード協会,行政関係者も参加したはじめての意見交換会が開催されたばかりの段階であるということを踏まえ,次のことを要望する。1今後,この問題について専門に検討する場を作り,その検討結果を踏まえ,分科会でとりまとめをはかる,2委員の構成については学識経験者を中心とし,利害関係者は必要に応じて意見を述べることができる運営とする,3今後の著作権分科会,各小委員会については,文化庁ホームページで会議案内の掲載,会議資料・議事要旨の早期掲載を行うとともに,原則として一般の傍聴を認め,国民に開かれた分科会運営をはかる。23については,来年度に向けた検討を是非お願いしたい。また,法制問題小委員会で,「レコード輸入権」という名称を「日本販売禁止レコードの還流防止措置」と変更しているが,一般の消費者からは「海賊版」と誤解する恐れがあるので「還流輸入盤商業用レコードの日本での販売禁止に係る法的措置」と変えることが適当と考える。

知的財産推進計画に,「レコード輸入権」という言葉があり,法制問題小委員会でも「レコード輸入権」というタイトルで議論してきた。しかし,知的財産推進本部では,厳格な意味での輸入権,つまり著作権の支分権としての輸入権をつくるということを議論しているわけではなく,日本のレコード産業が中国,東南アジア等に進出した場合,そこで作られたレコードが日本に還流することを防止したいということ。場合によっては,みなし侵害あるいは消尽もあるかもしれないということで,推進計画でも具体的な規定はしていない。法制問題小委員会においても,輸入権というタイトルで議論はしたが,各委員の意見を聞くと多岐に及んでおり,厳格な意味での支分権だけではなかったので,「日本販売禁止レコードの還流防止措置」という名称は実態を反映したものとして小委員会で変更の合意を得ている。ただ,この名前で,海賊版と誤認を受ける可能性がゼロとは言わないが,「日本での販売禁止」という言葉よりは実態に近いのではないか。

法制問題小委員会に分属しているが,自分の団体の利益をそのままストレートに言う立場ではなく,確かに権利者の立場は私の基本になっている部分もあるが,あくまで個人としてバランスを考え,委員会で発言をしている。多分,他の委員も同じではないかと思う。団体の利益を代表する構成ととらえるのはいかがなものかと思う。また,私が物を作っている立場から申し上げると,権利者は,法律的に権利制限を受けており,著作権を1つの財産と考えると,その財産を法律で強制的にある部分が制限されるということは,言いかえれば,公共性を持った仕事をしているのかなとも思う。このように考えると,今までは法的な保護があって,そして権利制限があって,我々は社会とつながっていた。これは権利者として,私個人としてそう思っていた。ところが,著作権法での保護よりも契約によって流通していくという考え方が主流になってきた。でも,特に個人で作る場合が多い写真は,消費ということ一辺倒では流通が進まない。逆に文化の創造ということに関して,どのように目を向けていただけるのか。契約による対応を求められて法的保護がされず,権利制限を受けてどうやって育っていくのか。決して権利者を一方的に保護してほしいというのではなく,権利者も利用者も満足できる形で流通するシステムをつくらないと,物は作れなくなっていくのではないかと思う。

著作物というのは無体物であり,一般消費に比べると複製製造が簡単にできるという要素を持っていると思う。今回のレコードの輸入権の問題については,地域特定で販売をしているということであるので,日本への輸入というものに抑制力が働いてしかるべきであると考える。一定の国にライセンスを与えないということで防止することは,その国への日本の文化の輸出ができない状況になることを考えると,このような権利の創設は必要と思う。

実演家という立場で申し上げると,法律を十分理解して創作活動をすることはなかなかできない。ですからそういうことには疎いという現実だということを皆さんに考えていただきたい。制作側と出演者側との間の契約がきちんとされていないのが現実で,私どもの多くはこういうことには弱いです。雇用に関してはっきりしていたほうがお互いによろしいのではないかと思うので,雇用に関する契約のシステムということも検討していただければと思う。

国策として日本の文化を海外に輸出振興という形で発信していくときに,海外のニーズに応じて輸出したら,今度はそれが日本に還流してしまうという問題が起こっている。日本文化を発信するためのものが日本に入ってくることに制限があってもいいのではないかと思う。私は出版の世界の人間ですが,海賊版を防ぐために,先方のそれまで海賊版を出したところに正式に許諾をして日本の出版の権利を守ってきた。その国の物価水準に合わせて売りますので,国内よりかなり価格が低くなる。そこで,著作者には日本より安い原稿料となることを説得している。もし,現実に消費者が大きな損害を被っているという問題がでたら,そこでもう1回考えたらと思う。レコード産業自体ここ数年2桁で産業が縮小している。消費者が少しでも安く購入したいとする気持ちも理解できるが,幹が枯れてしまったら,実を得ることも出来なくなるのではないか。

レコードの輸入権についてはいろいろな意見があり,消費者の団体の方の危惧されるのもわかる。今日本のコンテンツを海外に広めようというとき,日本と同じ価格で売れる地域はアメリカとヨーロッパしかない。それ以外の国は価格帯が大きな問題となっている。特に,中国は日本の10分の1以下で売らないと実態に合わない。また,トルコでは,恐らく30分の1になるかもわからない。今後,いろいろ議論の中で出てくると思うが,特にレコードはローカライズというものがないと言う事情がある。書籍やゲームは必ずローカライズという問題があり,中国で売られているものは,言葉や文字についても中国語で流通しているので,作品の内容がローカライズされ,日本に戻ってきても商品としては価値が非常に低くなる。レコードに関しては,日本語の歌詞で表現されたものですから,そのまま商品として扱われる。日米欧以外の国々の経済情勢からいうと,経済価格が非常に低いので,例えば日本で売っているものを中国でライセンスした場合,3,000円のものが50円で売られている。これが日本に還流して200円で売られたとすると,日本のレコード産業は壊滅的なことになる。中国に対するコピー対策という問題では,中国政府に対して,いろいろお願いしているが,コピーするなということであれば,ライセンスを与えろということになるわけで,ライセンスするとこういった問題がかかわってくるため,レコード業界が苦慮されている。我々ゲーム業界でもライセンスという問題やローカライズの問題を今後どうするべきか考えている。やはり日米欧以外の世界の百数十カ国の国々に我々の文化をコンテンツにして輸出する場合,そのギャップについても,適切に対応をお願いしたいと考えている。

今の意見に関連して,法制問題小委員会での状況を説明しますと,小委員会では,委員のおっしゃった内容については理解しているという意見が大半でした。それを前提として問題となったのは,邦盤の還流は阻止したいが,洋盤の輸入は自由にしたい。しかし一方で,内外人の平等というWTOの大原則があるので,その大原則のもとで,果たして具体的に条文が書けるかという問題。もう一つが再販との絡みで,国内で再販によって価格競争を制限している上にさらに,国際的にも制限する。両方制限している国はほとんどないようであり,両方制限していいのかという問題。これは著作権法と独禁法の問題であり,法的に違うし,所管官庁も違うので著作権分科会では議論できない問題だが,経済的には一体として考えざるを得ない。その点どうかという議論。三番目は,レコードに限定した議論をしているわけですが,将来的に他の分野に波及するおそれがないかという点。こういう議論が出まして,結果的には意見が二つに分かれて,具体的な方針というものを出すことができなかった。したがって,今の委員の意見を前提としても,なおかつなかなか具体的な意見には達しなかったということです。

業界の委員が入っていると,権利者イコール業界のエゴととられるのは非常に困る。この委員の中には放送,美術,出版,実演者,映像ソフト,映画製作,音楽,図書館,あらゆるセクターの人が入っている。コンテンツということになると決して単純なものではなくなる。いわゆるそのジャンルに精通した人が1人入ることは当然だと思うし,私は決して権利者が多くて,議論が権利者側になっているとは思いたくない。また,再販の問題では,私は全く違う見解をとっている。再販というものは,もともと価格決定をするためのものではない。価格決定はマーケットが期待するものであり,また,そのアーティストが,そのジャンルが,そのレコード会社が本当にその価格で売れるのかどうか,という結果として価格が決まる。再販イコール価格の高止まりということは間違いです。一定期間は,価格の再販を認められており,当初は2年だったものが現在は1年になり,私どもレコード業界の39%は既に6カ月に短縮している。多分,ここ4,5カ月中にはほとんどのレコード会社が6カ月になると思う。私どもは先週の消費者団体との説明会で誠心誠意説明し,理解していただけたと思っている。この再販制度を使ってレコード業界が業界のエゴのために価格決定をし,そして高止まりをさせていることはあり得ない。海外からの並行輸入あるいは一部純正品のいわゆる還流については,我々は不問に付している状態です。今,一物二価,すなわち3,000円のものが1,980円,2,500円のものが1,800円で売られても,我々はそれを問題として挙げているのではない。海外進出するときに,東南アジアから日本の10分の1のレコードが入ってくるのであれば,我々は永久に海外に進出できない。欧米の3兆円もあるレコード産業が60数億人に対して作っているのと,日本の4,300億円しかないレコード産業が1億2,000万人に対して作っているのとを比べれば,欧米のメジャーレコード会社は,例え権利が設定されたとしても,日本での販売禁止と書くわけがあり得ない。これはビジネスというものを全く度外視した法的な論理である。また,そういう法律をつくったとしても,私はこれは各社対応であると考える。独禁法の問題も含め,1つ1つのメーカーが決めることですから,自由な流通は当然維持されるものと考えている。日本の音楽レコード産業は,海外への輸出額は29億円,輸入が250億円,完全な輸入超過です。日本が知的財産戦略で世界に打って出るときに,このままではレコード産業は永遠に日本国内のみでつくり,9,000人いたレコード産業の労働人口が5,000人台に入ってきている。リストラに継ぐリストラで出ていく先はないという状況では困ると思っている。ぜひレコード業界というものを理解してもらいたい。一般的にはとても採算が合わないものでもCDとして出して日本の音楽文化の裾野を広げている。日本の文化をどうするか,国家間としての海外進出をどうするかという意味で,よくご検討願いたいと思う。

先週のレコード協会との意見交換会では,消費者団体より「レコード業界は再販の優等生と思っていたが,今回のことで裏切られた思いだ」という発言があった。最近「自分も消費者だが,消費者としても良いと思う」と発言する権利者側の委員が最近目につくが,これは例えれば電気料金の審議会で電力会社の社長が「自分も家庭では消費者だが,料金の値上げはよいと思う」と主張しているようなものである。お互いに肩書きを持って,それぞれの立場を基本に参加しているのであって,審議会で意味をなさない発言はやめてほしい。国策という意見があったが,我が国の国策の基本は自由貿易,市場経済,国民生活重視である。WTOやFTAの問題が盛んに新聞をにぎわせている昨今,日本経団連の意見書でも,この問題は極めて例外的に慎重に取り扱うべきと指摘している。先程,レコード業界としては1,980円で売っているものは還流防止の対象にしないとの発言があったが,法制度上は,それも止められる制度になっている。再販制度については,私ども消費者団体は,今でも消費者の利益が損なわれている状態にあると思っている。書籍や新聞の再販制度は他国にもあるが,音楽用CD等の再販制度は諸外国にも例がない我が国唯一の制度である。当然のことながら輸入権を導入している国でも再販制度とセットで導入している国はひとつもないことを踏まえるべきだ。

世界で再販制度があるのは日本だけですが,世界になくて日本だけにレンタルシステムがあることを忘れないでいただきたい。あえてレンタルのことは申し上げないでおきましたが,決して再販だけを言っているのではないので,その辺を理解していただきたいと思う。



(文化庁長官官房著作権課)

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